このパワーを

秋の初め、ふと甘い香りが漂ってきて、思わず何だろうかと探し、正体がわかってちょっとがっかり。それがクズの花だ。

ぶどうを思わせるような良い香りだし、花も結構大きいのだが、毎年この草には泣かされている。

地方の高速道路を通ると法面などが一面覆われているが、このパワーには驚かされる。圃場の前の山でも、20メートルぐらいの高さだろうか、木に巻きついて伸びているのをみるとびっくりする。

下からずっと伸びているのだろうか・・・根元が見てみたいが。

また、普段から隣の荒地からもいつも侵入の隙を狙っているのも葛である。数年前だっただろうか、畑の隅に根を下ろしたようで、掘り出そうとしたらとんでもない大きさの塊根に苦労させられた。真冬だったのに大汗をかいてようやく掘り上げた。

押し寄せるクズ

そう言った経験もあるので、荒地からの侵入をさせないよう、こまめに草刈りに励んでいる。

それにしても、毎年とんでもない勢いで伸びるこの力に苦労させられるたび、何かに利用できないだろうかと思う。

上手にコントロールさえできれば、日陰を作るのはたやすそうだ。だが、自分のビニールハウスで試す勇気はない。高速道路の法面に広がっているのも、コンクリート剥き出しよりは熱を抑える意味ではずいぶん役に立っているのではないだろうか。

先日川沿いを歩いていたら、頭上の方から「わーん」と唸るような音がするので見てみたらクズの花にミツバチが群れていた。蜜源にもなるのだろうか。ネットで少し調べたが、なるようなならないような、はっきりとはわからなかった。少なくとも、別の日に見た花には昆虫は訪れていなかった。

また、その名の通り、葛根としても知られているが、掘り出す労力は大変そうだ。ツルの強靭さは工芸にも使われるようだが、普段でも何かに使えないだろうか。

などなど、いろいろ利用方はありそうだし、それ以上に、このとんでもないスピードで伸びるパワー自体を活用できれば・・・と毎年のように考えるのだが暑さにやられてボーッとした頭では何も浮かんでこないのが残念至極だ。

赤い結界

普段は目立たないのだが、お彼岸から10月初め、ビニールハウスの横にある畑に赤い四角の枠が現れる。

彼岸花である。

もう10年近く前になるだろうか、この場所はラベンダーの親木を集めて育てていた。

しかし、とにかくモグラの被害が酷かった。ラベンダーの根を直接食べるわけではないようだが、穴がたくさんあき、根が持ち上がってしまってどんどん傷むことに悩まされ続けていた。

そこで物は試しと、彼岸花の球根をこのスペースを囲むように植え付けてみたのである。

鼻のよいモグラは彼岸花の毒性も感じるのだろうか、結果、翌年からモグラの穴を見つけることがほぼなくなった。

モグラ避けとして「これはいい」と喜んだのだのも束の間、天敵のモグラがいなくなったことで、コガネムシが大発生。ラベンダーの根を大喜びで食べてしまった。モグラがいたころよりもひどい状況になってしまったのである。

仕方がなく、今はラベンダーのあとに、申し訳程度にいろいろ植えて、少々ねが食べられても残るようなものを育てているという感じだ。

彼岸花は今年も元気に咲いている。スタッフが時々膝の痛みや肩こり対策に球根を使うぐらいなので、減るどころか増える一方。せっかくなので、もう少し嵩上げして土の流出防止にどれだけ使えるか試してみようかな・・・なんて考えている。

雪の下から顔を出す

先月の大雪、1月25日の写真。おそらくこの冬で1番の積雪の時だろう。右側にハーブの親木たちがたくさん埋もれている。

これが今日の様子。ようやくほぼ全ての株が雪の下から顔を出した。念の為、それぞれの株を確認するが、やはりそれなりに被害は大きい。

ビニールハウスから滑り落ちた雪があるぶん、まだ一部、雪の下敷きになって横倒しになった枝もある。

今年もローズマリーはずいぶん枝折れ、裂けの被害にあった。毎年秋には、雪に備えて強く剪定してしまおうと思ってはいるのだが、「まだ冬の間に挿木に使うかも・・・」という中途半端な欲があって残してしまった株がこういう被害にあう。

この株は、確か去年か一昨年もそうとう裂けてしまった。えだを長く伸ばしていると雪で裂けてしまうということがわかったのだからきちんと剪定すれば良いだけなのに。教訓が生かされていないことをただ反省するばかり。

おそらく大丈夫だと思われるが、ホワイトセイジもずいぶん押し潰されてしまった。

ラベンダーも今回ところどころが折れてしまった。

今年被害を免れたのは、マートルの大株。今年ぐらいの大雪だと相当の枝折れが起こる。たまたま、秋にガーデナーのKさんに試しに剪定をお願いしたところ、太い枝だけを残して球状に刈り込んでくれた。「どうなるか・・・」と彼女も不安そうだったが、細い枝が透かれたおかげか、その間を雪が積もって行ったのだろう、全く被害なし。今年の秋もお願いせねばならない。

こうして、雪の下から顔を出してくれるハーブたちには毎回ドキドキさせられる。

ヒヤヒヤのこの季節なのだが、雪の下から顔を出してくれると嬉しいものもある。

昨日、ビニールハウスのご近所さんからいただいた蕗の薹。今年は出てくるのがちょっと早く、ずいぶん大きめだとか。早速、大量の蕗の薹味噌を作った。

これでしばらくは、日本酒を楽しむのには事欠かなさそうだ。

想像力・推察力の欠如と観察不足

例年よりはずいぶん気温が高めに推移しているとはいえ、着実に秋は深まり、冬ももうすぐそこまで来ている気配。

コリアンダー実生

零れ種のコリアンダーも勢い良く伸びている。あまりに密集していたので、少し前にきちんと畝を作ったところに何株か移植したのだが、そちらはあまり伸びが良くない。時期的には問題ないはずなのだが、やはり移植を嫌うというのがこういう時に良くわかる。

ブルーキャットミントとホトケノザ

ブルーキャットミントも秋の最後の花を咲かせている。その後ろでなぜかホトケノザが季節を間違えて咲き始めている。写真だけ見るといつの季節のものかわからないぐらいだ。

前回、

「植物を育ててみると発見が多く、観察力・想像力・推察力がついてくる」

なんて偉そうなことを書いていたのだが、そういう自分が想像力や推察力が欠如していたのでは開いた口がふさがらない。

この夏、井戸から水を引いてくるポンプが不調となった。蛇口を閉じてもポンプが止まらないのだ。原因はポンプのフィルターの掃除を怠ったために圧力スイッチに泥が詰まったことだった。大分解掃除が必要で暑い中本当に手こずった。

そして、先日。どうやらまた井戸ポンプの調子がおかしい。水圧は上がらないし、井戸から引いて分枝させた手洗い場の水を止めてもポンプは動いたまま。夏に分解したばかりなので、フィルターやパイプが詰まったかもしれないと、まずこれらを掃除した。汚れはそれほどでもなかったので、これで修理完了と思いきや、栓をひらいてもやはり水圧が弱いし、閉じてもポンプは動き続けている。

分解したのにまた分解か・・・と気分は重くなる。とてもすぐに取りかかる気にはなれず「明日にしよう」と先延ばしを決める。もうこの時点で、ポンプの圧力スイッチばかり疑っていた。

ところが、午後、井戸からの水を一度貯めておくタンクのところに行ってみると、水浸し!調べてみるとタンクへ通じるホースの途中でホーズバンドが緩んで水がだだ漏れになっているではないか。これではいくらポンプを直したところでポンプが止まるわけはない。

ホースバンド補修

早速修理に取り掛かり、ホースバンドもずいぶん錆びていたので新品と交換。修理は5分もかからず終わる。水栓を閉じたら、問題なくポンプも止まった。

圧力スイッチのことばかり考えていて、先で水漏れしていることに考えが及ばなかったとは・・・。我ながら呆れてしまったのである。想像力・推察力の欠如と観察不足だ。

ただ、ポンプを分解してからでなかったのが不幸中の幸い。これから少し時間に余裕もできる時期なので、本格的に寒くなる前に配管関係を見直すにも良いタイミングかもしれない。

物事は良い方に考えねばならないと気を取り直した一件だった。

育ててみなけりゃわからない

朝晩の気温がだいぶ下がってきた。早朝と夕方は、上着がないと厳しい。

一方、暑さが嫌いで涼しいのが大好きなハーブの仲間はきわめてご機嫌。

ゴールデンセイジゴールデンセイジもこの夏は本当にしんどそうだったのに、今は気持ちよさそうに鮮やかな葉を広げている。

ウーリーラベンダー

一時瀕死の状態だったウーリーラベンダーもすっかり回復。これぐらいふわっとした葉では今年の夏は特に厳しかったに違いない。これからますます白っぽくなっていくことだろう。

先日、この辺りでは最高峰とされる鳥取県の大山に登った。山麓までは毎年のように出かけるが、登山は何十年ぶり。

クルマバソウ
登山道の周りはクルマバソウ(ウッドラフ)がいたるところに

それにしても中高年女性の「山ガール」の多さにはびっくりした。とにかく賑やかで二人以上なら、降りてきても登ってきても遠くからすぐわかる。熊よけの鈴もいらないぐらいだ。それよりもこんなに急な坂を登りながらあんなにおしゃべりして息が切れないのが不思議だった。発声器官とべつに呼吸器官があるのだろうかと思えるぐらい(失礼!)。

さて、そんなすこし高齢の「山ガール」の集団の一人の方が、「友達に『山登りの何が楽しいの?』って聞かれるけど、登った人じゃないとわかんないわよね~」と言っていた。確かにその通りだと思う。自分も以前は楽しさがわからなかった。

大山山頂
大山山頂から米子・境港方面を望む

さて、観光客で賑わっている大山寺付近は紅葉はまだこれからという感じ。それでも標高1100メートルぐらいから葉の色の鮮やかさが増し、1200メートルを超えたあたりからは木々の色はまさにピーク。何度も足をとめて観入ることにことになった。

1100~1200メートル付近

我々は紅葉を「しているか」・「していないか」で見がちなところがあるが、その間の段階も存在する。落葉も今まで緑色をしていた葉が急に落ちるのではなく、徐々に縁のあたりが茶色くなったり、斑点が大きくなっていって茶色くなり、そして葉を落とす。

1000m付近の樹木
1000m付近の樹木

とはいえ、普段そういう途中経過を観察する場面は決して少なくない。この間も、続けて複数の方から下記のようなご質問を頂いたが、初めて育てる方にとっては驚くことなのだろう。

エルダーの葉が枯れていきます | ヘルプ・Q&A 

ボダイジュ
ボダイジュの葉も、落葉前はこのような感じ(当店圃場)

これも実際に育ててみなければわからないことだ。そういう意味でも植物を育ててみると発見が多く、観察力・想像力・推察力がついてくると思う。

さて、大山では更に高度を上げると植生が変わり、落葉樹の姿は減っていく。頂上付近になると、雪や寒さに耐えられるごく限られた灌木が主体となる。リアルタイムで植生の変化や草木が秋の初めの装いから、紅葉、冬にちかい姿に変わっていくのを見ることができる。植物を育てる人は登山することで、また一つ楽しみが増えるのではないだろうか。

サワフタギ
頂上付近のサワフタギ。ブルーの実が印象的

屋久島(だったかな?うろ覚え)では、亜熱帯から亜寒帯までの植生を体験出来るという。スタッフの一人はすでに訪れているが、自分もいつかは行ってみたいものだ。