入れ替わりの季節

朝晩はさすがに気温が下がり、スタッフの中には扇風機をしまうと同時にストーブを出したという者もいた。

圃場でもようやく扇風機の片付けも終わり、次は薪ストーブだ。まあ、来月に入ったらぼちぼち取り掛かればいいだろう。

それよりも、遅れている野菜畑の整備の方が気になる。例に漏れず、今年も秋野菜の取り掛かりが遅れてしまった。その原因は夏野菜がいまだに場所を譲ろうとしないためだ。

硬くなってきたとはいえ、茄子はまだ実をつけ続けているし、オクラは収穫は終わったが種子取り用の株の片付けができない。トマトにいたってはまだ花も咲いて身もつけ続けているので困ったものだ(いや、食卓的には困らないが)。

とはいえ、全く何も手をつけないのも気分的に落ち着かないので、バジルの片付けをする事にした。先日の気温低下後、葉にも傷みが見られるようになってきた。もちろん食べてもまったく問題はないのだが。また来年春になったら食べられるし・・・と自分に言い聞かせて畑からお引き取りいただいた。

執拗に収穫し続けたせいか、まだ花芽もつけない一株。それとも諦めてしまったのか・・

今年はペーストさえ作らなかったが、毎日のようにフレッシュで口にした。そう思うと十二分にバジルを摂取した夏だったかもしれない。

開いたところは、春菊が今後育っていく予定。バジルのようにたくさん食べられればいいのだが。

不思議な組み合わせ

意外なところに、意外なハーブが調子よく育っていることにときどき出会う。

ビニールハウス前の東向き傾斜に育つサンタバーバラローズマリーは、一年中調子が良く、真夏や真冬など、案外他のローズマリーがイマイチのとき、よく花を咲かせてくれている。

もちろんこのローズマリーにとってこの場所は適地といえるのでそれは不思議ではない。

それよりも、ローズマリーの下の方に育っているレディースベッドストロー。とても細く柔らかい枝で、葉も繊細。横に広がって育つので、では他の匍匐性のハーブのように所々から根を出してしっかりと地面を掴んでいるかと思うとそうではない。横に大きく広がっていても、根はほんの一部で土と連絡していることが多い(なので株分もなかなか骨が折れる)。

そんな育ち方なのに、何年も(10年以上)枯れることもなく、かといって物凄く増えるわけでもなくこの場所でとどまっている。周囲にはヨモギほかの強力な草もはびこっているのに、圧倒されるわけでもない。もともと日差しにも弱いわけではないが、かといってローズマリーに遮られて調子が悪くなる感じもない。逆にレディースベッドストローがもっと旺盛な性質ならローズマリーの上にかぶさって蒸れたりして弱る可能性もある。

むしろ、ローズマリーが、そっと上から抱き抱えて守っているようにも見えるぐらいだ(そんなことはないと思うが)。本当に不思議な組み合わせだ。

今調子よく行っているので、一応このまま見守ってやろうと思う。こういうとき、かえって周りの草を取り除いたら調子悪くなったりするものだし。

裏のナチュラルガーデン

ビニールハウス裏の荒地は、普段は雑草がただただ伸び続けている。荒地とはいえ持ち主さんも年に2~3度草刈りをされているので、それほど気になる場所でもないが。

ただ、秋のこのシーズンだけは少し違う。

お盆ごろの草刈りで短くなった雑草たちがそれぞれに伸び、一斉に花をつける。

手前にはサクラタデの薄いピンク。その後ろにはミゾソバの鮮やかなピンクが広がる。このふたつは、高さも揃ってとても見事。

その横には適度な高さのセイタカアワダチソウがイエローの花穂を伸ばす。

奥と手前の方には目にも鮮やかなカンナの赤。特徴的な大きな葉もまたいいコントラストとなっている。

写真では見えにくいが、真ん中付近にはムラサキシキブが実をつけ、紫色のアクセントだ。セイタカアワダチソウの中からぴょこんと顔を出しているススキの穂もまた秋らしさを演出している。

実際このようなガーデンを人為的に作れるだろうか(この場所も、夏の草刈りという人為的な作業は行われているのだが)と毎年のように思う。

手を入れてしまうと、かえってうまくいかなさそうなナチュラルガーデン。放置されたままの姿を楽しむのがベストなのだろう。

からかってもらえるならば

「蒔いた種子は、全部出るか、ひとつも出ないかのどちらかだ」

確か、カレル・チャペックが書いていたように思うが、本当にその通りに思う。少なくともちょうど良いようには発芽してくれない。そのうえ、ちょうど良いときにも発芽してはくれない。

特に今年はどうもその傾向が強い。

一昨年に収穫した種子だったので、おそらく発芽率が落ちているだろうと思っていたペレニアルフラックスの種子。蒔いてもしばらくは全然発芽する気配もなくて、もう1度蒔かなくては・・・と思っていた矢先に一斉に発芽。小さい鉢に結構多めに蒔いたので、ぎゅうぎゅう詰め状態だ。

せめてこの鉢に20、いや30ほどの発芽数ならばすこし様子を見ても良いけれど、この調子では少し放っておくだけで根がこんがらがってしまいそうだ。決して根が強い方ではないペレニアルフラックスなので、根を傷めるのは避けたいから、早めの移植が必要な状態だ。

それにしても、今、発送などで結構忙しいタイミング。せめてもう1週間ほど待ってくれればまだ良かったのに。なぜこんな忙しい最中に発芽してくれるのだろう。まるで育てるこちらがからかわれているかのようだ。

でも、からかってもらえるならば、それも結構、なにかしら気持ちが通じている気もするのだから。

こぼれダネはどこに?

こぼれダネで増えていくハーブは多い。とはいえ、そのハーブにとって条件が良い場所であればであり、なんでもというわけでもない。

割とよくある例として、ボリジはこぼれダネでよく発芽するのに、カモミールはしない、またはその逆も多い。全てがというわけではないようだが、わりとねっとりした畑のようなところではボリジのこぼれダネがよく発芽するようだし、さらっとした砂質の畑や花壇ではカモミールがよく芽生えるようだ。

当店の畑は、さらっとした方の土だと思うが、なんせ雑草が多く極小のカモミールの発芽など発見するのがほぼ無理だ。春になってかなり大きくなってから「なんとこんなところに」という感じで見つかる。しかも決して数は多くない。おそらく昆虫などに横取りされる種子も多いのだろう。

そんななか、確実にこぼれダネが見つかるスポットがある。

それが、売れ残った前シーズンのジャーマンカモミールのポットのなかである。意図的に花を残して種子を落としてもらうようにしているのだが、夏を超えた頃からぽつぽつと発芽を始める。そのため、普段ならすぐに片付けてしまうポットだが、数ヶ月放っておく必要もある。

まだ本葉がひと組しか出ていないようならいちどプラグに移植して大きくなるまでしばらく育ててポット上げを行う。ある程度大きくなっているのはそのままポット上げをすることもあるが、やはり少し根を伸ばしてからの方がその後の歩留まりは良い。

小さい芽はいちどプラグに移植。肩の凝る作業。

実はこの他にも普通に種まきもしているのだが、なぜかこちらのこぼれダネ(もとは同じ親株の種子なのだが)の方がその後の成長が良かったりする。一度紙やビニールに包まれてしまうのがいけないのか、過酷環境の方がいいのか、その辺はよくわからない。