圧縮作業

今日は一日中降ったり止んだりの典型的な日本海側・山陰の天気。

こんな日は片付け作業に限る。

ハーブの苗は、種をまいたり、挿し木をしたり、株分けをしたりして増やしているが、お客様の手元に届く姿はポット苗である。

発芽したり、発根したりしたハーブをこのポットに植え付けるのがポット上げと呼ばれる作業だ。ところが、このポット上げ後に枯れてしまう株も結構ある。

害虫や病気のせいだったり、水のやりすぎ、水切れなど原因は様々。

土だけになってしまったポットを置いていても場所をとるし、水やりも非効率だ。場所がいくらでもあれば良いのだが、限られた面積を有効に使うためにも、そんなダウンした苗は定期的に片付けなければならない。

ダウンした苗を苗ケースから取り除き、開いた部分を詰めていく。

ダウン苗
ポット上げ後、枯れてしまった苗を探して
苗を取り除く
取り除き・・・
苗を詰める
詰める

また、完成した苗はケースごと別のビニールハウスに移すので、その場所も歯が抜けたように空きができている。この空きを詰めていく作業も並行して行う。

ケースの空き
所々空いた場所があるのを詰めていく作業

仲間内では「圧縮」と呼ばれている。

今日はポット上げ直後の苗を育てているビニールハウスで、この圧縮作業を行った。

枯れているか枯れていないかを判断したり、重たいケースを持って移動する作業なので、夏は相当ハード。どちらかといえばやりたくない。でも、冬は体が温かくなるし、ちょうどいい運動である。

圧縮作業
詰めていくとこんなに空きができる

今日も作業を始めた頃は、みぞれ混じりの雨が吹き込んできて、ビニールハウスのサイドを閉めていたのだが、しばらく作業しているうちにどんどん温かくなってくる。パーカを脱ぎ、帽子を脱ぎ、ついにはビニールハウスを全開にしないと汗が滲むほどになってきた。

右側の列
右側の列、圧縮途中

3時間ばかりかけて、かなりのスペースを空けることができた。作業前は、ほぼ一杯で苗のケースを置く余裕はなかったのだが、これでまた明日からポット上げ作業ができる。

圧縮作業
3時間の作業成果

言ってみれば極めて単純な作業なのに時間もかかる。何年も前からこの作業を簡略化できないか皆で頭を絞ってきたが未だに根本的な解決策はない。

ただ、作業しながら

「おや、コリアンダーが結構ダウンしているな〜、追加で種まきしなきゃ」
とか、
「カモミールがもうすぐ出せそうだぞ」
とか、
「ローズマリー、ちょっと根腐れ気味かな、水やりを控えないとな」
というように、小さな苗たちの様子を細かく把握できるという点ではとてもよい。普段見回っている時に見落としたことにも気づきやすい。

それに、この作業を行った日は大抵歩数計が1万歩を超える。冬はお腹も空いて、その後の食事が美味しいこと。
万歩計
また、単純作業をしていると、大事なことを突然思い出したり、良いアイディアも浮かんだりするものだ。ただ、この作業を楽に行える方法だけはなぜか浮かばない・・・。

早々と防寒対策

11月は、あっという間に過ぎてしまった。これから年末に向かってせわしない12月と、行く、逃げる、去るの3ヶ月も控えている。きっと春まであっという間だろう。

昨年の12月は雨が多いぶん、それほど気温が下がらなかった。それが災いし、1月の寒波に書いたように、急な冷え込みでいろいろなハーブが大きなダメージを受けた。

一番ひどかったのがレモンティートゥリー。これまでは、特に防寒対策をしていなかった。葉が赤くなったり、一部の枝が枯れたりはしていたが、「案外強いものなんだな」と気にしていなかった。もちろん、どの程度まで耐えるか、調べてみたいという意味もあったのだが・・・。きっと、しんどい思いをしていたのだろう。

そのため、春になっても一向に芽が出てくる気配がなく、もう枯れてしまったとばかり思っていた。

レモンティートゥリー
4月終わりのレモンティートゥリー。全く芽が出る気配はない。
レモンティートゥリー
7月始め、諦めていた頃、株元から新芽が

それでも「もしかして・・・」と未練がましく畑に残していたら、なんと7月になって株元から新芽が。秋遅くには60センチぐらいまで盛り返した。

レモンティートゥリー
10月にはここまで復調

せっかくここまで頑張ってくれた株、今度は傷めてはならないと、先日、早々に防寒対策を行った。

レモンティートゥリー
まずは長く伸びた枝を剪定

防寒しやすいように伸びた枝は剪定。周りを大きめのビニールで囲う。

防寒

四隅に支柱を挿して行燈仕立てにするだけの簡単な防寒だが、この場所は谷風が吹き抜けるので、これだけでもだいぶ違う。
防寒
ついでにレモンヴァーベナも同じようにビニールで囲ってやった。

多分、今年もレモンティートゥリーはそれなりに傷む可能性もあるだろう。レモンヴァーベナは完全に落葉してしまうが、昨年も大丈夫だったし、暖かくなると少し遅い時期とはいえ、かならず芽が出てくる。

「今年は寒くなるぞー」とか、「雪が多いぞ!」と周りの人々は恐れさせて言う。しかし、前もって対策している年は案外拍子抜けするぐらいになるものなのだ(そうあってほしいけど)。

ハーブの防寒の詳しい方法については、

ハーブの防寒・地植え編(その1)
ハーブの防寒・地植え編(その2)
ハーブの防寒・地植え編(その3)

でご紹介しています。

真似ができないプロの技

ビニールハウスを初めて建てたのは20代前半のころだった。
間口が2メートルぐらい、奥行きはそれでも6メートルぐらいはあっただろうか。まだハーブも趣味の延長ぐらいで育てていた時期だ。

叔父から譲ってもらった中古の小型ビニールハウス。パーツもバラバラで、そもそもどこに使うパーツなのかもわからない。もちろん説明書もないので、むりやり手伝わせた友人と一緒にああでもない、こうでもないと言いながら組み立てた思い出がある。今考えてもよく作れたものだと思う。ある意味、一番難易度が高かったかもしれない。

その後、業者さんに建ててもらったこともあったが、中古で譲ってもらったものも多く、大抵は自分たちで建てた。

自分で建てたと言うと、驚かれることも多いが、骨組みは時間をかければなんとかなるものだ。

ただ、サイズが大きくなると問題になるのがビニール張り。縦40メートル、横10メートル近いビニールを骨組みの上にかける作業は慣れないと非常に難しい。

風とビニール
昨年、小さいハウスの張り替えをしたが、それでも風であおられて大騒ぎ

何年か前に張り替えしたときも、油断していたら風であおられて何箇所か破れてしまった。

また、このビニールも何年かすると劣化する。この辺りは山に囲まれているので、劣化するよりもコケが付いて透過度が悪くなったり、雪が滑らずにハウスが潰れてしまうこともある。そのため、何年に一度かは張り替えの必要がある。

コケ
山が近いので、ビニールにもコケがつきやすい。花粉のせいもあるとか・・・。

今年もかなり古くなった一棟のビニールハウスを張り替えることになったが、自分たちで張り替えるかどうかが問題になった。もちろん、自分たちで貼れば高い工賃を払わなくてもすむ。その代わり、破れたり、怪我したりというリスクとも引き換えである。

かなり迷ったが、一度プロの作業をよくみて勉強しようということで、今回はビニールの張り替えをお願いすることにした。

特に知りたかったのが、棟の上につける換気用の天窓をどうつけるかということ。ユニックなどのクレーンでも使えば別だが、どう考えてもハウスの上に登って取り付けるしか方法がない。また、その位置までビニールを破らずにどうやって持っていくのかがそもそも謎中の謎だった。毎回へっぴり腰でおそるおそるハウスの上に登って行っていた作業、うまくできる方法がわかればこれにこしたことはない。

tenso
恐る恐る、へっぴり腰の天窓取付作業

今回お願いしてやってきたのは4人のプロたち。先日まで山口でビニールハウスを建てていたとか。西へ東へ引っ張りだこのようで頼もしい限りである。

集合は朝7時!風のないうちに貼り終えてしまうことが第一だそうで、とにかく張り終えるまでは休憩もしないそうだ。プロである。
ビニール剥ぎ
作業がスタートした。まるで一流の板前が魚をさばくようにみるみるうちに古いビニールが取り除かれていく。

ビニール張り
新しいビニールが広げられたとおもったら、あっという間にハウスを包んでしまった。角度を変えて写真を撮る暇もない。

プロフェッショナルの技

開始からここまで30分ほど!!我々なら半日かかりそうだ。
しかもビニールの扱いが大胆。我々は破れないように、破れないようにとそっと扱うのだが、手慣れたものである。

そして問題の天窓の取付。一体どうやって・・・。と注視していたら、なんと屋根の上を手で持って運び始めたのである・・・これではとても真似ができない・・・

歩く

あっという間に完成したビニールハウスの張り替え。ハーブたちも日の光が燦々と注ぎ、嬉しそうである。

ただ、これを次回我々だけでできるかどうか・・・。また悩みそうである。

11月は頭を使って

10月は秋の園芸シーズン。そして師走の12月。どちらも忙しい月だが、その間に挟まれた11月はぽっかりと空いたような時間にゆとりがもてる月だ。

気持ちに余裕があると、普段見過ごしてしまいがちなところも目につきやすくなる。

例えば夏前に折れてしまったビニールハウスの巻上げ機のハンドル。

巻上げ機
握り手の元の部分が腐って折れてしまった

ビニールハウスは、閉じているととんでもなく気温が高くなってしまうので、換気をよくするためにサイド部分や天頂部分を開閉して風を入れられるようになっている。大抵は開けっ放しなのだが、雨が吹き込んでくるような時や、台風などの強風の時は風をはらまないよう、閉じなければならない。

サイド部分の開閉は、短いハウスなら手で開ければ十分。しかし、さすがに10メートルを超してくると手ではきつい。
巻上げ機
そこで登場するのが、巻上げ機だ。ハンドルを回すとその先のパイプがくるくると回る。パイプがビニールを巻きつけてハウスの横面を開けていく。10秒もあれば片面を開けることができる。単純な作りだが、もうこれなしではやっていけないほど便利なシステムだ。

30メートル用とか、50メートル用とか、100メートル用などあって、長いハウスに使うものは一台1万円以上するものもある。近年は電動や自動のものもあったりするが、いまのところは手動で十分である。お値段も高いしね。

さて、問題の壊れてしまった巻上げ機。中古で譲ってもらったものを10年ぐらい使ってきたので、そろそろ替えてもよさそうな時期だ。一旦は新品に変えようと思っていた。きっと、繁忙期ならとっとと新品に替えていただろう。

ところが、ゆとりがあるこの季節、よくよく考えてみると本体には問題がない。ハンドル部分が折れているだけなのだ。

ならばハンドル部分だけ直せば問題なし!である。しかも、ハンドルも握りのところが折れただけ。ハードルはそう高くなさそうだ。

なんでも買って済ますのは簡単だが、少しは頭を使って体を動かさないと人間が駄目になる。

まず、ハンドルに近い太さで取り付けやすそうなものは・・・と考える。加工がしやすいのは木やプラスチックだが、ある程度耐久性がないといけないし、それなりに力が加わる部分である。かつ、もともとあるハンドル部分に取り付けやすい素材は、やはり金属だろう。
そこで、ビニールハウス用のパイプの残りを引っ張り出してくる。直径が19mm。内径はハンドルよりも少し大きいぐらい。

サンダー

まずは、適当なサイズにカットして、折り曲げるところをサンダーで少し削る。

バーナーで加熱
さらに、バーナーで加熱。金属加工は危険も伴うので慎重に、慎重に。
曲げる
赤みを帯びてきたところで、長めの太いパイプを挿して90度に曲げた。

切断
次に壊れているハンドル部分を切断。

仮合わせ

サイズなど問題がないか、あわせてみる。ウン、いい感じだ。
ビス止め
金属用のビスを2箇所に打ち込んで固定。元のパイプとの間に隙間があるが今回は目をつぶる。そのうち錆びて間が詰まるだろう。
完成
くるくる回しやすいように、握り手の部分に塩ビパイプを差し込んで出来上がり。

本当は塩ビパイプが抜けないようなストッパーがつけたかった。内側のパイプを叩いて広げるか、ビスをつけておけば良いかもしれないが、塩ビパイプがしょっちゅう落ちて困るようならまた考えよう。

お金を使わず、頭を使って、満足感も得られる。時々はこんな時間がもてる11月。残り半分を大切に過ごしたい。

殿様御帰還

悪天候やら地震やらで、仕事や生活、気持ちもざわざわしていた夏秋だったが、結構嬉しいこともあった。

少し時間が戻るが、昨年、非常に心配なことがおきた。

圃場の周りは田畑が広がり、すぐ脇には水路、裏には小高い山もあって、カエルなどの両生類も多い場所である。
トノサマガエル
トノサマガエルなど、草刈りをしていると草刈り機のすぐ先からピョンピョン飛び出してくるし、なかにはでっぷり太って素早く逃げることができず、こちらがヒヤヒヤするような立派なトノサマガエルもたくさんいた。ビニールハウスの中でも、水やりの後、水が溜まって湿っている場所など、何匹も集っているのを見かけたものだ。

ところが昨年、このトノサマガエルが妙に見当たらなくなってしまったのだ。その前の年ぐらいに、全国的にトノサマガエルが減っているというようなニュースを目にしていたが、都市部のことで、まさかこんな島根の片隅にまで影響が広がっているとは信じられなかった。

相変わらずアマガエルはたくさん見かけるので、昆虫類やナメクジが減ったとも思えない(実際たくさんいる)。ニュースで言っていたトノサマガエル特有の病原菌(だったかな?)なのだろうかとも思った。

アマガエル
アマガエルは相変わらずどこにでもいる
アマガエル
砥石の上は湿ってて気持ちが良いらしい

今までたくさんいたものが急にいなくなると妙に心配になるものだ。そのせいか、昨年は蛇もあまり見なかった感じがする。

ところが今年になって、春先から小さなトノサマガエルを見かけるようになった。草刈りをしていたら、相当大きなのもでてきたし、水路には以前のように何匹も並んでいる様子をちょくちょく目にするようになった。戻ってきたのが嬉しくてつい見てしまうせいもあるかもしれないが、以前より数は多いのでは?と思うぐらいだ。

ただ、この辺りだけのことかもしれないと思っていたので、この夏、カエル好きなことで知られているガーデナー、ポール・スミザー氏とお話する機会があったので、トノサマガエル、減ってると聞いていますが、見かけますか?と訊ねてみた。

「結構いるよ、今日もたくさん見かけたしね!」
とのこと、全国色々なところを巡っている氏の言葉にすこし胸をなでおろした。他の地域でも元のように増え始めていると良いが・・・。

先日は、急に蛇が飛び出してきて驚かされたが、その先には大ジャンプで逃げるトノサマガエルがいた。上手に逃げおおせたようだ。

もうすぐ今年の草刈りシーズンも終わるが、来年、草刈りシーズンが始まったら、またヒヤヒヤするぐらい飛び出してきてほしい。