暑さに平気になれたら

少し前のブログでも述べたが、今年は稀に見る渇水だった。全国的には豪雨のニュースが目立ったので、他の地域の方には「去年のことですか?」と言われそうだが。甲信越のお客様からも、雨がなかったという話を聞いたので、雨の被害ばかりだったように思える夏でも渇水のところが他にもあったようだ。

当店の場合、雨不足は井戸の水量に直結するので深刻な問題だ。

渇水の兆候は、まず、畑のキウイの葉に現れる。ニュージーランドの果物というイメージが強いので(原産は中国だそうだ。長い間知らなかったが)、乾燥に強いような感じもするが、案外水分を必要とするらしいし、植えた場所のせいもあるようで、日照りが続くと葉が徐々に萎れていき、さらにはパラパラと落葉し始める。

少雨で水が貴重になってくると水をやるのも憚られるので、枝ごと剪定して負担を減らすが、今年は一株がほぼ落葉してしまい、情けないサイズの果実だけがなんとか残った。

それでも、先日の雨の後に復調したのか、落葉したところからすぐにみずみずしい葉が伸び始めてきた。今年も果実はあまり期待できないが、枯れることはなさそうだ。

もう秋なので、落葉したままでいいのに・・・とも思うのだが、まだ可能なうちは光合成したいのだろう。果実にもっとエネルギーを送りたいのだろうか。太ってくれるのは大歓迎だが。

そんな過酷な夏だったのだが、平気な顔で咲いているのが、カラミントの仲間たちである。

カラミント・ネペトイデス

日当たりも良くオープンな場所でむしろ徒長せずに形良く咲いているのがカラミント・ネペトイデス。これから気温が下がると花に紫色が混じってくるのも楽しみだ。

また、ネムノキの下で、しっとり咲いているのがレッサーカラミント。それほど強そうには見えないのだが、厳しい夏の終わりにもくたびれた様子を見せない。

毎年のように過激さが増してくる夏の暑さだが、これらの花たちのように平気になれたら・・・と、みるたびに思う秋の入り口だ。

蜂のお気に入り

昨日、開花中のカーネーションの中に一生懸命に潜り込んでいる蜂らしきものがいた。柔らかい花びらの奥に頭を突っ込んだまま、
「もしかして死んでるのかな?」
と思うぐらいピクリともしない。

ニッポンヒゲナガハナバチ

蜜を探しに来て昼寝でもしてるのかもと、そっとしておいた(だとしたらさぞ気持ちがよいことだろう)。下手に手を出して痛いめに会うのも嫌だしね。

翌朝、やはり同じ花の上でまた再会。よほどこの花が気に入ったようだ。時々目にする、触角がとても長い蜂らしき昆虫。触角が立派なだけで、なにか強そうな感じがする。朝でまだ気温が低いせいか、花の上をごそごそするばかり。潜り込む気配はなかった。

ニッポンヒゲナガハナバチ

後で調べてみるとニッポンヒゲナガハナバチという種類だった。

友人が、ビーガーデン(蜜蜂の蜜源となる花を集めたお庭)を作ったという話を聞いた。レッサーカラミントが蜜蜂は特にお気に入りだということだが、カーネーションも植えてあるのだろうか。

アピールは秋にこそ

他の季節に咲く花が、季節を忘れたかのように秋に咲くと思わぬ表情を見せることがある。秋の空気の中で咲くことももちろんその理由の一つだろう。そして思わぬ時に咲いたことを喜ぶ我々の心によるところも大きいに違いない。

コモンラベンダーが秋に咲くと、特に美しい。花数が少ないのは仕方がないが、しっとりと朝露を身にまとい、春よりもいちだんと濃く色づいた姿はまた格別である。残念ながら、今年の夏のコンディションがあまりよくなかったせいか、圃場では秋のラベンダーはあまり楽しめなかった。まあ、秋のラベンダーは夏越しが大変なこの地域では、夏の間良く管理が出来ましたという御褒美みたいなものだと思っている。

ウッドカラミント

そのかわり、今年はウッドカラミントがなかなか良い花を咲かせている。夏前に咲くよりもむしろ大輪で花の数も多いように思える。寒さのせいか、赤みも強いようだ。カラミント・ネペトイデスほど長期間は咲かないし、ラージフラワーカラミントのような大きな花ではないが、
「おいらも結構実力はあるんだぞ」
とアピールしているかのようだ。

出すぎる杭は・・・

「出る杭は打たれる」という言葉がある。学生時代のある同級生の語録には「出すぎる杭は打たれない」というのがあった。今、この言葉を少しだけ実感している。

圃場の一画に取り立てて何に使われるでも無いスペースがある。とりあえず芝を生やして時々刈り込んでいる。といっても、草も伸び放題、あまりケアをしないので「芝生」というにはちと無理がある状態だ。

こぼれ種で飛んできたのだろう、いつからかこの場所にレッサーカラミントの株が居座るようになった。他のカラミント(カラミンサ)も丈夫ではあるが、このレッサーカラミントは雑草並である。

レッサーカラミント

一気に大きくなり、あっという間にこの場所を定位置としてしまった。スタッフも申し合わせたわけではないのに、この株だけを残して草を刈るようになった。いまや貫録さえ漂わせている。長い梅雨をものともせず、元気に花を咲かせ続けている。ただ、やはりこぼれ種はかなり強力にはびこるので、まめに取り除くことにしている。

ところで、「出すぎる杭は打たれない」と豪語していた彼、出すぎる間も無く、どこかへ消えていったと記憶している。

夏の優等生

カラミント・ネペトイデスが、非常に良い具合である。春先には可愛らしい球状をしていたのに、順調に枝葉を伸ばし、すでに満開に近くなっている。

カラミント・ネペトイデス

この方は本当に手がかからない。夏前に咲き出すと、秋かなり遅くまで、松江なら11月ぐらいまで花を楽しませてくれる。切り戻しさえしなくても良い。一株は一株のままで増えて困ることはないし、何せ暑さに強い。その癖、結構な日陰でもコンディションを崩すことがない。

もう十年近く前になるが、ある公共施設で数年間鉢植えのディスプレイを担当したことがある。風がびゅんびゅん通り、日差しはガンガン、植物にとってはかなり過酷なコンディションであった。その上オーナーの「夏も花は絶やさないように」とのお達し。なんとか面目を保たせてくれたのがこのカラミント・ネペトイデスとロシアンセイジだった。今でも感謝している。

そう言ったこともあってひいき目もあるかも知れないにせよ、間違いなく夏の優等生である。通信簿には「5」をつけてあげよう。