いつもと違う冬の終わり

この冬、ここ松江は大雪こそ降らなかったが、いつまでも冬の空が続く。

2月に入ると、例年ならば天気が明らかに1月と異なることに気づかされる。数日に一度でも、春が近づいたような気にさせる気持ちの良い天気が見られるようになり、作業場の薪ストーブの薪の消費量も格段に少なくなる。

ところが今年は、いつまでも冬の空模様。朝起きて外を見ると、また路面が真っ白と言うことがここのところ毎日だ。

2月24日朝の雪。昨日は地面が見えていたのだが・・・

とはいえ、せいぜい1、2センチなので、大騒ぎするほどのことではないが、色々と作業に支障が出る。朝からビニールハウスに積もった雪を見ると少しゲンナリする。

屋根に雪があると冷蔵庫状態

ローズマリーの雪。折れるほどではない

ラベンダーの株も雪をしっかり被り、ローズマリーも白く雪化粧。枝が折れるような心配がないのはありがたいが。

毎年、この時期気をつける必要があるのが、急な暖かさと寒さによる苗の被害だ。

多くの苗はこの時期も出入り口や換気口を開けっぱなしにしているので、屋外と同じ気温。苗もそれをわかっているのでじっと我慢しているからあまり心配はない。

ところが、寒さに弱い苗はさすがに外気と同じでは寒さで枯れてしまうので二重のビニールハウスの中で冬を過ごす。

こちらのビニールハウスは夜はぴっちりと閉じて、昼は天気が良い日だけ空けているのだが、それでも温度が案外上下する。

寒さに弱い種類は、寒さへの備えをそもそもしようとしないので、少しでも動ける温度になると柔らかい葉を伸ばそうとする。

その葉が、寒さでやられてしまうのでこの時期は本当に神経を使う。

主な種類としては、フルーツセイジ。これも冬の間そこそこ伸びたりして、春先の寒の戻りで真っ黒と言うことがなん度もあった。今年もまだ気を緩めることができない。

それから一連のヘリオトロープ。ちょっと気温が上がると伸びはじめてしまって、先日一度、それほど寒い日ではなかったが、扉を閉め忘れて帰ったら、数日後傷みが見え始めてきた。

葉の先が黒っぽくなったのが前兆

また、ちょうどギリギリの温度なのか、ナスタチウムも成長はしないのに花を咲かせている。秋のポット上げが遅くなってしまい、冬前の発売に間に合わなかった株たちだ。花を咲かせてしまったことで春の成長がどうなるやら、いま1番心配な種類である。

一枚のビニールだけで寒さに耐えているレモングラスは、秋までは青々としていたのに、ずいぶん黄色っぽくなってしまった。

今朝のニュースで、週末からは気温が上昇するとのこと。春の成長が目に見える日も近いだろう。

この冬の苗たち(その3)

前回、前々回と、比較的寒さに強いハーブの仲間の今年の様子を紹介してきた。

今回は、主に寒さに弱い種類について。今年、以前に比べ変化が大きかったのは特にこれらの種類だろう。

寒さに弱い種類ほど、寒さへの備えをする力がないのだろう。耐えられるギリギリの寒さまで平気な顔をしているのに、ある一線を越えるとぱたっと枯れてしまったり、葉が真っ黒になってダメになってしまいやすい。もちろん、それ相応の対策はしているのだが、数年前だったか、マイナス9度になった時はそれでもかなりダメージが大きかった。それが今年は鼻歌交じりで冬を越しているような感じだ。

ローズゼラニウム
ローズゼラニウムも縁が少し赤く色づく程度

ローズゼラニウムをはじめ、ニオイゼラニウムのなかまは、冬にはもっと赤くなることが多いが、せいぜい縁取りぐらい、グリーンが綺麗だ。

ジャスミン
ジャスミン。普段とあまり変わらない姿。少しだけ赤っぽく変化

ジャスミンも青々としている。この辺りでは寒さで枯れることはあまりないのだが、葉が真っ赤になったり、場合によっては落葉するのがいつもの年。

サルビア・ディスコロール
サルビア・ディスコロールの新芽も傷んでいない

サルビア・ディスコロールも秋から冬に花が咲くくせに、寒さでぱたっと枯れやすい種類の一つ。今年は秋終わりのような姿で冬を越している。

ホワイトヘリオトロープ
ホワイトヘリオトロープの苗は花を咲かせていた

ヘリオトロープも葉がかなり残って、一部の株は、花まで咲かせて甘い香りを放っていた。

ヘリオトロープ
油断していて被害にあったヘリオトロープ

とはいえ、先日の雪の日、最低気温がマイナス4度まで下がったが、あまり防寒を強くしていない所に置いてあった株はこのとき茶色くなってしまった。この後黒くなってしまうのだろう。

また、もともと寒さに強い種類でも、例年よりものびのびと育っているものも結構ある。

フィバーフュー
青々としたフィバーフュー

キク科のフィバーフューなどは普段の年はもっと縮こまっているのだが、今年は青々。カモミールの仲間やジョチュウギクも同様である。

ローマンカモミール
ローマンカモミールもいつもの年よりも葉を広げている
イタリアンパセリ
昨年の大きな葉は落ちてしまったが、元気なイタリアンパセリ

涼しいのが好きなセリ科の仲間は当然元気。イタリアンパセリもまだ葉を残しているし、コリアンダーも少し葉は赤くなったが大きなダメージはない様子。

コリアンダー
コリアンダー

ディルも普段の年は茎も葉も赤っぽくというか、グレーがかったブラウンのような色になるのだが、今年はまだグリーンが残っている。

苗ではないのだが、この冬例年と大きく違ったことの一つが、店頭の軒下にある鉢植えのナスタチウム。普段の年ならば夏越しした株が秋半ばから咲き出して、クリスマスぐらいまでカラフルな花を楽しませてくれる。そしてクリスマス頃に寒さで溶けるようになくなってしまうのだが、今年は依然として咲き続けている。

ナスタチウム
鉢植えで気をつけていたとはいえ、この時期まで花を咲かせているナスタチウム

もちろん、先日の雪の時には店内に入れたので大きなダメージはなく、また外に出している。このまま強い風や霜に当てなければ春まで持つのでは・・・。という感じだ。案外気を抜いた春先にダメにしてしまうという可能性も強いのだが。

てんとう虫の春

春は駆け足でやってくるというが、もう3月という気持ちと、まだ3月という気持ちが入り混じっている。

畑の春はなおさら早い。気がつくと、雪が降る前に耕したところが一面草で覆われていた。

雑草

一方、ハーブたちはこちらの気も知らずにのんびりとしている。

ナスタチウム

冬の寒さで地上部がすべてふにゃふにゃになってしまったナスタチウムの苗も、ようやく一株、また一株と株元から新芽を出し始めてきた。株自体が傷んでいなければ今後徐々にその数も増えてくるのだろう。

そして、3月にもなると、山陰でも晴れの日が目立ってくる。その代わり、朝の気温は下がり、先日も白花クリーピングタイムがびっしりと霜に覆われていた。とはいえ、寒さには強いので全く心配はいらない。

ホワイトクリーピングタイム

昆虫たちもまだほとんど姿を見せないが、このあいだ、株分けしようとしたラムズイヤーからポトリとてんとう虫が落ちてきた。葉の陰で寝ていたのだろうか。

てんとう虫とラムズイヤーふわふわのラムズイヤーをお布団にするなんて、いい場所を見つけたものだ。

落ちてゴソゴソしたかと思っていたら、葉の付け根に頭を突っ込んでピクリともしない。まるで、朝お母さんに起こされたちいさな子供のような仕草に笑ってしまった。

本当は株を全部掘り上げて株分けしたかったのだが、自分がそうされたら・・・と考えるとしのびなくて、一部分はそのままにしておいた。またそれが広がったら株分けすればいいだけのことだ。てんとう虫の春ももうすぐやってくるだろう。それまで束の間、春の眠りを楽しんでほしい。

冬のナスタチウム

この時期、育苗に気をつかうハーブの一つがナスタチウム。

白状すると、どちらかといえば育てるのが不得意な部類にはいる。

ナスタチウム・ミルクメイド
花もよく咲くし、葉も花もつぼみも、柔らかな種子も食べられるのも嬉しい

種子も大きくて蒔きやすく、発芽も揃いやすいのだが、暑さにも寒さにもちょっと弱いところがある。春早すぎる種蒔きだと、せっかく発芽した苗を寒の戻りなどで傷めてしまうことが多い。でも、寒さに弱いからと春暖かくなってから種子を蒔くと、ほんの小さいうちに花を咲かせてしまう。

同じ一年草でもこれがジャーマンカモミールのように寒さに強ければ秋に蒔いてしっかり寒さに当てれば良いし、バジルのように暑さに強ければ春十分に暖かくなってから育て始めても問題はない。

かといって、とても寒さに弱いレモングラスのように、しっかり防寒しておくだけでよいという訳でもない。暖かい場所では妙にひょろひょろに伸びてしまう。なかなかに悩ましい性格なのである。

その代わりと言ってはなんだが、夏もある程度涼しい場所に移動してやれば秋からまた長く咲いてくれるし、冬が厳しくない場所なら寒さ対策をして冬越しをさせれば多年草として楽しむこともできる。

この頃はなるべく秋のうちに蒔いて、冬までにそれなりに大きくして冬越しの態勢をととのえるようにしているが、それでも寒さに厳しいここしばらくは寒さで傷まないかと心配が続く。

さて、そのナスタチウムだが、種子から育てる以上、ある程度花色の違うものが出てくることがある。

ナスタチウム・ミルクメイド
時々右のような色の株が育つことがある

この「ミルクメイド」というクリーム色の花が可愛らしい種類は、茎もうすい色で、葉も明るいグリーンなのだが、数十個のうち一つぐらいの割合で茎が赤みを帯びたものがでてくる。大抵そういう株は花もクリーム色ではなく、オレンジだったりするのだが、今年はなぜかこの冬の最中に蕾をつける株が多く、違う色のものを見つけるたびに間違えないように分けておく。

突然変異とか、先祖返りとか、色素がどうのこうのとか、理由はあるだろうが、ナスタチウムはナスタチウム。大抵は鉢植えになって店頭の彩りとして活躍するとになる。でも、去年の鉢がしっかり今年の冬も越しそうで、ナスタチウムの鉢ばかり増えていきそうな予感・・・。

早起きは種子とともに

夜明けが少しずつ早くなってきた。朝はそれほど苦手ではないほうだが、冬の間は他の季節に比べると布団から出るのがおっくうだ。

それでも2月も後半になると、明るくなるのが早くなってきたことと、もう一つ布団から抜け出すモチベーションが発生するので、朝起きだす時間が早くなりつつある。

春の苗のための種まきは種類にもよるが秋遅くから始まる。場所の都合もあるが、一気に撒いてしまうのではなく、種類を変えたり同じ種類でもずらしてまいてゆく。

とはいえ、気温が極端に時期は撒いた種子も発芽する種類は非常に少ない。そして、それらの種子が眠りから目覚め始めるのが少し暖かくなるこの時期なのだ。

毎年同じような種類の種子だし、年によって姿が変わるわけではない。それでも種子が発芽するのは待ち遠しく、発芽を見つけるとやはり嬉しい。毎日何かが発芽しているわけではないにせよ、春に向けた動きがあるというだけでも朝布団から出る気分がずいぶん違うのだ。

ハーブの場合、いろいろな種類があるので発芽の姿も様々。サイズも様々。仕事にもまだ余裕があるこの時期はじっくり観察するのもまた楽しいものだ。

イタリアンパセリの発芽

気温が低くてもよく発芽するイタリアンパセリ。少し気まぐれで、発芽するときはすごくたくさん出てきて困るが、同じパッケージでも「あれ?」と不思議に思うぐらい発芽しないこともある。
ジャーマンカモミールの発芽
ジャーマンカモミールは、とっても小さいが、ギザギザがついた本葉が出てくると見分けやすい。こぼれだねで生えてきても見つけやすい種類だと思う。
ローマンカモミールの発芽
こっちはローマンカモミール。いつもは株分けで増殖するので、発芽した姿は普段そんなに見かけない。
コリアンダーの発芽
以前も紹介したコリアンダー。たまに一つだけしか出てこないこともある。
ストロベリーの発芽
ルーゲンストロベリー。小さくてもしっかりイチゴの葉だ。ハーブも、種類によっては小さいうちと大きくなってから葉の形が違うものも結構あるが、これは見間違えることがない。
アニスヒソップの発芽
アニスヒソップは小さい上にあまり特色がない芽生え。本葉が出てくるとすこし分かりやすいが、零れ種で生えてきたら雑草と見分けるのは困難だ。
ナスタチウムの発馬
ナスタチウム。丸い葉の上に玉のように乗る露が魅力だが、発芽したばかりの葉にもしっかりと露が乗る。
カルドンの発芽
たくましく大きく育つカルドンは、発芽からして力強く土を押しのける。
チャービルの発芽
チャービルも割と気まぐれで、出るときにかぎってこんなにたくさん。分けるのが大変だ。
ローズマリーの発芽
普段は挿し木でばかり増やすので、これもお目にかかることが少ないローズマリーの発芽。親木の株元の零れ種である。

まだまだ数え切れないほどあるのだが、今日のところはこれまで。

ゆっくりとハーブたちの芽生えを観察できるのももう少し。本格的な春になるとそんな余裕もすくなくなるから、せいぜい今のうちにじっくりちいさな命のスタートを見つめてみたい。