ニャッキ

いつも作業をしている圃場では、一年を通して目にする昆虫も限られる。毛虫、イモムシの類も、ほぼ顔なじみのものばかりである。詳しい名前は知らなくとも、「○○(ハーブの名前)に付くニャッキ」と言えばスタッフの間でもほぼ通用する。

ところが、庭仕事へ行くと、今まで見たことも無い「ニャッキ」に遭遇する。有るお宅の庭先で、シモツケの花を丸坊主にしてしまったニャッキがいた。普段から昆虫の名前にはあまり詳しくないスタッフばかりなので、当然だれも知らない。

シモツケマルハバチ

とりあえず、見た感じ無害そうな雰囲気なので見つけるかぎり手で取り除いた。ところが、通路を挟んでピンクと白の色違いのシモツケがあるのに、食べられているのはなぜかピンクの方ばかり。白はほとんど被害が無かった。成育環境もほとんど変わらないのにだ。

シモツケマルハバチ
良く見ると両端は色が違う感じである。さすがにピンク色はしていなかった

あまりに不思議だったので、帰ってから調べてみた。ネットのイモムシ図鑑を調べるが、なかなか分からない。あまりにたくさんのイモムシを見てさすがに気分も悪くなってくる。こんな時は方針を変えて被害に遭った植物から絞っていくのも手である。シモツケから探っていくと、すぐに分かった。「シモツケマルハバチ」というハバチ科の幼虫であった。

更に調べていくと、なんとこの幼虫、花を食べて、体色が変わることもあるという。ピンクの花ばかり食べていたのもこのへんに理由があるのかも知れない。

小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・
小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・

正体は分かったが、スタッフの間で「シモツケマルハバチ」と言う名は定着しないだろう。きっと「シモツケのニャッキ」の名前で呼ばれるに違いない。

伝えきれない色

「ああ、まただ・・・」
ディスプレイを見ながらため息がでる。
サルビア・ウリカの花が咲いたので写真を撮った。もう何年も前からチャレンジしているにも関わらず、いまだにこれという写真が撮れない。

サルビア・ウリカ

問題は色である。写した写真をディスプレイで見ると、いつも「違うんだよなぁ」という見え方だ。もちろん、カメラを替えたり、別のパソコンで見てみたりしてもこの花は決して満足した色にならない。色を補正してみても駄目である。朝昼夕や天気具合で花の見え方・写り方はずいぶん違うので、それも試してみるがどうも相性が悪い。

機材、腕、条件、全てに何か足りないのだろう。といってもこの花だけのためにお金や時間、労力を投入するほどの余裕もない。

花に何か特定の色が含まれていてこうなのだろうか。花には罪は無いが、いつも裏切られる感じで、色は好きなタイプにも関わらず全体としてはあまり好印象ではないサルビアなのである。ウリカの方もさぞじれったく思っているかもしれない。

花の写真に凝っているお客様はたくさんいるのでまた今度相談してみたい。

マロウの謎

※詳しい品種は不明です
※詳しい品種は不明です

以前にも紹介した市内の幼稚園の花壇でマロウが花盛りになっている。実はこれ、当店の苗ではなく、先生がどこかで買ってこられて小さな花壇に植えておられたものである。

大きくなったらはみ出すような小さな花壇だったので、我々が手がけている花壇に昨冬移植したのである。

その時は、これほど見事な花が咲くとは思っても見なかった。恐らくゼニアオイが咲くのだろうと思っていた。マロウは良い系統を維持するのが難しいとされ、種子を採って蒔いても花びらが貧弱になることが多い。いままでも、お客様から、「マロウ」の苗を買ったのに(もちろん当店のじゃないですよ)、ボリュームのない花ばかり咲く、と言う話を何度も聞いている。

ゼニアオイか、貧弱な株の花か。やや不明です。こんな感じ・・・と言う程度の参考写真です
ゼニアオイか、貧弱な株の花か。やや不明です。こんな感じ・・・と言う程度の参考写真です

また、良い系統の株であっても、株が充実しないと良い花が咲きにくい。十数年前、ベランダの小さな鉢で必死で育てても「なんだこりゃ」と言うような花しか咲かなかったこともあった。また、株が老化してくると、やはり貧弱な花になりやすい。全くもって面倒な花である。

いわゆるゼニアオイならこの辺りでも良く咲いている。仏様用の花としては人気があるようで、ある時お客様から、普通のゼニアオイが欲しいと言われ、がっくりしたこともあった。そのうえ、畑の隅に生えているゼニアオイの中に、時々見事なボリュームのものがあったりするのでますます混乱させられる。

圃場では「ブルーマロウ」として、Malva sylvestris ‘Mauritiana’を栽培している。この種類も一度貧弱な環境で育ててどんな花が咲くか試してみるのも一興かも知れない。

逡巡

毎年この時期になると悩むことがある。イタリアンパセリをどうするか。である。イタリアンパセリは通常二年草として扱われる。教科書通りに受け止めるなら、例えば春に定植するとその年は成長を続け、翌年の初夏に花を咲かせて結実し、一生を終える。

ところが、植える環境やタイミングによって、結構成育に違いが出てくる。下の写真の株は、昨年12月に植えたものである。場所が良かったのか、春までぐんぐん育ち、葉も結構広げ、一気に花を咲かせてしまった。

イタリアンパセリ

こうなると、このまま花を咲かせきってしまって、種子取り用に使うこともできる。また、株の状態からして、花茎を剪定すればもう一年持ちそうな感じもする。場所によっては同じ株で数年葉を収穫することもできるので、それを考えるとこのまま終わらせるのも惜しい。

毎年同じように育てていれば、ほぼパターンもわかってこようというものだ。だが、イタリアンパセリは毎年それほどたくさん必要ないので、畑でも空いたスペースにとりあえず植えるし、その時期も気まぐれなことが多い。そのため、毎回違った育ち方をして私を悩ませるのだ。さて、どうしたものか、幾何学的な花でも眺めて考えるとしよう。

農繁期の種子

気がつくとチャイブが種子をつけはじめていた。

チャイブ

チャイブ

5月の初めには可愛らしいピンクのネギ坊主を揺らしていたのに、時の経つのは早いものである。上からのぞくと、黒い粒々が見えるようになってきている。

比較的小さい種子が多いハーブの中でもチャイブは種子とりがしやすい種類だと思う。それでもタイミングは大事だ。放っておけばいつの間にか落ちてしまう。種子たちも人間の都合を待ってはくれない。

種子とりに気が回るのはまだ時間的余裕が有る証拠である。いっぱいいっぱいの時なら気がついた時には種子はもう落ちてしまっている。それを見て更に余裕の無さを実感して焦ってしまうのだ。

実は今もそんなに余裕はないのだが、あえて種子とりをすることで、焦る気持ちが少しだけ押さえられるのではないかと思うのである。

切り取って、かるく振ってもまだ種子はあまり落ちてこない。充分に熟していないようだ。何個かネギ坊主を収穫して紙袋に入れておく。しばらくすると軽く振るだけでパラパラと種が落下してくるようになればOKである。
チャイブの種子
ただ、そのまま紙袋が放置され、数ヶ月後に見つかったりするとまた余裕の無さを痛感させられたりするので要注意である。