なにかの拍子

年末の大掃除、途中までは順調にいっていた。このままいい感じで終わるだろうと思っていた。

ところが例に漏れずなにかの拍子で本来の掃除から離れてしまうものだ。

なにかの拍子、今回は種子を分類していた小箱だった。

箱に入り切れないぐらい種子の小袋が乱雑に押し込まれていたのがどうも気になり、入れ直したのがいけなかった。

相当昔の日付の袋もある。冷蔵庫内とはいえ、密閉も適当、発芽率も落ちているだろうし、そろそろ処分すべきと思いつつも捨てられない。

服とか、本とかならば結構大胆に処分できるのだが、種子はなぜか処分のハードルがとても高い。

「いっそ発芽しないならば思い切れるかも・・・」

と、さしあたり二つほど袋を引っ張り出して圃場へ持って行き、適当に撒いてみた。

ひとつは三年半ほど前のローマンカモミール。もう一つは、2018年のフィバーフュー。

もしかしたら忘れた頃、春にでも奇跡的に生き残った種子が発芽するかも・・・という程度の気持ちだったのだが、今朝鉢の表面に緑のものが見えて驚いた。

ローマンカモミール
ローマンカモミール

ローマンカモミールは一斉に発芽しているし、フィバーフューもちらほら。どちらもまだこれから更に芽が出てきそうだ。

フィバーフュー
フィバーフュー

どちらもとても小さな粉のような種子なのだが、改めて種子の持つ生命力に驚く。

しかし、ローマンカモミールは普段株分で増やすことが多いし(その方が速い)。フィバーフューはもうこの冬の分はおおよそ間に合っている。

場所も確保しないといけないし、発芽したからには長期間放っておくわけにもいかない。

あの小箱さえ目に入らなかったら・・・と年明けに思ってももう遅いのである。

この冬の苗たち(その3)

前回、前々回と、比較的寒さに強いハーブの仲間の今年の様子を紹介してきた。

今回は、主に寒さに弱い種類について。今年、以前に比べ変化が大きかったのは特にこれらの種類だろう。

寒さに弱い種類ほど、寒さへの備えをする力がないのだろう。耐えられるギリギリの寒さまで平気な顔をしているのに、ある一線を越えるとぱたっと枯れてしまったり、葉が真っ黒になってダメになってしまいやすい。もちろん、それ相応の対策はしているのだが、数年前だったか、マイナス9度になった時はそれでもかなりダメージが大きかった。それが今年は鼻歌交じりで冬を越しているような感じだ。

ローズゼラニウム
ローズゼラニウムも縁が少し赤く色づく程度

ローズゼラニウムをはじめ、ニオイゼラニウムのなかまは、冬にはもっと赤くなることが多いが、せいぜい縁取りぐらい、グリーンが綺麗だ。

ジャスミン
ジャスミン。普段とあまり変わらない姿。少しだけ赤っぽく変化

ジャスミンも青々としている。この辺りでは寒さで枯れることはあまりないのだが、葉が真っ赤になったり、場合によっては落葉するのがいつもの年。

サルビア・ディスコロール
サルビア・ディスコロールの新芽も傷んでいない

サルビア・ディスコロールも秋から冬に花が咲くくせに、寒さでぱたっと枯れやすい種類の一つ。今年は秋終わりのような姿で冬を越している。

ホワイトヘリオトロープ
ホワイトヘリオトロープの苗は花を咲かせていた

ヘリオトロープも葉がかなり残って、一部の株は、花まで咲かせて甘い香りを放っていた。

ヘリオトロープ
油断していて被害にあったヘリオトロープ

とはいえ、先日の雪の日、最低気温がマイナス4度まで下がったが、あまり防寒を強くしていない所に置いてあった株はこのとき茶色くなってしまった。この後黒くなってしまうのだろう。

また、もともと寒さに強い種類でも、例年よりものびのびと育っているものも結構ある。

フィバーフュー
青々としたフィバーフュー

キク科のフィバーフューなどは普段の年はもっと縮こまっているのだが、今年は青々。カモミールの仲間やジョチュウギクも同様である。

ローマンカモミール
ローマンカモミールもいつもの年よりも葉を広げている
イタリアンパセリ
昨年の大きな葉は落ちてしまったが、元気なイタリアンパセリ

涼しいのが好きなセリ科の仲間は当然元気。イタリアンパセリもまだ葉を残しているし、コリアンダーも少し葉は赤くなったが大きなダメージはない様子。

コリアンダー
コリアンダー

ディルも普段の年は茎も葉も赤っぽくというか、グレーがかったブラウンのような色になるのだが、今年はまだグリーンが残っている。

苗ではないのだが、この冬例年と大きく違ったことの一つが、店頭の軒下にある鉢植えのナスタチウム。普段の年ならば夏越しした株が秋半ばから咲き出して、クリスマスぐらいまでカラフルな花を楽しませてくれる。そしてクリスマス頃に寒さで溶けるようになくなってしまうのだが、今年は依然として咲き続けている。

ナスタチウム
鉢植えで気をつけていたとはいえ、この時期まで花を咲かせているナスタチウム

もちろん、先日の雪の時には店内に入れたので大きなダメージはなく、また外に出している。このまま強い風や霜に当てなければ春まで持つのでは・・・。という感じだ。案外気を抜いた春先にダメにしてしまうという可能性も強いのだが。

肩こりの原因

台風が通り過ぎた今日はさすがに気温が低め。ビニールハウスの周りを赤とんぼが涼しそうに乱舞していた。きっとまた気温が上がったら涼しい山の方へ上がっていくのだろう。山から下りてきて再び会えるのは秋になってから。今から待ち遠しい。

気温が急に上がった先週後半から昨日あたりは、昆虫たちの勢いも目に見えて活発だった。アリや蝶、蜂などはもちろん、いろいろな昆虫たちが急に動き始めた感じだ。

ヒラタアブ

今日もヒラタアブの成虫が盛んにホバリングしたり、葉にとまってお尻を振ったりしていた。蜜を探しているのか、それとも幼虫のためにアブラムシがたくさんいそうな産卵場所を探しているのか・・・。

ただ、中にはあまり急に動かないでいただきたい種類もいる。一つはコガネムシの幼虫。成虫が上手に育苗ポットの中に潜り込んで産卵。孵化して、ある程度大きくなってくると土がふわふわになってくるのでわかる。その頃にはずいぶん根もたべられてしまっている。大抵1ポットに4、5匹産んでいるので、きちんと全部取り除くのが難しい。小さいうちだと全て見つけきれないし、大きくなってからでは、根が食い荒らされて苗が復活できない事も多い。

ただ、コガネムシの幼虫の場合は、大抵苗を発売したり、発送する前に発見できるのでそういう意味ではまだ良い。

問題は・・・。

ローマンカモミール
ローマンカモミールの食害

さあ、梱包をはじめようと苗を取り出したら、ローマンカモミールの葉が丸坊主。昨日準備した苗なので一晩でこんなに食べるのはその名も夜盗虫(ヨトウムシ)の仕業に違いない。ナメクジも疑われるかもしれないが、特徴的な光る粘液が残っていない。表面の土が掘られたようにサクサクしているのも動かぬ証拠だ。

このままでは発送するわけにいかず、この被害だけのために新しい苗を再度圃場にとりにいく羽目になった。

スイートマジョラム
スイートマジョラム。見事に葉が食われている

この写真はスイートマジョラムだが、朝、「あれ、まだこんなに小さかったっけ」と違和感を感じてよく見ると葉が食い荒らされている。株元をよく見てみるとなんだか柔らかそう。株元の様子はコガネムシの幼虫被害にも似ているが、彼らは葉をかじったりはしない。

夜盗虫の被害
株元がふわふわに

そっと周りを掘ってみると、

夜盗虫
まだそれほど大きくない

いらっしゃいました。夜中じゅう大宴会をして満腹で朝帰り、土の中にもぐって丸まってお休み中のようだ。

それでも、コガネムシと違って早く見つければ、また苗は育つ。少し早めに剪定したと思えばいいのだ。

それに、ほぼ単独行動である点も潔くていい。卵は固まって産み付けられるのだがその後は一人で生きているようすなので、健気さも感じられる。

もちろん、こんな大食いが集団でやってこられてはひとたまりもないので勘弁してもらいたい。

また、、今年も1件あったが、苗にそのままついてお客様のところまで行ってしまう事が稀にあるので、発送時には注意が必要だ。

ここしばらく、バジルなど、柔らかくて美味しい葉のハーブの発送が多いので発送担当は目を凝らしている。肩が痛いと言っていたのも、そのせいかもしれない・・・。

涼しさのおかげ

ここ2,3年、夏の暑さで今までに無いダメージを受けるハーブたちがお客様の庭で目立ってきた。

今日訪れたお庭も、ダブルフラワーカモミールが広がるすてきなお庭なのだが、今年夏の終わりはひどかった。どうやら単に暑さだけでなく、蒸れのためもあったのだろうと思われるが、葉が茶色になって落ちてしまい、茎だけが無惨に残っていた。

ああ、これでダウンかとある程度覚悟していたところ、久しぶりに来てみると思ったより順調に回復。夏前の状態に戻っていた。どうやらここしばらくの安定した秋の気候によるようだ。

ダブルフラワーカモミール

少なくとも、現時点で良いコンディションなので、冬から春は安心してみていられそうだ。毎年ダウンするようでは代替品も考えなければならないところ。胸を撫で下ろしている。

イメージの善し悪し

コガネムシの幼虫には毎年のように苦い思いをさせられている。親木のラベンダーの根が食害されてダウンしてしまうことはしょっちゅうだし、お客様の庭のローマンカモミールが一区画あっという間にダウンしてしまったこともあった。店先で広がりかけていたカーペットグラスも昨年、相当かじられてしまい、さすがのカーペットグラスも一時瀕死の状態になってしまった。

なので、「コガネムシ」と聞くと悪いイメージが思い浮かんでしまう。けれど「カナブン」という名前には子供の頃の夏が思い出され、なんとなくほのぼのとした気分になってくる。憧れのカブトムシを探して歩いた雑木林。カブトムシはいつも見つからず、枝にしがみついているのはいつもカナブンだった。それでも、「カナブンがいるなら、きっとこの木にはカブトムシもやって来る」と、毎回胸をわくわくさせて向かったものだ。いつも空振りだったけど。

カナブン

このカナブンは、圃場の横のギンヨウボダイジュにしがみついていた。樹液を探してやって来たのだろうか。でも、スズメバチと間違えるような大きな羽音でびっくりさせたり、ハーブの株元に産卵するのは勘弁願いたい。