ここ数年、10月に入ると休日返上で親戚へ秋の番茶摘みの手伝いに向かう。
夏までのお茶摘みは暑さが厳しくて辛いものがあるが、秋は比較的涼しくなってからなので、その点は楽である。
ただ、この時期はツツガムシ、チャドクガなど、危険な昆虫がいて厄介だ。天気が良い日には特にスズメバチに気をつけなくてはならない。
オオスズメバチはものすごい羽音にギョッとさせられるが、それほどたくさんはいないし、今のところ危ない目にあったことはない。
ところが、ちょうどこの季節、お茶の花が満開で、その花の花粉を目指してキイロスズメバチがやってくる。お茶を摘んでいるすぐそばでも花に潜り込んでは飛び出していく。小さめのスズメバチとはいえ、畑中、無数に飛び交っているので初めて見たら少しビックリするに違いない。
自分も最初は怖さを覚えたが、こちらから手を出さない限りは問題がないので今はあまり気にせずに作業を行えるようになった。
しかし、先日の作業ではついに被害者が出てしまった。
作業の手が足りなくて、スタッフの一人も手伝いに行き、摘んだお茶を運搬する作業をしていた。お茶が詰められた大きな袋をかついで運ぶのだが、運悪くこの袋にキイロスズメバチが入っていたようだ。肩にせおった袋の中から首筋を刺されてしまったのだ。
すぐに応急措置をと思っても、ここは人里離れた山の中。まだ作業の途中なので、中断して戻るわけにもいかない。ファーストエイドキットも手元にない。とにかく、毒だけでも絞り出そうと、刺された箇所をギュッと爪で押し出すようにして毒出しを試みた。爪の跡がこれでもかというほど首筋についてしまった。
幸い、その後気持ち悪くなったり、呼吸が苦しくなるということもなく、無事加工場へ戻って薬をつけることができて胸をなでおろした。
本人は痛みを感じながらも「今日、お酒が飲めないのはいやだなぁ」なんて言っていたが、皆が、「首のところがすごく腫れるかも」とか脅したので、気が気ではなかったかもしれない。心配していたが、その後悪化することもなかったようだ。
こんなこともあったので、早速毒の吸い出しにつかう「ポイズンリムーバー」なるものを手に入れた。
実は前からちょっと欲しかったのだが、ちょうどいいきっかけだ(ちょうどいい言い訳だ)。普段の作業でも蜂に刺されたりすることがあるので、あった方がいいだろう。
マンガや映画などでは口で毒出しをするというのがお決まりなのだが、自分一人だったり、そもそも汗ばんだ男の首筋に吸い付くのはためらわれる(咬んだものと緊急性にもよるが・・・)。首筋ならともかく吸い付くのがもっとためらわれる場所ということだってあるし・・・。
試しに使ってみるとそれなりの吸引力だが、爪で思いっきり絞り出す方がいいのでは??と思うぐらいである。いずれにせよ、応急処置用だ。蚊に刺されたときには効くだろうか?ネトルに触れてしまったときに効果があると助かるんだけどな・・・など、期待もあるがやってみなければわからない。
さて、明日の休日はまたお茶摘みである。ポイズンリムーバーが活躍しないことを願う。