この冬の苗たち

とても穏やかな1月が終わった。雪かきを一度もせずに過ぎた1月というのはあまり記憶にない。そのためか、1月がとても長かったという声を何度か聞いた。

天気が冬の山陰とは思えないような穏やかな日差しだったり、降っても雨。みぞれもごくわずか。雪が降っても1日のうちに一瞬降る程度だった。

ところが、立春を過ぎ、ようやく冬の山陰らしい天気になった。激しくはないものの雪が降ってはやみ、みぞれ混じりだったり。もちろん、積もるには至らない。

こういう冬なので、普段とはハーブの苗たちの様子もずいぶん違っていて驚かされる。ただ、そんな状態の苗でも、初めてみる人にとってはびっくりするような姿だったりするようなので、いくつか紹介してみたいと思う。

まずはミントの仲間。ミントは種類によって冬に完全に地上部をなくすものもあれば、案外葉が残るもの、土の表面ギリギリに小さい葉を残すものなど様々だ。

日本ハッカ
日本ハッカを始め、ミントは地上部がなくなるものも多い

日本ハッカの仲間は、完全に地上部が枯れる。これでも、秋までは青々としていたのだ。他にもレモンミントやバナナミント、ジンジャーミントなどが同様に葉がなくなる。ところがポットを外すと、中でフレッシュな地下茎がびっしりと伸びていてびっくりさせられる。

アップルミント
比較的葉が残りやすいアップルミント

一方、アップルミントは葉を少し多めに残して冬をこす。例年はそれでももっと葉が赤っぽくなったり、伸びた上の方の葉が枯れたりするのだが、今年はとても青々としている。まるで3月ぐらいの様子だ。

オレンジミント
オレンジミント。葉が真っ赤〜黒っぽくなって冬をこす

その中間が、写真のオレンジミントなど。他にもブラックペパーミントやオーデコロンミントなどが同じように地面ギリギリのところに葉っぱを残して春を待つ。どの葉も赤黒っぽく変色することが多い。

寒さに強いものは、かえってさっさと葉を落として地下でぬくぬくと春を待つ傾向が強い感じだ。コンフリーもそうだし、ルバーブなどはかなり深いところで芽を硬くして冬を過ごしている。

コンフリー
コンフリー。ちょっとだけ芽が出ている

植える時期としても極端な寒冷地でない限りおすすめなのだが、地上部がないと不安になるのももっともだ。とはいえ、下の写真のように、地植えで大株になったコンフリーも冬は葉が完全に枯れる。

地植えのコンフリー

レディスマントルは、夏の暑さに弱く、涼しいのが好きとはいえ、やはり大きな葉を広げておくのは負担なようで、夏までの葉は枯れて株元の小さな芽だけが青々としている。

レディスマントル。根はびっしり張っていても地上部はこれだけ

まだ今年は残っている方なのだが。同様にストロベリーも、大きな葉は枯れてしまって小さい葉だけになって冬をこす。

ストロベリー
ストロベリーの苗

ホップも同様。秋早いうちにさっさと葉を落としてしまって古いツルが残る。

ホップ
ホップは早ければ冬の初めには株元に新芽が見え始める

残念ながらこのツルからは春になっても葉が出てこない。株元のぎゅっと詰まった新芽が伸びてくるのを待つしかない。

まだまだ紹介したいものはたくさんあるのだが、とりあえず今日のところはここまで。これでも例年に比べると暖かいんだなあと実感させられるのだ。

ガーデニング日和

冬を前にして、畑の手入れに時間を使う日が多くなってきた。

ガーデニングシーズンというなら、気持ちの良い天気が続く10月や、4月から5月を思い浮かべるところだが、あいにくその時期は本業が忙しくて紺屋の白袴状態。自分のところの畑などいくら手入れしたくてもできるものではない。

なので、秋の作業が一旦落ち着いたこの時期は自分にとっての貴重なガーデニングシーズンだったりする。それに、この時期だとクワやスコップを振り回すような作業をしても汗だくになることもなく、ちょうどいいエクササイズになる。今日は朝から少し冷たい風もふいているのでこの上ないコンディションだ。

昨日に続いて、今日は畑の端の開墾作業を行う。2年ぐらい前までは枝豆やサヤエンドウを植えたりしていたが、それ以降は特に何も植えることなく、植え替えをした時にでた古い土などを積んでおく場所となっていた。

畑の開墾
奥が昨日の作業。手前が今日の目標範囲

春に何か植えようと耕しかけたりもしたのだが、その後ミントが繁茂してしまって(植え替えの土に混ざっていたのだろう)、何も植えることなく2年間ほったらかし。草刈りばかりに労力をかけるもったいない場所になっていた。

そこで、この秋、再度使えるようにと再度耕し始めたのだが、2年間放っておくと耕すというよりは開墾に近い。ミントの地下茎、ギシギシ、ススキの根、スギナの地下茎など相当手強い奴らが相手だ。

秋のミント
見た目は良くても甘く見ると後で後悔する秋のミント

秋の初めに草刈りをして新たに伸びてきたミントは案外見た目もいいものだが、それに騙されていると来年の春から泣くことになる。せっかく植えたものが伸びる前にあっという間にミントに追い越されて覆われてしまう。今のうちに丁寧に地下茎ごと整理しておく必要がある。

ただ、少し前の「縦のものを横に」で書いたように、この時期はミントなどは特に横に広がろうとしているようで、根がそれほど深く張っていないし、地下茎も浅い場所にあることが多いので案外簡単に掘り上げることができる。

これが冬を越して春になったらそうはいかない。上に伸びようとするために、地下へのびる勢いも増してくるのできちんと片付けるのは一苦労だろう。

また、夏の間他の雑草にひっそりと隠れるように育っていたギシギシも冬の日差しをすこしでも浴びようと葉を広げ始めている。

ギシギシ

これも冬の間にしっかり根を張ってしまうと春に引っこ抜こうとしてもそうはいかない。今のうちなら案外すんなりと土からでてきたりする。

ギシギシ
掘り出してびっくり、このサイズの根のギシギシ。春に掘るのは大変。

昨日までは平グワで奮闘していたのだが、平グワだとミントの地下茎を細かく切ってしまいやすいし、抵抗が大きくて作業が進みにくいため、今日は自宅から三本グワを持ってきた。

三本グワ

やはり道具である。昨日の倍ぐらいの効率で作業が進む。

枯れ草を片付けていると居場所がなくなったてんとう虫が困った様子で行ったり来たり。今日は寒くてお休みしていたのかもしれない。スマンスマン。

てんとう虫

小一時間ほど奮闘したらミントの地下茎が山のように取り出せた。これが来年の春までここにあったらと思うとちょっと怖い。

ミントの地下茎

開墾作業
さて、何を植えようか

2日かけて、計2〜3時間ほどだがこれほどの場所が開墾できた。土が馴染むまでしばらく放置して、秋のうちに植えてもいいし、春まで待つのもいいかもしれない。

一応ハーブの親木を植えるつもりではいるが、早く決めなくては。植えるものが決まらなくて、「とりあえず野菜でも」となってしまう可能性も決して低くないからなぁ。

縦のものを横に

昨日から続く雨は、今朝になっても降ったりやんだり。こんな日は屋外作業は不向きだ。

挿し木など気になっている作業は幾つもあるのだが、ビニールハウスを出たり入ったりしているうちにびしょ濡れになってしまうので、むしろ集中して一つの作業を行うのが良さそうだ。

そこで、今日は伸びすぎたり、形が悪くなった苗の剪定を行うことにした。

夏の間に開花して葉が小さくなった株は強めに剪定し、新しい葉を出させるようにする。また、虫食いなどで傷んだ葉も丁寧に取り除く。

根気のいる作業なので、気温の高い夏だとすぐに集中力が途切れて他の仕事に移りたくなってくるが、少し肌寒いぐらいの今朝は最適。ビニールに落ちてくる雨音も地道な作業に集中するにはぴったりのBGMだ。

「ありゃ、これもだいぶ傷んでいるなぁ」

「おや、無いと思っていたらこんなところにあったのか!」

と、作業しながら改めて気づくことも多い。

小さな苗のハーブたちもよく見ると夏の装いから秋冬モードに変わりつつある。

「縦のものを横にもしない」という言葉があるが、ミントなど季節が変わるのを敏感に察知して縦から横へと姿を変える。しかも決して面倒臭がるようなことは無い。

暑いうちは少しでも周りよりも高く伸びるよう競うように上へ上へと伸びていたものだが、この時期は横へ横へと陣地を広げようと地下茎を伸ばし始めるのだ。

ミントから伸び始めた地下系
ミントから伸び始めた地下茎

夏とは違い、寒い時期は上に伸びても北風や雪で傷んでしまってメリットは無い。むしろ低く横に、しかも地面の下で横へ勢力を広げていく。その形で冬を過ごして、春にはまた上への成長を始めるのだ。

苗も同じで、ポットからはみ出してまで横へと地下茎を伸ばす。小さいポットなのに、時には1メートルもの地下茎が伸びていてびっくりさせられる。

生育上は特に問題無いが、種類の違うポットにまで根を張られてはかなわない。そこで、こういった地下茎も剪定しておく。

地下茎の剪定
剪定後

さらに、枝が多すぎるものは減らしたり、枝が少ないものは先端を剪定して脇芽が伸びるようにしたり。今後の成長を考えながらの剪定作業はなかなか楽しい。

そんな作業に没頭し気がつくともうお昼。雨もそろそろ小降りになりつつある。今日はとりあえずここまでだ。

午後からは午前中と同じ日とおもえないような秋空が広がった。

青空

民族大移動

心配していた割には積雪が少なかった週末の寒波。それでも10センチほどの積雪があると日当たりがあまり良くないこの場所ではしばらくは外仕事ができにくい。

仕事の選択肢が少なくなってしまうが、こんなときには、しなくても大丈夫だがしておくと後で楽になる仕事を行うのには丁度良い。

そこで、冬の間ほとんど成長しない種類の苗をより寒さが厳しいビニールハウスに移動させる作業を行った。

寒さに強い種類は、冬の間は成長を諦めて落葉したり、さらにはあっさり地上部をぜんぶ無くして冬を凌ぐ。こういう種類はむしろしっかり寒さに当ててやる方が春からグンと成長するし、少し暖かいビニールハウスにおいていてもあまりメリットはない。

なので、始終開けっ放しでほぼ外気と同じ環境のビニールハウスで春まで過ごさせるのだ。

例えば、ホップや地上部がなくなる種類のミントなどがこれにあたる。

ただ、単に移動させるだけでなくて、少し手を加える。

苗には秋に枯れた葉が残り、株元には雑草の芽やコケが生えていることも多い

まず、枯れた枝や葉を剪定して、株元の草やコケも取り除く。

株元をきれいに掃除

湿り気が多い山陰の冬は放っておくとコケばかりが良く育つのが悩みの種。そこで、コケが生えにくいように表面をそば殻くん炭で薄く覆っておく。これでコケが生えるのが相当防げる。おそらく、そば殻くん炭のアルカリ性がコケを抑制しているのではないかと考えているが、実際のところはよく分からない。もちろん、春先に生えてくる雑草対策としても有効だ。

表面に薄くそば殻クン炭を敷く

表面を覆ってしまうと、乾き具合がわかりにくくなるのが難点だが、乾きにくいこの季節だし、土の表面が覆ってあることでより乾きにくくもなるようだ。

1ケース作業完了!

1ケース処理するのに5分ぐらいはかかるが、忙しい春になって雑草やコケを取る手間を考えると決して無駄ではない。

株元にすでに小さな芽が

処理を終えたケースは極寒のビニールハウスへ大移動。

ずらりと並んで春を待つ苗たち。春には元気に芽を出してくれるだろう。

これからしばらくこの作業が続きそうだ。

葉上の手がかり

春先の代表的な害虫と言えばアブラムシ。もう少し暖かくなって、天敵が出てくればそれほど頭を悩ますことは無いが、天敵も少なく、柔らかな新芽がどんどん出てくる今の時期はアブラムシにとっては天国である。

こちらとしては、ようやく暖かくなって葉が伸び始め、安堵しているところを襲われるのだからしゃくに障る。

一気に増えるアブラムシ、とにかく早期発見が第一である。とはいえ、何千とある苗を逐一調べていくこともままならないので、水やりや苗の手入れの時にあわせて見つけるしか無い。

手がかりは、葉の上に落ちた脱皮殻。アブラムシもいろいろな種類がいるけれど、このミントにつくアブラムシだと、こういう白っぽい粉のようなものが落ちているので見つけやすい。

昔は、排泄物だとばかり思っていた
昔は、排泄物だとばかり思っていた

葉の裏をみると、しっかりいらっしゃる。有翅成虫もついでに。

葉裏のアブラムシ

薬剤は使わないので、水で洗い流すなどの駆除が有効だが、ミントの場合、ばっさり剪定してしまえば、脇芽も増えるし、新しい良い葉が出やすいのでむしろ簡単なのだ。