堂々たる貧乏

毎年のように、お客様から「おじいさんがススキと間違えてレモングラスを刈ってしまった」という声を聴く。

草刈機でバッサリ刈っても、株が残っていたらまたすぐに伸びてくるからあまり心配はいらない。でも、本格的に掘り上げてしまったりするとお手上げだ。

我々はさすがに間違えてというのはあまりないとはいえ、暑さの中、ハードな時期の草刈りでウッカリと親木を切ってしまうことは珍しくない。

その防止のために、支柱を立てて予防をしている。今日ふとみたら、支柱の一つに植えた覚えのないツルが巻き付いていた。

ヤブガラシである。ビンボウカズラとも言われるのだが、こちらの名前の方がピンとくる。貧乏暇なしとも言われるように、暇がなくて草取りができないとこの雑草が繁茂するという由来は、ただただ頷かざるを得ない。

毎日のようにこの前を通っているのに気が付かなかったのだが、いつの間に伸びたのだろう。あらためてツルの成長の勢いには驚かされる。

あまりに堂々としているので、知らない人が見たらこっちを植えていると思われるに違いない。

もうちょっと草取りしろよ・・・という感じだが。それにしてもヤブガラシの巻きひげの丁寧なこと。

支柱を立てた本来の対象は下で草に埋もれていたカルドンだ。ヤブガラシ、根もすごく強いので、厄介。カルドンを移動させるか・・・せっかく根付いて大きくなり始めたのにそっちも気が進まないのだが・・・。

花と葉と

毎日の通勤途中、道沿いの田んぼがついこの間までは一面のグリーンだったのに、いつの間にか黄金色に変わり、その黄金色もところどころ四角く刈り取られる場所が増えてきた。

黄金色に色づくのは稲穂の部分というイメージが強いが、実際には葉っぱも一緒に黄色くなる。葉の栄養分が実に送られるためだと言われている。

ハーブの仲間でも、花や種子ができる頃に葉が影響を受けるものは結構多い。バジルも、今、開花結実の時期を迎えて、葉が硬くなってしまい、甘くて柔らかい夏前の葉っぱが恋しい時期となった。

レモンバームも花が咲く頃は、ハーブティーにしようとしても、葉が小さく、みすぼらしくて困ってしまう。

斑入りのゼラニウムやタイムなども、花の時期には斑が見えづらくなったり(気温のせいもあるかもしれないが)、もうちょっとしたら咲くヒガンバナのようにそもそも葉がない時期に花を咲かせる種類もある。

今日も、水やりをしていたら、メキシカンスイートハーブが花を咲かせていた。こちらはもう何年にもなる親株だが、やはり葉の色が赤みを帯びてきた。少なくとも寒さや乾燥のせいではなさそうだし、花を咲かせるための栄養を葉が与えているのかもしれない。

ポット苗のメキシカンスイートハーブ

一方、夏前にポット上げした同じメキシカンスイートハーブの株は、花が咲いていても葉も青々。土もまだ新しいし、株にも余裕があるのだろうか。本当のところはわからないが。

朝食に香り高い浜茶を

9月に入っても暑さが厳しいので、早朝スタートによる作業パターンが続いている。

早朝から作業を始め、8時前後に軽い朝食を取る。朝食の時の飲み物も先日までは麦茶など冷たいものだったが、今朝はなぜか気分が変わってカワラケツメイのお茶が欲しくなった。この辺りでは浜茶と呼ばれる。

時々飲みたくなるので、アウトドア用のクッキングセットに小さな缶で入れている。今日は茶漉しがなかったので、シェラカップで淹れて、箸を使ってそっと漉してコップへ。

香ばしい香りが何とも秋らしい。実はこのカワラケツメイ、畑の一部で現在開花中だ。

もう10年以上前だろうか、この浜茶が好きになった頃、出雲の斐伊川の河川敷で咲いているのを見つけた。おそらく育てるのはそんなに難しくないだろうとは思ったが、なかなか種子を手に入れる機会がなかった。数年前に、たまたま訪れた庭で咲いているのを見つけ少し分けてもらい、種子を収穫できた。

次の年、ポットで育てて(今考えるとむしろ可笑しいが)、畑に畝まで用意して栽培した。雑草のようなものなので、非常によく育ったが、お茶にするための収穫はできなかった。かろうじて種子は取れたので、翌年(それが去年だ)も同じようにポットで育てていたが、零れ種で本当に雑草のように畑に広がってしまい、去年も収穫せず。収穫もそれなりにタイミングがあるし、その後、水洗いして、乾燥して炒る必要がある。この、収穫、洗浄、乾燥、焙煎というのは、それなりに手間もかかる。美味しく作られたものが市販されていることも考えると、なかなか実行に移せない。

そう考えるとハーブティーは、フレッシュならば最後の2工程が必要ないので楽だなぁと、今更ながらに思うのである。

今年は、収穫にも良い感じにまとまって生えているし、洗浄、乾燥まではなんとかできそう。今のところは焙煎が難所となりそうだ。いちどできたらそれなりに納得もすると思うが、さて、今年できるかどうか!朝食に香り高い浜茶が楽しめるだろうか?

夏菜園で最後まで残るもの

今年は種まきのタイミングが悪くてひと株しかない家庭菜園のオクラだが、先月からポロポロと収穫が続いている。

夏野菜はその年によって育てるものにも変化があるが、オクラはおおよそ毎年育てている。育てやすいし、コンスタントに取れて食卓を賑わしてくれるのもありがたいが、もう一つ理由がある。

秋に向けて育苗中のマロウやホリホックの大敵である葉巻虫の警戒アラート役だ。オクラも同じアオイ科なのでこの葉巻虫が必ずといっていいほどやってくる。

オクラとフタトガリコヤガ

野菜を育てている人には「オクラの葉巻虫」といえばそれで通じると思うが、フタトガリアオイガ(フタトガリコヤガ)という名前の昆虫だ。

外の畑のオクラにこの葉巻虫がやってくると、大抵、マロウやホリホックにも着き始める。オクラは毎日チェックしないと1日の収穫の遅れで食べられなくなるほど大きくなるので、大抵朝に様子を見る。今朝、収穫に行ったら数匹の葉巻虫がいたので、育苗中のブラックホリホックの苗を調べたらやはり葉巻虫を発見。すでに若干被害があったが、放っておいたら丸坊主になるところだった。この毛虫は素手でも大丈夫なので即退治できる。

ブラックホリホックとフタトガリゴヤガ

こういう理由もあって、オクラは毎年夏の菜園には欠かせないし、最後まで残っていることが多い。片付け忘れを指摘されても、苗のためという言い訳もあるし。

目にもさやかに

秋きぬと目にはさやかに見えねども・・・の和歌も、詠まれた時代には、何月ぐらいのことだったのだろうと思う。

案外8月の半ばぐらいだったのかもしれない。

今のような気候なら、ひと月ぐらいは遅くならないとこんな歌を詠む気にはとてもなれないだろう。

自分が毎年秋を感じるタイミングは風ではなく、収穫の終わった田んぼから籾殻を焼く香りがする頃だ。

ところが今年はまだ一度も香ってこない。

圃場の近所でも、作付けが毎年のように減っていき、遠目でしか稲が育つ姿を見る事ができない。

この、籾殻を焼いてくん炭を作る香りは苦手な人も多いようだが、自分にとっては夏を乗り越えて穏やかな秋を迎える事ができたとしみじみ感じる香りだ。

秋遅くなって、本業が一段落したら譲ってもらった籾殻を使ってくん炭も作るには作るのだが、早くとも11月。まだまだ先。

くん炭
これは昨冬製作の籾殻くん炭

香りを楽しむだけのために今からくん炭作りをするわけにもいくまい。

さて、ちょうどこの時期、ブルーミストフラワーも涼しげな色の花を咲かせる。

ブルーミストフラワー

秋の涼しい風が吹くころに毎年咲き始めるのので、「目にもさやかに」秋を感じさせてくれる。しかも遠目で見ると、ふわふわとした花という感じだけの印象だが、近づいてみるとその繊細さに少し「おどろかれぬる」なのである。

ところが花を咲かせて寒くなると、急にシワシワと葉が枯れていき、完全に地上部がなくなってしまう。

あまりにもあっさりしているので、本当に枯れてしまったと勘違いするぐらいだ。

でも心配は無用。翌年にはしっかり復活してくれる。

籾殻を焼く香りも、また復活してはくれないだろうか。