八十五歳の薔薇

昨年のことである。定期的に庭づくりに伺っているお客様から、庭のレイアウトを変更したいので、大きなバラを移植してほしいという希望があった。

相当古い株のようだったので、躊躇したが、「万一うまく行かなくてもOK」ということで冬になるのを待って移植した。三人掛かりの作業で掘り上げ、移植。根もまずまず良いコンディションだったのであまり心配はしていなかった。

八十五歳の薔薇

春になり、株元や太い枝からもばきばきと新芽が伸び始めて一安心。

老木からの新芽

「ほっとしました」
と、お客様に伝えると、
「いやあ、実はこの薔薇はね」
と、由来を話されたのである。

それによると、先般 100歳間近でなくなられたおじいさんが子供の頃、川に(!)流れて来た株を引っ張り上げて植えたのがスタートだという。おじいさんの年齢から考えると少なくとも八十五年は経っているはずとの話。

先にそれを聞いていたら怖くてあんな大胆な移植はできなかっただろう。この頃、高齢の患者の大手術が成功!とかいう話題を時々メディア等で目にするがまさにそんな感じである。

もちろん種類は不明だが、やや中輪の花をかなり咲かせているのは一度確認している。今年、どんな風に咲かせるのか今から楽しみだ。

お庭にて

天気予報では一時雨の予報だったが、朝から結構日差しもさして気持ちがよい天気。昨夜、ざっと降ったようだけど作業に支障はなさそうなので、「ソレッ」と庭仕事へ出発した。この時期、一日で植物も雑草も大きく生長するので、競争だ。ビニールハウスでの仕事は雨の日にまわして、とにかく春の晴れをむさぼるように外仕事だ。

今日は市内のお庭のメンテナンスを何件か。ちょっと風が強いお庭もあったけれど、むしろバタバタすると汗ばむぐらいなのでかえって良かった。

あるお庭ではピンクスイートバイオレットが満開。かつて数株植えただけなのに、株自体も増えていくし、結構種子でも広がったようだ。風が吹くとふわりと甘い香りが漂う。仕事の最中にもちょっと得をした気分。お客様からも「玄関がいいにおいがして」と喜ばれた。

ピンクスイートバイオレット

それにしてもほとんど年中放置状態なのにこの元気な様子。実は土もそれほど手を加えていない。その上少し前まで屋根から落ちた雪でつぶれていたということだ。育苗ポットでは土や環境にもいろいろ気を使っているのになかなかここまでには・・・。自然の偉大さと自分の未熟さにも気づかされる春の日だった。

見つめる苗は育たない

とある本で、「見つめる鍋は煮えない」という言葉を知った。焦らず、ゆっくり熟成するのを待てということわざらしい。

お彼岸もすぎたというのに毎日、天候が不順でなかなか成長のそぶりを見せない苗を見ているとつい首をかしげてしまいがちだ。ポットから苗を出して根の状態をチェックしてみたり、土の乾き具合を調べたり・・・。

ただ、こちらがどれほど焦ったところで、育つ気になってくれないとどうしようもない。いくら見つめていても育ってはくれないのだ。

苗たち

今はこんな具合だけれど、ひとたび暖かくなると、「ちょっと成長ストップ!」と言いたくなるくらいぐんぐん伸びだすのは毎年のことなのにね・・・。

葉上の手がかり

春先の代表的な害虫と言えばアブラムシ。もう少し暖かくなって、天敵が出てくればそれほど頭を悩ますことは無いが、天敵も少なく、柔らかな新芽がどんどん出てくる今の時期はアブラムシにとっては天国である。

こちらとしては、ようやく暖かくなって葉が伸び始め、安堵しているところを襲われるのだからしゃくに障る。

一気に増えるアブラムシ、とにかく早期発見が第一である。とはいえ、何千とある苗を逐一調べていくこともままならないので、水やりや苗の手入れの時にあわせて見つけるしか無い。

手がかりは、葉の上に落ちた脱皮殻。アブラムシもいろいろな種類がいるけれど、このミントにつくアブラムシだと、こういう白っぽい粉のようなものが落ちているので見つけやすい。

昔は、排泄物だとばかり思っていた
昔は、排泄物だとばかり思っていた

葉の裏をみると、しっかりいらっしゃる。有翅成虫もついでに。

葉裏のアブラムシ

薬剤は使わないので、水で洗い流すなどの駆除が有効だが、ミントの場合、ばっさり剪定してしまえば、脇芽も増えるし、新しい良い葉が出やすいのでむしろ簡単なのだ。

春のエール

3月に入ってもスキッと晴れる日が少ない。雨の降らない貴重な日は大抵お客様のお庭などに向かうことが多いので、ついつい自分のところの圃場は後回しになりがちだ。

それでもここ二日ほど、少し畑や花壇にも手を入れることができたので、気分も少し落ち着いた。ハーブたちの生長よりもはるかに先行して雑草がすくすくと成長していたが、せめてハーブの周りだけでも草取りをしておきたかったのだ。

ウネの一つに、作秋定植したフレンチタラゴンの大切な株がある。寒さは全く問題がないので心配はしていなかったが、それでも新芽が出てくるとうれしいものだ。

フレンチタラゴン

これから春にかけて、苗のための親木となり、初夏には伸びて来たら収穫され、その後の過酷な夏を生き延びてもらわねばならない。今の姿をみると少し心配にもなってくるが、きっと頑張ってくれるだろう。秋に上等な肥料をたっぷりおごってやったことも忘れないように!ヨロシク。