狐の孫は狐

花壇の脇ではツユクサの青い色がちらほらしているし、お隣の畑の隅にはオミナエシの黄色が。野は秋の色が目立つようになってきた。

キツネノマゴ

夏の間、休憩場所になっているボダイジュの大木の下では、あちらこちらでキツネノマゴのピンク色の花が咲き始めている。

「キツネノマゴ」と聞いて、そういえば、キツネノマゴ科のハーブ、あったよな・・・思い出そうとするが、パッと出てこない。どうも小さなヴェロニカのような植物を連想してしまっていた。

帰って改めて調べたら、そうそう、アカンサスがキツネノマゴ科だったのだ。確かに、花穂と花の咲き方は共通点もあるかんじだ。

店頭にあるアカンサスの鉢。夏の間葉が全部落ちて、新しい葉がで始めていた

ついでに、キツネノマゴも確か薬用だったはず・・・と調べるうちに、茹でて食用になるとの記述も見つけた。今度試してみようか。

庭仕事に同行

今日は久しぶりに庭仕事に出かけることになった。

もう20年近いおつきあいで庭づくりをさせていただいているお客様から、庭がすごいことになっているので少し手を入れて欲しいとの要請。今年前半は主に他のスタッフが出かけていたのだが、時には様子も見ておきたいので同行することにした。

今年の春はバラを中心にとても楽しめたと喜んでいただけたのが嬉しかった。何年も咲かずに「どうしてかしら」と言われ続けていた白花のモッコウバラもとてもよく咲いたというし、庭の奥のつるバラも絶好調だったという。更に、普段の年はところどころ咲くことが多いスイートブライアーローズも満開だったとのこと。ローズヒップの多さがそれを物語っている。確かにこんなにローズヒップがついているのは見たことがない。

スイートブライアーローズのローズヒップ
スイートブライアーローズのローズヒップ

つるバラの下はかなりのシェードになるため、日陰に耐えれるようにアカンサスモリスを植えているが、これも何本もの花茎の名残が枯れたまま残っていた。どうやら花の数も結構咲いたようだ。

アカンサスモリスの株元の新芽
アカンサスモリスの株元の新芽

夏を迎えると枯れてしまう大きな葉の株元から、小さな芽が顔を出していた。冬にかけてまたつやつやとした葉を広げてくれるだろう。もうこの場所はほとんど手を入れなくてもよくなった。バラの肥料も2年ほど前から与えていないが毎年よく咲くし、パープルペリウィンクルがびっしりと増えたので草取りも短時間で終わる。むしろ広がり過ぎたところをバサバサと刈り取るぐらいだ。

このお庭のお手入れは午前中でほぼ完了。午後は近所の別のお庭へ。お庭の中心には長年サンカクバアカシアが枝を広げ、春には明るい黄色で目を楽しませてくれていたが、幹におそらくテッポウムシが入ってダメになってしまった。かなり大きな株になっていたので、その場所が開いてしまうとあまりに寂しい感じになってしまった。広い庭なのでなおさらである。

今年の春、懇意にしている樹木医さんと相談して、ネグンドカエデのフラミンゴを定植した。春先、少し心配する時期もあったがどうやらうまく活着したようで、この夏も無事乗り切れそうだ。

ネグンドカエデ・フラミンゴ
ネグンドカエデ・フラミンゴ

ただ、一部の枝と葉に枯れが見られたので、すぐに樹木医さんに連絡。写真を撮って送ったらすぐに返事があり、枝をカミキリムシがかじった影響ではないかとの判断。樹木医さんもテッポウムシを心配しておられたのだが、株元をチェックしてもその気配はなく一安心。

ネグンドカエデ・フラミンゴ
一部の枝が枯れていた

よく見ると確かに枝の裏にカミキリムシがかじったような跡が残っていた。さすが樹木医さんである。もう少し冬に近づいた時どうなるかまた見にきたいところだが、さて、その時タイミングよく庭仕事に同行できるかどうかが問題である。

作業の途中、冷たい風が吹いてきたかと思ったら、急に土砂降りの雨が降り出した。雷も鳴りだし、真上に稲光も見える。しばし雨が止むまで作業中断。ここまで、とんでもない暑さだったのが、雨の後はずいぶん過ごしやすくなる。普段、1日の作業だと、最後の2時間ぐらいはどうしてもペースダウンしがちなのだが、今回はむしろペースアップしつつ終わりを迎えた。

山菜おじさん

現れるとわかっているものが、なかなか現れないと心配になるものだ。

ハーブの中にも夏の間地上部をなくして暑い夏を乗り越え、秋になると顔をのぞかせるものがいる。

アカンサスなどその代表だろう。ちょうど夏前に花をさかせることも関係しているのかもしれないが、場合によっては1メートル近くになる大きな葉を夏の間保たせるのは想像しても大変そうだ。

なので、花が終わると溶けるかのように古い葉がどんどん落ちていく。案外涼しい地域ではそれほどでもないかもしれないが、はじめて育てる人はきっと枯れてしまうのではと驚くに違いない。

アカンサス
日陰の庭のアカンサス・モリス。古い葉が枯れ始めている。8月10日

しかし、太い根がしっかり地下に残り、涼しくなる頃また元気に葉をのぞかせる。日陰など、涼しい環境では古い葉が落ちた後まもなく新芽をのぞかせることもある。

アカンサス
8月10日。株元ではすでに新芽が顔をのぞかせている。

ところが、今年は畑のアカンサスがなかなか芽を出さない。植えている場所はわざと雑草を茂らせて少しでも直射日光が株元に当たらないようにしていたのだが、株の老化か、腐ってしまったかとかなり心配していた。

今日、周りの伸びた雑草を掻き分けてみると、ようやく10センチほどに伸びた芽が出ていて一安心した。

秋のアカンサス
アカンサス・スピノサス。ようやく芽を出した。

もうひとつなかなか秋の葉が出なかったのが、ポット苗のレウコジャム(レウコユム)。たいてい、ゴールデンウイーク頃に葉が枯れ始め、調子が良いと夏の盛りに葉も出さずに突然花をさかせることもあるのだが、今年は花も咲かないし、新しい葉も出てこない。球根なので水のやりすぎで腐ってしまったのかとこちらも心配したが、ようやく葉が伸びてきて胸をなで下ろしている。

レウコジャム

ところで、どこのどなたかは存じあげないが、いつも定期的に圃場の前にやってくるおじさんがいる。圃場の前まで自転車でやってきて向かいの建物の陰に自転車を止め、圃場の裏の山道を上がっていく。1、2時間すると袋を持って降りてくるので、どうやら山菜などを収穫に来ていらっしゃるようだ。

山菜おじさんの自転車
山菜おじさんの定位置

春ならば「そろそろタラの芽が伸びてきたかな?」と思われる日には必ずやってくるし、秋なら雨が降った後に晴れ上がった日。そう、ちょうど今日のような日に現れる。キノコがターゲットなのかもしれない。少し遠くからやってこられるようで、地元に住むスタッフも誰かわからないようだ。なのでスタッフの間では「山菜おじさん」と呼ばれている。

山菜おじさんはだいたい作業をしている午前中にやってくるし、スタンドを下ろす「ガチャン」という音で大抵気付くのだが、昨年ぐらいからぱっと見かけなくなった。「山菜おじさん、こられないねぇ」なんて話していたところである。体調が悪いのか、何かの事情でもう山菜採りはやめられたのか、どこの誰か知らないにしてもやはりすこし心配で気になっていた。

ところが、今朝突然山菜おじさんが現れた。

「山菜おじさん、やってきたぞ!!」

と、スタッフにも山菜おじさんが来たことを告げたのだが、同時に、近頃目にしなかった理由がわかった。

なんと、山菜おじさん、自転車を新調していた。それまでのママチャリから電動自転車に変えていたのだ。それまでは山道の入り口であるビニールハウスの前にママチャリを止めていたのに、今日は急な山道をそのまま電動自転車ですいーっと登って行ったのだ!!

坂道
この坂道をスイーッとこいで、山の中に消えていった。

なんだ、そうだったのか・・・。1時間後、ちょっとでも心配して損した気分になっていた我々の前をスイーッと自転車で降りてきた山菜おじさん。カゴには収穫物を入れたビニール袋が乗っていた。電動自転車に変えた以上に、こぐ姿は軽やかであった。

冬の優等生

今冬の日照時間の少なさのせいにしてはいけないが、苗たちに春らしい動きがまだ見られない。

店頭に出せる種類も限られていて、お客様にも何度か謝らざるを得なかった。ハーブ中心なのでどちらかといえば地味目な店の前が今の時期はなおさら寂しい。

そんななかで孤軍奮闘しているのがアカンサス・モリスの鉢植え。雪も寒さもなんのその。葉が傷むどころか、なお一層元気という感じでつややかな葉っぱを広げている。その心意気を買われ、いつの間にやら入口脇の一番目立つところに昇格。

acanthus.mollis

アカンサスは花も見事だが、葉の存在感を生かしたい。そのため、鉢も大きめで葉が映えるものに植えるとより楽しめる。

でも、昔、「あれー、これ、ヤツデ?? ヤツデもハーブなのー?」
なんて言われたことがある。冬の優等生もボーゼンとしたに違いない。