こんな場所にはこのハーブ-プロストレイトローズマリー

匍匐性のローズマリーと聞くと、横に這って行くようなイメージを持ちやすいのだが、むしろ本領を発揮するのは壁面のようなところを上から下へ滝のように落ちて行くような育ち方をするときだと思う。

この場所は、結構通行量の多い四つ角に位置した花壇。曲がった先に大きな量販店があることで大型の納品トラックがよく曲がってくるし、逆方向から出てくる車も多い。そのため、入ってくる車の後部や後輪が当たってしまうのだろう(内輪差による事故という意味がよくわかる・・・実際作業していてもなんどかヒヤリとした)。花壇の隅がいつからから欠けるようになり、徐々に崩壊していった。

とりあえずは応急処置の為、レンガ用の接着剤で補修していた。この頃、2014年であった。

それからしばらく、崩れては応急処置を繰り返していたが、焼け石に水。修理してもしばらく経つとまた車が当たったようでレンガが落下していた。いいかげん、直すのにも疲れてきた。

そこで、少しでも目立つものを植えれば巻き込みも緩和されるのではないかと考えた。落葉するようでは意味がないので、常緑であることが条件。ある程度のサイズになって、かつ夏のガンガンの日当たりや、冬の四方八方から吹き荒ぶ風や雪にも耐え、長期間水やりなしでも耐える(通常メンテナンスは月一度なのだ)。となると非常に限られてくる。

ありきたりだが、ローズマリー、かつ、壊れたレンガの目隠しになることも考えてプロストレイトローズマリーを植えることにした。この際、成長が遅いことには目をつむる。

幸い、植えてから半年後にはそこそこのサイズとなって、下に向いて伸びるようになった。

2018年。植えてすぐの頃。まだ小さい。
2019年。見えにくいが(右上)少しレンガを覆い始めた。

2年が過ぎ、見事に崩れたレンガを覆うようになり、花もいい感じに咲くようになってきた。

2020年。この一年でずいぶん大きくなった

それでも時々こすられることがあるのか、少し枝が折れているようなことはあったのだが、レンガの損傷は見られなくなるようになった。どうやら役目を果たしてくれるようになったようだ。レンガの硬い雰囲気も和らげてくれるのも良い。

2021年。完全に角を覆う

ところが昨年の冬、現地を通りかかると、数人の作業員の方が花壇のレンガを修理していた。この時すぐに立ち止まって様子を見れば良かったのだが、あいにくそれができない状況。数日後行ってみると、花壇は車が当たらないように角をカットする形で修理されていた。

修理されてしまった花壇

ローズマリーはというと、適当に花壇の中央付近に植え替えられていた。あらかじめ伝えてもらっていたら一時隔離するなどもできたのだが。

冬ということもあるので、とりあえず強く剪定をかけてみたが、ひと月後、やはり調子が悪くなってきた。やむを得ず、元の位置の近くを改めて土づくりをして、植え戻した。掘り上げてみると残念ながら細い根はほとんど残っていなかったので、かなり厳しい状態だった。結局、夏になるまでに残念ながら息絶えてしまった。

とはいえ、十年近くの間、本来の役目をしっかり果たしたローズマリー。立派だった。

実はその後日談もあるのだが、またそれは別の機会に。

こんな場所にはこのハーブ-ヒメツルソバ

昨年の秋、ちょうどビニールハウスの張り替えが終わった直後だったから、11月の半ばだったように思う。

ビニールハウスの中に妙にたくさんのミツバチが飛んでいた。小さな羽音がウワーンと響いている。分蜂かとも思ったが、冬に向かうこの時期には考え難いし、それにしては数も少ない。たまたまかと思っていたし、翌朝にはいなくなっていた。

ところが、先日、図書館で養蜂の本が目についてパラパラとめくっていたら、蜜源植物の一つとして、ヒメツルソバが紹介されていた。「他の花が少ない時期の蜜源」との記載もあり、あ、なるほどと手を打った。

ヒメツルソバ
ヒメツルソバの花

今思えば、屋外の花が少なくなってきたため、蜜を求めてビニールハウスの床に広がるヒメツルソバにやってきていたようだ。秋も半ばぐらいまでならハウスの周りの荒地に広がるミゾソバがたくさん咲くので、そちらに向かっているのをよく見るのだが、この時期になると、他にはローズマリーの花ぐらいしかない。

ミゾソバ
10月までは蜂に人気のミゾソバの花

ヒメツルソバ、この辺りでは、時々雑草のように生えていることもあるが、花が鮮やかで可愛いので、グラウンドカバーとしてもおすすめの植物だ。「こんな場所にはこのハーブ」と言いながら、ハーブというよりはワイルドフラワーに近いのだが(場所によっては雑草かもしれないが・・・)。

広がるヒメツルソバ
広がるヒメツルソバ

ビニールハウスの中でも、苗の棚の下で一年中広がっている。いつ頃から増え出したか、定かではない。一応苗としても栽培はしているのだが(この頃はあまり増やしていないが・・・)、決して意図して植えたものでもない。

床に防草シートを貼っているので最初はあまりみなかった。そのうち、所々穴が空いたり、土が溜まったりしたところに種子が落ちたことから増え始めたのかもしれない。

また、それほど広がっていないころは大掃除の時、他の雑草とともに取り除くようにしていた。そのうち、あまり邪魔にならないことがわかって、むしろ他の雑草を押さえてくれているようなので、広がるに任せることにした。

通路部分を避けて広がるヒメツルソバ
通路部分を避けて広がるヒメツルソバ

また、通路部分については、踏まれると柔らかい葉が傷むせいなのか、それとも日当たりが良くてあまり広がろうとしないのか、伸びてこない。そういうこともあって、我々との共存を勝ち取った感がある。

ビニールハウスの中といっても、マイナス5度ぐらいにはなるので極端に寒い時は、葉が真っ黒になって傷むこともあるが、株自体がダウンすることは稀だ。むしろ、真夏の方が葉が乾燥で傷むことが多い。とはいえ、これも、当店の場合はだが、苗を栽培している棚の下に広がっているので、夏も毎日のようにそこそこの水はかかってくる。しかも適度な日陰という環境がぴったりなのだろう。

同じような環境は難しいかもしれないが、適度な日陰と水分があり、極端に踏まれない場所ならば良いグラウンドカバーとして使えると思う。

ちなみにパラパラと小さな種子をたくさん落とすので、先日のブログで紹介したように、小鳥も結構食事にやってくるようだ。ミツバチ同様、種子が少ない時期には嬉しい植物かもしれない。

こんな場所にはこのハーブ-ゴールデンヘリオトロープ

以前、こんな場所にはこのハーブ-ナスターチウムで紹介した病院のエントランス部分の花壇。ナスターチウムも良かったが、あまり長期間おなじハーブが植わっているというのも芸がないのでときどき種類を変えている。

パンダスミレ
花も長期間咲いて手間いらずのパンダスミレ

球根類を多めに植え込んでみたり、ビオラの仲間を植えてみたり。特にパンダスミレはよく広がってくれた。トラブルも少なく、花壇全体を覆いそうな勢いだった。

当初、この場所に何を植えるかについてはかなり危惧していた。上に屋根があるので雨はかからないし、西側と南側にスリット状の壁があるので日差しも遮られる。そもそも、エントランスのすぐ脇、もっとも人目につきやすい場所であるというのがプレッシャーである。

何年も試しているが、いつも、うまくいくだろうと思う種類が案外イマイチで、「大丈夫かな」と思いつつ植えた種類が思わぬ成長を見せるという厄介な場所である。

今年の春に植えたのが、ゴールデンヘリオトロープ

これも結構な賭けだった。ヘリオトロープ自体が、そもそもちょっと気まぐれなところがある。通販で購入されたお客様からも、「何年も咲かない」とか、「急に葉が茶色になり始めました」と相談があったり、一方で苗から数ヶ月経たないうちに開花したり

そのうえ、葉色が鮮やかな黄色をしているゴールデンヘリオトロープはなおさら葉が弱く、強光線や強い風、乾燥でも傷んでしまいやすい。

「ま、うまくいけばしめたもの、葉の色も鮮やかだし、花も咲いたら香りはいいだろうし」
という感じだった。そもそも、夏が越せないのではないかと思っていた。

今年の夏、ここ山陰は雨が非常に少なく、気温も非常に高かった。なので、メンテナンスに行くたびにドキドキだったが、「え?」と拍子抜けするぐらいに順調に育った。この花壇、見た目より結構深く、根が暑さで傷まなかったのも良かったかもしれない。
ゴールデンヘリオトロープ
秋、少し気温も下がり、一層元気をましてきたようだ。

このスリットから斜めに差し込む太陽が気持ちよさそうだ。

花芽の兆しも見えているが、さて、寒くなるまでに開花してくれれば良いのだが。

こんな場所にはこのハーブ-コルシカンミント

お客様から、「◯◯をこういう場所に植えようと思うのですが、大丈夫でしょうか」
との質問をときどきいただく。

大抵の場合はそれなりの確信を持って答えることができるのだが、いくつかの種類は、即答できないこともある。

その一つがコルシカンミントである。「雑草のようにどこでも育つ」とか、「ミントを枯らすほど園芸が下手」などの例に使われるほど丈夫なミントなのだが中には例外もあるようで、コルシカンミントは結構思ったようには育ってくれない。

ミントの中でもかなり個性的な部類で、葉がとにかく小さい。見た感じにはコケのようである。でも触ると明らかにミントの香り。順調に葉が育てば、小さな葉が密生してとても綺麗だし、花も小さいながら濃いめのピンクでなかなか面白い。

姿も個性的だが、育ちかたにも個性があり、実際、我々がポット苗を育てるときにも、「え、どうして・・・」という感じで急に調子が悪くなることがある。

お客様からも、このミントについては、「急に枯れてしまった」とか、「何度試してもうまく育たない」という話をいただく。環境を尋ねても、申し分ない場所であることが多い。

タイトルにはそぐわないのだが、「こんな場所に」とは薦めにくいのだ。なのでとりあえずうまくいった例を紹介したい。

市内のお客さまのお庭では、種子が飛んで所々に増えているという報告をいただいている。建物の北側にある通路部分で、建物と塀の間が1メートル程度の薄暗い場所のようだ。横に広がるのではなく、島のように所々で群落を作っているとか。それはそれで面白いと思う。

また、当店の、店の前にあるレンガの部分でも、ゆっくりではあるが徐々に増えつつある。
コルシカンミント
この場所は、午前中は建物が影になって日が当たらない。午後からは西日が差し込んでくるというかなり過酷な環境。夏はレンガが熱を持って相当高温になると思うのだが、何食わぬ顔で元気である。

コルシカンミント

もちろん、肥料などは一切与えていない。おそらく移植したり、手を加えると調子が悪くなりそうで、どのように育っていくか様子見状態である。案外来年には急に機嫌が悪くなり、他の場所で育っているかもしれない。

コルシカンミント
こんなレンガの隙間に進出

また、建物を挟んで反対側の花壇にもやはり種子で飛んだらしいコルシカンミントが見つかっている。

コルシカンミント
北側花壇。少しお気に召さないのか、まばらに成長

この場所も結構乾燥しそうな場所なのに、増えることもないが衰えもしないという感じで育っている。

このように、なかなか我々の思うようには育ってくれない。自分が好んだところを見つけて居つくような風来坊、または手をかければかけるほど意地になる思春期の子供のようなミント、それがコルシカンミントである。

 

コルシカンミント

こんな場所にはこのハーブ-スノードロップ

(スノードロップは、普通ハーブとして利用されることはありませんので、タイトルとは少しずれてしまうのですすが、ハーブと組み合わせる植物としての紹介です。また、ハーブ好きの方ならきっとスノードロップもお好きな方が多いでしょうから、参考になればと思います)

どこか他でも書いたように思うが、植物を育てているとセオリーどおりに行かないこともある、というよりも、そんなことがしょっちゅう起こる。

春先は花壇の色味に乏しい。ハーブならせいぜい冬から咲いているローズマリーが咲いているぐらい。もう少し暖かくなるとスイートバイオレットなども咲くのに・・・という時期は本当に寂しい限りだ。

まあ、そんな寂しさがあるからこそ、暖かくなって少しずつ花が咲くのが一層嬉しく感じられるのだが。

とはいえ、多くの人の目に留まる花壇ではそう言うわけに行かない。冬もそれなりに色合いが欲しい。

この花壇は、今まで何度か登場しているが、前後左右にまったく遮蔽物がなく、風通し日当りとも抜群。おまけに周りは道路と駐車場で夏はからっからに乾いてしまう花壇である。ハーブをいくつか育てたことがある方なら、「匍匐性のタイムやコモンセイジがご機嫌に育ち、ラベンダーも間延びしにくい」と言えばどんな環境かお分かりいただけるかもしれない。
スノードロップ
春先の花としてここにスノードロップを植えようなんて、スタッフが言い出した時には「ちょっと無謀かな?」とも思った。スノードロップと言えば、木漏れ日の下で楚々として咲くイメージを抱くことが多いだろう。早春、落葉に覆われた柔らかな土から白い花が姿を見せる・・・と言う感じがぴったりではないか。ところがここは、ザラザラの荒い砂で覆われた花壇。確かに球根なので、かなり幅広い環境に耐える力はある。しっかりした球根ならワンシーズン目に咲かないことはまずありえない。なので、一昨年前の秋に球根を初めて植えたとき、次の春に咲くことは全く心配しなかったし、事実、たくさん花を咲かせてくれた。

ところが球根は、とても強い種類だったり条件が良い場合は増えていくこともあるが、デリケートな種類や、場所に合わないと少しずつ減っていくことが多い。なので、次の秋(昨秋)にまた追加すれば良いかも・・・ぐらいに考えていた。ところが、昨年、ちょうど同じところに植わっているエキナセアを植えかえる時に、そこそこ球根が残っていたので驚いた。このまま咲くかどうか、取りあえず様子を見ようと、球根を追加することも見送った。しかし、まさかこれほどたくさん咲いてくれるとは・・・。

水はけが抜群なのは言うまでもない。周りにはレイタータイムがビッシリと育つぐらいである。花壇の高さは40cmほどもあり、おそらく夏の暑い時期も、地中はそれほど温度が上がらないのだろう。まして休眠していれば、外界の変化もそれほど感じないのかもしれない。

 

スノードロップ

ちなみに、もう十年以上前になるのだが、「スノードロップにふさわしい」庭に、球根を植えたことがある。塀に囲まれ、落葉樹やバラが茂り、涼しくしっとりとした庭の片隅だった。良質な腐葉土もたっぷりすき込み、丁寧に丁寧に植え付けた。

最初の一年こそ、そこそこ咲いたのだが、葉は妙に間延びするし、毎年毎年歯が抜けるように減っていき、いつしかいなくなってしまった。「ここはうまくいくはずなんだがなぁ・・・」と頭をひねったことは今でもおぼえている。お客様の庭での苦い経験は、「スノードロップは気難しい」との印象を私に植え付けてくれた。

しかし今回、拍子抜けするほど順調に育ち、いままでの印象もがらりと変わった。今年の秋はもう少し増やしてもいいかなと思っている。今からすでに、次の春が楽しみである。

ただ一つ難点なのは、山陰の曇りや雨の多い冬の天気。寒風吹きすさぶ曇天の下、冷たい風にただ一人で耐えているような姿は、健気であり、かわいそうにも思えるのである。でも、これだけはどうしようもないんだよなぁ・・・。