美味しい運動場

今年はナスタチウムの育苗が遅れた。失礼、「今年も」だった。育苗を始める時期がシビアな種類は割と注意しているのだけれど、ナスタチウムのように
「ま、今度でもいいや」
という種類はついつい後回しになってしまうものだ。

それでも、4月も半ばを過ぎてから葉のサイズも大体揃ってきた。肥料少なめなので葉も小さめではある。ただ、あまり葉を大きくすると株元が弱いのでポッキンといってしまうのも恐い。

「ようやく育ててくれたのかよ〜」と、早速ハモグリバエがやって来たようだ。一般には「字書き虫」とも呼ばれる。言い得て妙である。この字書き虫も何百種類ハーブがあっても見事にピンポイントで狙ってくる。

ナスタチウム

被害に遭うのはほとんどナスタチウム。希にマロウの仲間にもいたりする。でも、ローズマリーやラベンダー、タイムなんかには全く来ない。広くて美味しい運動場があることが絶対条件なのだろう。

うちではそう目立った被害も無いので、葉に見つけたら葉ごと取り除くぐらいである。いまのところ2枚。何かの資料には成虫になると他にも卵を産み付け増えていくと載っていたが、あまり増えて困った経験はない。運動場が少し狭いのがお気に召さないのかも知れない。

「ここにいますよー」とわざわざ居場所を書いているようなものだから目立つので防除も楽である。ただ、斑入りナスタチウムの場合は別。目を凝らさなくては見つけられない。こっちを選んで卵を産み付けるほどの知恵は無いようだ。

そばに来ないで

ハーブを育苗する用土に、ずいぶん前からそば殻を加えるようになった。用土を軽くし、水はけを促進、隙間を作って微生物の住み処としても役立つようだ。

庭作りをさせていただいているお客様のお庭でも粘土質の硬い土の場合、積極的に使って土壌改良している。以前はもみ殻なども使っていたが、見た目が悪いのと、チカチカして始末に悪いことでそば殻に替えている。実際に比べていないけれど、もみ殻の方が分解しにくいとか、土が酸性に傾きやすいとも言われているようだ。

ただし、そば殻の場合、しばらくすると出てくるのだ。蕎麦の芽が。脱穀する時少し残ってしまうのだろう。

蕎麦の芽

いったん発芽すると一気に成長する。さすがに優れた救荒作物である。当然、ポット上げしたばかりの隣りのハーブはあっという間に追い抜かれて日陰になってしまう。また、一説では成育阻害物質も出すというので早めに取り除いた方が良いようだ。幸い、根は弱くて簡単に抜ける。有りがたいことである。

あるときお客様の庭ですき込んだ蕎麦の芽が生えてきた。急いで抜こうとしたら
「花が可愛らしいから活けて楽しむので少し残しておいて」
と言われた。若いのに風情が有る方だな。と感心したことがある。

ビニールハウスでは一杯生えてくるので、時々取りにきて欲しい。小さな時はサラダにできると言われているようだし。試して見ても良いけれど、軟弱栽培しないと美味しくないのかな?

期せずして

人生は運命のいたずらによって大きく左右されることが多い。そんな人間の近くにいる植物たちも少なからず我々の気まぐれで運命が変わる。

コクテール?

このローズ、もともとはお客さんにいただいた切り花である。カクテル(コクテール)でないかと思われるけれど、詳しい品種は不明。2~3年前の初夏ふっと入ってきたお客様が、「これ、うちで咲いたからあげる」と、くれたのだ。

数日ディスプレイとして店頭を飾り、あまりに奇麗だったのか、花が終った後でスタッフに「挿し木でつけてみて?」と頼まれたのである。もともと一本の切り花である。店頭で何日も置いておいた、しかも花が咲いた直後の枝が発根するわけ無いと一度は断った。

挿し穂として何本もあるのならなんとか一本ぐらいは発根するかも知れない。でもたった一本で・・・。と思いつつもどうせ他の挿し木作業をする予定があったので合わせて適当に挿しておいた。

こういうのが案外うまく行ったりするからかなわない。いつの間にか根を伸ばし、ポット上げ、そのまま成長して大鉢に移植。その後も存在を忘れていたらこの春開花である。もともと強い種類だったのかも知れないけれど、当の本人(ローズ)も驚いていることだろう。

誰かの気まぐれがなければそのままごみ箱行きだったはずだ。この強運の持ち主、これからどんな運命を辿るのだろう。

今年もよろしく

昨日、水やりをしていたら生まれたばかりのカマキリを見つけた。今日、あらためて定番の場所へ行くと、いたいた。なぜかラベンダーの親木のところでは良く見つかるのである。ラベンダーの新芽を背景にして見つけやすい色合いなのか、それともラベンダーの周りが餌が豊富なのか分からない。

カマキリ

小さな手足を動かしてラベンダーの新芽の周りを上へ下へと動き回っている。巨大な生物が現れたので驚いているのだろう。

カマキリ

カマキリは周りの小動物の中でもかなり好感度が高い。害虫も捕食してくれるし、園芸の邪魔にもならない。わりとビニールハウスの中に居着いてくれるのも嬉しい。害虫を食べることでは、クモもポイント高いのだが、張られた巣が何かと邪魔になることとが多いし、体にまとわりつかれた時はかなり不快なのがマイナスポイントなのである。

ごくたまに、今の時期、卵鞘から一気に飛び出すカマキリの幼虫の群れを見ることがある。何百匹もの小さな命が思い思いの方向へ進んでいく姿は感動的である(ちょっと気持ち悪いけど)。でも、そのうち、大きくなるまで生き残れるのは僅か数匹だという。昆虫の仲間ではかなり強いランクのように思えるが、自然界で生き残るというのはどんな種類でも厳しいものなのだ。

今年もしっかり活躍してもらいたい。だから秋から冬にカマキリの卵鞘を見つけると、剪定したいハーブについていてもそのままそっとしておくのである。今年もよろしく。

小さめに

親木を育てているビニールハウスではフレンチ系のラベンダーが花盛り。ちょうどローズマリーとバトンタッチをするように咲きはじめるのが嬉しい。

フレンチ系のラベンダーは丈夫であまり手もかからないし、松江辺りではほったらかしで育てることができる。でも、大株になった後も手入れをしないと花数は増えても花が小さく貧弱になる場合が多い。特に上部包葉に特徴がある種類はなおさら真価が発揮できない。

でも、中には小さめの花でも悪くないと思われる種類もある。それが写真の白花フレンチラベンダー。もちろん、充実した花がしっかり咲くのも見事である。一方でこんなふうに可愛らしくたくさん咲くのもまた良い感じだ。花の白さがカバーしてくれるのだろうか。

白花フレンチラベンダー

ただ、白花フレンチラベンダーは花が終って花色が茶色になってくると目立つのである。紫系の種類はそれほどでもないのに、これも白い色のため。仕方がない。

さて、小さい花が可愛らしく咲いた、この白花フレンチラベンダー、つまりあまり手入れをしていない。ということなのだ。花が終ったら少し大きめの鉢に植え替えやろう。来年は大きな花が見れるように。