勇気がいる技

この秋はカメムシが多い。自宅にも何度か侵入してきて先日も大騒ぎであった。どうやら干していた洗濯物と一緒に入ってきたようだ。

圃場でも野菜畑で、特にピーマンやナスビに付いているのを良く見かけた。さほど害はなかったものの、ニラがカメムシ除けになるようなので来年はコンパニオンプランツとして植えて見るのも良いかも知れない。チャイブでは駄目なのかな?

カメムシ

屋外ではそれほど気にならない昆虫なのだが、室内ではちょっと困る。家族は騒ぐし。もちろん捕まえるのは私の役目である。さすがに手で捕まえる気は起きないのでガムテープを背中にそっと押し当てて捕獲する。たまにヒヤリとさせられることはあるけれど、ほぼこの方法でうまく行く。家族は逃げ腰の私の姿を見るのが楽しみなのである。

ちなみに私の従姉はカメムシ捕りの天才である。触角をちょいとつかみ、ポイッと外に。いつ見ても見事な技である。真似してみたい誘惑にもかられるがまだチャレンジする勇気はない。

幸せの香り

咲いていると思わず花を近づけたくなるハーブ。それがグレープセンテッドセイジだ。あまーく、食欲をそそる香りはいつ香っても気持ちが穏やかになる。作業中にもホッと一息入れさせてもらうことも多い。

グレープセンテッドセイジ

どちらかというと、秋に咲くことが多いが、機嫌が良いとあまり季節を選ばず咲く。松江だとガンガンの日なたよりも半日陰ぐらいのほうがコンディションがよいようだ。

一つ難点はサルビア属の中では良くあることだが、茎や葉にやや粘りがあるため、小さな虫がひっつくとそのままになってしまうことである。加えて言うなら、他のサルビアに比べると少し育ちが悪い。大きくなった株は大事にしたいものである。一方で剪定には割と強いので、花が終ったり、落葉した時にはきちんと形を整えると次の枝がきれいに揃う。

数年前になるが、市内のお庭で背丈を遥かに越えた株を見たことがある。開花すると近所のひとが見に来ると言うことだったがさもありなん。幸せを感じさせてくれる香りなのである。えっ、私だけですか?

気にしない、気にしない

セイジの仲間、特に花色に特色があり美しいものに限って写真に写した時に本当の色が出てこない。

サルビア・アズレア

秋の初めの空を思わせるサルビア・アズレアのブルー、今年も写真に収めたがやはりだめだった。曇りの時に取ると良いよとか、朝方にとったほうがとか、ホワイトバランスを合わせてとかいろいろなアドバイスをいろいろな人から聞いたがやはりうまくいかないのである。

そもそも、我々が感じる色も結構曖昧だ。毎日見ているビニールハウス前のモーツアルトブルーローズマリーでさえ、夕暮れどきにはその色にハッとさせられることも多い。

また、カメラに詳しいひとからは「デジカメを買い替えなきゃ」との意見もいただくが、一番支持したいのは、パソコンマニアからの言葉。
「どうせ、見るひとのモニタによって色なんてまちまちだから、気にしない、気にしない」

本当の花の色が知りたければ育てるしかないようである。

ところで、このサルビア・アズレア、背が高いうちに細身である。単独で育てては全く面白くないし、倒れやすい。いくつかまとめてもやはり場所によってはだらんとだらしなく育ちがちである。先日、市内のイングリッシュガーデンでいい感じで植えてあった。周りにブッシュ状の植物が囲むように植えてあり、その間から顔をのぞかせるように咲いていた。株が蒸れないか少し心配もあるが、見た感じはなかなか良かったのである。

草遊びの文化

この季節、昔を思い出す動植物が良く目に留まる。圃場の端にたくさん花を咲かせはじめたカヤツリグサも子供のころ手に取って遊んだものだ。

カヤツリグサ

文字で説明すると難しいのだが、これは二人で遊ぶ。茎だけを使って両端から切れこみを入れる。茎は正面から見ると三角(△)になっている。一方は縦に切れ目をいれ、もう一方は斜めに切れ目を入れる。そのまま両方から開いていくと、ちょうど蚊帳を開いたような四角ができる。それでカヤツリグサ。

ところが、年代が近いスタッフにその遊びを説明しても全然話が通じない。一人は同じ地区で遊んでいた仲間だというのに、「シティボーイでしたから」と言うし、もう一人はもっともっと田舎に住んでいたのに知らないという。文化の違いなのだろうか。

花が咲いた様子も線香花火のような感じでなかなか好きである。
実はこの雑草、ずっと「サンカクイ」という名だと思っていた。むかし、誰かがそう呼んでいたのがインプットされたらしい。子供にとっては遊びの対象となる草なんて、「あれ」、「これ」というぐらいにしか呼ばないのでそれでよいのである。

お彼岸が過ぎて

お彼岸が過ぎてもまだ暑い日が続く。むしろ、これから夏に向かうと思わせるような陽気である。「過ぎゆく夏を惜しむ」と言う言葉があるが、むしろ今になって夏が未練がましく居座っているようだ。

裏の山でも相変わらずセミがたくさん鳴いている。でも爽やかな風の中で聞くとそれほどやかましく感じない。不思議なものだ。

昼前、圃場で畑に向かおうとすると、目の前をトンボが通りすぎる。少年の憧れ、オニヤンマだ。昔なら一も二もなく捕虫網を探しに行っているところだ。でも、捕虫網を持ってきた頃には既に飛び去ってしまっているで、次に戻ってくるのを辛抱強く待つより他に無かった。

ところが、おやおや、今日はすぐ近くの枝に止まった。夏の盛りにはあまり見ることができない光景だ。そっと捕虫網ではなくカメラを持って近づき、何枚か収めることができた。

オニヤンマ

そのとき、すぐ上の辺りからミィ〜ンミンミンとセミの声。これもまた、普段裏山の高いところで鳴いているミンミンゼミ。今年初めてお目にかかった。子供のころ、オニヤンマよりもむしろ捕まえにくかった。いつも木の高いところにいるので、鳴き声はしてもとても捕虫網では届かなかった。

止まっているのはユーカリの木。ミンミンゼミには似合わない。
止まっているのはユーカリの木。ミンミンゼミには似合わない。

どちらも今年の見納めにと、山から下りてきてくれたのだろうか。やはり秋は確実に歩を進めているのである。