こんな場所にはこのハーブ-ヒメツルソバ

昨年の秋、ちょうどビニールハウスの張り替えが終わった直後だったから、11月の半ばだったように思う。

ビニールハウスの中に妙にたくさんのミツバチが飛んでいた。小さな羽音がウワーンと響いている。分蜂かとも思ったが、冬に向かうこの時期には考え難いし、それにしては数も少ない。たまたまかと思っていたし、翌朝にはいなくなっていた。

ところが、先日、図書館で養蜂の本が目についてパラパラとめくっていたら、蜜源植物の一つとして、ヒメツルソバが紹介されていた。「他の花が少ない時期の蜜源」との記載もあり、あ、なるほどと手を打った。

ヒメツルソバ
ヒメツルソバの花

今思えば、屋外の花が少なくなってきたため、蜜を求めてビニールハウスの床に広がるヒメツルソバにやってきていたようだ。秋も半ばぐらいまでならハウスの周りの荒地に広がるミゾソバがたくさん咲くので、そちらに向かっているのをよく見るのだが、この時期になると、他にはローズマリーの花ぐらいしかない。

ミゾソバ
10月までは蜂に人気のミゾソバの花

ヒメツルソバ、この辺りでは、時々雑草のように生えていることもあるが、花が鮮やかで可愛いので、グラウンドカバーとしてもおすすめの植物だ。「こんな場所にはこのハーブ」と言いながら、ハーブというよりはワイルドフラワーに近いのだが(場所によっては雑草かもしれないが・・・)。

広がるヒメツルソバ
広がるヒメツルソバ

ビニールハウスの中でも、苗の棚の下で一年中広がっている。いつ頃から増え出したか、定かではない。一応苗としても栽培はしているのだが(この頃はあまり増やしていないが・・・)、決して意図して植えたものでもない。

床に防草シートを貼っているので最初はあまりみなかった。そのうち、所々穴が空いたり、土が溜まったりしたところに種子が落ちたことから増え始めたのかもしれない。

また、それほど広がっていないころは大掃除の時、他の雑草とともに取り除くようにしていた。そのうち、あまり邪魔にならないことがわかって、むしろ他の雑草を押さえてくれているようなので、広がるに任せることにした。

通路部分を避けて広がるヒメツルソバ
通路部分を避けて広がるヒメツルソバ

また、通路部分については、踏まれると柔らかい葉が傷むせいなのか、それとも日当たりが良くてあまり広がろうとしないのか、伸びてこない。そういうこともあって、我々との共存を勝ち取った感がある。

ビニールハウスの中といっても、マイナス5度ぐらいにはなるので極端に寒い時は、葉が真っ黒になって傷むこともあるが、株自体がダウンすることは稀だ。むしろ、真夏の方が葉が乾燥で傷むことが多い。とはいえ、これも、当店の場合はだが、苗を栽培している棚の下に広がっているので、夏も毎日のようにそこそこの水はかかってくる。しかも適度な日陰という環境がぴったりなのだろう。

同じような環境は難しいかもしれないが、適度な日陰と水分があり、極端に踏まれない場所ならば良いグラウンドカバーとして使えると思う。

ちなみにパラパラと小さな種子をたくさん落とすので、先日のブログで紹介したように、小鳥も結構食事にやってくるようだ。ミツバチ同様、種子が少ない時期には嬉しい植物かもしれない。

きっと楽しいかも

年明けに一度落ち着いた降雪だったが、7日から11日まで再び断続的に雪が降り続けた。ここ松江では、何日も降り続ける雪というのはわりと珍しい。

思い出す限りでも、ここ10年ほど、大雪はあったが、それも1日か2日。多くはどかっと降って、朝にはやみ、主要道ならば午後にはアスファルトが顔を出すような感じだ。

ところが今回は、一度やんだと思った雪が夕方からまた降り始める。気温も低かったので、何日も溶け始める気配さえなかった。

ビニールハウスも、倒壊の恐れさえなかったが、滑り落ちた雪がハウスとハウスの間にどんどん溜まり続けた。これにはさすがに心配になった。

毎年、周りの野山が雪に覆われると、何故か小鳥がビニールハウスの中に入ってくる。暖かい時期にもときどきあるので、迷い込んできたとばかり思っていた。

苗をついばまれてもこまるので、追い出すようにしていたが、追い出してもまた翌日になると入っている事に気がついた。

そっと近くに寄って観察すると、苗の棚の上に登ることは稀で、どうやら床に広がっているヒメツルソバや雑草の種をついばんでいるようだ。ただ、何の小鳥か種類はわからない。

スマホで調べてみるが、調べようが悪いのか、どうも判然としない。ビンズイとかタヒバリとかに近いような気もしたが、どうも違うようだ。

ハーブはともかく、植物ならば少なくとも「~の仲間かな」というぐらいはわかるのだが、鳥についてはせいぜいわかるのはスズメ、カラス、ハト、白鳥、ニワトリ・・・あげてみるとあまり動きが早くなく、近くまで寄ってみることができるものばかりだ。動きが早くて小さな種類は全くお手上げ。警戒心が強くて近寄れない種類も同様だ。

この頃、山登りする機会も多いので、鳥について知っていればもっと楽しいのに・・・と思うことがよくある。昆虫に比べるとハーブと鳥はそれほど関わりは強くないが、せっかく色々な鳥が見れる環境にあるので、知っていれば日々きっと楽しいに違いない。

結局、夕方事務所に帰ってパソコンで本腰を入れて調べたら、どうやら「クロジ」という鳥のようだった(確証はないし、まだ自分の中では少し疑っている)。録画しておいた動画でチェックしたさえずりもよく似ていた。

クロジ|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動

「常緑樹林の暗い林縁部の地上で数羽が草の種子を採餌」との説明もあるので、苗の棚の下の暗いところで、種子をついばんでいてもおかしくはなさそうだ。今の時期種子をつけている苗はまずないので、いたずらされる心配もない。無理に追い出して悪かった。

「観察例は極めて少ない」ともあるし、名前も縁起が良さそうだ。新年から「黒字」がビニールハウスにやってきたなんて。

 

ピンクの待ち針

冬の足音が、一歩また一歩と近づいてくる今日この頃、回りの風景も動きが少なく、色も鮮やかさが徐々に失われてくるようになった。

そんな中で、一際目を引くようになったのがヒメツルソバである。いつの間にかビニールハウスの中に侵入するようになり、時々思い出したようにはびこるようになった。

ヒメツルソバ

といっても、それほど困る雑草ではない。片付けようと思えばそれほど苦労はしないし、ご覧の通り、冬の初め、非常に鮮やかな群落でしばし目を楽しませてくれる。英名でPink Pinheadsと呼ばれるが、確かにピンクの待ち針を思わせる姿である。

ヒメツルソバ

この辺りでは、古い石垣の縁や、庭の隅などで広がっているのを良く見かける。

残念なのは、寒さが本格的になってくると葉が焼けたようになってしまうことだ。ちょうど園芸作業に不向きなシーズンに当たるうえ、雑草としての扱いしかなされないためか、汚らしいまま放置されている場合が多い。

以前、ある県の園芸店で、ヒメツルソバの一株がびっくりするような値段で売られていたのを見たことがある。寒い地域だったのでそんな価格設定だったのだろう。

こちらに戻ってから、その話をとある会でしたところ、一人の老婦人がこの辺りでも昔は結構いい値がしていたと仰った。いつごろの事かと訊ねたのであるが、「年が分かるから・・・」と教えてもらえなかった。お茶目な方である。