湖山長者と粟の飯

一年も1/4が終わってしまった・・・。

明日から4月というのに、今日は冷たい雨。ようやく今週あたりから暖かくなって苗たちにも成長の兆しが見えてきたのだが。

育苗
苗たちも今日は寒さでじっとしているようだ

「○○はいつごろできますか?」といったお客様からのお問い合わせも増えてくる季節。空を見てはもどかしさを感じてばかりいる。

先日も雪で壊れたビニールハウスの立て直しに取り掛かったのだが、天気予報が見事に外れて作業が何度も中断。半日で終わるつもりの作業が丸一日かかっても完了できなかった。

とはいえ、空をにらんでみてもどうにもならない。こんなとき思い出すのが「湖山長者」という昔話だ。

もともと、お隣の鳥取県に伝わる民話なので、子供の頃「山陰の民話」とかいうような本で読んで覚えていたのかもしれない。詳しくは下記リンクで読んでもらいたいのだが、一言で言えば、「自然は思い通りにはならないし、自然に対して傲慢になるとひどいしっぺ返しを食う」という戒めである。きっと全国各地にも似たような民話があるのだろう。

子供の頃に読んだ民話なんてほとんど覚えていないのに、なぜこの話を覚えているのかがそもそも不思議だ。

しかも、今になってこの教訓をいつも実感させられている・・・。

もうひとつ、よく覚えている話が、長者の娘の婿えらびに、山盛りの豆ご飯を食べさせるというお話。これは豆ご飯を食べる描写がとても美味しそうだったというだけなので、タイトルも覚えていないのだが・・・。

こちらもネットで探してみたが、それらしいものは見つからない。似たような内容の話は全国各地にあるようだけど。

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さすがに気になったので、図書館で探してきた。新版になってはいたが、表紙も内容も、挿絵も昔のまま。とても懐かしかった。

島根の昔話

それにしても記憶は曖昧なものだ。豆ご飯ではなく粟(あわ)のご飯だった。でも、いま読んでもやっぱり美味しそうに思えたのが妙におかしかった。

難題むこ
石見の民話だそうだ

「湖山長者」

http://www.city.tottori.lg.jp/koyamaike/kg-1/kg-4/kg4-3/kg-4-3-koyamatyoujya.html

【民話】湖山長者

http://www.pref.tottori.lg.jp/29282.htm

越冬それぞれ

3月も、あっという間に半ばを過ぎ、お彼岸となった。

さすがに春の陽がさす日も多くなり、ようやくハーブたちにも成長の兆しが見えるようになってきた。

これから一気に気温が上がると春の作業も急増していくが、忘れないうちにこの冬の被害状況をまとめておきたい。

この冬はその前の冬に比べると気温の低下はそれほどでもなかったが、とにかく2度にわたる大雪による被害が顕著だった。

特に、例年は枝が曲がる程度で済んでいたようなハーブたちの枝折れが目についた。

ローズマリー
かなり下の太い枝から折れたローズマリー

ローズマリーも太い枝が折れた株が多かったし、ラベンダー類も雪に上から押しつぶされて割れてしまう株が続出した。

ラベンダー
ラベンダー、今年は花が咲いてもちょっと見栄えが悪そうだ

かなり根元の辺りから裂けたり折れているので元のような形に直すのはかなり困難を伴いそうだ。少なくとも数年というスパンで考えておいたほうが良いだろう。

チェリーセイジ

チェリーセイジも昨年伸びた枝の大半が折れてしまったが、剪定しないと大きくなりすぎるのでちょうど良い。すこし整えるぐらいで済みそうだ。

レモンヴァーベナ

昨年寒さで傷んだレモンヴァーベナ、今年は早めから風よけをしておいたので恐らく大丈夫だろう。昨年よりはすこし早く芽が出てくるかもしれない。

ティートゥリー

ティートゥリーも雪で枝がかなり折れた。だが、葉の傷みはむしろ少ない感じだ。

カルドン
雪に対して意外な強さを見せたカルドン、直径は2メートルぐらいある

案外被害が少なかったのがカルドン。冬前の時点で相当大株になっていたし、 一時はこの上に40センチ以上は積もっていたはずだ。枝もろともペシャンコになっているだろうと思っていたのに、雪が徐々に溶けて姿を表すと、所々の葉が途中で折れているぐらい。大雪が降ったあととは思えないぐらいだ。

レッドベルガモット
土の下に隠れて冬を過ごすレッドベルガモット

もちろん、地面にへばりついて冬を越すような種類はほとんど問題がない。すでに秋の時点で地上部がほぼなくなったレッドベルガモット。元気に小さな新芽をたくさん出し始めている。

ボリジ
周りの草が枯れると姿を表すボリジ

土手の斜面に零れ種で生えたボリジも春の日差しをすこしでも集めようと葉を思い切り伸ばしている。

柳

また、今年の冬の雪の被害を微塵も感じさせなかったのが、法面の土止めとして植えていた柳。大雪もなんのその。柔らかい枝は全く影響もなくすでに柔らかな新芽を伸ばし始めていた。

柳の新芽
柳の新芽

人生でも、ハードな局面に強硬に立ち向かっていくよりは、しなやかに上手に避けていくほうが乗り越えやすかったりするもんなぁ。としみじみ思わせる冬の終わりだった。

小さな災いと小さな喜び

昨日、今日と雪が舞う松江。気温も低く、ときには吹雪いたりして、3月とは思えない。

しかもちょうど昨日は高校入試。大学センター試験の日も大雪に見舞われたが、受験生にとっては苦難の年のようだ。

さて、年をとって好きになった言葉に、「禍福はあざなえる縄の如し」がある。ようやくこの言葉がわかってくる年になってきたのかもしれない。

悪いことがあっても、かならずまたその代わりのように良いことが起こるし、良いことが起こったからといって浮かれていると足元をすくわれる。本当にその通りだと思う。

また、そういう気持ちで日々を過ごすことが大事なのだろう。悪いことがあってしょげてばかりいては目の前にやってきた幸せも見逃すかもしれない。また、謙虚さと慎重さをいつも持っていなければ思いもかけないトラブルに巻き込まれることもあるものだ。

先日、お客様に発送した荷物が転倒事故にあった。

幸い代品もすぐ発送できたが、転倒にあった荷物は、後日返送されてくる。いつものことだが、中身を見て確認するのは結構いやなものだ。めったにないこととはいえ、ひどい時にはどれがどの種類かもよくわからないぐらいグシャグシャになっていたり、根から土がほとんど落ちてしまっていることもある。倒れた上に、発送先と発送元を一往復するのだ。ダメージが少ないわけがない。

かといって処分するわけにもいかず、植え直したり、一年草などは畑に植えてその後の生涯を全うすることになる。自家用のバジルやコリアンダーなどはこういう返送苗で育てることも結構ある。

荷物事故

箱を開けてみたら、今回の場合は配送途中で箱が倒れてしまった程度の被害だった。それでも普通の商品とは違い、底板との固定が外れると苗の傷みは大きい。土が半分ぐらいなくなっているものもあったり、他の苗が上に乗ったために枝が幾つか折れ、根もあらわになっている株もあった。

荷物事故

一つは相当ダメージが大きかったが、多くは剪定して植えなおして数ヶ月すればまたよい調子になりそうだ。親木が古くなっている種類もあるので、親木用にそだてるのもよいかもしれない。災いはそれほど大きくなくて済んだようだ。

このような小さな災いがあったが、ことわざ通り、小さな喜びもやってきた。

ちょうど同じ頃に商品をお送りしたひとりのお客様から商品の到着について丁寧なメールをいただいたのだが、一枚の写真が添付されていた。

アップルゼラニウム大きくて見事なアップルゼラニウムの鉢植え。その隣に今回お送りしたまだちいさなアップルゼラニウム。

メッセージによると、なんと大きな株は12年前に当店からお買い上げ頂いた苗だという。

12年というとゼラニウムでも結構老化して見た目が悪くなりやすい。それがこんなに若々しい姿で、形も美しく育っている。毎年丁寧に剪定や植え替えをしていただいていることがはっきりと伝わってくる。

このような方に育てられて幸せなゼラニウムだと思うし、苗を育てた我々にとっても幸せこの上ないお知らせだった。この写真を思い出すだけでしばらくは気分良く過ごせそうだ。

「禍福はあざなえる縄の如し」。今年、悪天候の中で頑張った受験生にも幸せな春がきっと来るだろうし、転倒して辛い目にあった苗たちも必ず報われる日が来ると思う。

寒さと梅の花

店の裏手には、紅白の梅の樹がある。出入り口とはちょうど反対になることもあり、普段どちらかといえばあまり足を運ばない場所だ。

だが、幹線道路に面していて、すぐ横にバス停がある。珍しく手入れをしていたりすると、バスを待っているご老人から、

「いつも綺麗に咲きますね、先に紅梅が咲いて、それから白が咲くでしょう?」

redplum

と声をかけられたりする。日々バスを利用している方々のほうがはるかに良くご存知だ。

それでも、車で脇を通るとき、花が咲いているのを見ると近づく春を感じられてやはり嬉しい。

例年、1月には紅梅が咲き出し、紅梅が終わる頃、バトンタッチするように白梅が咲き始める。

毎年若干の前後はあっても、だいたい同じようなパターンで咲いていたのだが、ここ2年ほどは妙にリズムを崩しているようだ。

まず、一昨年は12月の終わりには紅梅が咲き出した。しかし、その後の寒さで、白梅は全く咲く気配がなく、寒さのために紅梅が延々と咲き続け、3月に入る頃になって白梅が咲くまで、3ヶ月近く紅梅が頑張っていた。

whiteplum一方今年は1月から大雪が続いたせいもあるのか、赤も白も立春になっても全く咲く気配を見せず、3月に入ってから揃って咲きだす始末。今の所、むしろ白梅のほうが先行しているぐらいだ。

ハーブも含め、花が咲く時期は暑さや寒さ、日長などそれぞれ要因がある。梅の場合はなにが引き金になるのか詳しくは知らないが、近年の滅茶苦茶な天候にかき回されているようにも見える。「ここの梅が咲くと3月だな・・・」なんて言えるのも毎年穏やかで安定した天気のリズムがあってこそだろう。

さて、特に意図的に植えたわけではないが、すぐ隣にはマヌカを植えている。ごく近い種類はギョリュウバイ(檉柳梅、御柳梅、魚柳梅)と言われているぐらいで、梅によく似た花を咲かせる。

マヌカ
例年6月ごろ開花するマヌカの花。さて今年は?

こちらは今年の大雪と寒さで葉が結構傷んでしまったが、そろそろ新芽が伸び始めてきたようだ。

manuka
ところどころ枯れているが、なんとか冬を越したマヌカ

寒さの影響で花が咲くかどうかが問題だが、咲いたとしてもとんでもない時期に咲くのではないかと心配半分、興味半分である。

竹を使う理由

行く、逃げるの1,2月が終わり、いよいよ3月。「あっという間に去ってしまった・・・」とならないように気合が入る。

植物の成長が鈍る冬は他の季節に比べるとどうしてもできる仕事が限られてくる。そこでビニールハウスの改修、補修、作業環境の改良などを集中して行っているが、この作業ももうすこしで終わりを迎える。

例年のように行うのが、育苗時に苗を並べるための竹の棚の改修である。

ベンチ作り

育苗のために腰の高さぐらいまでに上げた台は育苗ベンチと呼ばれ、普通はネット状になった薄い網状の金属(エキスパンドメタルというんだそうな)を広げてその上に苗のケースを並べることが多い。当店にも、譲ってもらったエキスパンドメタルがいくつかある。

エキスパンドメタル
当時憧れだったエキスパンドメタル

この仕事を始めた当初は大規模に栽培しておられる農家が大抵このエキスパンドメタルを使っているのを見てすこし憧れだったこともある。

お金もなかった当時は地面に杭を立て、その上に桁を渡し、その上に木製のパレットを乗せて長い台を作っていた。水はけは問題ないし、パレットは近くの運送業者でいくらでももらえるような時代だった。

ただ、使い古したパレットに始終水をかけることで案外腐ってしまうのが速く、処分も結構大変だった。また、そのうちパレットがプラスチックのリユース品になり、譲ってもらえなくなった。この時点でエキスパンドメタルに変えてしまうことができたら今頃全てがエキスパンドメタルの台になっていたのかもしれないが、残念ながら当時はそんな余裕もなかったのだ。

また、エキスパンドメタルは実際に使ってみると端の部分が引っかかるし、夏は結構暑くなる。しかも丈夫な分、加工が難しい。ちょっとサイズを変えようとしても一苦労だ。そのうえ処分となると外部に頼まなければ手に負えない。

安価で手に入りやすく、加工がしやすく、片付けも楽、となったら必然的に竹が候補に上がってきた。

安価で手に入りやすいということでは、ハウスの目の前に竹林があるし、親戚にも放置された竹林がある。そのうえスタッフの家にも竹林がある・・・といった感じ。竹を切るのはそれなりに重労働なのでむしろ切ってもらえると喜ばれるぐらいで、気持ちほどのお礼で済むことが多い。

いつも竹を切り出す竹林

もちろん、加工はこの上もなくしやすい。よく切れるノコギリとナタさえあれば十分である。

ナタと竹

それなのに耐久性は相当高い。

跳ね上げ式の台
跳ね上げ式の台

開け閉めが出来て通路のように使える部分もこのとおり、簡単に作れる。通路幅がすこし広くとりたい場所も、ノコギリ一つでハイ、出来上がり。エキスパンドメタルではこうはいかないだろう。

それでも何年も使っていると所々が折れたり腐ってくるので取り替えが必要だ。取り替えた竹は最後は燃料となり、作業場のストーブで主に焚き付けとなり使命を終える。更に言えば残った灰も畑に撒かれて植物を育てる。極めて気持ちの良い素材だ。

交換した竹
古くなって交換した竹
竹の最後
最後は燃料として

竹を使うメリットとして抗菌作用が・・・とも言われるが、とりあえず育苗においてはそれほど違いは感じないので、この点でのメリットはほとんどないようだ。ハーブ自体の抗菌作用がまさっているのかもしれない。

加工する手間なども考えるとコスト的にはむしろエキスパンドメタルに軍配があがるのだろうが、竹を切ったり割ったりも冬の良いエクササイズのつもりで行っている。

竹切りがしんどくなるまでしばらくはこの素材と付き合っていくことになりそうだ。