タランチュラ出没!?

昨年のちょうど今ごろだったと思う。普段お庭の手入れをさせていただいている方から電話がかかってきた。

「庭のバラに、大きな青い蜘蛛がいて、気持ち悪くて・・・」
お年を召された女性の一人暮らしなので、なおさら不安なのだろう。すぐに伺うことにした。

お庭に向かう車中でスタッフと「大きな青い蜘蛛」とは一体何かという話になった。電話の話によると縞模様もあるという。

「もしかして、タランチュラとかの毒グモとか?」
「このごろは木材とかについてやって来るのもいるらしいし・・・」
「こんな島根に?」
と、喧々諤々であった。でも、いざと言う時に誰が捕獲するのかという話には決してならなかった。

到着して恐る恐る問題のバラのところに行ってみると、正体はゴマダラカミキリであった。鮮やかなブルーと、大きな触角。青い蜘蛛に見えても仕方がない。結局この時は5匹も捕まえた。残念ながらバラの枝は既に何箇所もかじられていてその先の花芽がダウンしていた株もあった。

今年も同じ庭で、やはり同じようにゴマダラカミキリを見つけた。少し早かったのか一匹しかいなかったし、バラの被害も最小限だった。

ゴマダラカミキリ

小さな頃は、宝石のように見えた体の色も今ではあまり愛着は湧かない。昨年は知人宅の小学生にプレゼントしたのだが、今年は山に囲まれた圃場に連れて帰って放してやった。

ダンディで臭いヤツ

コリアンダーの花が相変わらず咲いている。こぼれ種のものは開花も長いのか、早く種子を落としてくれればいいのに、片付けて次のものが植えたいのに植えられないでいる。

いつまでも咲き続けていることを良いことにカメムシが毎日のようにいらっしゃる。目にも鮮やかな衣装をまとったアカスジカメムシだ。この色のストライプを見事に着こなせるとはダンディなヤツである。

アカスジカメムシ

よく、コリアンダーをカメムシの防除用に植えると言われる。それにしても、同じ匂いなのでやって来るのか、それともコリアンダーみたいな臭いものを食べるのでカメムシは臭いのか。人間でも匂いの強いものを食べると体臭が強くなるとも言うのだが。

いずれにせよ、この色、天敵から身を守るのには効果的なのだろう。その上臭ければ誰も手を出さない。臭いかどうか試してみたくもあるが、かつてブラックベリーとともにカメムシを口に入れた経験があるものにとっては手を出す気にはなれないのである。

??

撮影中にもう一匹の甲虫も御来店。こいつも臭いのだろうか。色は良く似ているし。似た者同士なのかも知れない。

ちなみにコリアンダー、葉の香りは苦手な方も多いかも知れないが、種子は非常に甘くてスパイシー。粒のコショウと等量でブレンド、その都度ミルでひいて肉料理などに使うとサイコーです。お試しあれ。

ニャッキ

いつも作業をしている圃場では、一年を通して目にする昆虫も限られる。毛虫、イモムシの類も、ほぼ顔なじみのものばかりである。詳しい名前は知らなくとも、「○○(ハーブの名前)に付くニャッキ」と言えばスタッフの間でもほぼ通用する。

ところが、庭仕事へ行くと、今まで見たことも無い「ニャッキ」に遭遇する。有るお宅の庭先で、シモツケの花を丸坊主にしてしまったニャッキがいた。普段から昆虫の名前にはあまり詳しくないスタッフばかりなので、当然だれも知らない。

シモツケマルハバチ

とりあえず、見た感じ無害そうな雰囲気なので見つけるかぎり手で取り除いた。ところが、通路を挟んでピンクと白の色違いのシモツケがあるのに、食べられているのはなぜかピンクの方ばかり。白はほとんど被害が無かった。成育環境もほとんど変わらないのにだ。

シモツケマルハバチ
良く見ると両端は色が違う感じである。さすがにピンク色はしていなかった

あまりに不思議だったので、帰ってから調べてみた。ネットのイモムシ図鑑を調べるが、なかなか分からない。あまりにたくさんのイモムシを見てさすがに気分も悪くなってくる。こんな時は方針を変えて被害に遭った植物から絞っていくのも手である。シモツケから探っていくと、すぐに分かった。「シモツケマルハバチ」というハバチ科の幼虫であった。

更に調べていくと、なんとこの幼虫、花を食べて、体色が変わることもあるという。ピンクの花ばかり食べていたのもこのへんに理由があるのかも知れない。

小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・
小さいのは黄色味がかる。大きくなるとグリーンが強いようだ。花を食べた直後のピンク色のが見てみたかった・・・

正体は分かったが、スタッフの間で「シモツケマルハバチ」と言う名は定着しないだろう。きっと「シモツケのニャッキ」の名前で呼ばれるに違いない。

Not so photogenic

ハーブを始めた頃から近年まで、正体が良く分からない虫がいた。というか、きちんと調べなかっただけなのだが。

庭や畑、ビニールハウスの中でもところ構わず出没する1cmに満たない小さなハチのような昆虫。ホバリングが得意で、じっと一ヶ所で空中停止していたかと思うと、ぷーんとどっかへ飛んでいってしまう。

悪さはしないような気はしていたものの、正体が分からないというのは精神衛生上良くなかった。その後ヒラタアブと知ってとても嬉しく思ったのを覚えている。幼虫はアブラムシの強力な天敵である。

一口にヒラタアブといっても非常にたくさんの種類があるようで私が普段目にするのが何という種類かまでは把握できていない。ヒラタアブ自体、ハナアブという大きなグループに属するようだ。しかもアブという名前で呼ばれているものの、むしろハエの仲間だそうである。

さて、私が普段良く見かけるのが下の写真の種類である。ネットで検索するとホバリングしている写真が良く載っている。その姿はなかなか可愛らしいので何度も撮影にチャレンジしたが、技術のせいか、それともデジカメの性能の限界なのかまともな写真が撮れなかった。仕方なく、止まっている時の写真を掲載する。ただの小さなハチである・・・。

ラングウォートの葉で一休み
ラングウォートの葉で一休み

これと、複眼が赤っぽい種類を良く見かける。こちらも飛んでいる時はいい感じだが、止まっているとアブかハエ。あまりぱっとしない。

まして、幼虫にいたっては事実、ウジである。葉に付いている姿も、長い間何かのサナギだとばかり思っていた。

ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。
ミントの葉についたヒラタアブの幼虫。この裏が餌場だった。

これもネットからの情報だが、幼虫がアブラムシを捕食する際には身をよじるようにして食べることもあるとか。アブラムシを食べてくれるのはありがたいが、できるならあまり見たくない姿である。撮影する気も起きないので見たい人は画像検索してみてください。

グルメでグルマン

圃場の事務机にペットボトルを半分に切ったようなものが置いてあった。何か葉っぱのようなものが入っている。

スタッフに、
「なにこれ?」
と訪ねたところ、
「アゲハの幼虫がついとったから、持って帰ろうと思って」
とのこと。覗いて見ると2匹の幼虫がいた。種類は分からない。昨年も同じように捕まえ、子供さんが通う幼稚園へ持っていって、羽化までさせたという。

アゲハの幼虫

「どれについとったの?」
と聞けば、
「あの、去年もついとったやつ、大きなポリポットの、そこのへんの。」

大事なDictamnus albusだ・・・。
何年も前から育てはじめたのに、こいつらのせいで一向に大きくならない。油断しているこっちも悪いのではあるが、毎年執拗に狙ってくる。そのため、花が咲く素振りさえ見せてもらえない。

ペットボトルの下のほうに大きめな別の葉も入っていた。
「この下の葉は?」
と聞けば
「親木のところにある、背の高い、ミカン科の・・・」
ベルガモットである・・・。
もちろんMonardaでなく、本物のベルガモット。ある方に譲ってもらい、大切に育てている株である。こちらはもう実がなることはあきらめているのだが・・・

Dicatamnusにベルガモット。なんて贅沢な!
こんなグルメでグルマンなやつらにいられたのではかなわない。

幼稚園ではユズの葉を与えられるという。それで充分である。
それとも
「やっぱり日本食はうめーなー」
とか言って食べるのだろうか。