夏を耐えたギンヨウボダイジュ

9月に入り、今日からしばらく気温が高くなりそうな予報が出ているが、せいぜい30度を少し超える程度で、着々と秋に向かいつつある感じがする。圃場の周りでも例年のように奥の山からミンミンゼミがおりてきて日中はかなり大きな声で鳴いているし、朝夕は草むらの虫の声も盛大になってきた。

夏の盛りを過ぎると花を咲かせるレウコジャム・オータムナーレ(レウコユム)も、満開になり、秋の風に花を揺らしている。今年も種子をたくさんつけ始めていてちいさいながら花壇で着実に勢力をひろめつつある。

昨年と大きく違うのはやはり梅雨明けが20日ぐらい遅かったこと。昨年は梅雨明けも早くそれからずっと雨が降らなかったので、ビニールハウス前のギンヨウボダイジュも秋を待たずに落葉してしまった。同じく、キウイも水やりをしていたのにも関わらず葉が全部落ちてしまった。

ギンヨウ菩提樹
昨年8月下旬のギンヨウボダイジュ。すでに左側がかなり葉が落ちているが、このあと葉が全ておちていった。

ところが、今年のギンヨウボダイジュは少し葉は傷んでいるものの、葉がしっかり残っている。キウイについては水やりもしなかったのだが、なんとか硬い葉が残っている。

ギンヨウ菩提樹
今年のギンヨウボダイジュ

葉が残って、日陰を作ってくれるのは嬉しいが、ひとつ残念なのはこの先紅葉せず、あまりぱっとしない茶色でカサカサの葉になって落ちてくること。

そのぶん、春の新芽は思わず頬が緩むほど綺麗な色を見せてくれるのでそこまで望むのは欲張りすぎか。

山菜おじさん

現れるとわかっているものが、なかなか現れないと心配になるものだ。

ハーブの中にも夏の間地上部をなくして暑い夏を乗り越え、秋になると顔をのぞかせるものがいる。

アカンサスなどその代表だろう。ちょうど夏前に花をさかせることも関係しているのかもしれないが、場合によっては1メートル近くになる大きな葉を夏の間保たせるのは想像しても大変そうだ。

なので、花が終わると溶けるかのように古い葉がどんどん落ちていく。案外涼しい地域ではそれほどでもないかもしれないが、はじめて育てる人はきっと枯れてしまうのではと驚くに違いない。

アカンサス
日陰の庭のアカンサス・モリス。古い葉が枯れ始めている。8月10日

しかし、太い根がしっかり地下に残り、涼しくなる頃また元気に葉をのぞかせる。日陰など、涼しい環境では古い葉が落ちた後まもなく新芽をのぞかせることもある。

アカンサス
8月10日。株元ではすでに新芽が顔をのぞかせている。

ところが、今年は畑のアカンサスがなかなか芽を出さない。植えている場所はわざと雑草を茂らせて少しでも直射日光が株元に当たらないようにしていたのだが、株の老化か、腐ってしまったかとかなり心配していた。

今日、周りの伸びた雑草を掻き分けてみると、ようやく10センチほどに伸びた芽が出ていて一安心した。

秋のアカンサス
アカンサス・スピノサス。ようやく芽を出した。

もうひとつなかなか秋の葉が出なかったのが、ポット苗のレウコジャム(レウコユム)。たいてい、ゴールデンウイーク頃に葉が枯れ始め、調子が良いと夏の盛りに葉も出さずに突然花をさかせることもあるのだが、今年は花も咲かないし、新しい葉も出てこない。球根なので水のやりすぎで腐ってしまったのかとこちらも心配したが、ようやく葉が伸びてきて胸をなで下ろしている。

レウコジャム

ところで、どこのどなたかは存じあげないが、いつも定期的に圃場の前にやってくるおじさんがいる。圃場の前まで自転車でやってきて向かいの建物の陰に自転車を止め、圃場の裏の山道を上がっていく。1、2時間すると袋を持って降りてくるので、どうやら山菜などを収穫に来ていらっしゃるようだ。

山菜おじさんの自転車
山菜おじさんの定位置

春ならば「そろそろタラの芽が伸びてきたかな?」と思われる日には必ずやってくるし、秋なら雨が降った後に晴れ上がった日。そう、ちょうど今日のような日に現れる。キノコがターゲットなのかもしれない。少し遠くからやってこられるようで、地元に住むスタッフも誰かわからないようだ。なのでスタッフの間では「山菜おじさん」と呼ばれている。

山菜おじさんはだいたい作業をしている午前中にやってくるし、スタンドを下ろす「ガチャン」という音で大抵気付くのだが、昨年ぐらいからぱっと見かけなくなった。「山菜おじさん、こられないねぇ」なんて話していたところである。体調が悪いのか、何かの事情でもう山菜採りはやめられたのか、どこの誰か知らないにしてもやはりすこし心配で気になっていた。

ところが、今朝突然山菜おじさんが現れた。

「山菜おじさん、やってきたぞ!!」

と、スタッフにも山菜おじさんが来たことを告げたのだが、同時に、近頃目にしなかった理由がわかった。

なんと、山菜おじさん、自転車を新調していた。それまでのママチャリから電動自転車に変えていたのだ。それまでは山道の入り口であるビニールハウスの前にママチャリを止めていたのに、今日は急な山道をそのまま電動自転車ですいーっと登って行ったのだ!!

坂道
この坂道をスイーッとこいで、山の中に消えていった。

なんだ、そうだったのか・・・。1時間後、ちょっとでも心配して損した気分になっていた我々の前をスイーッと自転車で降りてきた山菜おじさん。カゴには収穫物を入れたビニール袋が乗っていた。電動自転車に変えた以上に、こぐ姿は軽やかであった。

秋になーれ

今朝は本当に久しぶりの涼しい朝だった。圃場の温度計では最低気温が19℃を記録していた。

お昼近くなっても、風が爽やかで、作業で書いた汗も少し日陰に入るだけですっと引く。その汗もこの間までのねっとりした汗ではないのでなおさら気持ちがいい。

ゲンノショウコ
ゲンノショウコも咲き始めてきた

周囲にも秋を思わせる花が見られるようになってきた。

露草
少し前から咲いていたが、秋はなおさら青色が爽やかに思えるツユクサ

「うん、今日から秋!」という感じである。

春なら桜が咲くと目に見えて春の到来を感じるし、「梅雨入り」「梅雨明け」なんていう言葉もある。「梅雨明け」はすなわち夏のスタートだ、冬なら初雪や木枯らしで冬が来たことを強く感じる。

ところが、秋となると、なんとなく夏がダラダラと続いて、いつのまにか、なんとなく秋だなぁ。と感じるぐらいだ。「立秋」の言葉もあるとはいえ、夏真っ只中という年がほとんどだろう。

秋が好きな自分としては、ぜひ「夏明け」とか、「秋入り」という言葉があってほしい。

気がつくと、圃場の前の木の下にレウコジャム・オータムナーレが数輪花を咲かせていた。昨日まで咲いていなかったように思うのだが。

leucojum

「オータムナーレ」、名前からして秋にふさわしい花である。

よし、来年からは、この場所でレウコジャムが咲いた日から「秋」ということにしよう!

初秋の朝

朝夕の空気がとても気持ちが良い季節になってきた。

早朝、草にしっとりと露が降り、すこし歩くだけでも靴を濡らす。
朝の芝生
雑草混じりで、日中はみすぼらしく見える芝生も、この時間だけは別なのである。

さて、この芝生の隅に、何年前からかレウコジャム(レウコユム)が芽を出した。おそらく種子で飛んできたのだろうが、この圃場では地植えしているところはない。すべて鉢植えや苗で管理しているから、それらから落ちたのだろう。

きっと最初は一粒だったかもしれない。毎年ゆっくりではあるが、徐々に分球しているのか、年を追うごとに花の数が増えていく。
レウコジャム
スタッフも芝刈りをするときには気をつけているようで、芽を出す頃になるとこの周りだけは残している。

芝生にぽつんと咲いているのも、ちょっと寂しげではあるが、凛とした風情が伝わってくる。

今の時期、夏のくたびれでダラダラとなったハーブたちもたくさんある。それに比べ、こんなに繊細ながらもしゃんと背筋を伸ばしている姿をみるとこちらの気持ちまで引き締まってくるようだ。

そろそろ、周りからこぼれ種で芽を出してくるのがあるかもと時々チェックしている。来年の秋も楽しみである。

なぜか楽しい

今年の秋は、なんとなく秋咲きの球根の開花が遅いようだ。店の横のレウコジャム(レウコユム)・オータムナーレ、・・・この頃は秋咲きスノーフレークと呼ばれることも多いようだけど・・・、昨年まではたいてい8月中に咲き始めていたのに、今年はなかなか開花する様子を見せず、ずいぶん心配していたが9月も半ばを過ぎてからようやく咲き始めた。

 

レウコジャム・オータムナーレ

夏の真っ盛りに小さな小さな花がけなげに咲いているのを見ると可愛らしくてしょうがないのだが、こちらも暑さでくたびれているころなので、せいぜい朝のうちしかゆっくりと眺める気にはならない。そのうえ、お盆過ぎで草取りも「もうイヤ・・・」となりつつある頃だ。草丈の低い彼らは周りを雑草に覆われようものなら全く見つけてもらえないだろう。

ところが今年は思わず遅く咲いてくれたのが功を奏した。秋風に吹かれつつ、ゆっくりと眺めることができ、「いいタイミングで咲いてくれた」と喜んでいる。毎年徐々に分球しているようで、少しずつ花数が増えていくのはやっぱり楽しいものだ。たとえ圃場では同じものを一生懸命株分けしているとしても・・・。