ダンディで臭いヤツ

コリアンダーの花が相変わらず咲いている。こぼれ種のものは開花も長いのか、早く種子を落としてくれればいいのに、片付けて次のものが植えたいのに植えられないでいる。

いつまでも咲き続けていることを良いことにカメムシが毎日のようにいらっしゃる。目にも鮮やかな衣装をまとったアカスジカメムシだ。この色のストライプを見事に着こなせるとはダンディなヤツである。

アカスジカメムシ

よく、コリアンダーをカメムシの防除用に植えると言われる。それにしても、同じ匂いなのでやって来るのか、それともコリアンダーみたいな臭いものを食べるのでカメムシは臭いのか。人間でも匂いの強いものを食べると体臭が強くなるとも言うのだが。

いずれにせよ、この色、天敵から身を守るのには効果的なのだろう。その上臭ければ誰も手を出さない。臭いかどうか試してみたくもあるが、かつてブラックベリーとともにカメムシを口に入れた経験があるものにとっては手を出す気にはなれないのである。

??

撮影中にもう一匹の甲虫も御来店。こいつも臭いのだろうか。色は良く似ているし。似た者同士なのかも知れない。

ちなみにコリアンダー、葉の香りは苦手な方も多いかも知れないが、種子は非常に甘くてスパイシー。粒のコショウと等量でブレンド、その都度ミルでひいて肉料理などに使うとサイコーです。お試しあれ。

11年目の香り

ハーブを初め、色々な植物を育てている圃場には、何年もその正体がはっきりしない株もたくさんある。成長もせず、花も咲かずとなるとなおさらこちらの関心も薄れ、つい目も手もかけなくなってしまう。それでも捨ててしまうわけには行かず、ズルズルと毎年植え替えたりしているのである。

そんな株の一つ、ガリカローズが今年花を咲かせた。記録を調べてみたら、種子を蒔いたのは98年の11月。11年目にしてようやくである。たいていローズの種子は種子を蒔いても発芽まで良くて半年、たいていは1年がかりである。確かこの種類も時間がかかり、発芽数も少なかったと思う。

ガリカローズ

問題はその後である。ポット上げしてから非常に成長が遅かった。何か問題があったのかも知れないにせよ、何度植え替えてもひょろひょろと細い枝が数本伸びるのみ。同じ原種でもドッグローズスイートブライアーローズはぐんぐん伸びるのに比べるとあまりにも貧弱であった。

そのため、ポットで過ごす期間が7,8年はあったのではないか。良く生き延びてきたものである。

また、ガリカといえば、思い浮かべるのはアポセカリローズ(Rosa gallica officinalis)である。ハーブの本でも良く取り上げられるオールドローズだ。あまりにも名高いこの種類に対してどうしても原種であるガリカへの関心は薄らいでしまう。とりあえず花を見てみようかという気分だったのである。第一、種子なので咲いたところで本物か?という疑惑はいつまでもつきまとう。

さて、2年ほど前?に大きな鉢に移し、そのまま忘れていた。いつの間にか蕾がつき、いつの間にか開花。まさにローズピンク。香りはといえば、確かにオールドローズを思わせる品のある深みの有る香り。ただし、株も小さいのか、園芸種のように周りに漂うほどではなかった。種子からなのでそこそこ個体の性質に幅があることも考えられる。

さて、今後この株をどうしようか。11年かけてここまで来たので、これからもゆっくり考えても良いかもね。

木の葉ずれ

梅雨に入ったというのに雨が少なく、爽やかな日が続く。風が吹くととても気持ちがいい。

良い風が吹くと、圃場の一角に植えたシルバーライムがさわさわと耳に心地よい音を立てる。

シルバーライム

この木はもう5,6年前にもなるだろうか、小さな実生から育てたものである。初めはなかなかこの場所が気に入らなかったのか、夏前には水が切れて葉先が焼けてしまって心配したものだ。

ようやくここ1,2年、背丈を肥えるようになってから葉も美しくなり、樹形もいい感じになってきた。ちょうどその頃から、風が吹くと気持ちの良い木の葉ずれを楽しませてくれるようになった。

周囲の田畑も春先の賑わいが一段落して、エンジンの音を聞くことも少なくなり、一層葉の音が引き立つようになった。

今までは葉色ばかり楽しんでいたが、葉が奏でる音もなかなか良いことに気がついた。木の葉ずれを楽しむ庭、なんてのがあっても良いのではないかと思う今日この頃である。

年を感じさせる花

ハーブを育苗する元になる親株の手入れをしていて、白花ダイヤーズカモミールの花芽が上がりはじめているのを見つけた。

白花ダイヤーズカモミール

ひと目見て、ドキッ。つぼみが黄色っぽいではないか。白花のはずなのに。親株が黄色ならこの株を元に生産した苗ももちろん黄色になる。冷や汗が流れる。親株は二つ。もう一株はまだ花は咲いていない。

とりあえずこの時点ではどうしようもないので経過を見守ることにした。翌々日、恐る恐る株のところに行ってみた。

白花ダイヤーズカモミール

開花していた。白である。一安心。

白花ダイヤーズカモミール

開ききるまではまだ少し黄色味が残るが、しばらくすると美しい白が顔を見せる。

ようやく安心して冷静になれたのか、思い出した。去年も同じ株で全く同じ経験を・・・・。こんな時、年齢をひしひしと感じるのである。

ニャッキ

いつも作業をしている圃場では、一年を通して目にする昆虫も限られる。毛虫、イモムシの類も、ほぼ顔なじみのものばかりである。詳しい名前は知らなくとも、「○○(ハーブの名前)に付くニャッキ」と言えばスタッフの間でもほぼ通用する。

ところが、庭仕事へ行くと、今まで見たことも無い「ニャッキ」に遭遇する。有るお宅の庭先で、シモツケの花を丸坊主にしてしまったニャッキがいた。普段から昆虫の名前にはあまり詳しくないスタッフばかりなので、当然だれも知らない。

シモツケマルハバチ

とりあえず、見た感じ無害そうな雰囲気なので見つけるかぎり手で取り除いた。ところが、通路を挟んでピンクと白の色違いのシモツケがあるのに、食べられているのはなぜかピンクの方ばかり。白はほとんど被害が無かった。成育環境もほとんど変わらないのにだ。

シモツケマルハバチ
良く見ると両端は色が違う感じである。さすがにピンク色はしていなかった

あまりに不思議だったので、帰ってから調べてみた。ネットのイモムシ図鑑を調べるが、なかなか分からない。あまりにたくさんのイモムシを見てさすがに気分も悪くなってくる。こんな時は方針を変えて被害に遭った植物から絞っていくのも手である。シモツケから探っていくと、すぐに分かった。「シモツケマルハバチ」というハバチ科の幼虫であった。

更に調べていくと、なんとこの幼虫、花を食べて、体色が変わることもあるという。ピンクの花ばかり食べていたのもこのへんに理由があるのかも知れない。

小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・
小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・

正体は分かったが、スタッフの間で「シモツケマルハバチ」と言う名は定着しないだろう。きっと「シモツケのニャッキ」の名前で呼ばれるに違いない。