畑の根開き

週が明けたらあれほど降り続いた雪も止み、気温も不思議なぐらい上がってきた。

畑の雪解けも進み、早めに雪が溶けたところは表面も乾き始めてきたぐらいだ。

まだしばらく先のことになるが、春の山では、樹木の周囲から雪が溶けはじめ、それは「根開き」と言われる。この辺りでは、大万木山(おおよろぎさん)のブナ林の根開きがもう少しするとよく話題になる(軟弱者なのでまだ見たことはないが)。

ブナ林ほどではないにせよ、畑でもやはり樹木やハーブの周りから徐々に雪は溶けていく。

雪が止んだ翌日、2日前の様子だが、ラベンダーの周りもしっかり根開きしていた。

冬にそれまでの葉が枯れてしまって更に雪でペッチャンコになってしまったコモンコンフリーの株も、中央部分から徐々に雪が見えなくなり、枯れた葉を取り除いてみるとぎゅっと押し詰まった新芽が見えてきた。

これから一気に伸びそうな気配の新芽、エネルギーもたくさん詰まっていることだろう。雪もそのエネルギーで溶けていくのかもしれない。

雪あかりの剪定

豪雪とまではいかないが、確かに長く続く雪だ。

普段の年は、ドカンと大雪が降って、しばらくは大変だが、その後は降り積もることはあまりないのに、今年は毎日毎日降っては溶け、降っては溶けを繰り返している。

本当の豪雪の地域の方と比べてはは申し訳ないぐらいだが、それでもなにかと生活に支障がでている。スタッフも今朝は通勤ルートの判断ミスで普段の倍以上時間がかかったという。

とはいえ、寒い寒いとばかり言ってはいられない。雪に閉じ込められている分、集中してできる作業を行うのがよさそうだ。

そこで、秋ぐらいから気になっていた、ローズ系の鉢植えの植え替えや剪定、カイガラムシの除去作業に取り掛かった。

天井が雪がうっすらつもり、なかも比較的明るい

周囲が真っ白い雪に囲まれているので、曇り空でもそれなりに明るく、また、前後左右から優しいライトが当たっている感じで影ができにくい。

カイガラムシ除去作業。暗いと作業がしにくい

普通の日差しならば影ができて見えにくい枝の裏についているカイガラムシも取りやすいし、剪定位置の見極めも行いやすい。これも雪あかりといえるのだろうか。

剪定作業もしやすい

こうやって何かプラスになることを見つけると、雪による苦労も少しは報われるのではないかと自分に言い聞かせている。

まだまだ対象の鉢はたくさんある。雪が消えるまでにさて、作業は終わるだろうか。

無料の冷暖房

剪定した枝の片付けを引き続き行う。

時折、雲間から顔をだす日差しが柔らかく、気持ちが良い。うっすらと汗ばむほどだ。

ふっと手を休めて見上げると、剪定したギンヨウボダイジュの枝が頭上に広がる。

冬はこうして葉を落として、我々に貴重な日差しを届け、しかも薪という燃料を供給してくれる。

夏は涼しい木陰を作って、作業の疲れを癒す場所を提供してくれる。

ある意味、暖房と冷房、両方の働きだ。もちろん電気代もいらないし、植えてから肥料さえやったこともない。

それでも、夏、下に集ったスタッフたちの、「あー、涼しい!」「気持ちがいいね!」という言葉ぐらいは伝わっているだろうか。

先日の寒波の影響

今朝の天気予報では、最低気温もプラスということだったが、圃場の外にある洗い場は見事に凍りついていた。

天気予報マイナス数度で考えておかなければいけない。

先日の寒波の影響もいろいろ見え始めている。ビニールハウスの中とはいえ、無加温なので寒さに弱い種類は軒並み寒さの被害が出てきた。

この冬、例年にないぐらい葉が残っていたレモンマリーゴールドだったが、さすがににこの前の寒さは無理だったようでかなりチリチリになってしまった。例年通りと言えばいいのだろうか。

大輪ジャスミンもそこそこのダメージ。これも寒い年にはほぼ葉が枯れ落ちるので、こちらはむしろ例年よりも頑張っているような感じだ。株自体には影響はないと思うが。

ニュースでは来週も同様の寒波がとの知らせもある。お手柔らかに願いたいところだ。

内面で惹きつけて

1月の終わり、冬の間の大仕事の一つ、ビニールハウス前のネムノキの剪定をしてもらった。

この樹も、大きくなってとても自分たちでは剪定ができなくなってきて、しばらく前から専門家にお願いするようになった。今回も、樹木医のMさんと、彼と師弟関係でもある出雲の林業青年、S君にお願いすることになった。

師匠が見守るなか、S君は道具を巧みに使いながらアーボリストの技術で着実に高所へ登って行く。

「自分があの位置に登ったら」と思うと、お尻がむずむずしそうなぐらい、高くて、細く、そしてしなやかな枝の上だ。

でも、見ていても、不安は感じさせない。確かな技術に支えられた本人の自信もあるのだろう。

登って行く間、じっと師匠は動きを見つめ、何かを指示するわけではなかった。ただ、実際の剪定作業に入ったら、細かい位置などを指導していた。あとでS君も、その辺りが勉強になると話していた。

寒い風が吹く中、無事剪定作業は完了し、着実な足取りでS君はネムノキから降りてきた。寒いからといって決して焦らない。

しかもこの重装備である。体の上から下まで、専用の道具。「次々と欲しくなって困る」と言うS君だったが、作業を知らない我々が見てもかっこいい。ヘルメットもロードバイク用のヘルメットを頑丈にしたようなかっこよさだ。

林業をめざす若い人をこう言うツールやスタイルも惹きつけているのかもしれない。それに対して我々の農業は・・・。なかなかツールやスタイルで憧れる側面は少なそうだ。

いやいや、そのぶん惹きつけるような内面を磨かねば。