レモングラスの花

当店のスタッフは、もちろん植物好きの者が多く、作業をしながらの会話も自分のうちで育てているハーブや野菜、植物の話になることも多い。

だが、それぞれがお互いの庭や畑に行くことはめったにない。休日の関係もあるが、案外同じ市内でも広範囲に散らばっているという理由もあるかもしれない。

昨日はそんななか、珍しくU君のところへ訪問。たぶん春以来になるだろうか。

目的は、先日の作業中の雑談のなかで出てきたレモングラスの花。秋になって、花らしきものが見え始めたというのだ。

話には聞いていたが、すくなくとも実物は見たことがなかったし、親株は当店のものなので、これは確かめなくてはと予定を立てた。

現地に到着してまずはそのレモングラスを見せてもらう。

 

実物を見たことがないので、はっきりとしたことは言えないが、花が咲く一歩手前といったところだろうか。茎がスッと伸びてその先に穂らしきものができかけている。

当店でも、シトロネラグラスは毎年のように開花する。もちろん、結実はうまくいかないようだが見た感じはとてもよく似ている。

このレモングラスが育っている場所は日光を遮るものがなく、一日中日が当たる。夏、暑さに弱い種類のハーブには過酷とも言えるような場所だ。さらに、風がよく吹く北西方向にビニールハウスが建っており、風を防いでいる。水分も十分に供給されるようで、今年の猛暑でしっかり成長したのだろう。残念ながら本格的な開花に至る前に秋が来てしまったようだ。

来年、もっと暑くなれば(勘弁してほしいが)、しっかりした開花が見られるかもしれない。

一方、なぜ当店の圃場では咲かないのだろう。

ビニールハウスのなかで地植えにでもすれば花も出てくるかもしれないが、少し前までは屋外の地植えでの越冬がギリギリだったこの地域なので春のスタートが遅めだ。そのうえ生産用に株分をしたり、強く剪定したりするし、当店の圃場は夕方、山影に覆われるのも影響しているのかもしれない。

思えば数十年前、レモングラスを初めて育てた時は越冬自体できるかどうか相当気をつかっていたし、失敗もした。それが今では越冬もそう苦労せず、まして花も見られるようになるとは・・・環境の変化を目の当たりにする事となった。

二年目の冬

比較的よい天気が続くので、ビニールハウス横の畑からレモングラスやその仲間、寒さに弱いハーブ類を掘り上げて株分けする作業が急ピッチで進んでいる。

できればもっと気温が高いうちに行う方が、寒くなるまでに根がしっかり張るのだが、今年はどうしても後回しの作業となってしまった。でも比較的暖かいのが幸いだ。

それでも先週までのところで、おおよその株は掘り上げが完了した。残りは一株を残すのみ。

ただ、この一株についてはどうしようか今でも迷っている。

このレモングラス、昨年春に地植えしたのだが、やhりこの時期、掘り上げるかどうか迷った末、暖冬傾向でもあるしこのまま一冬越させてみようということにした。時期的にも遅く、そのまま掘り上げるならまだしも、株分けをしても案外ロスも多そうだったという事情もあった。

ここ松江はレモングラスの地植えでの越冬が以前からギリギリの線だ。市内のお客様のお庭でも、放っておいても越冬するところもあれば、それなりに防寒してもダメという人も結構いる。当店の畑の場合、風が強いのと市内でも少し気温が低めなので、毎年試してはダメにしていた。

1月半ばの様子

ところが昨年の冬は、剪定もしなかったのが吉と出たのか、春先にはしっかりと芽が出始めた。こうなると地植えの場合は成長がはやい。夏までに横にも縦にも相当大きくなった。写真の通り、背丈ほどの高さだ。

正直、このサイズは掘り上げて株分けするのもちょっと大変。もう一冬、越せるかどうかチャレンジだ。

ただ、これ以上は根詰まりなどで老化しておそらく株も弱ってくるだろう。来年の春先の株分けは必須になりそうだ。忙しい春にそれができるかどうかも怪しいのだが。

たしか、この畑で二年目の冬を越したレモングラスは今までなかったはずだ。寒い中申し訳ない気もするが、なんとか越えてほしい。

いつもと違う冬の終わり

この冬、ここ松江は大雪こそ降らなかったが、いつまでも冬の空が続く。

2月に入ると、例年ならば天気が明らかに1月と異なることに気づかされる。数日に一度でも、春が近づいたような気にさせる気持ちの良い天気が見られるようになり、作業場の薪ストーブの薪の消費量も格段に少なくなる。

ところが今年は、いつまでも冬の空模様。朝起きて外を見ると、また路面が真っ白と言うことがここのところ毎日だ。

2月24日朝の雪。昨日は地面が見えていたのだが・・・

とはいえ、せいぜい1、2センチなので、大騒ぎするほどのことではないが、色々と作業に支障が出る。朝からビニールハウスに積もった雪を見ると少しゲンナリする。

屋根に雪があると冷蔵庫状態

ローズマリーの雪。折れるほどではない

ラベンダーの株も雪をしっかり被り、ローズマリーも白く雪化粧。枝が折れるような心配がないのはありがたいが。

毎年、この時期気をつける必要があるのが、急な暖かさと寒さによる苗の被害だ。

多くの苗はこの時期も出入り口や換気口を開けっぱなしにしているので、屋外と同じ気温。苗もそれをわかっているのでじっと我慢しているからあまり心配はない。

ところが、寒さに弱い苗はさすがに外気と同じでは寒さで枯れてしまうので二重のビニールハウスの中で冬を過ごす。

こちらのビニールハウスは夜はぴっちりと閉じて、昼は天気が良い日だけ空けているのだが、それでも温度が案外上下する。

寒さに弱い種類は、寒さへの備えをそもそもしようとしないので、少しでも動ける温度になると柔らかい葉を伸ばそうとする。

その葉が、寒さでやられてしまうのでこの時期は本当に神経を使う。

主な種類としては、フルーツセイジ。これも冬の間そこそこ伸びたりして、春先の寒の戻りで真っ黒と言うことがなん度もあった。今年もまだ気を緩めることができない。

それから一連のヘリオトロープ。ちょっと気温が上がると伸びはじめてしまって、先日一度、それほど寒い日ではなかったが、扉を閉め忘れて帰ったら、数日後傷みが見え始めてきた。

葉の先が黒っぽくなったのが前兆

また、ちょうどギリギリの温度なのか、ナスタチウムも成長はしないのに花を咲かせている。秋のポット上げが遅くなってしまい、冬前の発売に間に合わなかった株たちだ。花を咲かせてしまったことで春の成長がどうなるやら、いま1番心配な種類である。

一枚のビニールだけで寒さに耐えているレモングラスは、秋までは青々としていたのに、ずいぶん黄色っぽくなってしまった。

今朝のニュースで、週末からは気温が上昇するとのこと。春の成長が目に見える日も近いだろう。

寒いGWのスタートと苗たち

ゴールデンウィークがスタートしたが、ここ数年で稀に見る気温の低さ。

今朝も作業の取りかかりは防寒用にパーカを羽織らねばいけなかった。

天気がいいので最後に残った作業場の薪ストーブを片付けようとしたら、スタッフの一人が「昨日の夕方寒すぎて点けた」という。確かに我が家でもストーブをつけていたぐらいだから、片付けはもう一週間先延ばしにすることにした。

白花モッコウバラ

畑の端にある白花モッコウバラも、もう一歩まで蕾が膨らみながら咲かない。

白花モッコウバラ
4月12日の白花モッコウバラ

4月の12日にこんな感じだったので、GWを待たずに咲くのではという感じだったのだが、その後、気温が高い日が少なかったのだろう。

そういう調子なので、苗の育ちも非常にゆっくりだ。

バジルの苗

毎日のようにお問い合わせをいただいているバジルもまだこんな調子。少し前「GWが終わった頃には・・・」と答えていたのだが、それも怪しい。何年か前、4/20頃に発売したことがあるが、嘘のようだ。

先週、スタッフミーティングで「去年はもうレモンヴァーベナやレモングラスを発売していた」という話が出ていたのにこれも今年はまだまだ。

レモンヴァーベナもようやく枯れ枝から新芽が出てきてもう一歩。例年ならもう枝が3倍ぐらいに伸びている。レモングラスもまだ葉の伸びが弱々しい。

レモングラス

高い気温が好きなものだけではなく、冬に地上部がなくなって春に伸びてくるホップも普段の年よりのんびりとしている。

ホップなかにはまだ膨らんだ芽が地際に見えてきたというぐらいの株もあったりする。

もちろん、加温したり、ビニールハウスを密閉して温度をあげればもっと早く育てることはできるのだが、それは「病害虫さんいらっしゃい」と同じことなのでじっと我慢して気長に待っている。(ブログを見ていただいている皆様も、気長に待っていただくことになりそうです。暖かい地域の方は、お近くで手に入る苗をお求めいただいた方がいいかもしれません。)

一方で涼しいのが好きな種類は絶好調。

暑さや群れに弱い、レッドセイジ、ゴールデンセイジもおもわずニヤニヤするぐらいいい調子だし、イタリアンパセリやチャービル、コルシカンミントなども気持ちよさそうに育っている。

イタリアンパセリ

チャービルコルシカンミント

今年のGWは、涼しいのが好きな種類が満喫しているようだ。

中庸

気温がずいぶん高くなってきた。ようやくレモンヴァーベナやレモングラスに成長が見られるようになってきた。いままでほとんど育たなかったバジルも今後少しは成長が見られるだろう。畑の隅では太陽と競うかのようにポットマリーゴールドが鮮やかな花を咲かせ始めた。初夏も目の前である。

ポットマリーゴールド

冬の寒さで葉が全部落ちてしまったマートル。葉が傷むことはあっても、いままで全部落ちるようなことはなかったので、もしかしたら寒さで枯れてしまったのかもと半ば諦めていたが、4月も下旬となってようやく太い幹から真っ赤な芽が見え始めた。

マートル
鮮やかなグリーンの葉も、出だしは真っ赤!?

どうやら生きていたようだ。さすがに今年は開花はしないかもしれないがこのペースで復活してくれたらと思う。

さて、気温が上昇してくると、苗の水やりが特に難しくなってくる。冬場なら少々目を離していても急に水切れすることはないし、真夏ならジャンジャン水やりしてもまだ大丈夫だ。

ただ、この時期はちょうど苗たちの成長も重なる時期だし、気温の上下も激しい。また、湿度も急に低くなったり高くなったりして油断ができない。本当に気を使う。そんな条件なので水やりを管理するスタッフの間でも意見が別れることがある。

スタッフA氏は、乾燥しすぎるのを心配する。乾燥しすぎると、特に湿り気を好むハーブの場合などひどい場合は苗が枯れてしまうし、一旦土が乾ききってしまうと今度は水を吸いにくくなる。

スタッフB氏は、湿らせすぎるのを心配する。湿らせすぎると、乾燥を好むハーブは根腐れを起こしやすくなるし、根が伸びにくくなったり徒長や病害虫の原因になったりする。

どちらの言い分もそれぞれ理にかなっているのでどちらかに軍配を上げることは難しい。

ミントやレモングラスなどは、「ガンバレ~A!」とエールを送り、ラベンダーやタイムなどは「いいぞ!B!」と応援していることだろう。

いずれにせよ、湿らせ派と乾燥派、両方いることで育苗環境の中庸が保たれているに違いない。幸せな苗たちである。