圃場で、年間を通して行なう作業が挿し木、挿し芽である。ハーブの種類によって挿す時期が異なるので、ほぼ途切れなくいつも行なっている感じだ。
この作業に無くてはならないのが鋭利な刃物。園芸のテキストには「良く切れるハサミで」とか、「ガーデニングナイフを用い」なんて書いてある。
ところが、挿し木をする時に大事なのがいかになめらかな切断面を作るかである。ハサミの場合、「パッチン」と音を立てて切れるような細い枝なら有効だろう。でも、柔らかい枝の多いハーブを挿したりする時には向かない。せいぜい月桂樹の枝が大量に出て、「とりあえず差しとくか」と、一機に挿し穂を作るときぐらいだ。ガーデニングナイフはそもそも研がなければならないし、タイムのような細枝をナイフで処理する気には到底なれない。
そこで登場するのがカミソリである。鋭利なことはこの上ないし、細かい作業もお手の物。ただ、1枚の刃をそのまま手に持つので最初は不安である。かつて顔剃り用の握りが付いたカミソリも試してみたが、全く駄目であった。
鉛筆ぐらいの太さの枝を処理するには少しコツはいるが慣れてくると結構できるようになる。よほど硬い枝を処理するのでなければ何百本、うまい人なら何千本の挿し穂が作れるだろう。
それでも慣れるまで何度手を切ったことだろう。ちょっと油断していたり、他のことに気を取られているとスパッとやってしまう。刃物を扱う基本的な心構えを覚えるには最適かも知れない。今もたまにバンドエイドのお世話になるけれど。