無事誕生

昨秋、とあるお茶畑で番茶を摘む手伝いをしていた時のこと。お茶の木をよく見ると所々にカマキリの卵鞘が産みつけられているのに気がついた。

もちろん、収穫したお茶の葉にも卵鞘が混ざってはいけないので後で選り分けられるのだが、そのまま捨てられてしまうのはもったいないと思い、集めて持ち帰った。もちろん、ビニールハウスで孵化させようと言うもくろみであった。カマキリは大きくなればチョウなどの大きな昆虫を補食するが、小さいうちは小さい昆虫を食べる。アブラムシ等もそのなかに含まれるということらしい。

春先に一番悩まされるのがアブラムシなので、カマキリ君にお任せしてみようと言うわけだ。テントウ虫の親子の活躍はまだしばらく先になりそうだし。

ただ、問題は卵鞘の管理。自然界ならば雨や雪、風にもさらされ、氷点下にもなるだろう。ビニールハウスの中で、冬暖かくなったり寒くなったりを繰り返したり、雨もあまり当らない環境で無事春を迎えられるかは心配だった(もともとビニールハウスのなかに産みつけられたものは問題なく孵化したことがある)。持ち帰り、とりあえず目の届きやすい、ホワイトセイジグレープセンテッドセイジの大鉢に枝のまま差しておいた。

その後お茶の木から折り取った枝は徐々に枯れてくるし、卵鞘が落ちてしまわないか心配していたが、今日、ふと見ると孵化し始めている。

カマキリの孵化
卵鞘から出る時にまず脱皮をするらしい。皮が残っている。

今のところ、3つほどの卵鞘から幼虫が出て来て動き始めていた。気が早いヤツはホワイトセイジの葉の間をごそごそ。ビニールハウスの中のホワイトセイジも春はアブラムシがつきやすいのでちょうど良い。

ホワイトセイジの葉の上でにらめっこ
ホワイトセイジの葉の上でにらめっこ

さて、この春アブラムシの害が少しでも減ってくれるのか、ちょっと楽しみである。

やせ我慢せず

お彼岸がすぎてからフルーツセイジが咲き始めた。今までは大抵冬のさなかに開花することが多かった(といってもビニールハウスの中で)。セイジの中でも極端に寒さに弱いくせに、やせ我慢してこんな寒い時に咲くなんて、といつも思う(実のところは、短日植物だからだそうだが)。

今年は冬の間日が射すことが少なく、あまりに気温が低い日が続いたせいなのかよくわからないが何鉢かあるのに全く咲く気配を見せなかった。それが春になってようやくつぼみをつけ始めて開花。

フルーツセイジ

真冬に咲く時はつぼみの数も少なめなのに、暖かいとやはり調子がいいらしい。花の数も多めだ。

周囲が雪に覆われた薄暗い中で咲くよりは暖かい日差しの中で咲いてくれるほうが見るほうも気分が良い。来年もやせ我慢せずに是非この頃に開花してほしい。

後を引き継ぐ

現在管理しているお庭のうち、無くなられたご主人が大切にしていたと言う庭が3つもある。

こういう庭の管理を引き継ぐ場合、最初の春は要注意である。思わぬところから球根が芽を出し始めるのだ。クロッカスやチューリップ、スイセンetc.・・・出て来てはじめて植えられているのに気づくことが多い

そんなお庭の一つで、今年もハナニラ(イフェイオン・食用の花ニラとは別)が咲き始めた。このお庭はローズが主体なので、葉だけが出ている時にはコンパニオンプランツとしてニラを植えておられたのだろうとばかり思っていた。翌春開花してようやく、何だ、ハナニラだったのかと気がつく始末。香りも良く似ているのだ。

ハナニラ

これぐらい香るので、何かしら防虫効果ももしかしたらあるのかもしれないが、とにかくものすごい勢力で広がる。時々は抑制しないと庭中がハナニラだらけになる恐れがあるぐらいだ。もしかしたらグラウンドカバー用として植えられたのだろうか・・・なんて推理しながらの庭仕事である。

八十五歳の薔薇

昨年のことである。定期的に庭づくりに伺っているお客様から、庭のレイアウトを変更したいので、大きなバラを移植してほしいという希望があった。

相当古い株のようだったので、躊躇したが、「万一うまく行かなくてもOK」ということで冬になるのを待って移植した。三人掛かりの作業で掘り上げ、移植。根もまずまず良いコンディションだったのであまり心配はしていなかった。

八十五歳の薔薇

春になり、株元や太い枝からもばきばきと新芽が伸び始めて一安心。

老木からの新芽

「ほっとしました」
と、お客様に伝えると、
「いやあ、実はこの薔薇はね」
と、由来を話されたのである。

それによると、先般 100歳間近でなくなられたおじいさんが子供の頃、川に(!)流れて来た株を引っ張り上げて植えたのがスタートだという。おじいさんの年齢から考えると少なくとも八十五年は経っているはずとの話。

先にそれを聞いていたら怖くてあんな大胆な移植はできなかっただろう。この頃、高齢の患者の大手術が成功!とかいう話題を時々メディア等で目にするがまさにそんな感じである。

もちろん種類は不明だが、やや中輪の花をかなり咲かせているのは一度確認している。今年、どんな風に咲かせるのか今から楽しみだ。

お庭にて

天気予報では一時雨の予報だったが、朝から結構日差しもさして気持ちがよい天気。昨夜、ざっと降ったようだけど作業に支障はなさそうなので、「ソレッ」と庭仕事へ出発した。この時期、一日で植物も雑草も大きく生長するので、競争だ。ビニールハウスでの仕事は雨の日にまわして、とにかく春の晴れをむさぼるように外仕事だ。

今日は市内のお庭のメンテナンスを何件か。ちょっと風が強いお庭もあったけれど、むしろバタバタすると汗ばむぐらいなのでかえって良かった。

あるお庭ではピンクスイートバイオレットが満開。かつて数株植えただけなのに、株自体も増えていくし、結構種子でも広がったようだ。風が吹くとふわりと甘い香りが漂う。仕事の最中にもちょっと得をした気分。お客様からも「玄関がいいにおいがして」と喜ばれた。

ピンクスイートバイオレット

それにしてもほとんど年中放置状態なのにこの元気な様子。実は土もそれほど手を加えていない。その上少し前まで屋根から落ちた雪でつぶれていたということだ。育苗ポットでは土や環境にもいろいろ気を使っているのになかなかここまでには・・・。自然の偉大さと自分の未熟さにも気づかされる春の日だった。