草遊びの文化

この季節、昔を思い出す動植物が良く目に留まる。圃場の端にたくさん花を咲かせはじめたカヤツリグサも子供のころ手に取って遊んだものだ。

カヤツリグサ

文字で説明すると難しいのだが、これは二人で遊ぶ。茎だけを使って両端から切れこみを入れる。茎は正面から見ると三角(△)になっている。一方は縦に切れ目をいれ、もう一方は斜めに切れ目を入れる。そのまま両方から開いていくと、ちょうど蚊帳を開いたような四角ができる。それでカヤツリグサ。

ところが、年代が近いスタッフにその遊びを説明しても全然話が通じない。一人は同じ地区で遊んでいた仲間だというのに、「シティボーイでしたから」と言うし、もう一人はもっともっと田舎に住んでいたのに知らないという。文化の違いなのだろうか。

花が咲いた様子も線香花火のような感じでなかなか好きである。
実はこの雑草、ずっと「サンカクイ」という名だと思っていた。むかし、誰かがそう呼んでいたのがインプットされたらしい。子供にとっては遊びの対象となる草なんて、「あれ」、「これ」というぐらいにしか呼ばないのでそれでよいのである。

お彼岸が過ぎて

お彼岸が過ぎてもまだ暑い日が続く。むしろ、これから夏に向かうと思わせるような陽気である。「過ぎゆく夏を惜しむ」と言う言葉があるが、むしろ今になって夏が未練がましく居座っているようだ。

裏の山でも相変わらずセミがたくさん鳴いている。でも爽やかな風の中で聞くとそれほどやかましく感じない。不思議なものだ。

昼前、圃場で畑に向かおうとすると、目の前をトンボが通りすぎる。少年の憧れ、オニヤンマだ。昔なら一も二もなく捕虫網を探しに行っているところだ。でも、捕虫網を持ってきた頃には既に飛び去ってしまっているで、次に戻ってくるのを辛抱強く待つより他に無かった。

ところが、おやおや、今日はすぐ近くの枝に止まった。夏の盛りにはあまり見ることができない光景だ。そっと捕虫網ではなくカメラを持って近づき、何枚か収めることができた。

オニヤンマ

そのとき、すぐ上の辺りからミィ〜ンミンミンとセミの声。これもまた、普段裏山の高いところで鳴いているミンミンゼミ。今年初めてお目にかかった。子供のころ、オニヤンマよりもむしろ捕まえにくかった。いつも木の高いところにいるので、鳴き声はしてもとても捕虫網では届かなかった。

止まっているのはユーカリの木。ミンミンゼミには似合わない。
止まっているのはユーカリの木。ミンミンゼミには似合わない。

どちらも今年の見納めにと、山から下りてきてくれたのだろうか。やはり秋は確実に歩を進めているのである。

アフリカのブルー

普通、バジルを購入された方には、「どんどん収穫をかねて剪定をして花を咲かせないようにしてくださいね」とアドバイスする。だが、アフリカンブルーバジルは別である。花が咲いてくれないとそもそも楽しめない。食べて食べれないことは無いようだが、スイートを代表とする食用専用のバジルを育てているとわざわざ手を出す気が起こらない。第一、葉が硬めだ。

そのかわり、とても丈夫だし、寒さにも比較的強い。松江だと、地植えではボーダーラインと言ったところだが、鉢植えならまず大丈夫、軒下で充分冬を越す。スイートバジルブッシュバジルの場合、ビニールハウスの中でもいくら頑張っても冬は越さない。(途中でどうでも良くなって管理が甘くなると言うのも否めないけれど・・・)

アフリカンブルーバジル

写真のアフリカンブルーバジルはこの初夏に9cmポット苗で植え付けたのに一夏でここまで成長した。日当たりもよかったこともあるだろう、剪定もしないのに良い形に育ってくれた。

それにしても、どのへんが「ブルー」なのだろう。何年育ててみても相変わらずわからない。お客さんに聞かれたらどう答えようか?

来年の紫蘇のために

ハーブにシソ科が多いからと言うわけではないが、紫蘇が好きである。夏の冷や奴には無くてはならないし、シソジュースも大好きである。なのに今までまともに育てたことが無かった。畑の優先順位としてどうしても他の野菜で既にスペースが埋まってしまい、気がついた時には植えどきを逸していたのだ。そもそも、一度育てたら、こぼれ種でいくらでも増えると言う印象なので種子を手に入れること自体思いつかないのだ。

それが今年、夏前に偶然実生苗を手に入れることになった。夏前に作業に行った幼稚園で、園庭に花木を植えて欲しいと頼まれた。ちょうどその場所に紫蘇の小さな芽がたくさん出ていたのだ。周囲にも山ほど芽が出ていたので掘り上げた土に混ざっていた株を2〜3分けてもらうことにした。

ちょうどそのころ、畑は空豆を片付けた後で隅のほうが空いていたので植え付けた。2株はその後駄目になってしまったが、一株はしっかり根づき、大株に成長してくれた。

手前はレモングラス。隣は例のネパールのトンガラシ
手前はレモングラス。隣は例のネパールのトンガラシ

紫蘇の花

夏にはもちろん、冷や奴を初め、何度も活躍してくれた。8月も終わりを迎えると花も次々と咲きはじめてきた。葉を楽しむのももう終わりが近い。次は紫蘇の穂を使って、紫蘇の穂漬けでも作ろうか?少なくとも来年からはこぼれ種がいやと言うほど出るだろう。育て忘れる心配だけは無さそうだ。
ちなみに私は紫色の方を好むが、家族には青紫蘇派もいるので、夏の間何度か衝突が起きる。来年は優勢を保てるかも知れない。

圃場のドタバッタン

小学生のころ、夏休みは虫取りに近所を駆け回っていた。しかし、家の周りではセミかトンボぐらいしか見つけ
ることができなかった。しかも、せいぜいアブラゼミかニイニイゼミ、トンボもシオカラトンボばかりだった。

休みの日には、父が少し離れた高台にある公園へ連れて行ってくれた。木々に囲まれた公園に着き、まず最初にするのが大きなショウリョウバッタを探すことだった。低学年だった私でも捕虫網さえあればなんとか捕まえることができる大きな昆虫。それがショウリョウバッタだったのだ。

ショウリョウバッタ

もちろん、いつも見つけられるとも限らないので、捕まえることができればまさに宝物だった。
このごろは秋が近づくと、そんな宝物のようなショウリョウバッタにも圃場で良くお目にかかる。この時も、ビニールハウスのすぐ前にオスメス仲良くいるのを見つけた。どんなに草の色に似ていても、子供のころ、必死で
探した目からは逃れられないのである。さすがに捕まえる気は起きないが、それでも写真に収めた。

やはりこのシャープな姿が子供のころから好きだったんだろう。タイムボカンで一番好きだったメカもドタバッタンだったのである。
イネ科の植物を好むと言うが、いまのところレモングラスなどを食べているのは見たことがない。ビニールハウスに入って悪さをすることも無いし、いまのところ大変良好なおつきあいをさせてもらっている。