こぼれダネはどこに?

こぼれダネで増えていくハーブは多い。とはいえ、そのハーブにとって条件が良い場所であればであり、なんでもというわけでもない。

割とよくある例として、ボリジはこぼれダネでよく発芽するのに、カモミールはしない、またはその逆も多い。全てがというわけではないようだが、わりとねっとりした畑のようなところではボリジのこぼれダネがよく発芽するようだし、さらっとした砂質の畑や花壇ではカモミールがよく芽生えるようだ。

当店の畑は、さらっとした方の土だと思うが、なんせ雑草が多く極小のカモミールの発芽など発見するのがほぼ無理だ。春になってかなり大きくなってから「なんとこんなところに」という感じで見つかる。しかも決して数は多くない。おそらく昆虫などに横取りされる種子も多いのだろう。

そんななか、確実にこぼれダネが見つかるスポットがある。

それが、売れ残った前シーズンのジャーマンカモミールのポットのなかである。意図的に花を残して種子を落としてもらうようにしているのだが、夏を超えた頃からぽつぽつと発芽を始める。そのため、普段ならすぐに片付けてしまうポットだが、数ヶ月放っておく必要もある。

まだ本葉がひと組しか出ていないようならいちどプラグに移植して大きくなるまでしばらく育ててポット上げを行う。ある程度大きくなっているのはそのままポット上げをすることもあるが、やはり少し根を伸ばしてからの方がその後の歩留まりは良い。

小さい芽はいちどプラグに移植。肩の凝る作業。

実はこの他にも普通に種まきもしているのだが、なぜかこちらのこぼれダネ(もとは同じ親株の種子なのだが)の方がその後の成長が良かったりする。一度紙やビニールに包まれてしまうのがいけないのか、過酷環境の方がいいのか、その辺はよくわからない。

少しだけ待ち遠しい寒波

晴れの日が少なくて毎日のようにどんよりした空が広がるのはいつもの年と変わらないが、今年は気温が妙に高い。

この冬、雪が降ったのはまだ1回、困るような積雪でもなかった。朝、作業に出かけるのが嫌になるほどの寒さの日があっただろうか。今朝もスクーターで畑へ向かったが、覚悟していたのにそれほど寒さを感じなかった。

これではいくら開けっ放しのビニールハウスでも、十分な寒さを苗たちが感じてくれるか若干心配だ(寒さに当たらないと春の成長が芳しくない種類も多い)。

一方で、目に見えて目立つのはアブラムシ。天敵もほとんどいないし、暖かな冬で活動が例年よりも活発のように見える。

ブラシで擦り落とすなど、対策は面倒だが、今の時期、育っているハーブを教えてくれているとも言える。葉が硬くなったローズマリーやタイムには見向きもせず、この季節でも柔らかく伸びようとするジャーマンカモミールやコリアンダーがお気に入りのレストランになっているようだ。

コリアンダーに着くアブラムシも、少しでも暖かい方がいいのだろう、先端の柔らかいけれど上に伸びている葉よりも地面近くにある、最初に育ってもう茶色くなり始めている葉によく見られる。

同じ意味かはわからないが、ふわふわとした細かい毛に覆われたカルドンの葉の裏もお気に入りのようだ。

 

当店で栽培しているグラス類は、レモングラスやシトロネラなど、寒さに弱いものが多いので、これらはもちろんこの時期はじっと耐えるように成長を止めている。これらにはアブラムシは全くいない。その代わり、冬でも青々と成長しているバニラグラスにはうんざりするほど集まっていた。急いで剪定したり「テデトール」で対策したが、細かいところは残っているだろう。

来週は寒波の予報が出ている。普段の年ならば気が重くなるが、今年は少しだけ待ち遠しい。害虫たちが春の勢いになるのを少しでも遅らせてほしいものだ。

早起きは種子とともに

夜明けが少しずつ早くなってきた。朝はそれほど苦手ではないほうだが、冬の間は他の季節に比べると布団から出るのがおっくうだ。

それでも2月も後半になると、明るくなるのが早くなってきたことと、もう一つ布団から抜け出すモチベーションが発生するので、朝起きだす時間が早くなりつつある。

春の苗のための種まきは種類にもよるが秋遅くから始まる。場所の都合もあるが、一気に撒いてしまうのではなく、種類を変えたり同じ種類でもずらしてまいてゆく。

とはいえ、気温が極端に時期は撒いた種子も発芽する種類は非常に少ない。そして、それらの種子が眠りから目覚め始めるのが少し暖かくなるこの時期なのだ。

毎年同じような種類の種子だし、年によって姿が変わるわけではない。それでも種子が発芽するのは待ち遠しく、発芽を見つけるとやはり嬉しい。毎日何かが発芽しているわけではないにせよ、春に向けた動きがあるというだけでも朝布団から出る気分がずいぶん違うのだ。

ハーブの場合、いろいろな種類があるので発芽の姿も様々。サイズも様々。仕事にもまだ余裕があるこの時期はじっくり観察するのもまた楽しいものだ。

イタリアンパセリの発芽

気温が低くてもよく発芽するイタリアンパセリ。少し気まぐれで、発芽するときはすごくたくさん出てきて困るが、同じパッケージでも「あれ?」と不思議に思うぐらい発芽しないこともある。
ジャーマンカモミールの発芽
ジャーマンカモミールは、とっても小さいが、ギザギザがついた本葉が出てくると見分けやすい。こぼれだねで生えてきても見つけやすい種類だと思う。
ローマンカモミールの発芽
こっちはローマンカモミール。いつもは株分けで増殖するので、発芽した姿は普段そんなに見かけない。
コリアンダーの発芽
以前も紹介したコリアンダー。たまに一つだけしか出てこないこともある。
ストロベリーの発芽
ルーゲンストロベリー。小さくてもしっかりイチゴの葉だ。ハーブも、種類によっては小さいうちと大きくなってから葉の形が違うものも結構あるが、これは見間違えることがない。
アニスヒソップの発芽
アニスヒソップは小さい上にあまり特色がない芽生え。本葉が出てくるとすこし分かりやすいが、零れ種で生えてきたら雑草と見分けるのは困難だ。
ナスタチウムの発馬
ナスタチウム。丸い葉の上に玉のように乗る露が魅力だが、発芽したばかりの葉にもしっかりと露が乗る。
カルドンの発芽
たくましく大きく育つカルドンは、発芽からして力強く土を押しのける。
チャービルの発芽
チャービルも割と気まぐれで、出るときにかぎってこんなにたくさん。分けるのが大変だ。
ローズマリーの発芽
普段は挿し木でばかり増やすので、これもお目にかかることが少ないローズマリーの発芽。親木の株元の零れ種である。

まだまだ数え切れないほどあるのだが、今日のところはこれまで。

ゆっくりとハーブたちの芽生えを観察できるのももう少し。本格的な春になるとそんな余裕もすくなくなるから、せいぜい今のうちにじっくりちいさな命のスタートを見つめてみたい。

太陽が低いので

12月、ついでに冬至前。寒い、日の出が遅いので、朝、ビニールハウスに入っても全く暖かさを感じない。
そもそも、曇りがちなこの季節、お日様も出ていなければハウス内があたたまるわけもないのだが。

夕方もあっという間に日が暮れるので、仕事が遅々として進まない。

太陽は低く、頼りなさげ。あの夏の容赦ない太陽光線はいったいどこへ行ってしまったのかという感じだ。

そもそも、山陰は日本海側特有の曇天続き、一週間に一度、半日でも青空が拝めれば御の字である。

もちろん、ハーブの成長は遅い。まだ冬は始まったばかりなのに、春になることばかり考えている。

ただ、愚痴をこぼしていてもはじまらない、こんな時にこそできる仕事、すべき仕事を見つけることが大事である。

春から秋は、仕事も多いし、仕事の途中で割り込んでくる雑多な用事も多い。時間をかけてゆっくり、丁寧に行う仕事は進めにくい。冬こそ、集中してそんな仕事に取り組むべき時期だ。

と、いうことで、今日行う仕事はナメクジ退治である。

※注意! ナメクジが苦手な方はこれ以降は読まれない方が良いかもしれません。

イモムシやバッタなど、葉を食い荒らす昆虫たちがなりをひそめている寒い時期でも、ナメクジだけは活動中。しかも、暖かいシーズンよりも一層目立たぬようしているせいか、本人たちを見かけることは少ないが、確かに痕跡を残している。

また、暖かい時期なら、カエルという天敵にお任せするということもできるが(というか、それしかできないが)、この時期はカエルもお休み中である。天敵も不在でやりたい放題させておくわけにはいかない。

場所は種まきをした鉢や、挿し木をしたプラグなどがまとめてあるビニールハウスだ。種まき後や挿し木をした後は、苗などよりもはるかに頻繁に水やりをするので湿り気も多い。さらに、発芽したばかりの柔らかい芽、挿し穂から落ちてくる葉など、美味しいものはたっぷり。しかも、プラグや鉢の下など、暗くて外敵が入ってきにくい隙間が豊富にある。しかも、結構暖かい。こんな暮らしやすい場所はないだろう。快適で、食べ物がたくさんあって、しかも安全。そんな場所があれば僕だって住みたい。

挿し木プラグ
挿し木をしたプラグの下は格好の隠れ家

寒い時期でも、ハーブの種類によっては種まきをすれば発芽するものがある。もちろん、成長は極めてゆっくりなので、貴重な発芽である。春に向けて大事に育てていきたいのに、それを無残に食い荒らされたのではたまらない。

ジャーマンカモミールの食害
上の写真も、せっかく発芽したジャーマンカモミールの種子だったのに、左下半分がごっそり食べられていた。

タイムの食害
こちらはタイム。ところどころ、茎を残して、上の方を食べられてしまったようだ。

普段、よく観察していないと、「発芽しないなあ・・・」と思っていたのに、実は食べられていただけだった。ということがよくある。ナメクジが活動するのが、主に暗い時間帯なので、現行犯逮捕につながりにくいのも厄介なのだ。

鉢やプラグをいちいちひっくり返して裏をチェックするなど、手間も根気もいるので、余裕があるこの時期にこそするべき仕事だ。ついでに、低い太陽が好都合だったりする。真夏の強い日差しの下では、暗がりになって見えにくいプラグの裏も、斜めから日が差すこの時期ならばよく見える。第一真夏に激アツのビニールハウス内でこんな仕事しても、長く続けられるわけもない。

ナメクジの排泄物
さて、ナメクジの痕跡はこれ、排泄物の跡だ。植物を食べた排泄物なのでさして汚いとは思わないが、あらためて見ると感心するぐらいだ。これぐらいたくさん付いていると大抵近くに潜んでいたりする。

 

ナメクジ
すぐ隣のプラグの裏で早速発見。結構複数でいることも多い。カップルなのか、寂しがり屋なのか?

 

鉢裏のナメクジ
鉢の裏の隙間は絶好の隠れ家だ。

ナメクジの卵
ときには、卵を見つけることもあるが、今日は見つからなかった。キラキラしていてとっても綺麗だが。
アシナガバチ
プラグをひっくり返していたら、こんな方もいらっしゃってちょっとびっくり。ここで冬越ししているようだ。ほとんど動かないので、危なくはないがやっぱり緊張する。
カエル
鉢の下で眠っていた子ガエルも発見。起こしてゴメン。春からまた頑張ってもらえるよう、チェックが済んだ鉢の近くへ移してやった。
陸貝
また、名前はわからないが、小さな陸貝もけっこう悪さをする。忙しい夏だと、この小ささでついつい見逃してしまいがち。でも、この時期なら入念に調べる気にもなる。

一つ一つ、プラグや鉢をひっくり返しては、裏を見回し、見つけては取り除く。さすがに全ての裏に見つかるほどではないけれど、5、6枚裏返していると一匹や二匹は見つかるのでそのたびに退場していただく。「キャッ、気持ち悪い」なんてことはないので、別に指で取り除いてもいいのだが、指に付いたヌルヌルは不快極まりない。性質的に隙間に入っていることも多いので、小枝や、はさみの先などでチョイと引っ掛けて落とすのだが、中にはかなり奥まったところにいらっしゃるので、引きずり出すのには苦労する。

「そういえば・・・」と、思い出して、店頭にあった害虫ばさみを持ってきた。
害虫ばさみ
なんてことない、小さな火バサミのようなものである。ただ、先端のつくりがかなり精度が高く、(全体的にも高いけど)この手の商品にあるようなちょっとしたイライラ感を沸かせるような粗雑さがなく、きっちり働いてくれる。火バサミでも、使っていると先端が開いてきて、つかみにくくなってくること、ありますよね。

しかも、この本気度の高いギザギザ!捕まえられたら観念するしかなさそうだ。もし、僕がナメクジだったら、このギザギザが迫ってきた瞬間、覚悟を決めてしまうだろう。
害虫ばさみでナメクジをキャッチ
奥の隙間に隠れているナメクジも確実キャッチ。うん、なかなか悪くない。取っ手中央部分の丸く拡がったところが上手く力を伝えるのだろうか、微妙な力の入れ加減もきっちり刃先に現れる。厚い手袋をしている時なんかには有効かもしれない。しかも、先端の合わせが良好なので相当小さなものも確実にキャッチできる。他の何かで代用することもできる、ちょっとした作業用のツールなのに、ここまで作り込む本気度はGoodである。

毛虫なんかも、種類がきちんとわかっていて、毒がないのなら、安心して「テデトール」できるのだが、年に何度かは、「これってなんだっけ?」という奴に遭遇することもある。そんな時にもよさそうだ。それに、さすがに手で掴むのはごめん願いたいムカデなんかも安心して掴めそうだ。ムカデって結構ツルツルしていてある意味ナメクジよりはるかに掴みにくいけど、このツールなら大丈夫だろう。

また、ピンセットでは弱すぎる、火バサミでは大きすぎという、ちょっとしたものを挟むのにも重宝しそう。ビニールハウスにも常備しておくと便利かも。

このまま、ここに置いておきたいが、店頭での作業用なので、見つかったら怒られそうだ。ビニールハウス用に一本調達しようか。

なんか、愚痴に始まり、最後は商品の紹介になってしまった。右上に、『広告』とはっきり表示しとかなきゃね。

 

害虫ばさみ

ジャーマンカモミール
タイム

人待つ間に

誰かを待たせることに比べればまだましとは言え、人を待つのは苦手である。特に、いつ来るか分からない相手を待っている間は他のことがなかなか手に付かない。

それでも圃場にいる時ならば、いざ来客が合った時にもすぐに手を止めることの出来る作業がいくつかあるのでまだましな方だ。ちょっとした片付けや、草取りなどはこんな時に持って来いの仕事である。

今日も午前中、ある方と約束があったので、いらっしゃるまでに草刈りをして過ごすことにした。

草刈りも「○○時までに終えて次の仕事を・・・」というような場合と違って、いつ手を止めても良いつもりで行なえば、かえって気が楽で丁寧に作業が進む。普段なら見落としてしまいそうなこぼれ種のジャーマンカモミールも雑草の中で見つけ、草刈機を動かす手を止めた。来年、この当りに広がってくれることを期待しつつ、丁寧に残しておいた。普段なら分からず周りの雑草と一緒に刈ってしまっている所だ。

ジャーマンカモミール

9時過ぎから始めた草刈り、おそらく10時ぐらいにはいらっしゃると思っていた方が顔を出されたのは11時過ぎてからであった。おかげで、大半の草刈りが済んでしまった。