家でもあまり団扇を使うことは無くなったが、ビニールハウスでは、冬だけ団扇が活躍する。
もちろん、涼感を求めて使うわけではなく、火おこしのためだ。
薪ストーブに火をつける時、本体と煙突が冷え切っていると煙突からスムーズに排気されない。そのため、吸気も滞って火が広がりにくい。ひどい時には休憩場に煙が充満してしまい、寒いのに戸を開ける羽目になることもある。
そこで、最初だけ団扇を使って空気を送り込むといい流れになって火が安定する。
当初は火吹き棒のようなものをビニールハウスのパイプや竹を使って作っていたが、煙だらけの中で咳き込んだりしてしまい、いつのまにか団扇にその座を奪われてしまった。
パタパタとほんの数秒仰ぐだけの出番だが、あるとないとではかなり違うし、これでもそれなりに慣れが必要だ。
思い切り仰ぐのは厳禁。火の粉が逆流して大変なことになる。優しく、でもたっぷりの風が、そう、春風が優しくストーブの中に流れ込む感じで火の勢いを上げてやるとよい。
すぐに炎が安定して、煙がストーブの奥から煙突へ。天井のビニールを通して煙が見えたらもう大丈夫だ(ストーブの前にいながら煙が煙突から出るのが見れるのはビニールハウスならではだ)。
団扇の出番はこれでおしまい。それでも数年使ってきたらずいぶん古めかしくなってきたので、そろそろ交換も必要かもしれない。本当は和紙を張って柿渋でも塗ってリペアしてみたいが、もうそれは趣味の領域になりそうだ。ボロボロの団扇もまた雰囲気と捉えれば良いのだ。