ソマリアの空と海

スタッフで休憩のお茶を楽しんでいると、時々、
「現地で、本物のトスカナ・ブルーってやつを見てみたいねぇ」
なんて話になることが良くある。もちろん、ローズマリーのことである。

オーストラリアンだとか、カナリーアイランドだとか、イタリアン、コルシカン、ケンタッキー、フレンチなど、名前を見ていると旅情をかき立てられても仕方がない。

同様に国の名を冠していても先般まであまりピンとこなかったのがソマリアセイジである。ところが先般、なにかと話題の多い国名なので、ついつい目が留まるようになった。

ややごつい葉をもち、花が咲くまではあまりぱっとしない姿だ。ところが花はなかなか。上品なブルーである。

ソマリアセイジ

このブルーは、ソマリアの空を映しているのかそれとも海の色か。政情不安に加え、経済もひっ迫しているというこの国で、目を向けられることはあるのだろうか。先日は国会中継でも海賊問題に関する審議が行なわれていた。海賊もまさか日本の国会で話題になっているとは思ってもみないことだろう。このソマリアセイジも、まさか日本で花を咲かせるとは思っても見なかったことだろう。

まだ育てはじめて長くないため、本質をひき出すような育て方まで行っていないが、真価を発揮できれば結構サルビアの中でも見所は多いかも知れない。

日本の香り

親族が管理する里山に所用で出かけた。山道を歩いていると風に乗って甘く爽やかな香りがする。初め、クチナシの香りかと思った。

スイカズラ

辺りを見回してみると少し離れたやぶに、白と黄色の花が咲いているのが見えた。もしやと思って近づいてみると、スイカズラの花であった。忍冬(ニンドウ)とも呼ばれる。いわば日本のハニーサックルである。

スイカズラ

この場所は何度も通っていたのに、今まで全く気がつかなかった。「栽培されている」という認識があると注意して見るのに、自生しているとつい見逃してしまうのだろう。

スイカズラ

暗い薮を背景にして花色が際立つ。開花時から花色が変わっていくのはハニーサックルの仲間では良くあることだが、スイカズラもなかなかいい感じである。

今、圃場でもハニーサックルが次々と咲き、香りを楽しませてくれている。それにしても香りの系統のなんと違うことだろう。普段接しているハニーサックルは爽やかで割とシャープな明るい香りがするのに、こちらのスイカズラは爽やかではあるが、しっとりと深みがある。最初クチナシを連想させたように、非常に日本的なのだ。花の咲き方も、perlclymenum系とは大分違うし、庭などでも楽しめそうだ。

冬に機会があれば、一度、冬に耐え忍ぶ忍冬の姿を見てみたい。

気を揉むコンフリー

ビニールハウスの横で草刈りをしていたら、思わぬところにコンフリーの花が咲いていた。圃場の外れ、隣地との境目のようなところである。普段は草が生えっぱなしで放置してある場所だ。

コモンコンフリー

コンフリーはボリジなどのように種子でどんどん増えるというものでもないので、どうしてここに?という感じである。

ちょうど花がいい感じに上がっていたし、結構花期も長い。大株になると見事なのでそのままにしておくことにした。

コモンコンフリー

このコンフリー、古くはknitbone(骨接ぎ草)と呼ばれ、薬用にされていた。その後、日本でも(かなり前のようだが)野菜としての栽培がはやった時期があるという。ある一定以上の年齢の方で、育てたことがあるというお客様が結構いらっしゃるようだ。実際、自分の両親も以前育てたことがあると聞いてびっくりした。野菜を育てるような庭も無く、そもそも園芸などに関心が無いあの両親が?と思うと今でも不思議である。相当流行ったのだろう。

その後、大量に摂取すると問題が有ると分かったようで野菜としての利用は下火になったようだ。だから、数年前まではあまり人気がなかった。

しかし、この1,2年、堆肥に利用すると言う目的でコンフリーが大人気である。しかし、この人気もいつまで続くやら。

薬用として、野菜として、堆肥として、次は何に使われるのかコンフリーも気を揉んでいることだろう。こうやって荒れ地に咲いているのが一番幸せそうである。

Not so photogenic

ハーブを始めた頃から近年まで、正体が良く分からない虫がいた。というか、きちんと調べなかっただけなのだが。

庭や畑、ビニールハウスの中でもところ構わず出没する1cmに満たない小さなハチのような昆虫。ホバリングが得意で、じっと一ヶ所で空中停止していたかと思うと、ぷーんとどっかへ飛んでいってしまう。

悪さはしないような気はしていたものの、正体が分からないというのは精神衛生上良くなかった。その後ヒラタアブと知ってとても嬉しく思ったのを覚えている。幼虫はアブラムシの強力な天敵である。

一口にヒラタアブといっても非常にたくさんの種類があるようで私が普段目にするのが何という種類かまでは把握できていない。ヒラタアブ自体、ハナアブという大きなグループに属するようだ。しかもアブという名前で呼ばれているものの、むしろハエの仲間だそうである。

さて、私が普段良く見かけるのが下の写真の種類である。ネットで検索するとホバリングしている写真が良く載っている。その姿はなかなか可愛らしいので何度も撮影にチャレンジしたが、技術のせいか、それともデジカメの性能の限界なのかまともな写真が撮れなかった。仕方なく、止まっている時の写真を掲載する。ただの小さなハチである・・・。

ラングウォートの葉で一休み
ラングウォートの葉で一休み

これと、複眼が赤っぽい種類を良く見かける。こちらも飛んでいる時はいい感じだが、止まっているとアブかハエ。あまりぱっとしない。

まして、幼虫にいたっては事実、ウジである。葉に付いている姿も、長い間何かのサナギだとばかり思っていた。

ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。
ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。

これもネットからの情報だが、幼虫がアブラムシを捕食する際には身をよじるようにして食べることもあるとか。アブラムシを食べてくれるのはありがたいが、できるならあまり見たくない姿である。撮影する気も起きないので見たい人は画像検索してみてください。

移ろう花色

母の日の前後から咲きはじめたインチメリーカーネーションももうそろそろ終わりである。クローブピンクに近い種類で、やはり香りがするが、クローブピンクよりは優しい香りである。花色も同様、ソフトピンクの柔らかい印象だ。

クローブピンクはやや広がりがちになり、まとまりが無くなることも多い。それに比べ、インチメリーはしっかりした株立ちなのもお気に入りの理由だ。花茎もしっかりしているので切り花にするにしても、クローブピンクよりもおあつらえ向きだ。クローブピンクが野性味をたっぷりなのに比べて、きちんとしつけされたお嬢さんといった感じがする。

インチメリーカーネーション

花が終る時も同様、徐々に花色が薄れていく。決して一気に散っていくようなことはなく、少しずつフェードアウトしていく。「色が移ろっていく」という感じがぴったりなのである。自分も最後を迎える時はこういう終り方ができれば良いのだが・・・