思い出の香り

先週終わり頃から、いったん春を思わせる陽気になったのだが、その後はまた最高気温が10度を下回るような日が続く。

作業場のストーブもまだしばらくは活躍してもらうことになりそうだ。
杉葉
着火時に重宝しているのが、枯れ落ちた杉の葉。油分が多いようで、マッチの小さな火があっという間に大きく広がる。

パチパチとはぜる音とともに、香ばしい独特の香りが立ち昇る。

杉葉
いつもこの香りを嗅ぐと思い出すのが父方の祖父母である。

父方の祖父母は少し遠方に住んでいたので、顔を見るのはお盆の時ぐらいだった。

祖父母の家の裏山の急な坂を登った場所に一家の墓地があり、一緒に息を切らしてお参りしたものだ。

墓地に着くと、周りの杉から落ちてきた杉葉を集めるのが小さな頃の私の仕事。祖父母は杉葉に火をつけると瞬時に大きくなる炎に驚いたものだ。

大きくなった火で、何十本もの線香に火をつけると私に渡してくれた。一体いつからあるのかわからないような古い墓碑に線香を手向けてまわる。

線香の香りとともに、普段嗅がない杉葉の燃える香りが、小さい私にはとても印象的だった。

一緒にお墓参りをした祖父母もまもなく鬼籍に入ったが、いまでもこうして杉の葉が燃える香りを嗅ぐと祖父母を思い出す。

祖父母は生粋の農家だった。いつも朝早くから農作業に励んでいることが小さな私にもよくわかった。まさか、のちに自分も農業に携わるとはそのころは思ってもいなかったのだが・・・。

日々の忙しさにかまけて、10年近くも祖父母のお墓に参っていない。

もうすぐ春のお彼岸。今年は久しぶりにお墓参りに行こうか。もちろん杉葉を携えて。

拡張工事

今日も朝から雪が舞う。山陰の春はもう少し先になりそうだ。

ビニールハウスは無加温なので、日がささなければ温度は外気温とほとんど変わらない(さしてもあまり変わりはないが)。

気温が低ければ苗たちの成長もゆっくりで、したがってできる仕事も限られる。

そんな冬のあいだに行う大事な仕事がビニールハウスの補修や改良である。

ビニールハウスも雨風にさらされて、年とともに部材が錆びてきたり、ビニールが破れてきたりする。また、使っているうちに、使い勝手が悪い場所が出てきたりするので時間に余裕がある冬のうちに改良して、春以降に備える。

今年の仕事は苗を育苗する台が古くなってきたので、台の上面の竹を張り直し、あわせて拡張を行うことにした。苗を大移動したり、例年よりも大仕事となった。こんな仕事は他の季節ではとても行えない。
拡張工事
いままで台が少し狭めだったので、通路部分は広くて使い勝手はよかったものの、面積を有効的に活用しているとは言いにくかった。特にオンシーズンには、発芽した苗をポット上げしようとしても、場所が足りなくて困ることもしばしばであった。

そこで、今回は約60cm幅を広げることにした。スタッフの計算によると置ける数が2割増えるとのこと。実際出来上がった台を見てみると、予想していたよりも広い。

竹の台
緑色もまだ鮮やかに残る竹は見た目にもフレッシュでいい感じ。もう少し暖かくなるとこの上に続々と新しい苗が並ぶことだろう。

でも、きっと、あっという間にいっぱいになってしまうんだろうなぁ。

白い巣箱

年明けに製作を開始した百葉箱(のようなもの)、8割がた完成して、いったんそのままになっていたが、これからまた気温も下がりそうなので早く設置したいところ。

アルミ
屋根のてっぺんの棟包みをどうしようかと材料を探していたら、壊れたアルミの角材が見つかった。ちょっとゆがんでいるが、ハンマーで叩いたり、万力で広げたりしてみた。
軒包み
屋根の上に乗せてみると割といい感じ。これでいこう。

そして、大事な塗装。
塗装
百葉箱らしく、ここは真っ白に塗装。売り物ではないので、少々塗りムラがあっても問題なし。たぶん、数年したら剥げてくるからどうせ塗りなおすことになるだろう。
完成
軒包みもビスで取り付け、本体はこれで完成。
土台
次は、固定する台の製作。少々の雨風ではビクともしないよう、しっかりと杭を打ち込み、支えを取り付ける。
固定
幸い、ベースになった鉢カバーには足が付いている。足の部分に穴を開け、板で挟むように針金で固定しておく。修理や改造するときの着脱も容易だ。
巣箱
これで全て完成。ここまで手をかけたのだから、圃場の飾りにならないよう、こまめに気温の記録をつけねば。

ところが・・・
畑の真ん中に突如現れた白い物体はとても目立つ。

早速、近所の人に
「鳥の巣箱ができたね〜」
と言われてしまった。

ま、そう見えるわな。
鳥の巣箱になってしまわないよう、しっかり活用したい。

百葉箱

ハーブに限らず、植物を育てるときには、記録が大事だということをいろいろなところで書いたり言葉にしている。

それなのに、かなり大事な情報である気温については、忙しさを理由にそれほど熱心に記録していなかった。さすがに、毎日のように猛暑日が続くようなときや、「今日はこの冬一番の寒さ」なんていうときには温度計を見たり、日記にちょこっと書き付けてはいるのだが。

そもそも、温度計が置いてあるのは無加温とはいえビニールハウスの中。外の畑のハーブたちのことを考えても、屋外の気温を日々チェックしないとな・・・とずっと思っていた。

とはいえ、屋外での気温を測るには雨・風・雪・直射日光など、防がねばならないものがたくさんある。

理想は百葉箱なのだが、調べてみるとこれが結構高価である。本格的なものは数十万。簡易型のものでも数万というお値段。「この地の気温を正確に記録して後世のために役立てたい」というぐらいの気持ちがなくてはおいそれと手は出せない。

とりあえず、雨風を防げて、屋外で気温が計測できればよいという条件を満たすにはどうすればよいか・・・と。ここ1年ほど考え続けていた。

いっとき、自作で百葉箱を作ろうかと考えてもみたが、木製の箱を作るとなると、かなり本腰を入れねばならない。雨風が防げ、かつ、通気性のための隙間も空いていなければならない。百葉箱の独特のデザインには理由があるのだ。日々の作業の片手間に作るにはちょっとハードルが高い。

せめて、箱状のものがすでにできていれば・・・。と、ふと横を見ると、あったのだ。
鉢植えセット専用カバー
初心者用ハーブ鉢植えセット専用鉢カバーである。木製だし、もともと通気性良くできている。

鉢植えセット専用カバー

底も水が抜けやすいよう大きく開いている。なので屋根さえつければ百葉箱らしきものができるかもしれない。

年末から鉢カバーを手に取っては、ひっくり返したり、横に倒してみたり、いろいろ考えながら百葉箱への改造方法を思案する。

屋根をとりつけるための妻部分ができればなんとかなりそうな気がした。

材料も、わざわざ用意しなくても、手持ちにあるものでまかなえそうだ。

使わずにとっていた端材や、薪ストーブで燃やそうとしていた木の切れ端を集めたら十分間に合った。

材料

鉢植えセット専用鉢カバーは、余裕を持って一番大きい8号用のを使う。幸い、試作品でまだ塗装もしていないのが残っていた。

木切れは鉢カバーに合わせて切断。設計図も引かず、現場で合わせて切っていく。屋根の形が左右微妙に違ってしまった。

表面がザラザラだが、塗装したらそこそこ見えるようになるだろう。
百葉箱
妻の部分さえ完成したらあとは楽だった。実質作業時間約2時間。材料を探したり、選んだりするのに一番時間がかかった。材料費は0円である。釘は揃いのものがなかったので、いろいろなサイズや形のをごっちゃ混ぜだが、別に構わない。
百葉箱
設計図もなしで作った割にはまずまずかなと、一人で満足する。
百葉箱開閉部
かなり適当な細工だが、中に入れる温湿度計を取り出すための開き窓もつけた。蝶番も丁度良いサイズのが見つかった。

百葉箱開閉部

サビついていて動きにくいのを潤滑油をさしたらスムーズに開閉できるよういなった。

置き場も今日のところはとりあえず、かつて鳥の餌台を置いていた杭の上に乗せてみた。

設置

結構いい感じである。でも、第一印象は、百葉箱というよりは高床式倉庫。

明日以降、塗装したり、しっかり固定できるよう、台を改造しようと思う。屋根の頂部が空いたままなので、雨が入らないようカバーも付けたい(棟包みというらしい)。

横殴りの雨などでは中に雨が吹き込むかもしれないけれど、また様子を見て手を加えたい。
温度計
これで明日から気温をしっかり記録していけそうだ。記録する習慣がついたら温湿度計もグレードアップしたいと思っている。

たどり着く場所

園芸作業には、結構いろいろな道具が必要だ。ハサミやジョウロから始まって、細かいものまで数え上げれば膨大な数になるだろう。

そんな道具たち、はじめの頃はもちろん市販品を購入して使うのだが、そのうち何かしら不満な点が出てくることが多い。

買い替えたり、他の道具と組み合わせたり、改造したり。行き着くところは自作である。

例えば、種まきや発芽した種子を小さいプラグに植え直すときの作業。

一般的には指でそっと行なうか、さもなければピンセットのようなものを使うところである。

ピンセット
片側にはご丁寧に移植用のヘラまで付いているのだが・・・

ご丁寧に、そういう作業のための商品も売られている。相当昔に購入して、最初使っていたのだが、なんとなく使いにくくて、「買ったのに使わない」アイテムになってしまった。ま、他にもたくさんあるんだけど。

そのうち、ピンセットを使わず、鉛筆を使うようになった。鉛筆のサイズというのは子供の頃から「字を書く」という細かい作業を続けてきたので、同じような細かい作業をするのに都合が良い。ラベルに記入するときに使っているので、いつも手元にあるものだし。

だが、鉛筆では先端の尖り具合や、ちょっとした使い勝手に満足がいかなくなり、似たようなサイズに竹を切ったものを使うようになった。

ヘラ

そして現在、更に使いやすいよう徐々に改良を重ねてこんな形にたどり着いた。
へら
先端が尖った方は、発芽したばかりの細かい種子を分けたり、小さな種子や発芽をプラグに入れるのに役立つし、平たい方は種まきの穴を開けたり、種子を蒔いた後に土をよそうときにちょうどいいようにしてある。

へら

竹を削っただけの極めてシンプルな形なのだが、上記のピンセットよりもはるかに使い勝手が良い。

ところが、今年、これと非常によく似た製品を見つけてびっくりした。

PCを分解するときに使うへらである。「Spudger」と言うらしい(なんて読むんだろう)。

ノートパソコンのハードディスクを入れ替えようとしたときに、分解解説のしてあるサイトで推奨されていて購入。

商品紹介の画像で見たときも「似ているなあ」と思ったのだが、手にしてみると更にびっくり、自作のへらとサイズや形、持った具合までがよく似ていた。尖った先と、平たくなったもう一方の側といい、驚きであった。

もちろん素材は全然違うのだが、発芽した苗の移植と、PCの分解。細かい作業には変わりない。突き詰めていくと同じような形にたどり着くのだろうか。

このPC用のへらも、誰かが市販品に不満を持って作り出したのではないかと思うとなぜか親近感が湧いてくるのである。