家賃の回収

鉢植えにしているラベンダーの親木は、たいてい開花が終り、少ししてから植え替える事が多い。古い枝を剪定しておくと、秋に向けて挿し木の元になる良い枝が出やすいからだ。

その後、成長の様子を見て挿し穂の採取を行うのだが、親木を置いている場所に行って見ると見かけない鉢が置いてある。ラベルをチェックすると確かにラベンダー。でも、これは明らかにスミレの仲間である。周囲に野のスミレが多いのか、時々鉢植えに混じり込む事があるのだ。

すみれ

どうやら植え替える前にすでに潜り込んでいたようで、剪定されたラベンダーの勢力が強くないうちに鉢を乗っ取ってしまったようだ。今では、まるで自分が昔からここにいたかのような態度。ここまで態度がでかいと追い出す気も無くなってしまう。いつの間にやら種子までつけて、更に勢力を拡大しようとしているほどだ。もちろん、元の住人(?)のラベンダーは姿もない。せめて家賃の代りに、花でも見せて欲しい所だが、それは春まで待たねばなるまい。

スミレの種

そういえば・・・と、ふと思い出した。

一月か二月ほど前、ある園芸店さんから日本のスミレの苗がないかと問合せが来た。詳しくは分からないが、宝塚(歌劇)で使うそうで、日本のスミレでないといけないとのこと。残念ながらうちにでは育てておりませんので。と、他の園芸店さんを紹介してお断りしたのだが、う〜ん、これでも良かったのでは?

家賃ぐらい回収できたかも。

冤罪

お盆ごろから腕や首に湿疹が出だした。はじめ、今年二回目のあせもかと思ったのだが、どうやら様子が違う。一時は枕か何かのダニではないかとも疑ったし、いま流行っている手足口病かもしれないと考えたけれど、やはり違うようだ。

しばらくしてそう言えばこれは・・・チャドクガか何かが原因では?と思い当たった。徐々に広がっていくので毛虫だとは考えもつかなかったけれど、こいつらの毛は衣服について患部を広げるのだった。そのように考えれば納得が行くし、チカチカする痛みも3年ほど前の症状を思い出させた。早く分かっていればガムテープで針を抜き取ったのに。今や遅しである。

ただ、どこでやられたのかがはっきりしない。お盆前には何軒もお庭を回ったけれど、とりあえず見かけなかったし・・・。

ふと思いついたのが、毎日畑のオクラを収穫する時にお目にかかる緑色の毛虫。ほぼ毎年オクラの葉を破れた傘のようにしてくれる大食漢だが、目についた時に収穫鋏で払い落とすぐらいだった。もしやこいつが?と、疑いを持ち、恐る恐る近寄って撮影。いままであまり気にしなかったのに、急に態度が変わってしまう。細い毛までが、ネトルのように恐ろしいものに見えてくる。ところが調べてみたらどうやら無害のようだった。

フタトガリコヤガ

ちなみに正体は、フタトガリコヤガの幼虫。もう少し大きくなると黒い点々が目立つようになる。アオイ科の植物が大好きなようだが、あまりマロウについたのを見た事が無い。オクラのほうがおいしいのだろうか。

オクラの花
オクラ・・・花もまた良し。実はサッとゆでて味噌汁に入れるのが好み。なぜか嫌がる人も多い・・・

それにしても、早口言葉に使えそうな名前である。フタトガリコヤガ、フタトガリコヤガ、フタトガリコヤガ・・・。

タンジーと蝶

夕方、ひとしきり雨が降り、店頭のハーブたちも少し元気を取り戻した模様。でも、暑さで傷んでしまった苗は圃場へ持って替えって養生が必要なので、くたびれた株が無いかチェックしていると目の前をひらりひらりと横切ったものがいる。

タンジーとアゲハ

タンジーの黄色い花にふわりと止まったのは一匹のアゲハであった。ハーブの中でも比較的防虫効果が高く、それを目的に買われるお客様も多いし、実際活用していらっしゃると言う話も結構聞く。こちらもこちらで、あまり虫媒花の果樹などのそばには植えない方がよいとおすすめしているので、こういう光景を見ると苦笑するしかない。

いくつか理由を考えてみた。

  • アゲハにはタンジーの防虫成分が効かない
  • 花の蜜の誘惑の方が上だった
  • まだ苗なのであまり防虫効果が強くなかった
  • 花の辺りは防虫成分が少ない
  • 暑さで防虫成分が弱っている

etc.・・・

まあ、実際にはこのアゲハに聞いてみないと分からないわけで、人間にも時々いるように変わり者のアゲハだったのかも知れない。真夏で、他に目ぼしい花が無くて仕方なく止まってしまったとも考えられる。砂漠のオアシスはより好みはできないしね。

夏は昆虫も多いせいか防虫ハーブの人気が高い。お客様から聞いたり、自分で見たりしても、効果があったり、無かったりとケースバイケースのようである。シトロネラの回りで草取りしていると蚊に刺されなかったと言う報告もあれば、スタッフはシトロネラの株分けをしている時に蚊に刺されたと言うし。ペニーロイヤルミントを植えたらアリが家に入ってこなくなったと言うお客さんもいれば、うちは葉の上を平気でアリが歩いているという話もあったりする。

キャットニップと猫の関係も微妙だ。以前、猫のいるお家に言った所、自分のかばんに猫がしきりに突入しようとするので調べてみたら、かばんの奥にドライになったキャットニップが入っていた事がある。今考えるとなぜかばんの底にキャットニップが有ったのかが不思議だが。一方で、圃場に迷い込んできた野良猫にキャットニップを嗅がせたらたいそう嫌がった。これは多分まだ仔猫だったからだと思うのだが・・・。

とりあえず、今夕、タンジーに止まった蝶の姿、しばし暑さを忘れさせてくれたのは確かであった。

美声は少し離れて

夕方、ハウスでの作業が一段落して、涼しい風に当ろうと外へ出ると、すぐそばで「カナカナカナ」とヒグラシの声。裏の山では夕暮れの大合唱が始まっている。どうやら一匹だけでソロを気取っているようだ。それにしても間近だと実に耳につく声である。

あまりに近いので、鳴き声のする先を探してみると、いたいた。こんなに近くでお目にかかるのは初めてかも知れない。小学生のころ一度捕まえたことがあったか、無かったか。

ヒグラシ

セミの中では鳴く時間帯と言い、少し寂しさを感じさせる鳴き声と言い、好きな種類であるけれど、あまりに近くで鳴かれるとその良さも半減してしまう。また、山が鳴いているような大合唱もうるさいものだ。朝、夜明け間際の涼しい時間に遠くから聞こえるのは良いものだし、夕方、仕事の疲れをそっとぬぐい取ってくれるような数匹での合唱がベストと言いたい。

さて、ソロの演奏を終えた一匹、写真を撮られると恥ずかしかったのか横歩きで舞台の袖へと消えていったのであった。

花が咲く前に

お客様からよく伺う話として「レモングラスをおじいちゃんがススキと間違えて抜いてしまった」というのがある。店頭でも毎年一回は耳にする話題である。

「まあ、草みたいなもんですからね〜。関心のないひとには見分けが付きませんよ。」と慰めるのだが、実際ハーブには「草みたいな」ものが大変多い。

ソープワートもそのひとつ。草むらの中から「探せ」と言われたら結構苦労しそうである。ただ、花が咲く時は別。柔らかなピンク色も良く目立つ方だし、しっかり育てると、写真のように思ったより存在感がある。特に、つぼみの様子がなかなか印象的である。
ソープワート
でも、観賞用として薦めますかと言われると、どうだろう。なかなか分かってもらえないかも。それ以前に、花が咲く前に間違えて抜かれませんように。