ミセスキングスリーはお年?

先日誕生日を迎え、大台に入った。もうずいぶん長く生きた気がする。なんて言っていると「五十が折り返し」と豪語するスタッフに笑われそうだ。

ニオイゼラニウムが次々と咲き続けている。松江では簡単な防寒で(場所によってはしなくても)冬を越すし、病害虫ともほとんど無縁なので気楽に育てられる。花の時期もいつの間にか咲きはじめてくるという感じである。

アプリコットゼラニウム

今日咲いていたアプリコットゼラニウムは結構好きな花である。花びらの縁の周りが白っぽく、柔らかい感じで、花の姿も可愛らしい。

ミセスキングスリーゼラニウム

一方、ミセスキングスリーゼラニウムは花つきも良く、大きめの花で見事だが、なんとも色がどぎつい。コントラスト強すぎである。今、画面で見ていても目がチカチカしてくる。

目が老化してくると、コントラストが強い色でないと満足しにくくなってくるという。パステルカラーが楽しめるのは目の年齢が若いうちである。店頭でお客様の花の好みを聞くとはっきりわかる。まだ、この花の色がきつく感じられるのは目が若い証拠だろうか。

ゼラニウムに限らず、花には女性の名前が付けられたものが多い。作出した当人の名前だったり、その女性に捧げられて名前が付けられるようだ。ミセス・キングスリーは作出者なのか、作出者の奥様なのか知らないけれど、この色が気に入ったのなら結構お年だったのかも知れない。

グルメでグルマン

圃場の事務机にペットボトルを半分に切ったようなものが置いてあった。何か葉っぱのようなものが入っている。

スタッフに、
「なにこれ?」
と訪ねたところ、
「アゲハの幼虫がついとったから、持って帰ろうと思って」
とのこと。覗いて見ると2匹の幼虫がいた。種類は分からない。昨年も同じように捕まえ、子供さんが通う幼稚園へ持っていって、羽化までさせたという。

アゲハの幼虫

「どれについとったの?」
と聞けば、
「あの、去年もついとったやつ、大きなポリポットの、そこのへんの。」

大事なDictamnus albusだ・・・。
何年も前から育てはじめたのに、こいつらのせいで一向に大きくならない。油断しているこっちも悪いのではあるが、毎年執拗に狙ってくる。そのため、花が咲く素振りさえ見せてもらえない。

ペットボトルの下のほうに大きめな別の葉も入っていた。
「この下の葉は?」
と聞けば
「親木のところにある、背の高い、ミカン科の・・・」
ベルガモットである・・・。
もちろんMonardaでなく、本物のベルガモット。ある方に譲ってもらい、大切に育てている株である。こちらはもう実がなることはあきらめているのだが・・・

Dicatamnusにベルガモット。なんて贅沢な!
こんなグルメでグルマンなやつらにいられたのではかなわない。

幼稚園ではユズの葉を与えられるという。それで充分である。
それとも
「やっぱり日本食はうめーなー」
とか言って食べるのだろうか。

受難の季節

人間同様ハーブたちにも朝、昼、夕、夜とそれぞれの表情がある。中でも朝は清々しい空気と太陽のお出ましを喜んでいるようだ。

先日から咲きはじめたサルビア・カカリフォリアなど、横から差す太陽の光で花色がさらに鮮やかになる。

サルビア・カカリフォリア

また、写真では伝え切れないのだが、花が咲く直前の濃いブルーもハッと驚かされるような色を見せる。

サルビア・カカリフォリア

この種類、コンディションが良ければ切れ目無く咲き、花色も好みなのでお気に入りの一つである。ただ、全体として日当りと風通しを好むとされる普通のサルビア属に比べて、やや強い日差しを嫌う。大きな葉が象徴しているように半日陰のほうがお気に入りのようだ。他の植物の株元などに植えてやると深いグリーンの葉を広げて御機嫌になる。上の写真の葉色はやや乾燥気味に育てた色である。この花の色とあわせて葉色を楽しむのならもう少し日陰気味になる場所に置いてやればよい。

ところがそのような育て方をすると、当然ながら枝が柔らかくなる。花が上がってくるとなおさら枝に負担がかかる。あまり風の強いところは向かない。その上横に大きく広がるので鉢植えだと隣と絡んでたいへんである。そんな鉢を季節にあわせて移動させるほど暇ではないからお気に入りとは言え、他の種類と同様に扱っている。

これから暑くなっていくと葉色はどんどん茶色みを帯びてくる。それでも頑張って花を咲かせ続ける。カカリフォリアにとっては受難の季節である。

育ててみないとわからない

5月に入っても、例年に比べると気温が低いようだ。暑さを感じる日があっても数日後にはまた穏やかになり、非常に過ごしやすい。暑さに弱いハーブたちにとっても楽なようで、見ていても安心できる。

しかし一方でバジルを初めとして暑さ大好きタイプのハーブは成長が芳しくなく、見ていてやきもきさせられる。毎日のように店頭には「バジルはまだですか」とのお問い合わせが入り、焦る一方である。

さて、そのバジル、一番可愛らしいのは本葉が出たばかりの頃。一丁前に大きくなったときと同じ雰囲気のぷっくらとした葉を広げている様子は毎年のように見ていてもやはり微笑ましく映る。

スイートバジル

写真は4月初めのころであるが、このままの姿で徐々に葉数を増やしてゆく。あとは天気次第である。

さて、バジルのように小さな頃から、大きく成長するまであまり姿が変わらないハーブは間違えることも無く、育てるのにも安心だ。しかし、中には「えっ?」と思わせられる種類もある。
スコティッシュブルーベル

上の写真で並んでいる2株はいずれも同じ植物。実生増殖ではない。同じ親株からの株分け、しかも同じ時期のものである。それなのにこの違いよう、初めて見るスタッフも、どちらかは雑草だと思ったぐらいだ。

自分も初めて育てた時には茎が同じ株から伸びているかどうか何度も確かめてしまった。ちなみにこれはスコティッシュブルーベル(Campanula rotundifolia・カンパヌラ・ロツンディフォリア)というワイルドフラワー。イトシャジンという名前でも知られている。

学名では、「丸葉のカンパヌラ」なのだが、丸葉でいるのは株が小さい時だけ。夏に向かい、花が上がる前になると細葉に変わってしまう。どうしてここまで葉の形を変えなければならないのか、不思議なことだ。冬から春にかけては面積の広い葉でしっかり光合成をして、花茎を長く伸ばす頃には、風に吹かれても大丈夫なように葉が細くなるんじゃないかなんて勝手な推測をしているが、本当のところは分からない。

まあ、一度育ててみれば覚えてしまうのだけれど、初めて目にするスタッフには必ず教えておかなければいけないことでもある。学名で判断して「丸葉のはずだ」と引っこ抜かれては大変だ。

あと、お客様へ。何株か注文されて、葉の形が違っていても御心配なさらぬよう。こんな性質なのですから。

ピーピー豆とアブラムシ

季節柄アブラムシに関する質問を良く受けるので、資料になればと思ってアブラムシの写真を撮りにでかけた。

まずは圃場の周りのピーピー豆(カラスノエンドウ)が繁っているところへ。先日草刈りをする時にイヤというほどたかっていたのである。ところが探そうとするとなかなかいないものである。

先に天敵のテントウムシの幼虫の方が見つかった。まだ小さな幼虫だが、動きはなかなか速い。この運動量ならお腹も空いてたくさんアブラムシを食べてくれるだろう。

テントウムシの幼虫

この間はいくらでもいたアブラムシがほとんど見つからない。これがアブラムシの不思議なところである。育苗しているハーブの苗の場合にしても、ある種類に発生しても、しばらくするといなくなり、他の種類に移っているのである。

アブラムシ

圃場を一回りしてようやく一群を見つけた。こういう写真が撮りたかったのである。先日まで、どのピーピー豆もこんな状況であった。新芽が出たでで美味しかったのだろう。あの強力無比のセイタカアワダチソウも新芽が出た時にはびっしりとアブラムシがつく。「健康この上ない」これらの雑草にさえつくのだから、普通の栽培植物につかない方がおかしいと思えてくる。

アブラムシの種類についてはまだ勉強が足りないので同じ種類かどうかは定かではないが、ピーピー豆に付く種類はうちのハーブたちではあまり見ないようだ。セイタカアワダチソウにももっと赤いような種類がつく。また改めて調べてみたい。