代役

前の冬、突然訪れた激しい寒波。そんな時に限ってアフリカンブルーバジルの親木をしっかり確保していなかった。おかげで今年の春は一本だけ残った親木から増殖を始めるはめになり、大変だった。

その反省をもとに、9月初め、越冬用の親木を鉢植えにした。普段なら親木は一本植えにすることが多い。ただ、ちょうど適当な鉢が見つからなかったのと、どうせ冬前に刈り込んでしまうので横長のプランターに三本植えとした。

残暑の中順調に育ち、10月に入る頃から開花を始めた。そのままビニールハウスで冬を越させるつもりだったが、ちょうど店頭のディスプレイ鉢がコガネムシの被害にあい、植え替えのため一時圃場へ「入院」することになった。せっかく咲いている花なので、たくさんの人に見てもらえればと、急遽代役として登場させたのである。

アフリカンブルーバジル

アフリカンブルーバジルは葉の香りは料理用に一歩も二歩も劣るとはいえ、結構寒くなっても傷まない葉と、長持ちする花を利用しない手はない。また、置き場所の壁の色が良い背景となって思ったより良い感じになった。南向きで強い風も当たりにくいから、かなり遅くまで代役を演じてくれるはず。ただ、急激な寒さで去年の二の舞になることだけは避けなければ・・・。

がじがじ

長年、それほど気にも留めていなかったけれど、なんとなく腑に落ちないことが、今朝ようやく判明した。

畑に落ちていた一枚のラベル。確かに先日自分が苗の横に差したものだった。
「おや、昨夜はラベルが飛ぶほど風が強かったっけ?」
と最初思ったのだが、最初に差していた場所とはずいぶん離れたところに落ちていて、しかも先の方がぐしゃぐしゃになっている。

ラベル

いままでも何度かラベルの一部が同じように傷んでいるのを見かけたことがあるけれど、いつも、落ちたラベルを靴底かなにかで踏みつけたのか、どこかに挟まってぐしゃぐしゃになったのだとばかり思っていた。

でも、ラベルに穴があくようなスパイクを履いている者はいないし、耕耘機で土と一緒に耕してもこのような形には変形しそうにない。

今朝このラベルを見たとき、以前スタッフが言っていた
「ビニールハウスを固定しているビニール紐をタヌキが齧っているようだ」
との言葉を思い出したのである。

もちろん誰も現場を見た訳ではないが、時々ビニールハウスの固定紐に穴があいていることがある。どうやら猫の爪研ぎのようにビニール紐を噛んでいるのではないかという推理だ。

よく見るとこのラベルも紐と同じような被害状況。困ったものだが、年に数枚程度の被害、今のところ作物への害はないようなのであまり目くじらを立てることもないか・・・。

いかがはせむ

夏の終わり頃から、圃場の横にあるイングリッシュ系ラベンダーの畑の植え替えを行っている。もう5年近く植え替えを行っていないため、ダウンした株で歯抜けになったり、徒長する株も出てくるようになった。良い機会なので一度仕切り直しである。

畝も立て直して、耕耘、追肥を行う。用土も結構流れているので、補助の畑から追加した。傷んだ株は新しい苗から再スタート。そうでない株も剪定をして植えかえた。

土が落ち着くのを待って一畝ずつ行ったので結構日数もかかってしまった。

植え直しされたラベンダーたちは見ていても気持ちがよい。秋の新芽も順調に伸びてきてまずは一安心。

ところが、今年の春に周りでたくさん咲いていたボリジの種がどんどん発芽してきた。追加した土に入っていたのか、もともと蟻でもが運んできたのが耕耘された刺激で一斉に発芽を始めたのだろうか。

ラベンダートボリジ

今はこんなにかわいいけれど、すぐに大きくなってこのままではラベンダーの株は覆い尽くされてしまうだろう。

この周りにあったのはホワイトボリジだが、実生は白が出るとは全く保証できないのでポットあげする訳にもいかず、さて、どうしようかと迷っているのである。

自然にはかなわない

圃場の裏手は土手状の荒れ地で、夏草の残りがまだ覆い茂っている。用水路際の斜面には季節季節で野草が花を咲かせる。今日、ふと目をやると、ミゾソバをバックにブルーっぽい花が咲いているのが見えた。季節がら、アキノタムラソウかなと思ったのだが、ちょっと様子が違う。

後ろのピンクはミゾソバ
後ろのピンクはミゾソバ

ヤマハッカであった。こうして写真に撮ってみるとなかなか良い物だ。

さて、セイヨウヤマハッカと言えば言わずと知れたレモンバームの和名であるが、こちらの本家?ヤマハッカは同じシソ科ながら、むしろアキチョウジに近い植物である。ただ、葉の形は確かにレモンバームに似ている。ハッカと名はつくけれど、ハッカのような香りはしない。特に薬用として使われることもないようだ。

ヤマハッカ
観賞用として栽培されることもあるのかもしれない。つい、手元に植えてみたいという気持ちが湧いてくる。でも、自然のままで他の草花と咲いている姿、我々がいくら一生懸命手をかけてやっても、なかなかこううまくはいかないのである。

時期をおぼえておいて、また来年目を楽しませてもらおう。

花の木

今日は休日だが、親戚の家へお茶摘みの手伝いに行った。秋の晩茶摘みである。

さて、ここへ手伝いにくるとよく耳にする植物名がある。「花の木」である。地元のじいさん、ばあさんたちがしきりに、「花の木をもらいにきて」とか、「花の木が植わっちょって」などと話しているのをよく耳にする。地元の人の花の木にかける熱意は相当のものがある。かなり遠くはなれた町からわざわざもらいに来られたりしている。

どうやら仏壇などに供えるものだと言うことは話の筋から推測できるが、具体的に何という植物なのか、ずっと分からずじまいだった。聞いてみても良いけれど、
「そぎゃん、花の木は花の木だわね」
(そりゃ、花の木は花の木ですよ)
と言われることは目に見えている。
ネットで調べても良いのだが、地元の通称と世間一般の通称が違ったりすることは決して珍しくはないのであまり頼りにならない。

ところがある日、同じ市内のホームセンターの花木コーナーで、「花の木(シキミ)」と札がついた木を見つけた。ようやく見当がついた。

シキミはお寺やお墓に植えられたり、仏壇に供えたりされるらしいが、白くて可憐な花を咲かせる。ところが、全草が毒で、特に実は猛毒。植物性としては唯一劇物指定もされているらしい。とある本によると、そのため、土葬が主だった時代、墓地の周りに植えることで獣などが近づくのを防いだという。殺虫剤としての利用もあったというが取り扱いは難しそうだ。

今日、ようやく実物をこの山で確認できた。既に花は終っていて、果実ができている。近縁種にスパイスで使われるスターアニスがあるが、確かに良く似ている。
花の木
ちなみに、地元の人に「花の木って猛毒だってご存知ですか?」と訪ねたら、ほとんどの人が知らなかった。売ると結構いい稼ぎになるということで好きな人は多いようだが。ただ、近隣の野山のことに精通し、私も敬愛するMさんだけは、
「ああ、花の木だけは鹿もかじーませんけんねぇ(齧りませんからねぇ)」
と、ご存知だった(この辺りは鹿の被害も多いのだ)。ついでに、
「実は熟すとポ〜ンとはじけて、遠くまで飛びますけん」
と教えてくれた。こういうデータはどんな植物事典にも載っていない。

熟しつつある果実
熟しつつある果実

いつか、機会があれば白い花と実がはじける様子も見てみたいものだ。