株元に春を見つける

来週は、半ばごろまた雪マークが出ているが、今週は春を思わせる日が結構あった。

天気も良く、少し時間的にも余裕があると気分も穏やかに、親木のメンテナンスにも向かう気になる。いつもタイミングを逃したり、行う余裕もないまま春を迎えるのだが、今年は珍しいことだ。

昨年夏の開花後は剪定をしたもののその後は特に何もしなかったコモン系のラベンダー。

1月の積雪で中央が若干押しつぶされ、すこし枝折れもある。寒さには強いので今の時期はこんな風にシルバーグレイになって冬を過ごしている。

それでも株元からは新芽が伸び始めている。柔らかな芽は春の色。株元に春を見つけた感じだ。

古い枝を剪定して形を整え、ついでに挿し木もする事にした。

とりあえず、挿し木が完了する。枝がずいぶん減ったがちょっと見た目も悪い。

古い枝を減らすように、また不要な枝も減らす。

株元からは早々とヨモギも顔を出している。このままではヨモギに囲まれてしまうし、大きくなると取り除くこと自体が難しくなる。

根を痛めないよう、ヨモギを根ごと取り除く。

最終的にはテニスボールぐらいのサイズにまでなってしまったが、ここまでしておくと一安心という感じだ。普段はもっと適当にするのだが、写真を撮りながらとなると自然に丁寧になるものだ。

きちんと手入れしたのでしっかり応えてもらいたいところだ。初夏の花が楽しみである。

冬の生き物たち

今朝は予想外の積雪。せいぜいにわか雨が降る程度だと思っていたのに、サラサラの雪が降り出した。案外気温が低いのだろうか。

除虫技
雪を纏ったワームウッド

 

今年は、ここ数年のうちでは結構それなりに冬らしい冬のような気もするのだが、一方で、「この時期なのに?」と思うような生き物を何度も目にする。

ツチイナゴ
ツチイナゴ

まずはバッタの仲間。雪が舞う1月の半ばトノサマバッタ(と思ったらツチイナゴというバッタのようだ)がビニールハウスの外でガサガサと音を立てていた。ビニールハウスの中から間違って外に出てしまったのかもしれないが、ビニールハウスもほぼ外気温だ。

クサキリ。死んでいるのかなとつついたら足を動かした

また、1月の終わりにはクサキリ(多分)がビニールハウスのフレームに止まっていた。暖かい日だったので動き出したのかもしれないが、鮮やかな緑色はこの季節らしくない。

ちなみに、先月、お土産でイナゴの佃煮を頂いた。今まで進んで食べることはなかったが、お土産だということもあって抵抗も少なかったのかもしれない。それでも、ややおっかなびっくり口に入れたら意外な美味しさと歯応えに先入観は完全に払拭された。今後は目の前の皿に出てきても躊躇なく箸が伸びそうだ。正直なところ、硬くて口の中に突き刺さる田作り(ごまめ)よりもサクサクとして好みである。

将来的に、食糧難で昆虫食を摂取せねばならないことになっても案外抵抗なくいけそうだ。

もしかしたら今年はバッタの仲間を見る目も違ってくるかもしれない。

また、一昨日はニオイスミレの鉢にツマグロヒョウモンの幼虫。他の季節なら即刻退場してもらうところだが、なんだかかわいそうで躊躇してしまう。

先日、ホーリーの挿木をしていた時には、足元で動くものがいた。よくみると小さな蛙。

日がさしているとはいえ、気温が低いなか、よく出てきたものだと心配してしまった。そのホーリーもすでに葉の付け根に花芽ができつつあった。

ホーリーの蕾
ホーリーの蕾

同じ日、北面に這わしているのでまだまだ新芽は硬いだろうと思って油断していたロニセラ・グラハムトーマスも葉が膨らみ始めていて慌てて挿木をすることになった。

春は着実に近づきつつある。

楽しいひと時

2月初めとは言っても、立春をすぎたというだけで気分は春に向かうもの。

ここ数年、寒波で傷んだマートルは、ひどい時にはほとんど葉が落ちたりしたこともあったが、今年は小さな新芽も赤くなりながら耐えている。このまま春までもってくれると良いのだが。

マートル
今年はあまり寒さの影響を受けていないマートル

風もなく、穏やかな日差しの中、年明けから気になっていたホーリーの挿木作業にようやくとりかかる。

ホーリー
年末までは赤い実がたくさんついていたホーリー

クリスマス前まではまだ赤い実がたくさんついていた。こんなにトゲが鋭くて痛い葉の奥にある実なので、鳥たちも食べにくいのだろうと思っていたが、一月の間にほとんどなくなっていた。やはり積雪の影響で食べれるものが減ったのだろう。雪の中では赤い実もなおさら目立つだろうし。

今や、葉の奥に隠れた一つの実だけ残っている

ここ数年、挿し木のタイミングがうまくいかず、ずいぶん春遅くになったり、もしかしたら出るかもと、夏前に挿木したりしてみたが、非常に成績が悪かった。

そのため、今回はセオリー通り春になる前になんとかとりかかれて一安心だ。

痛い、本当に痛いホーリーのトゲ。落葉した葉も結構痛い。株元の草取りがたいへん。

ただ、例えばローズマリーなどとは違って、トゲが痛いのであまり楽しい作業とは言えない。しかも寒い時期なので良さそうな穂木を収穫しつつ、今後の成長を見計らって剪定するために屋外で丁寧に作業をしようとすると結構たいへんだ。今日のような穏やかな天気の日は絶好のチャンスだろう。間違えのないよう、今日は雌の親木から挿し木を行う。

カイガラムシもいなくなってキレイな枝に戻った

数年前、カイガラムシがかなりついたことがあった。それほど樹勢が弱ったようには思えなかったが、スタッフが痛い思いをしながら丁寧にブラシで除去してくれた。おかげで今のところは全く見つからず、安心して作業ができる。

穏やかな天気にも感謝、スタッフの丁寧な仕事にも感謝。手はトゲで痛いけれど、楽しいひと時である。

ビニールハウスで薪ストーブを

ビニールハウスの中は、太陽が顔を覗かせる日ならば、たとえ冬でも相当暖かい(もちろん、当店のように開けっぱなしでなく、きちんと閉めていれば)。だが、ここ山陰地方のように冬に太陽の顔を見る日が少ない場所ではその恩恵も受けにくい。

それでも、重油ボイラーでもガンガン焚いて加温すればハーブももっと早い時期に育つだろうが、そこまでするメリットは今のところない。ふんだんに太陽が降り注ぐ地域ならば、燃料代も少なくて済むだろうし、そんな地域で育ったものと価格競争しても勝てるわけはない。品質だって、加温すれば良いというものでもないし、かえって病気や害虫の心配が増すだけだろう。真冬にまでアブラムシに気をかける必要があるなんてまっぴらだ。

また、植物は、細胞壁があるためだろう、案外寒さに強い。ところが我々人間は、植物ほど強くない。そこで作業をする際には何か加温設備が必要だ。

最初は古い灯油ストーブを使っていた。大して暖かくはならなかったが、それでもストーブを焚いているというだけで気分的にはマシだった。作業場所をパーティションで囲むなどの工夫をして少しでも暖かくなるようにはしていたが、やはり限度がある。

そこで、ある年から薪ストーブを試してみることにした。暖かさは、比べ物にならない。熱量も数字的には倍以上である。

幸い燃料の調達先は確保できている。本体は、ピンからキリまであるが、当然キリの方。知らない人に、「サンキュッパですよ」というと、四万円かと思われることもあるが、3980円のである。

たいてい、ビニールハウスでこれを見た人が言うのが、「ビニールが焼けたりしないんですね?」という言葉。

実際、薪ストーブ導入で、一番心配したのがこれだった。ビニールが溶けてしまっては元も子もない。だが、使用し続けて、5年以上は優に立つが、いまのところ小さな穴さえ空いたことはない。

それでもいくつかポイントがあるので、紹介しておきたい。今後、ビニールハウスで、安価でとても暖かく(灯油ストーブには戻れない)、しかも環境に優しい暖房を・・という人に参考になれば幸いだ。※もちろん、自己責任でお願いしたいが・・・。

一つ目のポイントは、煙突の高さだ。本格的な薪ストーブでも、煙突はケチるべきではないと言われるが、安くあげようとストーブ本体を数千円で済ましても、煙突は、それ以上に費用がかかる。少なくとも、ビニールハウスの高さよりも2メートルは高くしたい。今の高さは4メートル弱ある。

煙突が高いので、ビニールハウス用のパイプなどで補強

二つ目のポイントは、風向きを考えること。風向きが安定しないところは難しいかもしれない。当店のビニールハウスが立つ場所は、南東に開けていて、そちらからの風が強い。そのため、煙がビニールハウスから遠ざかるような位置にストーブ(煙突)を設置すること。今まで、二箇所に設置したが、いずれも下記のような配置だ。

ストーブと煙突の位置

三つ目のポイントは、ストーブから真上に煙突を伸ばさずに、一度横に伸ばしてビニールハウスの横(妻の部分)から煙突を屋外に出すようにすること。煙突が煙を吐き出す力は弱くなるが、これも、煙突から落ちてくる火の粉を避けるのには有効だと思う。

自作のメガネ石(板)。少し焦げてきたので、きちんとしたものに交換したい

大体、この3点で問題なくストーブがたけている。

初めは、ストーブもなるべく中央に置くようにしていたが、結構端の方でもストーブの熱自体でビニールが溶けることはない。また、床が焼けないようにと、ブロックを積んでずいぶん浮かせたり、下に断熱用の砂を敷いたりしたが、あまり意味はなかったようだ。むしろ、今はしゃがむのが面倒で、ブロックをかませてあえて上に位置を上げている。

火をつけたり、火の具合を見て薪を足したりというのが面倒と思うかもしれないが、案外楽しいものだ。薪が焼ける匂いも、樹種によって違って面白い。それに、木が燃える匂いは、なぜかホッとする。ストーブの中で燃えている火を見ているだけで、ついつい引き込まれてしまうぐらいだ。

冬は、肥料作りの時にお湯を多用するし(以前は灯油ストーブのお湯では足りず、カセットコンロも使っていた)、お湯がいつも沸いているというのは洗い物の時などにもとても助かる。それに、そう多くはないが、不意の来客時も、寒いビニールハウスの中で凍えてしまわれずにすみ、会話も弾む。

薪割りもなかなか楽しい。最初は慣れなくてものすごく体に負担だったが、今は、むしろ寒い日に、体を温めるのにちょうどいい。薪を入れるケースにいっぱいになるよう薪割りをすると、汗さえ出てくる。ほんの10分前後だ。薪割りをするとストーブが不要になってしまうというのがなんとも皮肉なのだが。

そうそう、数年前から、ストーブに耐熱塗装をするようになった。それまでは、錆びてせいぜい2年で買い替えていたのだが、他の作業場で使っている同じストーブが5年ぐらい持つと聞き、環境的に湿気が多いためではないかと考えた。そこで、耐熱スプレーを購入後に満遍なくかけておいたら、ずいぶん持ちが良い。

耐熱塗装済み。炎が見える焚き口はオプション。炎が見えると楽しい。

毎年、ストーブをしまうときに、掃除をして軽く耐熱スプレーをかけるようにしているが、今のところ、4年は持つ感じだ。安いものだが、捨てるのはなかなか大変だし、雰囲気も悪くない。まあ、最初からそういう塗装済みのものを買うのも良いかもしれないが。

というような感じで、園芸作業のお供に薪ストーブ、おすすめである。もちろん、火の用心はしっかりと。翌日来て、ビニールハウスが溶けて愕然となることは避けたいので。

そこに山があってこそ

昨夜は暴風雪警報が発令。

自宅のある場所は西が開けているので、冬型の気圧配置の時は冷たい西風が容赦なく吹き付けてくる。電線を風が揺らす音が一晩中響いていた。

一方で、ビニールハウスが立つ場所は西側に小高い山がそびえているため、西風が吹く時はかえって穏やかだ。実際に今朝ハウスに到着した頃も穏やかに雪が舞うぐらいで、風の心配はまずなかった。

こんな時、西側の山があることをありがたく思う。その代わり、秋以降は午後3時になると山の影になってしまって寒々しい思いをせざるを得ない。

まだ日が当たっている東の方の田畑を眺めて「この山がなければなぁ」

と思うこともしばしばある。

以前も書いたが、ビニールハウスにコケが生えやすいのも、山の存在は大きいだろう。夕方になると山側から寒さがスーッと降りてくる感じもけっこうこたえる。

何でも、いい面と悪い面がある。お客様からも、日当たりが強過ぎて・・・と相談されることが多いが、日当たりのない場所の方からすれば羨ましいだろうし、逆もまた然り。

真夏は、5時前なると太陽が山の影に隠れる。もし、日没まで日が当たっている環境なら、水やりも相当多くなることだろう。また、夏に弱い種類のハーブの育苗も更に難しかったことだろう。夕方のヒグラシの声や、暑さの中ふっと涼しい風が降りてくるのも山があってこそ。山を作ることはまず不可能なので、あることを喜ばねばと思うしかない。