Not so photogenic

ハーブを始めた頃から近年まで、正体が良く分からない虫がいた。というか、きちんと調べなかっただけなのだが。

庭や畑、ビニールハウスの中でもところ構わず出没する1cmに満たない小さなハチのような昆虫。ホバリングが得意で、じっと一ヶ所で空中停止していたかと思うと、ぷーんとどっかへ飛んでいってしまう。

悪さはしないような気はしていたものの、正体が分からないというのは精神衛生上良くなかった。その後ヒラタアブと知ってとても嬉しく思ったのを覚えている。幼虫はアブラムシの強力な天敵である。

一口にヒラタアブといっても非常にたくさんの種類があるようで私が普段目にするのが何という種類かまでは把握できていない。ヒラタアブ自体、ハナアブという大きなグループに属するようだ。しかもアブという名前で呼ばれているものの、むしろハエの仲間だそうである。

さて、私が普段良く見かけるのが下の写真の種類である。ネットで検索するとホバリングしている写真が良く載っている。その姿はなかなか可愛らしいので何度も撮影にチャレンジしたが、技術のせいか、それともデジカメの性能の限界なのかまともな写真が撮れなかった。仕方なく、止まっている時の写真を掲載する。ただの小さなハチである・・・。

ラングウォートの葉で一休み
ラングウォートの葉で一休み

これと、複眼が赤っぽい種類を良く見かける。こちらも飛んでいる時はいい感じだが、止まっているとアブかハエ。あまりぱっとしない。

まして、幼虫にいたっては事実、ウジである。葉に付いている姿も、長い間何かのサナギだとばかり思っていた。

ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。
ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。

これもネットからの情報だが、幼虫がアブラムシを捕食する際には身をよじるようにして食べることもあるとか。アブラムシを食べてくれるのはありがたいが、できるならあまり見たくない姿である。撮影する気も起きないので見たい人は画像検索してみてください。

移ろう花色

母の日の前後から咲きはじめたインチメリーカーネーションももうそろそろ終わりである。クローブピンクに近い種類で、やはり香りがするが、クローブピンクよりは優しい香りである。花色も同様、ソフトピンクの柔らかい印象だ。

クローブピンクはやや広がりがちになり、まとまりが無くなることも多い。それに比べ、インチメリーはしっかりした株立ちなのもお気に入りの理由だ。花茎もしっかりしているので切り花にするにしても、クローブピンクよりもおあつらえ向きだ。クローブピンクが野性味をたっぷりなのに比べて、きちんとしつけされたお嬢さんといった感じがする。

インチメリーカーネーション

花が終る時も同様、徐々に花色が薄れていく。決して一気に散っていくようなことはなく、少しずつフェードアウトしていく。「色が移ろっていく」という感じがぴったりなのである。自分も最後を迎える時はこういう終り方ができれば良いのだが・・・

初夏の花火

植え替えの作業をしながら、
「そう言えば、昨年はもうセミが鳴いていたぞ。」
という話題になった。ゴールデンウイークには既に初鳴きを耳にしていたように思う。ところが今年はタイミングの関係もあるのか、一声も聞いていない。

あまり早く暑くなるのもうんざりとは言え、いつまでも長袖が必要な気温というのもまた・・・やれやれ、人間はなんと勝手なのだろう。

夏を心待ちにする気持ちに応えてくれたのか、ビニールハウスの中で花火が上がった。

モロッコタイム

モロッコタイムである。タイムの中でもちょっと変わった雰囲気の持ち主だ。花が妙に長くて目立つ。性質はややつかみ所が無くて、妙に調子の悪い年や、今年のように元気全開になることもある。とはいえ、油断していると花の後で一気に枯れたりすることもあって気が抜けない種類でもある。

ピンク一色のみだが、原種なので案外原産地に行けば、白や濃い色も見つかるかも知れない。そうそう、以前、お客様のところの超乾燥花壇では赤に近いピンク色で咲いた。写真が残っていないのが残念だが、本来はそちらの色なのかも知れない。ピンク、白、赤と揃えば、かなり見ごたえの有る花火になりそうだ。

嘴だらけ

ニオイゼラニウムの花が終る頃になると、圃場は嘴だらけになる。ちょうどゼラニウムの花の後、種子の莢が鳥の嘴のようになるのだ。

ニオイゼラニウム

諸説あるようだが、ゼラニウムの学名、Pelargoniumも、Pelargos(コウノトリ・ギリシア語)の嘴からきているとされる。

ニオイゼラニウム

種子が熟してくると、莢が割れて元の部分から徐々に種子が顔を出す。

ニオイゼラニウム

種子も雰囲気が鳥の羽毛を思わせる感じである。他にも鳥とのつながりが多いようで、園芸種の名前にもPheasant’s foot(キジの足)、Peacock(孔雀)など付いていたりする。

この種子を蒔くとそこそこ発芽する。圃場にはたくさんの種類のゼラニウムが育っているので、ちょっと変わった花が一つや二つ出てきそうなのだが、非常にありきたりというか、あまり特徴の無い、強いて表現するならぼやっとした感じのゼラニウムが出てくる場合がほとんどだ。

最初の頃はこまめに種子を採っていたりもしたが、今はさっぱりである。

いたるところに嘴が見えるここしばらく、先端恐怖症の人は近づかない方が良いかも知れない。

五月のマドンナ

ここ数年、4月の終わりには咲きはじめていた鉢植えのマドンナリリーが今年は5月半ばになってようやく開花するようになった。毎年一度だけ楽しめる香りはまた格別だ。

マドンナリリー

去年までは4月に夏のような暑さが何度かあったので一気に花を咲かせる体勢になったのだろう。今年は比較的寒かったのか、花茎は伸ばして、蕾までは付けても一向に開花する素振りを見せなかった。このようなことは初めてだったので少し気をもんだのも確かである。

この株、育てはじめてもう7〜8年にはなるだろうか。2年後から開花しはじめて、以来毎年花を楽しんでいる。松江だと、地植えもできないわけではない。しかし、地植えして数年経つと一、二度花は楽しめるのだが、夏に溶けて消えてしまいやすい。よほど風通しと水はけの良い場所を選ぶ必要がありそうだ。

その点、鉢植えなら誠に簡単である。花が終ると花茎ごと剪定してやればよい、休眠期へ移行していき、葉もなくなる。(松江の場合)特に涼しい場所に移すことも無い。他のハーブと同様の扱いである。

一つポイントは、夏、あまり水をやり過ぎないことかも知れない。うちの場合、枯れた鉢かと思って、スタッフが時々水やりを怠るのが丁度よいようだ。そんな状態を心配しつつも秋になるとしっかり新芽が顔を出す。

できれば大きい鉢が良い。株が大きくなってくると8号鉢では開花時にバランスが悪くなる。10号鉢ぐらいの方が水やりの間隔も延ばせるのでそれが良いのかも知れない。重たくて大変だけど。

5月27日追記

福岡県のO様からメッセージとともにマドンナリリーの写真を送っていただきました。二年越しで開花したとのことです。メッセージ本文はこちらに掲載してあります。

福岡県 O様宅のマドンナリリー
福岡県 O様宅のマドンナリリー

やはり鉢植えでの栽培とのことで、夏越しには苦労していらっしゃるようですが、軒下に入れて雨対策などをしながら開花まで育てられた御自慢の一株です。当店の株より元気そうです。きっと香りも素晴らしいことでしょう。

暖地での栽培には少し困難が伴いますが、福岡県でこのように良い状態でお育てなのは見事だと思います。

許可を頂き、掲載させていただきました。有難うございました。