圃場のドタバッタン

小学生のころ、夏休みは虫取りに近所を駆け回っていた。しかし、家の周りではセミかトンボぐらいしか見つけ
ることができなかった。しかも、せいぜいアブラゼミかニイニイゼミ、トンボもシオカラトンボばかりだった。

休みの日には、父が少し離れた高台にある公園へ連れて行ってくれた。木々に囲まれた公園に着き、まず最初にするのが大きなショウリョウバッタを探すことだった。低学年だった私でも捕虫網さえあればなんとか捕まえることができる大きな昆虫。それがショウリョウバッタだったのだ。

ショウリョウバッタ

もちろん、いつも見つけられるとも限らないので、捕まえることができればまさに宝物だった。
このごろは秋が近づくと、そんな宝物のようなショウリョウバッタにも圃場で良くお目にかかる。この時も、ビニールハウスのすぐ前にオスメス仲良くいるのを見つけた。どんなに草の色に似ていても、子供のころ、必死で
探した目からは逃れられないのである。さすがに捕まえる気は起きないが、それでも写真に収めた。

やはりこのシャープな姿が子供のころから好きだったんだろう。タイムボカンで一番好きだったメカもドタバッタンだったのである。
イネ科の植物を好むと言うが、いまのところレモングラスなどを食べているのは見たことがない。ビニールハウスに入って悪さをすることも無いし、いまのところ大変良好なおつきあいをさせてもらっている。

活用できないハーブ

圃場の畑部分を侵略する雑草は数えきれないほどある。だが、誰かに見てもらうガーデンではないので、育てているハーブなどに影響がない程度に最低限の除草だけ行なっている。それでも最初は張りきって美しい畑を目指していたのだが、あまりに徒労感を味わいすぎた結果、いまのスタンスに落ち着いた。

夏前から少しずつ勢力を増してくるのがゲンノショウコである。我が国の薬用植物の代表の一つと言っても良いのだが、小さいながら勢いが良い。油断しているうちに一気に茎を伸ばして勢力範囲を広げる。

ゲンノショウコ

花が咲く頃には少しかわいげもあるし、セイタカアワダチソウやスギナのようなしつこさがないので、ついつい大目に見てしまいがちだ。ハーブの仲間であり、薬効が高いことも除草の手から逃れるポイントになっているようだ。

手元にこれほど豊富にあるもの、本来なら上手に活用するべきであろう。雑草扱いしかできていないのが悔しいやら恥ずかしいやらである。

実際、ゲンノショウコを探していると言うお客様も結構いらっしゃるのである。どうぞ、圃場においでください。無料で取り放題ですから。

観賞用か食用か

バジルの季節も終わりが近づきつつある。今年のバジルの出来は場所によってかなりばらつきがあったようだ。全く育たなかったと言う話も結構聞いたし、害虫が少なくて、希に見る良い出来だったと言うお客さんもあった。

ブッシュバジル

さて、こちら、市内の幼稚園の前庭に植えたブッシュバジルである。雨続きの天候に少し心配していたが、なかなか良い感じの球形に育った。花もちらほら咲きはじめているものの、まだしばらくは楽しめそうである。

いわゆる普通のスイートバジルはガーデンの中で観賞用としての役割はあまり高くない。また、それを狙うならかなりしっかりとした管理が必要になってくる。一方でブッシュバジルは日当たりさえよければ結構ほったらかしでも面白い素材になってくれる。鉢植えなら、時々回転させて平均的に日が当るようにすれば面白いほどに球形に育てることもできる。

料理用としてはスイートに軍配が上がるものの、以前、「サラダに散らすのにはこっちのほうがいい」と仰るお客様もおられてなるほどと思ったことがある。ただ、この幼稚園では、形が崩れるのが怖くてなかなか収穫できなかったとか。さもありなん。

お引っ越し

圃場の横には、地区の集会所がある。この隣に小さな水田があった。長い間耕作する人もなく、荒れ放題だったが、いつの間にかガマが生えてきたりしてちょっと風情のある場所になっていた。なかでも秋にピンク色の小さな花を咲かせるサクラタデが群生していて、目を楽しませてくれていた。

サクラタデ

ところが昨年、この水田も集会所の駐車場にするために埋め立てられてしまった。どうやら耕作放棄地で雑草も多いため、周りから苦情が出たらしい。地区で買いあげたと言う話も耳にした。

あのサクラタデがもう見られないとなると少し残念だったが、よその土地のもの。かかわり合う権利は無い。

近くに寄って見るととても可愛らしい姿の花である
近くに寄って見るととても可愛らしい姿の花である

ところが、今年、ちょうどサクラタデがあった反対側、圃場の端っこに小さな株が花を咲かせているのを見つけた。きけばサクラタデは種子で増えることはないという、一体どうやって?身の危険を感じて必死でお引っ越ししたのだろうか。まさか、道路の下を通って?。いずれにしてもちょっと嬉しい出来事であった。

敏感な我等

庭仕事をしていて、イラガと同じぐらい(人間への)被害が多いのが、チャドクガである。こいつらも今年、発生している庭が多く、庭についたら、まず作業の前に危険がないかチェックしなくては安心して作業にかかれない。

チャドクガ

このお宅でも椿の葉をもしゃもしゃと食べている彼等を発見。チャドクガは毎年同じような時期に同じ木にでてくるので割り合い見つけやすい。一方、イラガはチャドクガほど好みがうるさくないようで、「え、こんなところに?」という木に入る上、葉の裏に隠れて不意打ちしてくるので厄介である。

チャドクガにさされても、イラガのような強く痛みはしない。ただ、かゆみが長く続く上、針が衣服に残っているとそのうち散らばるのか、思わぬ場所がかゆくなって始末に負えないのだ。長袖を来ているからと安心できない。この春にはお腹の方まで発疹が出てきて往生させられた。場合によっては2〜3日かゆみとお付き合いせねばならないことも多い。

でもなぜか、スタッフのうち、一人だけは免疫(?)があるのか、チャドクガがたくさん群がっているところで作業をしていても平気なのだ。本人は
「鍛え方が違う」
と、得意げにのたまうのだ。
「鈍感なだけなのだろう」と、残りの者たちは悔しそうに言うしかないのである。