種子ができても

一番西側のビニールハウスのすぐ横には、見上げるようなネムノキが生えている(正確には種子で芽生えたものをこの場所に移植したもの)。

今年の暑い夏も、このネムノキのおかげで程よい日陰ができて、ずいぶん涼しい思いをさせてもらった。もちろん、ビニールハウス自体にも寒冷紗を設置しているのだが、人工的な寒冷紗と、自然の葉によってできる陰の組み合わせが絶妙だったりする。これがどちらか一方ではうまくいかないのだ。枝が風にそよぐと、影も揺れて、それがまた涼感を増してくれる。今の時期は、ミンミンゼミが奥の山から降りてきてこの夏最後のコーラスを歌うステージとなっている。

今後冬に向けては落葉するので、毎年少しずつ枝の剪定を行う。あまり丈夫な樹ではないようなので、時々古い枝を外した方が良いようだ。そしてその枝は、一年ほど乾燥させて冬のストーブの良い焚き付けになって作業場を温めてくれる。こちらの方は、火持ちは良くないが、ストーブの焚きはじめや、一時的に火力を上げたいときには十分だ。

そう、夏前にはピンクの花もたくさん咲いて甘い香りを漂わせてくれるのも嬉しい。こうして一年中のように恩恵を与えてくれることには感謝するばかりだ。

そのネムノキに、種子がいっぱいできていた。毎年たくさん種子ができるのだが、株元にこぼれダネで発芽しているかというと、ほとんど見たことがない。ちょっと残念な気もするのだが、まあ、一本あれば十分かもしれない。

増え続けるウエイティングリスト

涼しくなったらこの種まきを、あれも挿し木を・・・と思っているうちにウエイティングリストにはどんどん候補が積み上がっている。

気温が高すぎてなかなか種まきや挿木ができないものも多い。気温がある程度低くならないとうまく発芽発根しない種類や、挿し木の場合はそもそも挿し木にむいた体勢になっていないものもある。

月桂樹もその一つで、暑さで傷んでその後また伸び始めたのか、妙に柔らかい枝が勢いよく伸びている(最初は暑さで枯れているかと思ったほどだが)。こういう柔らかい枝は挿し木をしても、腐りやすくてうまく発根まで行った試しがない(やり方が悪いのかもしれないが)。

お盆明けぐらいからずっと見ているがいまだにあまり変化がない。気温もその頃から変化がないからだろうか。この夏の異常な暑さの継続がこういったところへ影響が出ているようだ。とはいえ、

来週には涼しくなるとの予想だが、すぐには挿し木に適した状態にはなってくれるとは思えない。まだしばらくはウエイティングリストは増えるばかりかもしれない。

このパワーを

秋の初め、ふと甘い香りが漂ってきて、思わず何だろうかと探し、正体がわかってちょっとがっかり。それがクズの花だ。

ぶどうを思わせるような良い香りだし、花も結構大きいのだが、毎年この草には泣かされている。

地方の高速道路を通ると法面などが一面覆われているが、このパワーには驚かされる。圃場の前の山でも、20メートルぐらいの高さだろうか、木に巻きついて伸びているのをみるとびっくりする。

下からずっと伸びているのだろうか・・・根元が見てみたいが。

また、普段から隣の荒地からもいつも侵入の隙を狙っているのも葛である。数年前だっただろうか、畑の隅に根を下ろしたようで、掘り出そうとしたらとんでもない大きさの塊根に苦労させられた。真冬だったのに大汗をかいてようやく掘り上げた。

押し寄せるクズ

そう言った経験もあるので、荒地からの侵入をさせないよう、こまめに草刈りに励んでいる。

それにしても、毎年とんでもない勢いで伸びるこの力に苦労させられるたび、何かに利用できないだろうかと思う。

上手にコントロールさえできれば、日陰を作るのはたやすそうだ。だが、自分のビニールハウスで試す勇気はない。高速道路の法面に広がっているのも、コンクリート剥き出しよりは熱を抑える意味ではずいぶん役に立っているのではないだろうか。

先日川沿いを歩いていたら、頭上の方から「わーん」と唸るような音がするので見てみたらクズの花にミツバチが群れていた。蜜源にもなるのだろうか。ネットで少し調べたが、なるようなならないような、はっきりとはわからなかった。少なくとも、別の日に見た花には昆虫は訪れていなかった。

また、その名の通り、葛根としても知られているが、掘り出す労力は大変そうだ。ツルの強靭さは工芸にも使われるようだが、普段でも何かに使えないだろうか。

などなど、いろいろ利用方はありそうだし、それ以上に、このとんでもないスピードで伸びるパワー自体を活用できれば・・・と毎年のように考えるのだが暑さにやられてボーッとした頭では何も浮かんでこないのが残念至極だ。

花と葉と

毎日の通勤途中、道沿いの田んぼがついこの間までは一面のグリーンだったのに、いつの間にか黄金色に変わり、その黄金色もところどころ四角く刈り取られる場所が増えてきた。

黄金色に色づくのは稲穂の部分というイメージが強いが、実際には葉っぱも一緒に黄色くなる。葉の栄養分が実に送られるためだと言われている。

ハーブの仲間でも、花や種子ができる頃に葉が影響を受けるものは結構多い。バジルも、今、開花結実の時期を迎えて、葉が硬くなってしまい、甘くて柔らかい夏前の葉っぱが恋しい時期となった。

レモンバームも花が咲く頃は、ハーブティーにしようとしても、葉が小さく、みすぼらしくて困ってしまう。

斑入りのゼラニウムやタイムなども、花の時期には斑が見えづらくなったり(気温のせいもあるかもしれないが)、もうちょっとしたら咲くヒガンバナのようにそもそも葉がない時期に花を咲かせる種類もある。

今日も、水やりをしていたら、メキシカンスイートハーブが花を咲かせていた。こちらはもう何年にもなる親株だが、やはり葉の色が赤みを帯びてきた。少なくとも寒さや乾燥のせいではなさそうだし、花を咲かせるための栄養を葉が与えているのかもしれない。

ポット苗のメキシカンスイートハーブ

一方、夏前にポット上げした同じメキシカンスイートハーブの株は、花が咲いていても葉も青々。土もまだ新しいし、株にも余裕があるのだろうか。本当のところはわからないが。

狐の孫は狐

花壇の脇ではツユクサの青い色がちらほらしているし、お隣の畑の隅にはオミナエシの黄色が。野は秋の色が目立つようになってきた。

キツネノマゴ

夏の間、休憩場所になっているボダイジュの大木の下では、あちらこちらでキツネノマゴのピンク色の花が咲き始めている。

「キツネノマゴ」と聞いて、そういえば、キツネノマゴ科のハーブ、あったよな・・・思い出そうとするが、パッと出てこない。どうも小さなヴェロニカのような植物を連想してしまっていた。

帰って改めて調べたら、そうそう、アカンサスがキツネノマゴ科だったのだ。確かに、花穂と花の咲き方は共通点もあるかんじだ。

店頭にあるアカンサスの鉢。夏の間葉が全部落ちて、新しい葉がで始めていた

ついでに、キツネノマゴも確か薬用だったはず・・・と調べるうちに、茹でて食用になるとの記述も見つけた。今度試してみようか。