気の長い話

ハーブをふやすには色々な方法がある。種まき、株分け、挿し木などが良く知られているが、どのハーブをどの方法でふやすかはとても大事だ。

挿し木でつきにくいものを一生懸命挿し木しても徒労に終わりやすい。ローズマリーは、種を蒔いて育てることもできるが、普通、挿し木の方が、完成まではずいぶん速い。タイムも、種を蒔いて何百本と発芽したら、普通の人なら途方に暮れてしまうだろう。

雄雌の区別が必要なものは、普通、区別がついた株を挿し木などで増やすのが一般的だ。種子で蒔いていたら、花が咲いたり、実ができるまで雄雌が分からないことも多い。

なのに、昨秋、蒔いてみたのがジュニパーの種子。ずいぶん昔、いちど種を蒔いたことがあったが、そのときは全く発芽しなかった。そもそも、手元に雄雌の分かった株がある。増やしたいのなら、それを元に挿し木をすれば良いのである。

それをいまさらなぜ種子で・・・といったところだが、種子から育てると一体どれぐらいかかるか知りたいというのが本音である。ついでに、以前種を蒔いて一つも芽が出なかったことへのリベンジだ。

ダメ元で、今回は砂に蒔いてみた。もちろん、種子の質も関係していたかもしれないが、気温の上昇とともに一斉に発芽を始めた。発芽してみると、まさかこんなに芽が出るとは思わなかったので、ちょっと慌ててしまった。当然雄雌も分からないので、苗のサイズまで成長しても販売するわけにはいかない。ま、全部が全部うまく育つわけはないのだが・・・。

ジュニパー

さて、これから育苗して(しかも、成長がゆっくりだ。挿し木でも結構かかる)、定植して、大きく育って、開花、結実するまでどれぐらいの月日が必要なのだろう。そもそも、実が熟すまで数年を要するという。スローモーな植物なのだ。こちらもあせらずに気長に待つ必要がありそうだ。

気が長いと言えば、ずっと前のことだが、植物を育て始めるようになってしばらくした頃、親に、
「あんたは性格が変わったねぇ」
と言われたことがある。自分ではいまだにそんな風には思わないのだが、それまではもっと気が短かったとか。

今後もずっと植物を育て続けるなら、ますます気が長くなっていくのかもしれない。でも、いくら気が長くなったとしても、生きているうちにこれらの株の雄雌が分かるかどうかは別の話。
「じいさんは、『この木が雄か雌か分かるまでは死ねん!』と言ってたのに、先に逝っちゃったねぇ・・・」
なんて言われる日のほうが早いかもしれない。

 

ジュニパー

花粉の季節

栽培しているハーブは草本のものが主体である。木本もそれなりにあるとはいえ、大きくなる樹木となるとかなり少なくなる。

特に針葉樹系はほんの僅かだ。もともと広葉樹の方が好みということもある。その数少ないジュニパーが花粉を盛大にまき散らしているとスタッフが教えてくれた。
ジュニパー
様子を見に行って見ると、なるほど、風が吹いて枝が揺れるとパッと花粉が飛び散る。花粉症持ちの方にとってはおぞましい光景かも知れない(ゴメンナサイ)。自分は今のところ花粉症は発症していないとは言え、さすがにこの光景を見ると鼻の奥がむずむずしてきた。

上手に受粉すれば果実まで楽しむこともできるかもしれない。でも、熟すには一年以上かかるといわれるジュニパーの実、さて、それまで待てるかどうか。

(ちなみに上の写真、そう都合よく風は吹いてくれないので手で揺らして撮影。それでもタイミングを合わせるのは困難だった。)