せめぎあい

年間を通して管理しているお客様の庭にはかなり広いところも多い。自ずからグラウンドカバーを使うところも増える。

雑草は生やしたくないけれど、あまり手間がかかるのも・・・と言う場所にはカーペットグラスを選ぶことがある。一気に広がってくれるので比較的少ない数で大きな面積を覆うのに適している。

ただ、毎年今の時期はやきもきさせられる。寒さで枯れるようなことは無いにしても春先のスタートがやや遅い感じで、一時他の雑草に先頭を譲ることがままあるのだ。
カーペットグラス

このお庭でも、苔とカーペットグラスが拮抗している。そのうち、カーペットグラスが勢いを増して上を覆い尽くす(と信じたい)。

スタッフの一人によると、「苔をよけているような感じだ」とか。苔があると嫌がって広がらないのではないかと。そう言われればそんな気にもなってくるのだが、ここはカーペットグラスのポテンシャルを信じなければ。もともと乾燥した場所を好む植物なので苔が生えるような場所はいまいちお気に召さないのだろう。

カーペットグラス

冬は日当りの関係で苔が広がるようでも、春以降はかなりの日なたになる場所である。夏前にはきっとブワッと広がってくれる・・・はず。苔も夏はその下で涼しく暮らすのかも知れない。

控えめなグラウンドカバー

ペリウィンクルは地道なハーブである。香りもなく、葉も特に特徴が無い。古くは薬用として広く使われていたようだが、現在は開花時期はともかく、それ以外の季節は店頭でも目に留める人は少ない。

大型のVinca majorはツルニチニチソウと呼ばれ、盛大に繁茂しているのを時々目にする。近所でも法面をしっかりと覆い尽くしている。この強力な成長力のせいもあってどちらかといえば雑草のような見方をされることも多いようだ。実際に茎の伸びかたといったらビョーン・ビョーンとはねるように伸びていき、よほど注意していないと手に負えなくなるほどだ。事実、昔ハーブを育てていた貸農園で雑草化しそうになり、手を焼いたこともあった。
ペリウィンクル

それに比べ、Vinca minor・パープルペリウィンクル(ヒメツルニチニチソウ)の方はおとなしめだ。といっても芯は強いようで、寒さ暑さも何のその、少々湿っていようが乾燥していようが、ガンガンの日なたから日陰まで何とか育ってくれる。日なたでびっしりと硬めの葉を敷き詰めるように育つのもよし、日陰でしっとりと優しい葉を繁らすのもまた悪くない。ちょうど今ごろ、花時を迎え、クラシックな紫花で目を楽しませてくれる。

ホワイトペリウィンクル

また、白花の品種のホワイトペリウィンクルはさらに控え目な感じである。葉色も薄めで、育ち方によっては黄色い斑がうっすらとかかることもある。やや小さめの白い花は、楽しめる期間は短めだが、いっせいに咲いたところはなかなかよいものである。

ホワイトペリウィンクル

どちらも、グラウンドカバーとしてはかなり役立ってくれる。環境が良くつかめていない場所にとりあえず試して見るときなどおあつらえ向きなのである。

春風に揺れて

「春は黄色い花が多い」と何かで読んだ。思えばたしかにその通りだ。桜に代表されるピンクとともに、イエローは春に良く似合う色だろう。

ところが、個人的にはあまり好きな色ではない。服はもとより、あまり身の回りに置かない色である。金運が良くなるからと黄色の財布を持つ気などさらさら起きない。育てる花も、黄色のものはかなり少ない方だと思う。

それでもアカシアの黄色はとても好ましく思えてしまう。一つ一つの花のとても繊細なことやさわやかな春の風にそよぐ姿など、アカシア全体に魅かれるのかも知れない。

サンカクバアカシア

さて、そのアカシア、何百種類もあると言われ、数十メートルに達する種類から背丈にも満たないコンパクトな種類も有るらしい。ただ、実際に育てやすい種類となると、残念ながらかなり選択肢は狭まってしまうように思う。

庭木として良く使われるギンヨウアカシアなどは比較的扱いやすい種類だろう。フサアカシアは、松江でも寒さに耐え、ものすごいスピードで大きく育ったことがある。あっという間に5メートル、6メートルと伸びていき、その時にはさすがに困ってしまった。あまり安易に植えると後悔すると思う。

サンカクバアカシア

さて、今お気に入りなのがサンカクバアカシアである。それほど大きくならず、形的にもまとめやすい。花には爽やかな香りがある。といっても鼻を近づけなければ分からぬ程度なのだが。

サンカクバアカシア

この辺りでは、雪によってやや折れやすいことが心配なくらいだろう。また、アカシアを育てる上で共通の悩みがある。挿し木増殖が困難で種子で増やさざるを得ないことだ。だから毎回種を蒔くたびに思うのだ。あんなに大きくなる植物がどうしてこんな小さな種子から・・・と。

空よりも青く

こぼれ種で増える植物というのは、たいてい「一体どこから」と言う感じでその場に現れるものだ。圃場の脇にもう数年前から居着いているボリジの株もそうだった。用土を捨てていたわけでも無いし、終った花を放置していたこともないのにいつの間にか芽生えてきたのである。ボリジの種子の場合、アリが良く運んでいくのでその線が一番疑わしい。以来、毎年種子を落とし、絶えることなく生えるようになった。
ボリジ
こんな荒れ地に根付いてしまうと、それはそれは頑丈な株になり、どちらかといえばあまり可愛らしくない。事実、葉は硬いし、あまり繊細といった感じではない。

ボリジ

花も、咲く前は頑丈な毛に覆われていてごわごわした感じだ。なのであまりガーデンや花壇向きではないように思う。やはり野にたくましく咲いている姿が似あうのだろう。開花を待ちかまえていたようにミツバチが早朝から忙しく花の周りを飛び回っている。

ボリジ
ブルーの星が咲くと言われるその花は、やや下向きに咲くので撮影もしづらい。鮮やかな色は「空のような青」と形容されるが、こうやって空を背景にして見ると空よりも青いようだ。少なくとも松江の空よりは。

銀色の寝室

圃場の前にあるシンボルツリー、シルバーライム(ギンヨウボダイジュ)の芽が日に日に膨らんできた。今朝見ると、一つが既にふわりと開きかけていた。
シルバーライム
ギンヨウボダイジュの見どころは新芽の葉色である。特に葉の裏は綿毛がついていて文字通り銀色に見える。風が吹くと表面のグリーンと葉裏の銀色が輝いて瞬いているかのようにみえ、初夏の雰囲気を一層爽やかなものにしてくれる。
シルバーライム
葉裏の様子を写して見ようとしゃがんだところ、新芽の中にちいさなクモがお休み中であった。ふわふわとした寝床の中でお休み中だったのかも知れない。なんとも素敵な寝室を見つけたものだ。
シルバーライム
太陽が当り、暖かくなったのか、それとももっと全身を撮ってもらいたかったのかヨッコイショと外に出てきた。

この株は小さな苗を植えてから5年以上になり、3メートルを越えるようになってきた。そろそろ夏の良い日陰として活躍してくれるだろう。