こんな場所にはこのハーブ-ナスターチウム

 

楽しむお庭と見せるお庭では植える植物を選ぶときの考え方も異なってくる。

楽しむお庭では、自分が好きなものを選び、さらにその場所に合うのであれば言うことは無いが、見せるお庭では、来ていたただいた方が「ここは良く手入れされているね」と感じていただくことも大事である。しかも、植物のことを知らない人が見てもそう思っていただくのが理想だ。

なので、依頼されて見せるお庭を造るのはプレッシャーも大きい。うまくいくものと、育ちにくいものを入れ替えつつこまめにメンテナンスする必要がでてくる。お客様の好みも入れると選択肢はますます限られてくる。知恵のしぼりどころだ。

この場所はスタッフが植物を選び管理しているとある病院の花壇である。初め、ナスタチウムを植えるという話を聞いた時には少し「どうかなー」と首を傾げた。品種はナスターチウム・ミルクメイド。明るい緑色の葉と、クリーム色の花が清楚な感じのナスタチウムだ。

ナスタチウム・ミルクメイド

ここ松江ではナスタチウムは結構育ちかたが微妙で、うまくいく場合は良いが、ダメな時はサッパリと言うハーブである。また、柔らかいせいでポッキリ折れやすいのもやや扱いにくいところ。もっと涼しい地域ならば、春から秋まで長く楽しめるし、もっと温かければ、秋から春まで楽しむことができるだろう。しかし、夏越しも難、冬越しも難という土地なのだ。

もちろん、春に植えて夏までの一年草として扱う分にはいい。ただ、ナスタチウムの魅力は夏以降、盛り返してくると秋遅く、場合によっては年末まで花と葉が楽しめることだ。日々手入れを怠らなければ十分可能だが、さて、1,2週に一度のメンテナンスしかできないよそのお庭でそれができるか、まず心配だったのだ。

それでも植えてから夏までは順調に育ち開花。夏も虫食いに会ったり、葉が傷んだりしたが、強めに剪定したことで、周りのハーブに守られて秋を迎えた。今回、南向きの花壇だったので、夏越しも相当ハードルが高かったのだが、幸い真上にエントランスの屋根があり、真昼の直射日光は防げた。そのかわり雨がかからず、真夏の一時期の水やりには苦労したようだ。

 

ナスタチウム・ミルクメイド
11月初めの様子。涼しくなり、快適そうに開花中。

秋からは元気を取り戻し、花も次々と楽しめるようになった。特に明るい色の葉と、花のコントラストが目に優しい。

 

ナスタチウム・ミルクメイド
12月終わり。程よい日差しでまだまだ元気

予定通り年末を迎えた。そろそろダウンしてくるし、年末年始のところで刈り込むことになるかな?と考えていたのだが、相変わらず開花中。どうやら、横からの日差しが冬の成長を助けていたようだ。エントランスの南には半分目隠しのようにスリット状の壁となっている。そこからの光が程よく当るのだ。

ナスタチウム・ミルクメイド
4月、新しい葉もかなり出た。かなり刈り込んだのにまだ隣が窮屈そうだ。

結局年を越え、厳冬期も乗り切った。もう3月にはわさわさ。さすがに周りの植物にも影響を与えるし、新芽も出して形を整えたいしと、半分ぐらいばっさり剪定。それでも4月にはいい葉が揃いはじめた。

さて、二年目を迎える。このまま今年も順調に育って欲しい。

こんな場所にはこのハーブ-カニングハムミント

当店のお庭作りでは、ミントの仲間を使うことは滅多にない。

ミントを地植えしたことがある方ならお分かりかもしれないが、周りの植物を圧倒するほどはびこったり、春、思わぬところからヒョッコリ地下茎の芽が出て来ることも多い。大抵「植えて後悔」のパターンだ。

まして、メンテナンスに訪れる周期が長いお庭等には怖くて使えない。

とはいえ、その強健さや成長の速さなどのメリットを生かさない手はない。このお家は、玄関の前の通路にカニングハムミントを使っている。

カニングハムミント
写真は昨年の暮れの状態なのでやや寒さで葉の色が褪せているところもあるが、もう植えてかれこれ10年近くになる。

元は中央の平たいステップの周りは玉砂利が敷き詰めてあったが、玉砂利の間から小さな雑草が生えて来て見た目が非常に良くなかった。北西向き、南側は建物なので(手前が西)、日中も比較的薄暗く、黒っぽい玉砂利がよけいに雰囲気を暗くしていたというのもあり、グラウンドカバーを植えることとなった。

元々日陰だし、冬はマイナス10度近くなる土地柄。なるべく手間もかからない種類ということでカニングハムミントに決定した。

夏はさすがに少し細かい草が生えるものの、それほど困るほどではない。むしろ渇水で雨が降らないとさすがに傷みやすい。夏は西日も結構差す場所だ。

手前側は車の車輪が載るため、徐々に薄くなってしまう。最初は時々補植していたが、改善はしないため、近年は割り切って無理なところはあきらめてもらうようにした。

右側の壁側にはリュウノヒゲがあるが、案外どちらも仲良く、自分のテリトリーを守っている感じだ。数年に一度、追肥を兼ねて植え替えをする程度で普段は全く肥料を与えないが、ちょうど良いようだ。剪定作業も、せいぜい左側の駐車スペースに伸びたのを整えるぐらいでほとんど不要。お客様はこのスペースの手入れは全くせずに済んでいる。

決してこれがベストとは思っていないが、まずまずうまくいっているので、他のものに変える勇気がないまま何年も過ぎている・・・。

冬のおやつ-食用ホオズキ・ゴールデンベリー

大寒も過ぎ、一年で一番寒さが厳しくなる時期を迎える。天気予報では今日の夕方から松江も雪。気温もここしばらくは氷点下になる日が続きそうだ。

そのため、年に一度かそこらの寒波でダメージを受けかねない株は、いま、この時期だけ特別に厚いビニールハウスへ退避させる。

今日は食用ホオズキ・ゴールデンベリーの鉢を退避させた。例年、無加温で開けっ放しのハウスで管理している。この辺りだと、地植えでも地際でカットして厚くもみ殻等をかけておくと越すことが多い。しかし去年は相当冷えたのか何株かダメにしてしまった。そのため今年は少しだけ優遇。

 

食用ホオズキ・ゴールデンベリー
まだ冬の剪定も終っていないので秋についた実がそのままだ。無加温とはいえ、風雨はしのげるため、葉も実もほとんど秋から変わっていない。まだ青々とした袋も結構残っている。屋外ならば秋のうちに袋も色づくのだが。食べごろの実もたくさんある。

食用ホオズキ・ゴールデンベリーの実
狙い目は袋がオレンジ色になったぶん。

食用ホオズキ・ゴールデンベリーの実

果実もはち切れそうなぐらいだ。寒さで甘みも増しているのか、冷たさも相まって休憩時間にはまたとないおやつとなる。パイナップルとイチゴを合わせたような味と形容されるが、うーん、どちらかといえばパイナップルが近いかも。酸っぱさを無くしたパイナップルかな。風味もそんな感じ。

熟しているかは、袋の色も目安となるが、袋ごと引っ張ってみて、軽く取れるかどうか。

食用ホオズキ・ゴールデンベリーの実(未熟)

袋が青いのはまだ熟しかたが足りないから、うまく取れない。

食用ホオズキ・ゴールデンベリーの実(未熟)

袋を開けても緑色のまだ美味しくない果実が出てくる。

殻を破って食べるピーナッツやギンナンのように、袋を破って食べる楽しさからかついつい食べ始めると止まらなくなってしまう。株元に落ちている袋も、中の実は袋に守られてきれいなままだから、そっちまで手を出す。洗わなくても良いのがまた嬉しい。結局食べごろの実はすべて制覇してしまった。つぎ食べられるのはさていつ頃か。

春になったら畑にも少し食用ホオズキ・ゴールデンベリーを植えようか・・・今年の秋は食べ放題だ!なんて想像するのもまた冬の楽しみである。

麻紐と弁当箱

季節によって仕事が大きく異なる庭仕事なので、使う資材も季節で大きく変わってくる。

冬は防寒や雪がこいのため、支柱や株元にマルチするための腐葉土、バーク堆肥の使用が増える。また、誘引作業もピークを迎えるので忘れてはならないのが誘引用の麻紐だ。

誘引に使うことができる素材は様々で、中に針金が入ったビニタイ(ビニールタイ)や化繊のひも等もポピュラーだ。ただ、後々の処理やナチュラルな見た目、価格等を総合すると結局は麻紐に落ち着いてしまう。

自然素材なのでいつかは朽ちて切れてしまうとはいえ、大抵の環境なら2年ぐらいは余裕で持つ。かなり太いツルバラの枝を誘引しても、翌年誘引し直す時にも強度十分のままである場合がほとんど。処分するのがもったいないぐらいだ。

しかも誘引や、支柱に固定するだけだから、そんなに長さは必要ないと思ったら大間違い。200メートル巻きとかのサイズを買ってもあっという間に無くなってしまう。「さあ、庭仕事にでかけるか・・・」と準備をしていて麻紐の余分が少なくなっているのに気がつき、慌ててホームセンターへ走るなんてこともしょっちゅうある。

たかが紐と思っても、実は結構コストがかかる。大降りのグレープフルーツ大に巻いた200メートル程度のもので500円台。もっと安いのもあるが、あまり細いと使えない場合もあるので、だいたいこれぐらいの価格帯に落ち着く。

ワンシーズン相当の数を使うし、買いに行く手間もバカにならない。そんなとき、とある農業資材系のホームセンターで面白いものを見つけた。

バインダーひも
「バインダーひも」
陳列されている商品を見ても具体的には何に使うものか分からなかったが、どうやら誘引にも使えそうで購入。太さも十分で4倍以上の長さがあるのに同じ500円台。これは試してみねばと思い購入した。

スタッフによると、少し旧型の稲作用コンバインで使う紐だとか。「なんでこんなもの買って来たの」と不思議がられた。彼は稲作もするので知っていたのだ。

今シーズンから使い始めて、特に問題はない。誘引作業等もかなり進んだが今のところまだ十分残っている。

ただ問題は、今までなら腰の四次元ポケットに入れることができたのに、このサイズでは無理なこと。いわゆる保温弁当箱、しかも大型のごつい奴ぐらいの大きさなのだ。仕方無く、足下において作業することが多いのでついつい蹴飛ばしがちだ。

保温弁当箱のように肩ひもがつけられればいいのに・・・。なんとか工夫できないかな?と現在思案中である。

葡萄とハーブと奥出雲

ときにはハーブ以外の植物を栽培するプロと接するのも刺激的なものである。

今日は、奥出雲葡萄園のワイナリー長である安部氏のもとへ訪れた。ずっと昔から、当店でハーブをお買い上げいただいているご縁もあり、ワインづくりにお忙しい中にもかかわらず、時間を割いていただくことができた。アリガタヤ。

もちろん観光ではなく、葡萄栽培について色々聞きたいことがあったので、訪問させていただいたのだ。

奥出雲葡萄園は雲南市木次町の美しい丘陵地に位置する。高品質な乳製品の製造で全国にその名が知られている木次乳業(ここのパスチャライズ牛乳は我が家でもマストアイテム。いまもパスチャライズ牛乳入りのミルクティーを横に執筆中。)が母体ということもあり、そのこだわりのワインには熱烈なファンが多い。

近年は、日本の山葡萄など、優良な原種からの交配種である「小公子」という葡萄から作る、その名も「小公子」というワインが注目を浴びており、予約受付当日に完売、店頭販売も販売初日に完売するというほどの人気。そんなワインを作り出す安部氏とお話しできるのはまたとないチャンスなのである。

ところで、葡萄園を訪問して、葡萄栽培について質問しに伺ったなんていうと
「ついにSORAMIMIはブドウにまで手を出すのか?」
と思われてしまうので、それは無いことは断言しておきたい。ハーブをより良く育てるための一つの試みのためとしか今は公表できないが、いずれうまくいった時には紹介したいと思う。

さて、貴重なお時間を割いてお話を伺い、ご質問させていただくのだから、こちらもそれなりにブドウの育てかたについてある程度まとめてから現地へ向かったのだが、当方の初歩的な質問に対して、ものすごい量の情報とともに答えが返ってくる。葡萄のことになると、めちゃくちゃ熱く語られる氏。ああ、この人って本当に葡萄が好きなんだなあ。ということがガンガン伝わってくるのだ。特に、剪定についてのノウハウは、話を聞きつつメモをするだけでも大変だったが、つる性の他の植物にも応用できそうでとても参考になった。

葡萄の剪定
葡萄の剪定方法について熱く語られる安部氏。葡萄を見る目は真剣で愛情に溢れる。

また、奥出雲葡萄縁のすぐ近くで無農薬、無肥料、不耕起で葡萄を育てていらっしゃる方も交えてお話しすることができたのは貴重な体験だった。当店も無農薬での大変さはよくわかっているつもりだが、その上無肥料、不耕起ということになるとさらに苦労も多いことだろう。そのかわり、収穫できた葡萄はものすごく甘いとか。いちど体験してみたいものだ。この方とはお互いに悩みの一つでもあるナメクジの話題でしばし盛り上がった。(お名前をメモし忘れたのが悔やまれる)

植物を栽培している方とは、どんな植物であれ、色々通じ合うところが多い。栽培についての悩みや喜びもそうだし、今回はお互い、生産したものを販売しているといいう点でも重なるので、時間はあっという間に過ぎていった。

ついでにワインについても、ワインづくりをされている立場でなければわからないワインについてのあれこれを教えていただき、目から鱗が落ちた気分だった。

安部氏はハーブもお好きでご自分でも色々お育てなので、いくつかプレゼント苗を持っていった。奥出雲の地、葡萄のそばでうちのハーブたちもすくすくと育ってくれるだろう。

今日は車で訪れたので叶わなかったが、いつかまたワインを交えてお話ができれば・・・と思いつつ奥出雲の地を後にしたのである。

安部様、今日は本当にありがとうございました。

 

島根のワイン 奥出雲ワイナリー 奥出雲葡萄園

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