アリに教わる

毛虫、イモムシ、ハチ・・・嫌がられることが多いこれらの昆虫は平気なのだが、アリは苦手である。もちろん、一匹二匹なら問題ない。ただ、何百匹が集まっている姿は勘弁してほしい。

どちらかといえば好感を持たれることの多いアリだが、チームワーク、個々の強さ、そして勤勉さを兼ね備えたアリ。もし知性を持ったらとか、巨大化したら・・・なんて考えると恐ろしくなる。

だが、命尽きて倒れた昆虫たちの片付けをするのもまたアリたちだったりする。もしアリがこの役目を担わなかったら、土の上は腐敗した死骸でいっぱいになるとも言われている。

また、日々、アリに教えてもらうことも多い。

たいてい、苗にアブラムシやカイガラムシがついたとき、すぐに気がつくことは少ない。むしろアリがそれらにたかりはじめ、苗の枝や葉を行き来するようになって気がつくのだ。もしアリがいなかったら、手遅れになってしまう苗ももっと多いに違いない。なのでアリを毛嫌いしてはいけないと、日々自分に言い聞かせてはいるのだが。

さて、夏になると何年も前から、ビニールハウスの入り口で、アリが集団になってうごめいているのをよく目にしていた。きっと、寿命を終えたセミやトンボにたかっているのだろうと思っていた。

しかし、実はアリたちは戦っていたのである。もちろん、そんな姿を近くで凝視するなんてありえないのでスタッフが教えてくれたのだが・・・。

アリの戦い

確かに(おそるおそる)よく見るとアリの死骸もたくさん落ちている。遠目には同じようなアリに見えるのだが、案外別の種類なのかもしれない。敵対しているのか、勢力争いなのか、理由はよくわからない。

同時に2カ所で戦いが行われていることも多く、「こっちが川中島か、こっちが関ヶ原か」という感じだが、いつの間にかどちらともなくいなくなっている。と思うと、翌朝、夜があけて間もないのに少し場所を移動してまた同じように激しい戦いが繰り広げられている。

川中島と関ヶ原

飽きもせず、なんのためにと、不思議でしょうがないが、きっと神様や宇宙人がいて上から地球を眺めていると人間の争いもこんな風に見えるに違いない。

この夏日本じゅうを混乱に陥れたヒアリも、在来のアリが戦って駆逐するとの話も聞く。このあたりではまだ見つかっていないが、ビニールハウスの入り口で戦いを繰り広げる日は来て欲しくないものだ。

お盆の後始末

昨年のお盆は渇水に見舞われていたので、毎日水やりと水運びをしながら雨が降ることばかり望んでいた。だからお盆休みという感じではなかったし、とてもそんな気分にはなれなかった。

今年はおかげさまで8月に入ってからも降雨があり、お盆期間中も曇りや雨の日があったので、ゆっくりとお盆休みを取ることができた。

いままで、お盆休みが確保できた年も「せっかくの休みなんだから」と、溜まっていた本を集中して読んだり、どこかへバタバタと出かけてみたり、溜まっていた仕事を片付けたり(ヤレヤレ)と、いう感じだった。

お盆「休み」という実感がわかない例年を反省し、今年は「なるべく何もしない」という方針でお盆休みを過ごすことにした。

というわけで、妻の実家へ行き、ダラダラと過ごすお盆となった。

縁側からぼーっと山を眺めたり、きままに昼寝をしたり、海まで散歩して、波や雲を見ていたり。

お盆のお料理やお酒も出していただいたものをありがたくいただき、虫の声を聞きながら眠りにつく・・・。

という生活をしていたので、太った(◯キロ!)。帰って体重計に乗ったら数字に目を疑ったほどだ。

さて、お盆があけて今日から仕事である。しばらくそんな天気だったので、圃場の周りの草も伸び放題!

昨年は雨がない分、雑草も伸びる元気がなかったようで、草刈りの回数もごく少なめだったが、今年はお盆前と比べてもとにかく「伸びたなー!!」という感じ。

天気が悪かったぶん、ハーブ達はなんとなく調子はいまいち。威勢がいいのはレモングラスぐらいである。

レモングラス

このままでは雑草がハーブ達を覆ってしまいそうな勢いなので、お盆明け最初の仕事は草刈りに決定。

草刈り

長袖、長ズボン、長靴に履き替え、草刈り機を肩にかければそれだけで汗が出はじめる。

傾斜地の多い境界部分から刈り始めたのだが、とにかく体が重い。勢いよく伸びた草が邪魔をしてなかなか作業も思うように進まない。でも、ゆっくりさせてもらったお盆の間の後始末だと思って、午前中いっぱい奮闘した。

汗で重たくなったシャツを脱ぐと、なんだか少し体が軽くなった気分がした。

シソ
すぐ隣に植えていたブラックホリホックをあっという間に追い越した

毎年、畑のどこかしらから生えてくるシソもずいぶん大きくなっていた。今夜はこのシソでヘルシーに冷や奴ぐらいにして、体の方もお盆の後始末をせねばなるまい。

 

試行錯誤の天窓取り付け

天気任せの農作業。その日になって当日の作業が決まることも多い。

今日は朝から快晴、風も弱め。雪害ビニールハウス修理の総仕上げにはもってこいの天気!と、朝一番の仕事をビニールハウスの天窓付けに決定した。

この天窓の取付、毎回ビニールを張り替えるときに大苦戦する問題の作業。一応、昨年プロの作業方法を間近で見て理解した。

ただ、先日分解するときに天窓をビニールハウスの上で持ってもうひとつ理解した。

「無理!!」

大きくて重い天窓。ビニールハウスの上の足元の悪いところを持って歩くなど不可能である。万一風でも吹いた日にはバランスを崩して天窓ごと落下するのは目に見えている。改めてプロの凄さを感じた。

歩く
できるかも・・・と一瞬思ったのだが。

その後、どうやったら安全にハウスの上まで天窓を持っていけるかを考え続けていた。

マニュアルのない作業を一から考えるというのはとても面白いものである。頭の中でああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら検討を重ねる。もちろん、クレーンなどの重機を使ったり、それこそプロに依頼すれば瞬時に解決するが、お金をかけず、頭を使うことに意味がある。

スタッフの、「ビニールハウスの横に脚立を立てて、脚立からレールのように長いパイプをビニールハウスのてっぺんに渡して引きずり上げたらどうだろう」という案がヒントになった。

脚立にパイプをかけてもいいが、結構不安定になりそうだ。そのうえすぐ脇にはビニールが隣接している。万一倒れたりしてビニールが破けてもコトだし・・・。というところで止まっていたのだが、

「いっその事、隣のビニールハウスをパイプの支えにすりゃいいじゃん」

と閃いた。ビニールハウスのパイプ同士なら固定も確実だ。それどころか下手すりゃ一人でも作業ができそうだ。

農業の大先輩でもある伯父は、

「おらぁ、誰かと一緒に仕事するのは好かん。二人や三人でする仕事をどうやったら一人でできるか考えるのが面白い」

と言っていたが、これも農業の楽しみの一つだと思う。頭と道具を上手に活用、組み合わせて作業をやりとげたときの充足感はまた格別だ。実行に向かってムクムクと意欲が湧いてきた。こうなるとあとは速い。

天窓部分の穴開け
天窓部分の穴開け

まずは天窓が覆いかぶさる部分のビニールに穴を開け、周囲を専用の固定具で留める。この作業だけはビニールハウスの上に上がらないことにはどうにもならない。そもそも、入り組んだビニールハウスの上部から体を出すのがひと仕事。お腹が出ている頃だったらそもそもこの部分を抜けることさえできなかっただろう。

パイプが入り組むハウス上部
パイプが入り組むハウス上部

毎回思うのだが、これを設計したひとは自分で取り付けたりビニールを張ったりはしなかったに違いない!

次に、隣のビニールハウスにレールになるパイプを固定する。この作業はお手の物。天窓を設置する側のビニールを破らないように細心の注意を払う。

レール固定
レールになるパイプを隣のハウスに固定

天窓運搬

天窓運搬

天窓を運んで、ヨイショ、レールに乗せる。

紐固定

天窓に紐をつけ

引っ張る

設置側のビニールハウスからゆっくりと引っ張る。

慎重に、慎重に、左右のバランスも取りながら。

引っ張る

もうちょっと

到着

無事到着。

あとは内側から金具に固定。

inside

内側から見るとこんな感じ

テスト

開閉テストをして

完成

無事完成。

レールの位置に改善の余地はあるものの、ほぼ大きな問題もなく取り付けができ、大きな達成感。

隣にビニールハウスがない場合でも、支えになるパイプを地面に突き立ててしっかり固定すれば同様にできそうだ。

傷

あまり夢中になってやっていたので、いつの間にか手の甲に大きな引っかき傷ができていたが、これで冬の大雪の被害も全て解消。オンシーズンの準備も完了である。

湖山長者と粟の飯

一年も1/4が終わってしまった・・・。

明日から4月というのに、今日は冷たい雨。ようやく今週あたりから暖かくなって苗たちにも成長の兆しが見えてきたのだが。

育苗
苗たちも今日は寒さでじっとしているようだ

「○○はいつごろできますか?」といったお客様からのお問い合わせも増えてくる季節。空を見てはもどかしさを感じてばかりいる。

先日も雪で壊れたビニールハウスの立て直しに取り掛かったのだが、天気予報が見事に外れて作業が何度も中断。半日で終わるつもりの作業が丸一日かかっても完了できなかった。

とはいえ、空をにらんでみてもどうにもならない。こんなとき思い出すのが「湖山長者」という昔話だ。

もともと、お隣の鳥取県に伝わる民話なので、子供の頃「山陰の民話」とかいうような本で読んで覚えていたのかもしれない。詳しくは下記リンクで読んでもらいたいのだが、一言で言えば、「自然は思い通りにはならないし、自然に対して傲慢になるとひどいしっぺ返しを食う」という戒めである。きっと全国各地にも似たような民話があるのだろう。

子供の頃に読んだ民話なんてほとんど覚えていないのに、なぜこの話を覚えているのかがそもそも不思議だ。

しかも、今になってこの教訓をいつも実感させられている・・・。

もうひとつ、よく覚えている話が、長者の娘の婿えらびに、山盛りの豆ご飯を食べさせるというお話。これは豆ご飯を食べる描写がとても美味しそうだったというだけなので、タイトルも覚えていないのだが・・・。

こちらもネットで探してみたが、それらしいものは見つからない。似たような内容の話は全国各地にあるようだけど。

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さすがに気になったので、図書館で探してきた。新版になってはいたが、表紙も内容も、挿絵も昔のまま。とても懐かしかった。

島根の昔話

それにしても記憶は曖昧なものだ。豆ご飯ではなく粟(あわ)のご飯だった。でも、いま読んでもやっぱり美味しそうに思えたのが妙におかしかった。

難題むこ
石見の民話だそうだ

「湖山長者」

http://www.city.tottori.lg.jp/koyamaike/kg-1/kg-4/kg4-3/kg-4-3-koyamatyoujya.html

【民話】湖山長者

http://www.pref.tottori.lg.jp/29282.htm

越冬それぞれ

3月も、あっという間に半ばを過ぎ、お彼岸となった。

さすがに春の陽がさす日も多くなり、ようやくハーブたちにも成長の兆しが見えるようになってきた。

これから一気に気温が上がると春の作業も急増していくが、忘れないうちにこの冬の被害状況をまとめておきたい。

この冬はその前の冬に比べると気温の低下はそれほどでもなかったが、とにかく2度にわたる大雪による被害が顕著だった。

特に、例年は枝が曲がる程度で済んでいたようなハーブたちの枝折れが目についた。

ローズマリー
かなり下の太い枝から折れたローズマリー

ローズマリーも太い枝が折れた株が多かったし、ラベンダー類も雪に上から押しつぶされて割れてしまう株が続出した。

ラベンダー
ラベンダー、今年は花が咲いてもちょっと見栄えが悪そうだ

かなり根元の辺りから裂けたり折れているので元のような形に直すのはかなり困難を伴いそうだ。少なくとも数年というスパンで考えておいたほうが良いだろう。

チェリーセイジ

チェリーセイジも昨年伸びた枝の大半が折れてしまったが、剪定しないと大きくなりすぎるのでちょうど良い。すこし整えるぐらいで済みそうだ。

レモンヴァーベナ

昨年寒さで傷んだレモンヴァーベナ、今年は早めから風よけをしておいたので恐らく大丈夫だろう。昨年よりはすこし早く芽が出てくるかもしれない。

ティートゥリー

ティートゥリーも雪で枝がかなり折れた。だが、葉の傷みはむしろ少ない感じだ。

カルドン
雪に対して意外な強さを見せたカルドン、直径は2メートルぐらいある

案外被害が少なかったのがカルドン。冬前の時点で相当大株になっていたし、 一時はこの上に40センチ以上は積もっていたはずだ。枝もろともペシャンコになっているだろうと思っていたのに、雪が徐々に溶けて姿を表すと、所々の葉が途中で折れているぐらい。大雪が降ったあととは思えないぐらいだ。

レッドベルガモット
土の下に隠れて冬を過ごすレッドベルガモット

もちろん、地面にへばりついて冬を越すような種類はほとんど問題がない。すでに秋の時点で地上部がほぼなくなったレッドベルガモット。元気に小さな新芽をたくさん出し始めている。

ボリジ
周りの草が枯れると姿を表すボリジ

土手の斜面に零れ種で生えたボリジも春の日差しをすこしでも集めようと葉を思い切り伸ばしている。

柳

また、今年の冬の雪の被害を微塵も感じさせなかったのが、法面の土止めとして植えていた柳。大雪もなんのその。柔らかい枝は全く影響もなくすでに柔らかな新芽を伸ばし始めていた。

柳の新芽
柳の新芽

人生でも、ハードな局面に強硬に立ち向かっていくよりは、しなやかに上手に避けていくほうが乗り越えやすかったりするもんなぁ。としみじみ思わせる冬の終わりだった。