11月中旬を忘れさせる

朝夕がずいぶん気温が下がるようになった。自分が寒さを感じるようになると、生き物たちの動きも緩慢になるだろうとつい思ってしまう。

ところが今年はやはり様子が違う。

先日ごろから葉のところどろころに穴が空いてきて気になっていた日本ハッカのホクトだが、「寒くなってきたし、もう放っておいても広がらないだろう」と油断していたら、どんどん食害が広がってきた。

このまま冬を迎えることもありかなと思っていたのだが、そうはいかなさそうで、急遽剪定作業に乗り出した。

たぶん、食害の主はヨトウムシだろうと思っていたのだが、真っ先に見つかったのはナシケンモンだった。ヨトウムシ同様、なんでもバリバリ食べてしまう。

さらに剪定作業をすすめると三匹のまだ小さい(たぶん)ヨトウムシも見つかった。孵化してまだそんなに経っていないのか気温が低くてあまり成長できていないのか。ただ、日本ハッカの方もこの時期とは思えない成長をしているので、食べるものはあるのだろう。

剪定完了

どちらもさっさと捕まえて取り除いたが、ちいさいならばまだ残っているかもしれない。しばらくは観察が必要になりそうだ。

こんな作業をしていると今が11月中旬だということを忘れてしまう。

三月の終わりに

今日で三月も終わり。一月二月はゆっくりだったが、さすがに三月は駆け足で去っていった。

お花見シーズンも駆け足で去っていきそうで、結局圃場の裏の家の桜を眺めるぐらいで終わりそうだ。

ビニールハウスの中や畑、花壇でも植物たちが春の動きを見せはじめた。

レモンヴァーベナの苗
レモンヴァーベナの苗

毎年、この姿を見るとホッとするのがレモンヴァーベナの苗。いままでマッチ棒のようだった枝から急に柔らかなグリーンが見え始める。特に今年は、場所の都合もあり、ほとんど防寒できないところに置かざるをえなかったのでなおさら安心した。まだまだ全体のうちの一部なので完全に喜ぶわけにはいかないけれどそれでもやはり嬉しい。

斑入りエルダー
斑入りエルダー

いっぽう、鉢植えで育てている斑入りエルダーの親木、きれいな斑入り葉が広がり始めた。あまり日差しが強く、暑くなると葉が傷んでくるのでむしろこの時期の柔らかな葉が一番いい感じかもしれない。

花壇では、なくなる寸前だったイエロースイートバイオレットがようやく復活。

イエロースイートバイオレット
イエロースイートバイオレット

本当なら株を充実させるために早めに花も取り除きたいところだが、せっかく咲いたので・・・となかなか剪定する気にはなれない。他の種類に比べると香りは弱いが、この時期の柔らかなアプリコット色はいい感じだ。すぐ隣に咲いているドワーフコンフリー、毎年絶好調。ちょっと花の終わりは残念な姿になりやすいが、一斉に咲くとこれはこれで見事だ。

ドワーフコンフリー
ドワーフコンフリー
ホップの新芽
ホップの新芽

店舗の西側の花壇では、ようやくホップが土の中から顔を出し始めた。これからはあっという間に伸びていくので、きちんと誘引して日陰をつくるようにしたいが、毎年のように忙しい時期に重なるので、気がついた頃にはもう遅し・・・と今年もなるんだろうな。

 

ミントのアブラムシ
ミントのアブラムシ

植物たちがイキイキとしてきたら、当然、昆虫たちも活動を始める。そろそろミントの新芽にもアブラムシがつき始めた。

アシナガバチ
アシナガバチ

朝のうちは、越冬場所と思われる角材やパイプの保管場所でじっとしているアシナガバチ、お昼に近づくとかなり元気に飛び回り始めるようになった。

虫の心配をしなくていい季節はもう終わり。これからは生き物たちと密に関わっていくシーズンだ。明日から4月、怒涛のシーズンの始まり始まり。

今年の新芽

冬の間の大事な仕事に、鉢の植え替えがある。落葉したり、休眠している間に古い枝を剪定したり、古い土を取り除き、新しい土を加えて春からの成長を促す。

もちろん、種類によっては剪定した枝を使って挿し木をしたり、株分けを兼ねた植え替えを行う場合もある。

寒さに弱い種類はさすがにもう少し暖かくなってから行うのでまだそのままにしているが、昨年のうちに植え替えしたような種類はもう新芽が動き始めたている。いずれもオープンなビニールハウスなので、気温は屋外と変わらないのだが。

エルダーの新芽
エルダーの新芽

今年も早く動き始めた一つがエルダー。昨年も芽吹きが早く、挿木が間に合わなかったりしたので、今年は植え替えと挿し木も早めに行った。山菜を思わせるような芽吹き。日本のニワトコの新芽も天ぷらにするようなので多分美味しいだろう(同じくたくさん食べるのはよくないと思うが)。ただ、天ぷらにするほどには数がないので手を出すわけにはいかない。先日登ったとある山では、登山道の横に何百本というタラの芽が伸びていた。天ぷらが食べたければそこへ行くほうがよさそうだ。まあきっと、もっと芽吹きに敏感な人々にしっかり採取されてしまっていると思うが。

グリークオレガノ
グリークオレガノ

グリークオレガノもいい感じで新芽が伸びてきた。こちらは挿し木をしていなかったので、もう少し大きくなったら試してみようと思う。ただ、急に暖かくなると柔らかく伸びてしまうので注意が必要だ。

この間までほとんど見えなかったブラックペパーミントも新芽が顔を出し始めた。

ブラックペパーミント
ブラックペパーミント

この時期の葉は、丸まっていて可愛らしい。最盛期には呆れるほど大きく育って、葉も鋭くかわいさは無くなってしまうが。

レモンマリーゴールド
レモンマリーゴールド

レモンマリーゴールドはまだ丸坊主。急いで植え替える必要はなかったが、大株なので忙しくなるとつい面倒くさくて後回しにしがち。今まで寒さでダウンしたことはないので多分大丈夫とは思うが、新芽が出てきたら毎年のことだがホッとするだろう。

植え替えると楽しいのがやはり斑入りの種類、植え替えた後に伸びてくる新芽はやはり鮮やか。冬の初めは、斑が確認できるとはいえ、ぼんやりとしていたゴールデンクイーンタイム。植え替えたらこの通り、綺麗な斑入りの葉が現れた。いつもこうならいいのだが。

おや、ちょっと早いお目覚めでは?というのがステビア。

ステビアの新芽
ステビア。古い枝からは良い芽が出ないので後で剪定してしまう。

あんまり早く動き始めてちょっと心配。来週は氷点下近くになる日もあるというので。葉が傷んでも、根さえ駄目にならなければ大丈夫ではあるが。こちらはもっと暖かくなって、伸びてきたら挿し木の元にするので、しばらくは少し大事にしておこうか。

いずれにしても、寒い中作業をしたことに答えてくれている感じで嬉しい。春に向けての作業も弾みがつくというものだ。

冬支度

昨日は恒例の冬前の倉庫大掃除。

冬は土作りや肥料づくりで使用頻度が高まる倉庫件作業用ビニールハウス。夏の間に溜まった埃などを掃除して快適な作業環境づくりだ。

夏前にも一旦掃除しているのだが、やはり土ぼこりや蜘蛛の巣などもたくさん張っているし、「とりあえず」で放り込んでいたものもあったりするので知らず知らずのうちにものが増えていく。時々は棚卸し総決算が必要である。

最低2人いれば、重たいものもなんとか運び出すことができるが、それでも大人数の方が作業にもハリが出る。今日は声をかけたら都合が良い4人が集まった。幸い天気も快晴。気持ちよく作業ができた。いつもは昼前までかかることが多いが、今日は10時のお茶休憩までにほぼ一段落。これで安心して冬が迎えられる。

ハーブたちも気がつかないうちに、それぞれに冬支度を整えつつある。

紅葉しつつあるもの、落葉しつつあるものなど様々だが、ミントの仲間は顕著だ。

夏までに伸びた枝は北風を受けるので、さっさと葉を落とし始めた一方で、地下茎を伸ばしたり、種類によって地上部を這う様に株元から茎を伸ばし始めている。

こういった地下茎が伸び始めるのを見ると、我々も安心する。寒さに強い種類は冬への準備をきちんとしてくれるし、それが目に見えやすい。あとは春まで、極端に水を切らさないようにしてしっかり寒さに当ててやれば良い。我々は冬への準備ができない、暖かい地域原産の種類のケアに集中できるのだ。

この冬の苗たち

とても穏やかな1月が終わった。雪かきを一度もせずに過ぎた1月というのはあまり記憶にない。そのためか、1月がとても長かったという声を何度か聞いた。

天気が冬の山陰とは思えないような穏やかな日差しだったり、降っても雨。みぞれもごくわずか。雪が降っても1日のうちに一瞬降る程度だった。

ところが、立春を過ぎ、ようやく冬の山陰らしい天気になった。激しくはないものの雪が降ってはやみ、みぞれ混じりだったり。もちろん、積もるには至らない。

こういう冬なので、普段とはハーブの苗たちの様子もずいぶん違っていて驚かされる。ただ、そんな状態の苗でも、初めてみる人にとってはびっくりするような姿だったりするようなので、いくつか紹介してみたいと思う。

まずはミントの仲間。ミントは種類によって冬に完全に地上部をなくすものもあれば、案外葉が残るもの、土の表面ギリギリに小さい葉を残すものなど様々だ。

日本ハッカ
日本ハッカを始め、ミントは地上部がなくなるものも多い

日本ハッカの仲間は、完全に地上部が枯れる。これでも、秋までは青々としていたのだ。他にもレモンミントやバナナミント、ジンジャーミントなどが同様に葉がなくなる。ところがポットを外すと、中でフレッシュな地下茎がびっしりと伸びていてびっくりさせられる。

アップルミント
比較的葉が残りやすいアップルミント

一方、アップルミントは葉を少し多めに残して冬をこす。例年はそれでももっと葉が赤っぽくなったり、伸びた上の方の葉が枯れたりするのだが、今年はとても青々としている。まるで3月ぐらいの様子だ。

オレンジミント
オレンジミント。葉が真っ赤〜黒っぽくなって冬をこす

その中間が、写真のオレンジミントなど。他にもブラックペパーミントやオーデコロンミントなどが同じように地面ギリギリのところに葉っぱを残して春を待つ。どの葉も赤黒っぽく変色することが多い。

寒さに強いものは、かえってさっさと葉を落として地下でぬくぬくと春を待つ傾向が強い感じだ。コンフリーもそうだし、ルバーブなどはかなり深いところで芽を硬くして冬を過ごしている。

コンフリー
コンフリー。ちょっとだけ芽が出ている

植える時期としても極端な寒冷地でない限りおすすめなのだが、地上部がないと不安になるのももっともだ。とはいえ、下の写真のように、地植えで大株になったコンフリーも冬は葉が完全に枯れる。

地植えのコンフリー

レディスマントルは、夏の暑さに弱く、涼しいのが好きとはいえ、やはり大きな葉を広げておくのは負担なようで、夏までの葉は枯れて株元の小さな芽だけが青々としている。

レディスマントル。根はびっしり張っていても地上部はこれだけ

まだ今年は残っている方なのだが。同様にストロベリーも、大きな葉は枯れてしまって小さい葉だけになって冬をこす。

ストロベリー
ストロベリーの苗

ホップも同様。秋早いうちにさっさと葉を落としてしまって古いツルが残る。

ホップ
ホップは早ければ冬の初めには株元に新芽が見え始める

残念ながらこのツルからは春になっても葉が出てこない。株元のぎゅっと詰まった新芽が伸びてくるのを待つしかない。

まだまだ紹介したいものはたくさんあるのだが、とりあえず今日のところはここまで。これでも例年に比べると暖かいんだなあと実感させられるのだ。