スイートバイオレットと蝶

秋も半ばを過ぎると、ようやくスイートバイオレットたちも夏の疲れを回復したのか、徐々に生き生きしてくるようになる。大きなダメージを受けたように思える株は植え替えたり、株分けをして復活の手助けをしてやる。

しばらくすると新芽が伸び出してきて、こちらもホッと一息つく頃、必ずやって来るのがこの毛虫、ツマグロヒョウモンである。

ツマグロヒョウモン

ようやく出てきた新しい葉をバリバリとかじるのですぐ分かるし、そのうえ見た目も毒々しいデザインなので、最初のころは驚いた。その後、毒が無い事が分かり、平気で手に乗せれるようになった。無害だと分かると印象もずいぶん変わるものだ。

ツマグロヒョウモン
今は平気

ビオラなどをよく食害すると言われているが、ここには普通のビオラやパンジーはあまりないので、主食がスイートバイオレットになってしまうのだろう。味の違いはあるのかな?

親も鮮やかで美しい蝶のようだが、あまり見かける事が無い。

ヤマトシジミ

ちなみにこれはヤマトシジミ(だと思う)。幼虫の主食はカタバミだそうなので、今はビオラの上でちょっと一休みと言ったところなのだろう。

ピンクの待ち針

冬の足音が、一歩また一歩と近づいてくる今日この頃、回りの風景も動きが少なく、色も鮮やかさが徐々に失われてくるようになった。

そんな中で、一際目を引くようになったのがヒメツルソバである。いつの間にかビニールハウスの中に侵入するようになり、時々思い出したようにはびこるようになった。

ヒメツルソバ

といっても、それほど困る雑草ではない。片付けようと思えばそれほど苦労はしないし、ご覧の通り、冬の初め、非常に鮮やかな群落でしばし目を楽しませてくれる。英名でPink Pinheadsと呼ばれるが、確かにピンクの待ち針を思わせる姿である。

ヒメツルソバ

この辺りでは、古い石垣の縁や、庭の隅などで広がっているのを良く見かける。

残念なのは、寒さが本格的になってくると葉が焼けたようになってしまうことだ。ちょうど園芸作業に不向きなシーズンに当たるうえ、雑草としての扱いしかなされないためか、汚らしいまま放置されている場合が多い。

以前、ある県の園芸店で、ヒメツルソバの一株がびっくりするような値段で売られていたのを見たことがある。寒い地域だったのでそんな価格設定だったのだろう。

こちらに戻ってから、その話をとある会でしたところ、一人の老婦人がこの辺りでも昔は結構いい値がしていたと仰った。いつごろの事かと訊ねたのであるが、「年が分かるから・・・」と教えてもらえなかった。お茶目な方である。

カミソリの出番

圃場で、年間を通して行なう作業が挿し木、挿し芽である。ハーブの種類によって挿す時期が異なるので、ほぼ途切れなくいつも行なっている感じだ。

この作業に無くてはならないのが鋭利な刃物。園芸のテキストには「良く切れるハサミで」とか、「ガーデニングナイフを用い」なんて書いてある。

ところが、挿し木をする時に大事なのがいかになめらかな切断面を作るかである。ハサミの場合、「パッチン」と音を立てて切れるような細い枝なら有効だろう。でも、柔らかい枝の多いハーブを挿したりする時には向かない。せいぜい月桂樹の枝が大量に出て、「とりあえず差しとくか」と、一機に挿し穂を作るときぐらいだ。ガーデニングナイフはそもそも研がなければならないし、タイムのような細枝をナイフで処理する気には到底なれない。

カミソリ

そこで登場するのがカミソリである。鋭利なことはこの上ないし、細かい作業もお手の物。ただ、1枚の刃をそのまま手に持つので最初は不安である。かつて顔剃り用の握りが付いたカミソリも試してみたが、全く駄目であった。

鉛筆ぐらいの太さの枝を処理するには少しコツはいるが慣れてくると結構できるようになる。よほど硬い枝を処理するのでなければ何百本、うまい人なら何千本の挿し穂が作れるだろう。

それでも慣れるまで何度手を切ったことだろう。ちょっと油断していたり、他のことに気を取られているとスパッとやってしまう。刃物を扱う基本的な心構えを覚えるには最適かも知れない。今もたまにバンドエイドのお世話になるけれど。

幸福を見つける理由

無くて七癖と言われる。たいていは人に言われて気づくことが多い。自分の場合、「電話をしながらあっちこっち歩く」という癖だ。ワイヤレスの電話機や、携帯があるからこそできるのだが、事務所でも電話しながらあっちへ行ったりこっちへ来たり。圃場にいる時はなにぶん広いので好き放題に歩を進める。

さらに、徘徊するだけでは足りなくて、他にも電話中に他のこともしているようだ。草を取ったり、片手で剪定したり。落ち着きがないと言われても仕方がない。(話はきちんと聞いておりますので。あしからず。)

さて、圃場の脇に、かつて芝生だったところがある。現在も芝が残ってはいるものの半放置状態。ここにクローバーがしっかりと根を下ろしている。もう取り除くのは諦めている。

クローバー

先日は電話をしながらいつの間にかこのクローバーのところに来ていた。何とは無しにしゃがんで葉を見つめていると、四つ葉を発見。四つ葉のクローバー探し、小さな頃からした経験はあっても、探し出せたことがあっただろうか。

また別の日、やはりなぜか電話の途中でクローバーのところへやって来たら、また見つけてしまった。この2本は店に持って帰り、押し花にしてもらった。ほんの畳1帖に満たない群落である。不思議に思い、改めてまた探してみると更に2本の四つ葉を発見。

四つ葉発見
四つ葉発見

今までの経験からすると非常に高い確率である。しかし、これは訓練による技術ではないかと思う。日々色々な葉を見ては小さな異常を見つけたり、成長の具合を事細かに見ているので、周りとは違う葉の様子を見つけ出しやすい目になっているのではないだろうか。

はい、ここにも
はい、ここにも

なんて考えていると「幸福」の有難みも失せてくる。素直に喜ばなくては。

露置く秋

朝、ビニールハウスに来ると、ざっと一回りするのが日課となっている。苗の土の湿り具合や葉のしおれたのがないかをチェックしたり、日々の成長を調べるのも大事である。

朝の気温が下がってくるとビニールハウスの中であっても葉に露が降りるようになる。早朝にかけて現れ、日が高くなるといつの間にか消える露。「露を置く」と言葉にした古人の繊細なまなざしに改めて感心してしまう。

レディスマントル

さて、露に限らないが、水滴が良く似合うハーブがレディスマントルである。近年は学名読みでアルケミラモリスと言う方が良く通じるようだが、個人的にはレディスマントルと呼ぶ方がぴったり来るような気がする。水をやった時に葉の上に溜まる水滴もさる事ながら、露が縁に着いた姿もまたデリケートな感じがして良いものだ。

レディスマントル

ただ、レディスマントルで秋の露を楽しむならば夏を越してくたびれた葉ではせっかくの露も台なしだ。秋を迎える前にに傷んだ葉をしっかり整理して新しい葉を伸ばしてやること。フレッシュな葉に露が置かれるとまた格別なのである。