縦のものを横に

昨日から続く雨は、今朝になっても降ったりやんだり。こんな日は屋外作業は不向きだ。

挿し木など気になっている作業は幾つもあるのだが、ビニールハウスを出たり入ったりしているうちにびしょ濡れになってしまうので、むしろ集中して一つの作業を行うのが良さそうだ。

そこで、今日は伸びすぎたり、形が悪くなった苗の剪定を行うことにした。

夏の間に開花して葉が小さくなった株は強めに剪定し、新しい葉を出させるようにする。また、虫食いなどで傷んだ葉も丁寧に取り除く。

根気のいる作業なので、気温の高い夏だとすぐに集中力が途切れて他の仕事に移りたくなってくるが、少し肌寒いぐらいの今朝は最適。ビニールに落ちてくる雨音も地道な作業に集中するにはぴったりのBGMだ。

「ありゃ、これもだいぶ傷んでいるなぁ」

「おや、無いと思っていたらこんなところにあったのか!」

と、作業しながら改めて気づくことも多い。

小さな苗のハーブたちもよく見ると夏の装いから秋冬モードに変わりつつある。

「縦のものを横にもしない」という言葉があるが、ミントなど季節が変わるのを敏感に察知して縦から横へと姿を変える。しかも決して面倒臭がるようなことは無い。

暑いうちは少しでも周りよりも高く伸びるよう競うように上へ上へと伸びていたものだが、この時期は横へ横へと陣地を広げようと地下茎を伸ばし始めるのだ。

ミントから伸び始めた地下系
ミントから伸び始めた地下茎

夏とは違い、寒い時期は上に伸びても北風や雪で傷んでしまってメリットは無い。むしろ低く横に、しかも地面の下で横へ勢力を広げていく。その形で冬を過ごして、春にはまた上への成長を始めるのだ。

苗も同じで、ポットからはみ出してまで横へと地下茎を伸ばす。小さいポットなのに、時には1メートルもの地下茎が伸びていてびっくりさせられる。

生育上は特に問題無いが、種類の違うポットにまで根を張られてはかなわない。そこで、こういった地下茎も剪定しておく。

地下茎の剪定
剪定後

さらに、枝が多すぎるものは減らしたり、枝が少ないものは先端を剪定して脇芽が伸びるようにしたり。今後の成長を考えながらの剪定作業はなかなか楽しい。

そんな作業に没頭し気がつくともうお昼。雨もそろそろ小降りになりつつある。今日はとりあえずここまでだ。

午後からは午前中と同じ日とおもえないような秋空が広がった。

青空

秋になーれ

今朝は本当に久しぶりの涼しい朝だった。圃場の温度計では最低気温が19℃を記録していた。

お昼近くなっても、風が爽やかで、作業で書いた汗も少し日陰に入るだけですっと引く。その汗もこの間までのねっとりした汗ではないのでなおさら気持ちがいい。

ゲンノショウコ
ゲンノショウコも咲き始めてきた

周囲にも秋を思わせる花が見られるようになってきた。

露草
少し前から咲いていたが、秋はなおさら青色が爽やかに思えるツユクサ

「うん、今日から秋!」という感じである。

春なら桜が咲くと目に見えて春の到来を感じるし、「梅雨入り」「梅雨明け」なんていう言葉もある。「梅雨明け」はすなわち夏のスタートだ、冬なら初雪や木枯らしで冬が来たことを強く感じる。

ところが、秋となると、なんとなく夏がダラダラと続いて、いつのまにか、なんとなく秋だなぁ。と感じるぐらいだ。「立秋」の言葉もあるとはいえ、夏真っ只中という年がほとんどだろう。

秋が好きな自分としては、ぜひ「夏明け」とか、「秋入り」という言葉があってほしい。

気がつくと、圃場の前の木の下にレウコジャム・オータムナーレが数輪花を咲かせていた。昨日まで咲いていなかったように思うのだが。

leucojum

「オータムナーレ」、名前からして秋にふさわしい花である。

よし、来年からは、この場所でレウコジャムが咲いた日から「秋」ということにしよう!

お盆の後始末

昨年のお盆は渇水に見舞われていたので、毎日水やりと水運びをしながら雨が降ることばかり望んでいた。だからお盆休みという感じではなかったし、とてもそんな気分にはなれなかった。

今年はおかげさまで8月に入ってからも降雨があり、お盆期間中も曇りや雨の日があったので、ゆっくりとお盆休みを取ることができた。

いままで、お盆休みが確保できた年も「せっかくの休みなんだから」と、溜まっていた本を集中して読んだり、どこかへバタバタと出かけてみたり、溜まっていた仕事を片付けたり(ヤレヤレ)と、いう感じだった。

お盆「休み」という実感がわかない例年を反省し、今年は「なるべく何もしない」という方針でお盆休みを過ごすことにした。

というわけで、妻の実家へ行き、ダラダラと過ごすお盆となった。

縁側からぼーっと山を眺めたり、きままに昼寝をしたり、海まで散歩して、波や雲を見ていたり。

お盆のお料理やお酒も出していただいたものをありがたくいただき、虫の声を聞きながら眠りにつく・・・。

という生活をしていたので、太った(◯キロ!)。帰って体重計に乗ったら数字に目を疑ったほどだ。

さて、お盆があけて今日から仕事である。しばらくそんな天気だったので、圃場の周りの草も伸び放題!

昨年は雨がない分、雑草も伸びる元気がなかったようで、草刈りの回数もごく少なめだったが、今年はお盆前と比べてもとにかく「伸びたなー!!」という感じ。

天気が悪かったぶん、ハーブ達はなんとなく調子はいまいち。威勢がいいのはレモングラスぐらいである。

レモングラス

このままでは雑草がハーブ達を覆ってしまいそうな勢いなので、お盆明け最初の仕事は草刈りに決定。

草刈り

長袖、長ズボン、長靴に履き替え、草刈り機を肩にかければそれだけで汗が出はじめる。

傾斜地の多い境界部分から刈り始めたのだが、とにかく体が重い。勢いよく伸びた草が邪魔をしてなかなか作業も思うように進まない。でも、ゆっくりさせてもらったお盆の間の後始末だと思って、午前中いっぱい奮闘した。

汗で重たくなったシャツを脱ぐと、なんだか少し体が軽くなった気分がした。

シソ
すぐ隣に植えていたブラックホリホックをあっという間に追い越した

毎年、畑のどこかしらから生えてくるシソもずいぶん大きくなっていた。今夜はこのシソでヘルシーに冷や奴ぐらいにして、体の方もお盆の後始末をせねばなるまい。

 

越冬それぞれ

3月も、あっという間に半ばを過ぎ、お彼岸となった。

さすがに春の陽がさす日も多くなり、ようやくハーブたちにも成長の兆しが見えるようになってきた。

これから一気に気温が上がると春の作業も急増していくが、忘れないうちにこの冬の被害状況をまとめておきたい。

この冬はその前の冬に比べると気温の低下はそれほどでもなかったが、とにかく2度にわたる大雪による被害が顕著だった。

特に、例年は枝が曲がる程度で済んでいたようなハーブたちの枝折れが目についた。

ローズマリー
かなり下の太い枝から折れたローズマリー

ローズマリーも太い枝が折れた株が多かったし、ラベンダー類も雪に上から押しつぶされて割れてしまう株が続出した。

ラベンダー
ラベンダー、今年は花が咲いてもちょっと見栄えが悪そうだ

かなり根元の辺りから裂けたり折れているので元のような形に直すのはかなり困難を伴いそうだ。少なくとも数年というスパンで考えておいたほうが良いだろう。

チェリーセイジ

チェリーセイジも昨年伸びた枝の大半が折れてしまったが、剪定しないと大きくなりすぎるのでちょうど良い。すこし整えるぐらいで済みそうだ。

レモンヴァーベナ

昨年寒さで傷んだレモンヴァーベナ、今年は早めから風よけをしておいたので恐らく大丈夫だろう。昨年よりはすこし早く芽が出てくるかもしれない。

ティートゥリー

ティートゥリーも雪で枝がかなり折れた。だが、葉の傷みはむしろ少ない感じだ。

カルドン
雪に対して意外な強さを見せたカルドン、直径は2メートルぐらいある

案外被害が少なかったのがカルドン。冬前の時点で相当大株になっていたし、 一時はこの上に40センチ以上は積もっていたはずだ。枝もろともペシャンコになっているだろうと思っていたのに、雪が徐々に溶けて姿を表すと、所々の葉が途中で折れているぐらい。大雪が降ったあととは思えないぐらいだ。

レッドベルガモット
土の下に隠れて冬を過ごすレッドベルガモット

もちろん、地面にへばりついて冬を越すような種類はほとんど問題がない。すでに秋の時点で地上部がほぼなくなったレッドベルガモット。元気に小さな新芽をたくさん出し始めている。

ボリジ
周りの草が枯れると姿を表すボリジ

土手の斜面に零れ種で生えたボリジも春の日差しをすこしでも集めようと葉を思い切り伸ばしている。

柳

また、今年の冬の雪の被害を微塵も感じさせなかったのが、法面の土止めとして植えていた柳。大雪もなんのその。柔らかい枝は全く影響もなくすでに柔らかな新芽を伸ばし始めていた。

柳の新芽
柳の新芽

人生でも、ハードな局面に強硬に立ち向かっていくよりは、しなやかに上手に避けていくほうが乗り越えやすかったりするもんなぁ。としみじみ思わせる冬の終わりだった。

小さな災いと小さな喜び

昨日、今日と雪が舞う松江。気温も低く、ときには吹雪いたりして、3月とは思えない。

しかもちょうど昨日は高校入試。大学センター試験の日も大雪に見舞われたが、受験生にとっては苦難の年のようだ。

さて、年をとって好きになった言葉に、「禍福はあざなえる縄の如し」がある。ようやくこの言葉がわかってくる年になってきたのかもしれない。

悪いことがあっても、かならずまたその代わりのように良いことが起こるし、良いことが起こったからといって浮かれていると足元をすくわれる。本当にその通りだと思う。

また、そういう気持ちで日々を過ごすことが大事なのだろう。悪いことがあってしょげてばかりいては目の前にやってきた幸せも見逃すかもしれない。また、謙虚さと慎重さをいつも持っていなければ思いもかけないトラブルに巻き込まれることもあるものだ。

先日、お客様に発送した荷物が転倒事故にあった。

幸い代品もすぐ発送できたが、転倒にあった荷物は、後日返送されてくる。いつものことだが、中身を見て確認するのは結構いやなものだ。めったにないこととはいえ、ひどい時にはどれがどの種類かもよくわからないぐらいグシャグシャになっていたり、根から土がほとんど落ちてしまっていることもある。倒れた上に、発送先と発送元を一往復するのだ。ダメージが少ないわけがない。

かといって処分するわけにもいかず、植え直したり、一年草などは畑に植えてその後の生涯を全うすることになる。自家用のバジルやコリアンダーなどはこういう返送苗で育てることも結構ある。

荷物事故

箱を開けてみたら、今回の場合は配送途中で箱が倒れてしまった程度の被害だった。それでも普通の商品とは違い、底板との固定が外れると苗の傷みは大きい。土が半分ぐらいなくなっているものもあったり、他の苗が上に乗ったために枝が幾つか折れ、根もあらわになっている株もあった。

荷物事故

一つは相当ダメージが大きかったが、多くは剪定して植えなおして数ヶ月すればまたよい調子になりそうだ。親木が古くなっている種類もあるので、親木用にそだてるのもよいかもしれない。災いはそれほど大きくなくて済んだようだ。

このような小さな災いがあったが、ことわざ通り、小さな喜びもやってきた。

ちょうど同じ頃に商品をお送りしたひとりのお客様から商品の到着について丁寧なメールをいただいたのだが、一枚の写真が添付されていた。

アップルゼラニウム大きくて見事なアップルゼラニウムの鉢植え。その隣に今回お送りしたまだちいさなアップルゼラニウム。

メッセージによると、なんと大きな株は12年前に当店からお買い上げ頂いた苗だという。

12年というとゼラニウムでも結構老化して見た目が悪くなりやすい。それがこんなに若々しい姿で、形も美しく育っている。毎年丁寧に剪定や植え替えをしていただいていることがはっきりと伝わってくる。

このような方に育てられて幸せなゼラニウムだと思うし、苗を育てた我々にとっても幸せこの上ないお知らせだった。この写真を思い出すだけでしばらくは気分良く過ごせそうだ。

「禍福はあざなえる縄の如し」。今年、悪天候の中で頑張った受験生にも幸せな春がきっと来るだろうし、転倒して辛い目にあった苗たちも必ず報われる日が来ると思う。