判断力

先のオリンピック、当店のスタッフたちも、思わず遅くまで見てしまったという者や、絶叫しながら応援する人、また全く感心のない人など様々。私自身はというと、さほどでもなくちょうど早朝に目覚めた頃に結果が出たり、クライマックスのところをラジオで知るという程度。ただ、一瞬にかける意気込み、そして、瞬間の判断力や決断力の強さは画面を通しても伝わってくるものがあった。

フェンシングなんて見ていても全く勝敗を理解することができなかったのに、スローモーションで解説されると、ごく短時間のうちにそれほどのやり取りが・・・と驚くことしきり。頭で考えている暇は無いように思うが、体が反応するのだろう。

それに比べると園芸とはなんとのんびりした営みだろうか。判断といっても、そろそろ種をまこうかとか、水やり、もう少し待とうか、収穫は明日にしよう。と言う程度である。

それでも、お客様のお庭ではそれなりにシビアな判断を迫られることが多い。先日も、春に植えたレモンマリーゴールドが元気に生長したは良いが、伸びすぎたせいか、中央部分の枝が折れてしまった。場所的にも花壇の中央部で、前の道路からも一番目立つところであるから剪定をしたいところである。しかも周囲の枝も、やや徒長気味で今後折れる恐れもありそうだ。しかし、そろそろ花芽もつきそうな気配。これが7月なら躊躇無く剪定をしたところだ。

レモンマリーゴールド
中心が折れた株(写真では分かりにくかったです。スミマセン)

お客様も今年初めての開花を楽しみにしておられるのだが、迷いに迷った上で剪定を決断。レモンマリーゴールドは生育旺盛なせいか、花があまりに早く開花したり、肥料の効きが良いところでは大きくなりすぎて倒れてしまうこともある。ここはやはりまとまった姿で開花させ、そのかわり秋遅くまで楽しんでもらうほうを選択し、思い切って刈り込んだ。

レモンマリーゴールド刈り込み後
相当悩んだ上での判断なのだが、そこは園芸。スポーツと違って緊張感はやっぱり無い。これでも、それなりに現場で鍛えられて、昔よりは決断力や判断力はついて来たように思う。昔はどれだけ優柔不断だったか・・・。改めてオリンピック選手の凄さを思うのである。

帰りの車の中はものすごい香りだった。

盆前のイライラ

今年も無事お盆を迎えられて安堵している。毎年、お盆の前はスケジュールがハードだ。圃場のほうはそれほどではないにしても、お客様のお庭のメンテナンスに追われる。あらかじめ余裕を持ってスケジュールを組んでいても突然の悪天候や予期しない用事等でスケジュール通り進むことは滅多に無い。今年はそれでもまだ良いほうだったかもしれない。

梅雨明け以来降水量が少なかったこともあり、比較的雑草の伸びも少なかったように思う。それでも、少し日陰等、水分のあるところでは雑草もしっかり伸びてくる。

昨年から手入れを始めたあるお庭で、一つの雑草に少し頭を悩ませている。花壇の横の少し急な法面で、種々の雑草に加えてカラムシが幅を利かせているのだ。見た目はごくおとなしそうな感じではあるが、結構しっかりとした根を張っている。無理矢理引き抜くこともできるのだが、そこは法面。根と一緒にボロボロボロボロ土が崩れてしまう。今のところは目立って困る状況ではないので鎌などで時々刈りそろえるにとどめている。今後土が崩れないよう、代替になる植物を選んで徐々に移行していくつもりである。


さて、このカラムシ、もともと繊維をとるための植物である。とはいえ、ものすごく丈夫かというと植物自体はそれほどでもなく、簡単にちぎることができる。ただ、その後が問題で、軍手等はめていようものなら葉が引っ付いて大変なことになる。葉が柔らかいのがかえって取りづらいし、少々洗っても取れないのだ。

カラムシ
小千谷縮の原料だったりする

調べてみるとあのネトルと同じイラクサ科。チクチクしないだけましだが、イライラはしっかりさせてくれるのだ。

 

夏のバトル

年がら年中、それなりに害虫には悩まされているが、真夏の代表と言えばコガネムシの幼虫だ。

今年は春からちょっぴり育苗用土を上等にしたことも原因かもしれないけれど、今まであまり被害に遭わなかったミントの苗にも出て来て少し驚いている。

土の中にいるとはいえ、慣れると案外見つけるのは難しくない。挿し木株等をポット上げしてしばらく経ち、根も張ってくるに従って土の表面はしっかりしてくるものだ。それが植えたての頃よりもフワフワになって来たら要注意。

ミントの苗
表面を触って、指がスッと入るようであれば間違いない。ポットを傾けるとさらさらと土が流れ落ちてくる。

ミントの苗
株を取り出すと、周りの土がついて来ない。

ミントの苗
問題が無ければこのように根鉢ができている頃なのだ。

正常な根鉢
残った土の中には・・・、いたいた、一匹。

コガネムシ
もう一匹。

コガネムシ
背中を下にして必死で逃走中。まさに背泳ぎのバサロ泳法そっくりなのだ。

苗の場合、細根が多いためか、株自体がダウンすることは今のところあまり無い。それどころか、植えかえてやるとむしろ良く育ったりする。あるお客様から伺ったところでは、被害にあった鉢の土で植えるとものすごく成長が良いとか。コガネムシがしっかり耕した上、肥料もプラスしてくれているのだろう。

一方、大株に住み着かれると被害甚大だ。細根が少ないラベンダーやローズマリー等は植えかえても持ち直さないことが多い。本格的な秋になるまでしばらく彼らとのバトルは続くのである。

秘密兵器

ラベンダーの季節もほぼ終りに近づき、圃場やお客さんのお庭に咲くラベンダーの剪定作業に追われている。ラベンダーも、大株になると何百本もの花穂を剪定する必要がある。大きなラベンダー園などではお茶の葉を刈る機械のようなもので一気に剪定してしまうらしいが、時々羨ましく思うこともある。

傍から見ると、優雅そうに見えるかもしれないが、暑い中の剪定は結構精神的にキツい(この頃は他のスタッフに任せたりしているのでちょっとアレだが)。ついでに、ラベンダーは結構アクがあって、剪定し続けていると葉にこびりついたアクでハサミの切れがガクンと落ちてくる。

ハサミに限らず刃物はなんでも「使ったら拭く」が基本なので、こまめに拭けば良いのだが、つい剪定に夢中になっていると拭いている暇がない。気がついた頃にはアクが刃にしっかりついてしまって拭き取ろうとしても簡単には取れない。

昔は熱湯をかけて拭いたり、圃場ならばトクサ(ヤスリ代わりになる)で刃をごしごしこすって取ったり、いよいよダメなら砥石で研いでいた。ただ、砥石やシャープナーで研ぐのは本来刃の切れが落ちた時なので、アクさえ取れれば良い場面では面倒な作業だ。

そんな場面にぴったりの秘密兵器に今春出会った。近隣で行われた刃物祭りで、刃物屋さんもお勧めする一品がこれ。その名も「激落ち 刃物クリーナー」である。最初半信半疑でその場では購入せず、後になってホームセンターを探したが見つからなかったので結局Amazonで注文。

激落ち刃物クリーナー

こういうケミカルものの効果はあまり信用しないタチであるが、この商品だけは納得。使い方も簡単である。写真は、まる一日草木を剪定したハサミである。当然アクなどがこびりついている。

ハサミのアク

これにクリーナーをシュッと一吹き。シュワシュワと泡立ってアクが赤茶色に変わってゆく。

ハサミのアク
そのまま30秒ぐらい放置して布等で拭き取るとこの通り、切れ味も復活。ただ、注意しなければならないのは、この後きちんと刃や稼働部に油を注しておくこと。まあ、刃物を扱う上では基本だが。

ハサミのアク

あまりに気に入ったので、スプレー瓶に小分けして、ハウス用、現場作業用、家用とそれぞれ常備している。アクの落ちがとても気持ちよいのでついつい使ってしまうのが悩みの種。近々大瓶で購入しそうな勢いである。

見かけによらず

先日、お客様と話していて、今年はジャガイモのできが本当に良くないということを伺った。5、6月と雨が少なかったためだと仰っていたが、そのかわり、ラベンダーのできはとても良かったとのこと。このところのように天候が極端だとなかなか両方とも満足がいくようにとはならないものだ。

今年、目立ってよい調子だったのがレディースベッドストロー。お客様のお庭に植えたものも、店の花壇の株も、そして圃場の隅に植わっている株も、ここ数年無かった程よく咲いた。おそらく開花まで涼しい日々が続いたのが良かったのだろう。

レディースベッドストロー

とはいえ、例年もあまりひどい育ちかたをする年は無い。近い仲間にスイートウッドラフがあるうえ、その繊細な姿から弱々しい感じを受けるのだが、どっこいコイツはかなり頑丈だということがこの頃わかって来た。店の花壇は西向きで夏の午後は厳しい日射を受ける。特に日よけをしてやるわけでもないし、手入れをするといっても横に伸びて行く株をそれ以上広がらないよう整理するぐらい。

まして、圃場の株にいたっては完全にほったらかし。上のようなクローズアップ写真だとそれなりに見えるが、実は下の写真が現実でカヤの仲間と生存競争中である。しかも10年近くこの状態である。

レディースベッドストロー
同じ圃場でも苗増殖用の親木は鉢の中の快適な環境で優遇されている。コイツも頑張っているので冬には少しメンテナンスをしてやると良いのだが、強いとなるとつい放任になってしまうんだよなぁ。