竹も本望

他の季節に比べると、冬は園芸作業自体は少なくなる。一方で冬にしかできない作業も結構あったりするのだ。

今冬の課題は、育苗ハウスの台直しである。育苗ハウスでは、パイプで組んだ土台の上に割り竹を簀の子のように敷いてその上に苗(正確には苗ケース)を並べている。前回簀の子を作ったのは5年ぐらい前になるだろうか。さすがにところどころ腐ってきてそろそろ寿命も近い。

普通のビニールハウスでは鉄製の簀の子を使う事が多い。耐久性も高いが値段も高い。それに、いざ処分しようとでも言うことになると大変である。実は少し前に、施設園芸をやめたところでこの簀の子をもらえるかも知れないと言う話があった。だが、やはり今の時代の流れ考えると処分費がかからないものの方が後々安心である。そこで今のまま、竹の簀の子で継続する事になった。

竹の簀の子の供給源
竹の簀の子の供給源

前回は裏の竹やぶの所有者から分けていただいて作った。時期は真夏。竹を切るにしても作業をするにしても最悪のタイミング。やぶ蚊の猛襲に耐え、炎天下、竹を切り、割っていくなど狂気の沙汰であった。きっと周りの方も
「だーだねか?(ダラ・馬鹿ではないか)」
と言っていたに違いない。
今でも思い出すとその時の辛さが脳裏に浮かぶ。その時の反省から、この作業は冬に行なう事にしているのだ。

さて、昨年はこの裏山の竹やぶから大量の竹が業者によって切り出された。なんでも広島のカキ筏の材料になるとか。なにもこんなに遠くへ取りにこなくてもと思って尋ねてみると、山陽の竹よりも山陰の竹のほうが寒さに当たっているせいで、ゆっくり成長しており、海に浮かべてからも長期間腐りにくいのだとか。輸送コストをかける意味があるのだなぁと感心した。

先日はテレビだったかラジオだったかで、その廃棄されるカキ筏の竹から竹炭を作る取り組みが紹介されていた。とことんまで使われて、この山の竹も本望だろう。

泥落とし

新年に伴い、作業用ブーツを新調した。泥にまみれたり、水がかかる事も多いので他のスタッフは長靴を履いているが、自分はあの足首が定まらないブカブカ感が嫌いで、長年の靴ひもで締めるブーツ愛用者である。

それまでのブーツは靴裏のパターンが浅くて、ぬかるみや雪で滑りやすかった。今回は深いパターンで信頼性も高いビブラムソール。とても歩きやすい。

ビブラムソール

ところが、一つ問題が。冬は特に地面がぬかるんで粘るので靴底に泥がへばりつくのが避けられない。今までのブーツのように少々足踏みをしたぐらいでは落ちてはくれない。作業場ではともかく、こんな靴で店頭へ出た日には大変である。ましてや年末、床にワックスをかけたばかりだから、店頭スタッフに怒鳴られてしまうこと必至。

店にはそんな靴のための泥落としも売っていたりする。ところが値段が・・・。一万円を出さないとお釣りがこないような金額のものを畑の泥落としにはなかなか使う気になれないのである。

ブーツブラシ

ならば、お金を使わずに頭を使いましょう。

似たような形をしたものと言えば・・・デッキブラシである。ホームセンターへ行くと、デッキブラシの頭だけが売っていた。ただ、この部分だけではフラフラしてしまうので靴をゴシゴシと言うわけには行かない。専用の泥落としには思いベースが付属しているのである。

となると、後は、これを固定するものは・・・。ホームセンター内をうろついたもののあまりピンとくるものがない。一旦圃場に帰った。

少し大きめの木の板や鉄板に固定すれば動きにくいかも・・・と作業場を探してみると、ビニールハウスの部材の中に見つけたのがC型チャンネルと呼ばれる鉄材。もしかしたらサイズがぴったりでは?とひらめくものが。さし込んでみると何とジャストサイズ。両側を少し長めにしておけば、この部分を片足で踏めばぐらつかない。

デッキブラシとC型チャンネル

何とぴったりのサイズ
何とぴったりのサイズ

気を良くしてさび止めと見た目の向上のために塗装を施してやった。形はイマイチナなれど、今後結構活躍してくれそうである。

グレードアップ!
グレードアップ!

冷蔵庫

寒い!
この冬一番の寒気が・・・と天気予報が言うとおり、久々のまともな寒さが到来。今朝はビニールハウスにも雪がうっすらと積もる。

雪とビニールハウス

ビニールハウスは、雪がそこそこ積もっても、溶けて滑り落ちてくれさえすればそれほど作業に支障はない。ところが、気温が上がらなかったり、雪が降り続いたりするとかなわない。加温設備の無いこのビニールハウス、上からは雪の冷気、下からは地面の冷気に覆われてまさに冷蔵庫状態なのだ。

雪とビニールハウス

その上、積もった雪のせいで音が吸収されるのか、回りの静けさが増幅され、いっそう寒さを強く感じてしまう。ハーブたちも静かに寒さに耐えているようだ。こんな状態ではどうしても働く意欲も失われがちになる。種まきや挿し木などをしたら気が滅入る事間違いなしである。せいぜい、なるべく体を動かすような仕事を探して明るく一日を過ごすようにしている。

結局、夕方まで似たような状態であった。

もう一働き

普段、作業で使っているハサミは、比較的細身の剪定ばさみである。通常の作業ならそれほど太い枝を切る事は無い。太くても割りばしぐらいのローズマリー程度である。むしろ、細かく入り組んだ枝の中でシャープに切れる事が大事なので、葉の幅もやや細めのものを使っている。

ところが、特に冬の間は太い枝を切る場面が多くなる。お客様の庭で、庭木やローズの冬の剪定を行う場合、華奢な剪定ばさみでは用をなさない。庭の仕事を始めるようになって間もなく、とりあえずでホームセンターで購入したのがこれである。

ハサミ

確か当時千数百円だったと思う。特に使い勝手が良いわけではないし、下のグリップはもう何年も前にどこかの庭で落としてしまった。本当は、フェルコなどの上等なハサミを見ると、しばしば欲しくなるのだが、一年中頻繁に使うわけでも無く、ま、これでいいか、と思い続けてはや10年ぐらいになるだろうか。何度か研ぎ直しもしたりしていまだに現役を続けている。研いでも案外刃のあわせも狂ってこないのは有り難い。

上のグリップが取れたり、刃が欠けたりしたらちょっと良いものに取り換える事になりそうだが、もう一働き、二働き頑張ってもらいたい。

このところ、連日のように枝切り作業に使われているので樹液やアクでひどい事になってしまっている。年末には少し手入れしてやれる時間が取れると良いが・・・。

OPECの回し者

圃場では、11月の半ばぐらいからストーブが登場する。天気が良い日はともかく、これから曇天が多くなる山陰の冬はストーブ無しでは作業にも支障を来す。もちろん?、ハーブたちのためではなく、我々スタッフのためである。

もともと、山際で湿気が多い事も有り、冬は底冷えがひどい。バタバタする作業はともかく、植替や挿し木など、長時間じっとして行なう作業は足元からズーンと冷えてくる。広いビニールハウスを暖めるような事はもちろんしないので、足元だけを暖めるためのストーブである。それでも無いよりはずいぶんましだ。

そんなストーブが3台ほどあるのだが、いずれもお払い箱になったものをもらい受けてきたものばかり。ここには掲載し辛いほどボロボロになった歴戦の勇者ぞろいである。

そんなところに、今年一台のニューフェイスが現れた。スタッフが知り合いの電気屋さんからもらったようなのだが、まだまだ新品に近く、スイッチで火がつく。(他のは全てマッチが必要なのだ)。

ストーブ

サイズもコンパクトで、ついついこちらを使いたくなるのだが、しばらくして重大な事に気がついた。灯油の消費量が多いのか、すぐにタンクが空になる。他の大きな図体のストーブもタンクはほぼ同じ。手をかざして分かった。燃焼効率が良いようで、実際に非常に熱い。

ところが、この場所では強力な熱さよりも、長時間ほのぼのとした熱さであれば充分なのである。

以来、スタッフの間では「OPECの回し者」と呼ばれ、やや冷遇されつつある。