好き嫌い

植物を育て始めた頃は、病気や害虫が発生すると、とても焦って恐れたものだ。初心者の時には原因もわからず、害虫の種類もよくわかっていないので仕方がないのだが。

それが長年育てることで少しずつでも病気や害虫のことがわかるようになってきてあまり慌てなくなる。「そろそろ出てくるかな」という予想も結構当たる。当たらない夏の天気予報よりも確率は高いと思う。

それでも、油断していると思わぬ被害を受けることがある。

今年の夏はあまりに気温が高く、日射も強かったので、葉が柔らかくてすぐに乾いてしまうフルーツセイジを日陰に置いていた。暑さ自体には相当強いので、少々水が切れようと日向に置いておけばよかったのだが、例年よりも葉が柔らかく育ってしまったのだろう。気がつくと一気にベニフキノメイガの幼虫の餌食になっていた。

ベニフキノメイガの幼虫は結構すばしっこいし、糸の中に隠れているので、丁寧に取り除くのは結構面倒だが仕方がない。

でもこれが、初心者の頃だったら手前に置いてあるスイートバイオレットの苗の心配もしてしまったことだろう。「これにも移ってしまうんじゃないか」と、不安になったに違いない。

だが幸いに、ベニフキノメイガはシソ科専門。隣がローズマリーやタイムなら危ないが、スミレはお好みではない。隣にあってもまったくOKだ。そのかわり、もう少ししたら必ずと言ってもいいほど現れるツマグロヒョウモンの幼虫の出現に目を光らせる必要はある。

また、この時期よく見かけるのがスズメガの幼虫(ベニスズメ?)。例年は、ビニールハウスの周囲に生えるヤブガラシによく付いていて草取りをしている時にびっくりすることがあるのだが、今年は日陰を作ろうと企んでいるブドウの葉にもしっかりつき始めた。

ここで育てているハーブにはブドウの仲間はないので、気にする必要はないのだが、このブドウは来年に向けてしっかり株を充実させたいから退去してもらう。

とりあえず外のヤブガラシに移動してもらった。ヤブガラシならいくら食べてもらっても構わない。というか、食べ尽くしてもらうと助かるぐらいだ。

ラベンダーに絡みつくヤブガラシ。蒸れに弱いラベンダーにとってはあまりよくない

ヤブガラシに移動して、しばらく観察していたが、あまりお気に召さない様子だ。

柑橘の葉を食べるアゲハの幼虫も、柑橘の種類が違うと嫌がると聞く。この辺も好き嫌いやこだわりがあるのだろうか。それとも食草自体が違う別の種類だろうか。昆虫は難しい。

雪の下から顔を出す

先月の大雪、1月25日の写真。おそらくこの冬で1番の積雪の時だろう。右側にハーブの親木たちがたくさん埋もれている。

これが今日の様子。ようやくほぼ全ての株が雪の下から顔を出した。念の為、それぞれの株を確認するが、やはりそれなりに被害は大きい。

ビニールハウスから滑り落ちた雪があるぶん、まだ一部、雪の下敷きになって横倒しになった枝もある。

今年もローズマリーはずいぶん枝折れ、裂けの被害にあった。毎年秋には、雪に備えて強く剪定してしまおうと思ってはいるのだが、「まだ冬の間に挿木に使うかも・・・」という中途半端な欲があって残してしまった株がこういう被害にあう。

この株は、確か去年か一昨年もそうとう裂けてしまった。えだを長く伸ばしていると雪で裂けてしまうということがわかったのだからきちんと剪定すれば良いだけなのに。教訓が生かされていないことをただ反省するばかり。

おそらく大丈夫だと思われるが、ホワイトセイジもずいぶん押し潰されてしまった。

ラベンダーも今回ところどころが折れてしまった。

今年被害を免れたのは、マートルの大株。今年ぐらいの大雪だと相当の枝折れが起こる。たまたま、秋にガーデナーのKさんに試しに剪定をお願いしたところ、太い枝だけを残して球状に刈り込んでくれた。「どうなるか・・・」と彼女も不安そうだったが、細い枝が透かれたおかげか、その間を雪が積もって行ったのだろう、全く被害なし。今年の秋もお願いせねばならない。

こうして、雪の下から顔を出してくれるハーブたちには毎回ドキドキさせられる。

ヒヤヒヤのこの季節なのだが、雪の下から顔を出してくれると嬉しいものもある。

昨日、ビニールハウスのご近所さんからいただいた蕗の薹。今年は出てくるのがちょっと早く、ずいぶん大きめだとか。早速、大量の蕗の薹味噌を作った。

これでしばらくは、日本酒を楽しむのには事欠かなさそうだ。

いつもと違う冬の終わり

この冬、ここ松江は大雪こそ降らなかったが、いつまでも冬の空が続く。

2月に入ると、例年ならば天気が明らかに1月と異なることに気づかされる。数日に一度でも、春が近づいたような気にさせる気持ちの良い天気が見られるようになり、作業場の薪ストーブの薪の消費量も格段に少なくなる。

ところが今年は、いつまでも冬の空模様。朝起きて外を見ると、また路面が真っ白と言うことがここのところ毎日だ。

2月24日朝の雪。昨日は地面が見えていたのだが・・・

とはいえ、せいぜい1、2センチなので、大騒ぎするほどのことではないが、色々と作業に支障が出る。朝からビニールハウスに積もった雪を見ると少しゲンナリする。

屋根に雪があると冷蔵庫状態

ローズマリーの雪。折れるほどではない

ラベンダーの株も雪をしっかり被り、ローズマリーも白く雪化粧。枝が折れるような心配がないのはありがたいが。

毎年、この時期気をつける必要があるのが、急な暖かさと寒さによる苗の被害だ。

多くの苗はこの時期も出入り口や換気口を開けっぱなしにしているので、屋外と同じ気温。苗もそれをわかっているのでじっと我慢しているからあまり心配はない。

ところが、寒さに弱い苗はさすがに外気と同じでは寒さで枯れてしまうので二重のビニールハウスの中で冬を過ごす。

こちらのビニールハウスは夜はぴっちりと閉じて、昼は天気が良い日だけ空けているのだが、それでも温度が案外上下する。

寒さに弱い種類は、寒さへの備えをそもそもしようとしないので、少しでも動ける温度になると柔らかい葉を伸ばそうとする。

その葉が、寒さでやられてしまうのでこの時期は本当に神経を使う。

主な種類としては、フルーツセイジ。これも冬の間そこそこ伸びたりして、春先の寒の戻りで真っ黒と言うことがなん度もあった。今年もまだ気を緩めることができない。

それから一連のヘリオトロープ。ちょっと気温が上がると伸びはじめてしまって、先日一度、それほど寒い日ではなかったが、扉を閉め忘れて帰ったら、数日後傷みが見え始めてきた。

葉の先が黒っぽくなったのが前兆

また、ちょうどギリギリの温度なのか、ナスタチウムも成長はしないのに花を咲かせている。秋のポット上げが遅くなってしまい、冬前の発売に間に合わなかった株たちだ。花を咲かせてしまったことで春の成長がどうなるやら、いま1番心配な種類である。

一枚のビニールだけで寒さに耐えているレモングラスは、秋までは青々としていたのに、ずいぶん黄色っぽくなってしまった。

今朝のニュースで、週末からは気温が上昇するとのこと。春の成長が目に見える日も近いだろう。

ラベル一枚で一年を棒に振る

5月になった日、待ちに待った一株のセイジの蕾がふくらみ、ようやく花が咲いた。

おそらく植えたのは昨年かその前の冬だと思う。これで一年以上曖昧だったことにようやく決着がついた。ピンクフラワーセイジで間違いない。

わざわざ植えたのだから、原種でありきたりのブルーのセイジとは思えない。おぼろげな記憶ではピンクか白だと覚えているけれど、それがはっきりしない。葉の感じから、白ではなさそうとはいえ、こればっかりは断言できにくい。

もちろん、植えた時に株元に何本か名札のラベルを挿したり、埋めたりしているはずだ。しかし、昨年夏頃にいくら周囲を探しても見つからなかった。

草取りの際には特にラベルには注意するように皆に周知してある。ところが何かわからないが、野生動物がラベルにいたずらをするのだ。

何かにかじられた跡

被害にあったラベルは上の方にかじったあとがある。おそらく、我々がガムを噛むように、噛むと気持ちが良いのだろう。それはいいが、引き抜いて投げ散らかされるので困ったものだ。

酷い場合は割れてしまう

その対策のために、一部のラベルは埋めるようにしている。なので、ラベルが見えなくなったらとりあえず周囲を少し掘ると大抵出てくるものだ。ところがこの株の場合はいくら探しても見つからなかった。そのため、秋に挿し木の親木にしようとしても、種類がわからないので見送らざるを得なかった。

今回もラベルをしっかりと埋めておく

以前、この場所はラベンダーを何種類も植えていた。その時はさらなる安全策としてノートに植えた種類を図で記載するようこころがけていた。今はいろいろな種類を植える場所になったため、ノートの記載までは怠っていたのも悪かった。

一週間ほど経ち、今、開花も真っ盛り。咲き終わったらしっかり剪定して株の充実を図り、秋にはまた挿し木の親木として働いてもらいたい。夏の蒸れとコガネムシの幼虫の食害がなければ・・・だが。

草刈りはじめ

まだ霜が降りる日も時々あるので、地植えのハーブは多くがまだ冬のたたずまい。一方で雑草達はいち早く春の成長をスタートさせている。

毎年同じ場所に咲く、たぶん白花のタンポポ

畑の脇では、タンポポが綿帽子をつけていた。いつ咲いたかもわからないぐらいなのに。つくしも顔を覗かせ始めている。

法面の柳も、柔らかな新芽を一気に伸ばし始めた。

一方ハーブの仲間はといえば、目立つのはまだスイートバイオレットぐらいだろうか。気温が上がるといい香りも漂うのだが、低い気温ではずいぶん近寄らないと香りがわからない。

そんな今日は草刈りはじめである。もちろん、伸び始めたとはいえ、雑草の丈はまだ低いので、今からめくじらを立てて草刈りをする必要はないのだが、本格的に忙しくなる前に、井戸掃除と溝掃除だけは完了しておく必要がある。その前準備としての草刈りだ。

例によって、数ヶ月ぶりに動かす草刈り機はなかなかエンジンがかからない。スターターケーブルを何回も引っ張っているうちに、汗が出てきた。草刈り機の暖機の前に、人間の暖機が完了する。

もう十数年も使っている草刈り機、今はボタン一つでエンジンがかかったり、それどころかバッテリータイプの軽量なモデルも普及してきた。そんなニューモデルに時々心引かれることもあるのだが、斜面で石だらけの場所で、かなり荒く扱い続けても特に大きな故障もなく動いている一台。手放しにくく、パーツを色々と変えながらも使い続けている。

草刈りする場所は毎回同じなので、どのあたりに石が多いのかとかもわかっているし、体の使い方も身に付いてはいるのだが、数ヶ月ぶりの草刈りに、しばらくすると腰が痛くなってきた。

今日は特に地面ギリギリを草刈りするので、細かい石が飛んでくる。メガネはしているので目は安心とはいえ、そろそろフェイスシールドも使った方がいいかな・・・とか思いつつ作業は進む。

昨年、大きな花を咲かせたクラリーセイジの近くに、零れ種から発芽した小さな株がいくつも見つかった。そのうち一つは、気がつくのが遅れ、スッパリと切ってしまった。

クラリーセイジのこぼれ種子からの発芽。

まだ小さいので、いくらでも移植ができる。「あのあたりが空いているから、二株」「上の畑の奥の方にも一株・・・」「それよりも・・・」とか考えているうちに、おおよそ必要な草刈りは終わってしまった。

これから秋まで続く草刈り作業を考えると少し気が重いが、気分転換と運動と思って楽しんで励みたい。