優先順位

春を思わせるような日が時々現れるようになるとハーブたちの色も鮮やかさを増してくる。気の早いものはゆっくりながらも成長し始めてくる。とは言え、日照量がまだ充分ではないので種類によってはひょろひょろと伸びやすくなるものもある。

枝分かれを促進し、株の形を整えるために、そんな苗を見つけては軽く剪定を掛けている。また、木質した枝から新芽が伸びた苗に切り戻しを行なうのも形の良い苗を育てるのに大切だ。

ペパーミントゼラニウム

このチョコレートペパーミントゼラニウムは昨年挿し木して、秋にポット上げしたものである。結構木質化した枝の下のほうから葉が現れ始めたので少し切り戻してやる必要があるのだが、ご覧のようにカマキリの卵が・・・。伸びようとしている葉もなんだか窮屈そうである。

この場合、ゼラニウムの成長と、カマキリの卵、どちらを優先するかと言えば、カマキリの卵の方である。前に、同じようなシチュエーションに遭遇したことがあった。その時は枝を剪定して、「ここなら問題ないだろう」と思われる場所に置いておいたのに孵化しなかった。乾燥しすぎたり、濡れすぎるのは良くないようで、時々潅水する苗にひっついていると言うのが適度なのかも知れない。

と言うわけでこの苗はカマキリが孵化するまでしばらくこのまま。今年もたくさん孵化してもらいたいものだ。

腰の四次元ポケット

百姓とはよく言ったもので、仕事はハーブを育てることにとどまらない。先日から行なっている竹切り(「竹と椿」参照)もその一つだし、ビニールハウスの修理などの大工仕事、時には配管修理やモルタル塗りも行なわなくてはならない。まるで水道屋さんか左官さんである。

釘袋

そんな時に頼りになるのが腰に付ける釘袋である。10年ぐらい前にとある金物屋さんで、棚の下のほうにホコリをかぶっているのを見つけて購入した。現在はツールのスペースが細かく区切られたものが主流のようだが、そう言った釘袋はもっと専門性の高い仕事向きだろう。自分のような何でも屋さんには何でも入るシンプルな釘袋がぴったりである。釘や木ねじはもちろん、金づち、ドライバー、鉈、スパナやレンチ、巻き尺、インパクトドライバまで入ってしまう。
もちろん園芸作業にもかかせないツールの一つだ。苗のラベルや、剪定ばさみ、手袋、折りたたみノコギリ、シャベルや鎌まで飲み込んでしまう。また、ちょっと剪定した枝切れや、苗から取り除いた雑草も一時的に放り込んでおけるのも嬉しい。

ハトメリングを装着
ハトメリングを装着

冬場は特にツルバラの誘引作業時に欠かせない。太巻きの麻紐を入れておくと非常に仕事がスムーズにゆく。今年、この作業が更に円滑にできるよう、ハトメリングを取り付けた。このリングから紐を出すようにすると、先端が分かりやすいし、絡まりにくくなる。

冬のバラの手入れには欠かせない
冬のバラの手入れには欠かせない

こんなふうに大変重宝して愛用している釘袋ではあるが、時には心が揺れ動くことがある。工事現場を通りかかる時、十本以上のツールを誇らしげに釘袋にぶら下げ、カチャカチャと音を立てている現場のお兄さんを見ると、やはりあの釘袋に憧れてしまうのである。

hide-and-seek

春や夏とは比べようがないとは言え、寒さの中でも雑草はしっかり育つ。しかも、巧妙に、目立たないように。

ペニーロイヤルミント

出荷する苗を準備していたら、ペニーロイヤルミントの中にしっかりと葉を広げている雑草を発見。自分があるじであるかのように堂々としている。自分も含め、スタッフ誰もが気がつかなかった。

葉色や葉の形などまるで自分に似ている葉を選んで発芽しているとしか思えない。まあ、それだからここまで大きくなれたんだろうけど。むしろ、成育旺盛なペニーロイヤルミントの中で良くここまで成長したものだと感心するべきなのかな?

さて、例年なら寒さのため、葉にもっと赤みが差すペニーロイヤルミントだが、今年はとても良い色だ。やはり少し暖かいのか・・・

ツリーハウスに降る雪

起きてみてびっくり、今朝は思わぬ積雪であった。とはいえ、もう春を感じさせる柔かで湿った雪。すぐに融けるだろう。

圃場のギンヨウボダイジュにいつからか作られた「ツリーハウス」にも雪が積もっていた。でも、なぜか暖かそうで、入れるものなら入ってみたいと思わせる。きっと住み心地も良いことだろう。

ツリーハウス
蜂か何かが作ったと思われる。咋秋、落葉し始めたら気がついた。調べれば何の巣かすぐに分かるのだが、ここは敢えて調べない。何か不思議な生き物が住んでいるかも・・・と思うだけで何となく楽しいではないか。知らない方が幸せと言うことも人生多いのである。

竹と椿

今日は竹の収穫に出かけた。場所は島根半島のとある川沿いの竹やぶ。親戚の所有する竹林である。川のせせらぎをBGMにして竹を切るのはなかなか悪くない時間だ。

せせらぎ

この竹やぶもかつてはタケノコ掘りなどに良く使われていたようだが、この頃はあまり使われることも無く、荒れるに任せてある。そのため、竹を切ってあげるとむしろ喜ばれるのだ。

竹林
毎年のように行なっている作業なので長い竹を切り倒すこともそう苦ではなくなってきた。最初のころは倒れた竹が他の竹に挟まれて引っ張り出すのにひどく手間がかかったり、割れた竹が跳ね返って危ない思いをしたこともあった。

今となっては手慣れたもので、小さなノコギリと鉈だけでリズミカルに作業を進めることができるようになった。何でも経験である。

竹
パァンと竹を割るのはなかなか気持ちの良い作業だ。瑞々しい竹の香りもまた気分を新鮮にしてくれる。また、割ったばかりの竹の美しいこと。今まで外界にさらされていない清らかな竹の内部。昔のひとがかぐや姫をそこに想像したのも無理はないように思えてくる。

竹
一仕事終えて一服すると目に鮮やかな赤い色が入ってきた。椿である。島根半島は野生の椿が多いと言う。竹と椿、何とも風情のあるひとときを過ごさせてもらった。
椿