老眼を自覚するとき

2,3日前に確認した時には何ともなかったのに、今日見ると、ポットマリーゴールドの苗に異変が。

ポットマリーゴールドの食害
「あ、やっぱりやられたか・・・」
毎回の事ではあるが、調子良く大きくなり、そろそろ発売しようと思った頃に必ずと言っていいほど苗の中心が食害される。

多分、メイガとか、蛾の幼虫だと思うのだが、正体までは確認できていない。正体が分かるまで放っておくと相当食べられてしまうだろう。ただ、新芽が少々食べられても、ポットマリーゴールドはまたすぐ横から新芽が伸びてくる力強さを持っているのであまり心配はしていない。

とはいえ、発売前の苗、食べられるまま放置しておくわけには・・・・

と言う事で犯人を捜しはじめるのだが、まだ被害がスタートしたばかりだと、相手も小さい。
ポットマリーゴールドの食害
目を近づけても分からないし、近頃老眼が入ってきたのか、むしろメガネを外したほうが見えやすいのが悲しい。

ポットマリーゴールドの害虫
結局はルーペを引っぱり出して探索続行。ここまで来るともう意地である。

卵を産みつけるほうも律儀というか、丁寧に一株にひとつ産みつけているようで、幼虫が2匹いることはほとんど無い。しかも一番柔らかい中心部分に集中している。

見つけたら先の尖った竹串で捕まえるのだが、ルーペを使いながらの作業、気分は外科医である。

幼虫
さて、食害している幼虫、今の段階ではこのサイズ。指紋と同じぐらいの太さである。だが、気を抜いて放っておくと、一気に大きくなり、それに比例して食害の量も増えてくる。今回、この程度なら最小限の被害で食い止められたと思っても良さそうだ。

加齢のわびしさを感じつつ、作業する事数十分。全ての苗のチェックが終った。

ああ、肩が凝る。

こんなのが欲しい。

サージカルルーペ

気の長い話

ハーブをふやすには色々な方法がある。種まき、株分け、挿し木などが良く知られているが、どのハーブをどの方法でふやすかはとても大事だ。

挿し木でつきにくいものを一生懸命挿し木しても徒労に終わりやすい。ローズマリーは、種を蒔いて育てることもできるが、普通、挿し木の方が、完成まではずいぶん速い。タイムも、種を蒔いて何百本と発芽したら、普通の人なら途方に暮れてしまうだろう。

雄雌の区別が必要なものは、普通、区別がついた株を挿し木などで増やすのが一般的だ。種子で蒔いていたら、花が咲いたり、実ができるまで雄雌が分からないことも多い。

なのに、昨秋、蒔いてみたのがジュニパーの種子。ずいぶん昔、いちど種を蒔いたことがあったが、そのときは全く発芽しなかった。そもそも、手元に雄雌の分かった株がある。増やしたいのなら、それを元に挿し木をすれば良いのである。

それをいまさらなぜ種子で・・・といったところだが、種子から育てると一体どれぐらいかかるか知りたいというのが本音である。ついでに、以前種を蒔いて一つも芽が出なかったことへのリベンジだ。

ダメ元で、今回は砂に蒔いてみた。もちろん、種子の質も関係していたかもしれないが、気温の上昇とともに一斉に発芽を始めた。発芽してみると、まさかこんなに芽が出るとは思わなかったので、ちょっと慌ててしまった。当然雄雌も分からないので、苗のサイズまで成長しても販売するわけにはいかない。ま、全部が全部うまく育つわけはないのだが・・・。

ジュニパー

さて、これから育苗して(しかも、成長がゆっくりだ。挿し木でも結構かかる)、定植して、大きく育って、開花、結実するまでどれぐらいの月日が必要なのだろう。そもそも、実が熟すまで数年を要するという。スローモーな植物なのだ。こちらもあせらずに気長に待つ必要がありそうだ。

気が長いと言えば、ずっと前のことだが、植物を育て始めるようになってしばらくした頃、親に、
「あんたは性格が変わったねぇ」
と言われたことがある。自分ではいまだにそんな風には思わないのだが、それまではもっと気が短かったとか。

今後もずっと植物を育て続けるなら、ますます気が長くなっていくのかもしれない。でも、いくら気が長くなったとしても、生きているうちにこれらの株の雄雌が分かるかどうかは別の話。
「じいさんは、『この木が雄か雌か分かるまでは死ねん!』と言ってたのに、先に逝っちゃったねぇ・・・」
なんて言われる日のほうが早いかもしれない。

 

ジュニパー

こんな場所にはこのハーブ-スノードロップ

(スノードロップは、普通ハーブとして利用されることはありませんので、タイトルとは少しずれてしまうのですすが、ハーブと組み合わせる植物としての紹介です。また、ハーブ好きの方ならきっとスノードロップもお好きな方が多いでしょうから、参考になればと思います)

どこか他でも書いたように思うが、植物を育てているとセオリーどおりに行かないこともある、というよりも、そんなことがしょっちゅう起こる。

春先は花壇の色味に乏しい。ハーブならせいぜい冬から咲いているローズマリーが咲いているぐらい。もう少し暖かくなるとスイートバイオレットなども咲くのに・・・という時期は本当に寂しい限りだ。

まあ、そんな寂しさがあるからこそ、暖かくなって少しずつ花が咲くのが一層嬉しく感じられるのだが。

とはいえ、多くの人の目に留まる花壇ではそう言うわけに行かない。冬もそれなりに色合いが欲しい。

この花壇は、今まで何度か登場しているが、前後左右にまったく遮蔽物がなく、風通し日当りとも抜群。おまけに周りは道路と駐車場で夏はからっからに乾いてしまう花壇である。ハーブをいくつか育てたことがある方なら、「匍匐性のタイムやコモンセイジがご機嫌に育ち、ラベンダーも間延びしにくい」と言えばどんな環境かお分かりいただけるかもしれない。
スノードロップ
春先の花としてここにスノードロップを植えようなんて、スタッフが言い出した時には「ちょっと無謀かな?」とも思った。スノードロップと言えば、木漏れ日の下で楚々として咲くイメージを抱くことが多いだろう。早春、落葉に覆われた柔らかな土から白い花が姿を見せる・・・と言う感じがぴったりではないか。ところがここは、ザラザラの荒い砂で覆われた花壇。確かに球根なので、かなり幅広い環境に耐える力はある。しっかりした球根ならワンシーズン目に咲かないことはまずありえない。なので、一昨年前の秋に球根を初めて植えたとき、次の春に咲くことは全く心配しなかったし、事実、たくさん花を咲かせてくれた。

ところが球根は、とても強い種類だったり条件が良い場合は増えていくこともあるが、デリケートな種類や、場所に合わないと少しずつ減っていくことが多い。なので、次の秋(昨秋)にまた追加すれば良いかも・・・ぐらいに考えていた。ところが、昨年、ちょうど同じところに植わっているエキナセアを植えかえる時に、そこそこ球根が残っていたので驚いた。このまま咲くかどうか、取りあえず様子を見ようと、球根を追加することも見送った。しかし、まさかこれほどたくさん咲いてくれるとは・・・。

水はけが抜群なのは言うまでもない。周りにはレイタータイムがビッシリと育つぐらいである。花壇の高さは40cmほどもあり、おそらく夏の暑い時期も、地中はそれほど温度が上がらないのだろう。まして休眠していれば、外界の変化もそれほど感じないのかもしれない。

 

スノードロップ

ちなみに、もう十年以上前になるのだが、「スノードロップにふさわしい」庭に、球根を植えたことがある。塀に囲まれ、落葉樹やバラが茂り、涼しくしっとりとした庭の片隅だった。良質な腐葉土もたっぷりすき込み、丁寧に丁寧に植え付けた。

最初の一年こそ、そこそこ咲いたのだが、葉は妙に間延びするし、毎年毎年歯が抜けるように減っていき、いつしかいなくなってしまった。「ここはうまくいくはずなんだがなぁ・・・」と頭をひねったことは今でもおぼえている。お客様の庭での苦い経験は、「スノードロップは気難しい」との印象を私に植え付けてくれた。

しかし今回、拍子抜けするほど順調に育ち、いままでの印象もがらりと変わった。今年の秋はもう少し増やしてもいいかなと思っている。今からすでに、次の春が楽しみである。

ただ一つ難点なのは、山陰の曇りや雨の多い冬の天気。寒風吹きすさぶ曇天の下、冷たい風にただ一人で耐えているような姿は、健気であり、かわいそうにも思えるのである。でも、これだけはどうしようもないんだよなぁ・・・。

冬を楽しむ余裕

寒い・・・。
立春の声を聞いても、まだ冬の寒さの峠を越えたという気にはならない。苗たちも毎日のように見回っても成長が見えるのはごくわずかだ。

日々の成長は少なくても、冬から春に移り変わる頃には、花の時期とはまた違った姿で目を楽しませてくれる。

ドーンバレータイム
昨年のうちはまだグリーンにまだらが残ってやや汚らしかったウインターセイボリーも、見事な赤紫に色づいてきた。ルビンバジルレッドジェノベーゼバジルも似たような葉色だが、初夏から夏の柔らかい葉のバジルとは違って、硬質な感じの葉が赤紫に変わるとよりいっそうシャープな印象を受ける。
ブルーマウンテンラベンダー
ラベンダー類も本来のシルバーっぽい色合いになりつつある。初めて育てると、「大丈夫だろうか?枯れてないだろうか?」と思わせるぐらい白っぽくなってしまう。でも、葉色としてはこちらのほうが美しい。花の時期までこの葉の色が保てれば花もいっそう引き立つだろうが、暖かくなるとどうしてもグリーンが増してくるのは致し方が無い。この株は外の畑の株なので割とシルバーっぽくなっているが、ハウスの中の苗はやはりもっとシルバーは弱い。
ドーンバレータイム
春先にその魅力を発揮するドーンバレータイムも、立春ぐらいから色を出し始める。斑入りの葉なのに、秋までは全くそのそぶりを見せない。斑が暑い時期に消えてしまう種類は、斑が消えてしまうのではないかと毎年気をもむが、この種類に関してはあまり心配はないようだ。

ドーンバレータイム

育苗中のドーンバレータイムの苗のうち、一株だけ先行して色づき始めた株があった。親株は同じなのに、どうしてこんな差が出るのか。土、日当り、水分、気温、ちょっとしたことが原因なのだろうが、いつも不思議に思ってしまう。冬はそんな変化を楽しむ余裕があると思えばまたよしなのかもしれない。

ウインターセイボリー
ドーンバレータイム

こんな場所にはこのハーブ-ワイルドクリーピングタイム

 

ワイルドクリーピングタイム
これは、当店の店の南側、ハーブたちの苗や鉢が並ぶエントランス部分。今年の春頃から伸びてきたワイルドクリーピングタイムが、非常に調子良く育ち、6月の終わりには花を咲かせた。

おおよそ、タイムの仲間はこういったレンガの隙間が大好きである。このレンガはいわゆるインターロッキングと同様な作り方がしてあるのでレンガとレンガの間に少し隙間がある。普通のレンガ敷だと、レンガの下はモルタルでガッチガチに固めるのだが、下は砂で基礎がしてあり透水性もある。そのため、こぼれ種で発芽したこのタイムもこれ幸いと細い隙間からどんどん根を下に伸ばしていったのだろう。

ワイルドクリーピングタイム
わずかなレンガの隙間に向かって根を伸ばしている

普通のお庭でも、レンガなどで作った花壇沿いのクリーピングタイムが妙に元気だと言うことは無いだろうか。レンガにそって下に下にと根を伸ばせる環境がタイムにとっては嬉しいようだ。当店が管理しているあるお庭でも、レンガの通路沿いが一番タイムが元気だったりす
る。

それでも、さすがにこの夏の暑さが耐えられるか心配だった。午前中は少し日陰になるものの午後からはほとんど日光を遮るものはなく、レンガが溜め込む熱も半端ではないだろう。タイムやラベンダーでよくあるのだが、秋に疲れでぱたっと枯れることもあるだろうと思っていた。

ワイルドクリーピングタイム
11月の終わりの様子

ところが冬を迎える今になっても元気なところを見ると、何ら問題が無かったようだ。さすがに、中央部は「グラウンドカバーのミントが枯れていきます」でも写真を載せているように、中央部分(古い部分)がやや葉が落ち始めている。この場合は土をくわえるわけにはいかないので、この冬に剪定をしてやろうと思う。

一つ残念なのは苗のようにすでにある程度根が伸びたものをこの場所に植え付けようとしても非常に困難でしかも成功率は低いということだ。以前、「ど根性ナントカ」で書いたようにこぼれ種や小さい株の時期からこの場所に根付こうとするものなら苦にならないと思うが。

 

(※お断りしておきますが、タイトルに「ワイルドクリーピングタイム」とつけたものの、この株はこぼれ種から生えてきた株で、厳密には「ワイルドクリーピ ングタイム」とは言えないかもしれません。ただ、近くにワイルドクリーピングタイムの株もあり、実際にこぼれ種でも増えやすい種類で、姿形も同様だったの でまず間違いは無いと思います。御了承ください。また、この種類に限らず、他の匍匐性のタイムも同じような場所を好むことが多いようです)

ワイルドクリーピングタイム