裏のナチュラルガーデン

ビニールハウス裏の荒地は、普段は雑草がただただ伸び続けている。荒地とはいえ持ち主さんも年に2~3度草刈りをされているので、それほど気になる場所でもないが。

ただ、秋のこのシーズンだけは少し違う。

お盆ごろの草刈りで短くなった雑草たちがそれぞれに伸び、一斉に花をつける。

手前にはサクラタデの薄いピンク。その後ろにはミゾソバの鮮やかなピンクが広がる。このふたつは、高さも揃ってとても見事。

その横には適度な高さのセイタカアワダチソウがイエローの花穂を伸ばす。

奥と手前の方には目にも鮮やかなカンナの赤。特徴的な大きな葉もまたいいコントラストとなっている。

写真では見えにくいが、真ん中付近にはムラサキシキブが実をつけ、紫色のアクセントだ。セイタカアワダチソウの中からぴょこんと顔を出しているススキの穂もまた秋らしさを演出している。

実際このようなガーデンを人為的に作れるだろうか(この場所も、夏の草刈りという人為的な作業は行われているのだが)と毎年のように思う。

手を入れてしまうと、かえってうまくいかなさそうなナチュラルガーデン。放置されたままの姿を楽しむのがベストなのだろう。

蕎麦のエネルギー

仕事場へ行く道の脇には蕎麦の畑がある。今年も8月の終わりに一斉に小さな芽吹きが見られたかと思ったら、いつの間にか大きく育ち、少し前から白い花が咲き始めた。厳しすぎる残暑だったのに、あまりそれを感じさせない成長、さすがに救荒作物とされるだけはある。

当店の育苗用土にも、水捌け促進その他のために蕎麦殻を入れているが、蕎麦が育ちやすいシーズンだからだろうか、いろいろなところから蕎麦が芽を出している。

中には、販売用の袋に詰めた中の土から発芽するエネルギッシュな芽もあるほどだ。

この蕎麦殻、専門の製粉会社から仕入れているので、相当しっかり脱穀されているはずなのだが、それでも発芽ゼロではない。

昔、石臼引きの蕎麦殻を使った事があるが、もうそれはそれは、ハーブを育てているか蕎麦を育てているかわからないほど発芽して困ったほどだ。

また、もっと昔、もみがらも土に入れていたこともあったが、たとえ春であってもイネの発芽は一度も見た事がなかった。発芽条件の違いか、脱穀の精度もあるのだろう。でも、蕎麦の中に貯められたエネルギーを感じざるを得ない。

堂々たる貧乏

毎年のように、お客様から「おじいさんがススキと間違えてレモングラスを刈ってしまった」という声を聴く。

草刈機でバッサリ刈っても、株が残っていたらまたすぐに伸びてくるからあまり心配はいらない。でも、本格的に掘り上げてしまったりするとお手上げだ。

我々はさすがに間違えてというのはあまりないとはいえ、暑さの中、ハードな時期の草刈りでウッカリと親木を切ってしまうことは珍しくない。

その防止のために、支柱を立てて予防をしている。今日ふとみたら、支柱の一つに植えた覚えのないツルが巻き付いていた。

ヤブガラシである。ビンボウカズラとも言われるのだが、こちらの名前の方がピンとくる。貧乏暇なしとも言われるように、暇がなくて草取りができないとこの雑草が繁茂するという由来は、ただただ頷かざるを得ない。

毎日のようにこの前を通っているのに気が付かなかったのだが、いつの間に伸びたのだろう。あらためてツルの成長の勢いには驚かされる。

あまりに堂々としているので、知らない人が見たらこっちを植えていると思われるに違いない。

もうちょっと草取りしろよ・・・という感じだが。それにしてもヤブガラシの巻きひげの丁寧なこと。

支柱を立てた本来の対象は下で草に埋もれていたカルドンだ。ヤブガラシ、根もすごく強いので、厄介。カルドンを移動させるか・・・せっかく根付いて大きくなり始めたのにそっちも気が進まないのだが・・・。

たった一球から

ニュースなどでも盛んに耳にするが、さすがの彼岸花も今年は開花が遅れたようだ。

当店の畑でも、10月に入ってから一気に咲き始め、いままでの遅れを急いで取り戻すかのようだ。

また、今年は、いままでになかった場所にも一輪の花が咲いていた。ビニールハウスの北側、奥にはレモングラスなどもあるが普段は特に何も植えたりしない、草刈りばかりしているような空き地だ。

もちろん、こんなところに植えた覚えはないので、なにかの土に混ざって球根が落ちたのだろう。

東側の道沿いに今は群生している彼岸花も、特に植えたものではなく、いつの間にか徐々に増えていき、これほどの株にまで成長した。これも最初は1球だったのかもしれない。

彼岸花を掘った事がある人ならわかるだろうが、その球根たるや、ギッチギチにおしくらまんじゅうのごとく固まっている。とてもこの間に何か入ってくるような余裕はないから、球だけ増やせば、場所取りは分けないだろう。畔の土壌流出防止に使われていたというのも頷ける。

この一球だけの彼岸花も放っておけば徐々に増えるのは間違いない。さて、今のうちに移しておくべきか、そのままにしておくべきか。花が終わったら入れ替わりで特徴のある葉が出てくるからそれからでも遅くはないが・・・。

このパワーを

秋の初め、ふと甘い香りが漂ってきて、思わず何だろうかと探し、正体がわかってちょっとがっかり。それがクズの花だ。

ぶどうを思わせるような良い香りだし、花も結構大きいのだが、毎年この草には泣かされている。

地方の高速道路を通ると法面などが一面覆われているが、このパワーには驚かされる。圃場の前の山でも、20メートルぐらいの高さだろうか、木に巻きついて伸びているのをみるとびっくりする。

下からずっと伸びているのだろうか・・・根元が見てみたいが。

また、普段から隣の荒地からもいつも侵入の隙を狙っているのも葛である。数年前だっただろうか、畑の隅に根を下ろしたようで、掘り出そうとしたらとんでもない大きさの塊根に苦労させられた。真冬だったのに大汗をかいてようやく掘り上げた。

押し寄せるクズ

そう言った経験もあるので、荒地からの侵入をさせないよう、こまめに草刈りに励んでいる。

それにしても、毎年とんでもない勢いで伸びるこの力に苦労させられるたび、何かに利用できないだろうかと思う。

上手にコントロールさえできれば、日陰を作るのはたやすそうだ。だが、自分のビニールハウスで試す勇気はない。高速道路の法面に広がっているのも、コンクリート剥き出しよりは熱を抑える意味ではずいぶん役に立っているのではないだろうか。

先日川沿いを歩いていたら、頭上の方から「わーん」と唸るような音がするので見てみたらクズの花にミツバチが群れていた。蜜源にもなるのだろうか。ネットで少し調べたが、なるようなならないような、はっきりとはわからなかった。少なくとも、別の日に見た花には昆虫は訪れていなかった。

また、その名の通り、葛根としても知られているが、掘り出す労力は大変そうだ。ツルの強靭さは工芸にも使われるようだが、普段でも何かに使えないだろうか。

などなど、いろいろ利用方はありそうだし、それ以上に、このとんでもないスピードで伸びるパワー自体を活用できれば・・・と毎年のように考えるのだが暑さにやられてボーッとした頭では何も浮かんでこないのが残念至極だ。