植物と人のタイミング

今日は、予報よりもずいぶん強い雨が降りつづいた。小雨ならともかく、今日のような雨だと、どうしても作業の選択肢が減ってしまう。

絶対できないというわけではないのだが、挿し木も親木が濡れていると決してベストとはいえないので、晴れた日に延期することが多い。そのため、どうしても植え替えとか、ポット上げなどの作業になりやすい。

もちろん、一番重視するのは対象となるハーブのコンディションだ。植え替えにしろ、挿し木にしろ、株分けにしろ、種まきにしろ、タイミングが悪くてはお話にならない。よく「人間の都合に合わせるのではなく、植物の都合にあわせる」と言われるが、全くその通りだ。

例えば、今日行ったスイートウッドラフの株分け。年明け後、一つの親木を株分けをしたが、まだ少し早かったようで、あまりいい地下茎が出ていなかった。そのため、数が思ったよりも確保できなかった。

冬の地下茎をつかって増殖することは、ミントをはじめ、タラゴン、スイートグラスなど案外多い。これらの多くはきちんと寒さに当てることで新芽が動き出すので、真冬を過ぎてからになる場合が多い。

スイートグラスの地下茎
スイートグラスの地下茎

ミントはさておき、タラゴンなどはタイミングが難しく、早くても遅くてもうまくいかないので、冬とはいえ油断できない。

冬を越したスイートウッドラフ。周囲から小さい新芽が顔を出している

さて、そのスイートウッドラフ、確認したらかなりいい感じの地下茎が広がっていた。株分けにはベストタイミングのようだ。

スイートウッドラフの地下茎
スイートウッドラフの地下茎。株分けどき

植物の次に大事な人間の都合も今日ならば悪くない。いまのところ特に急いでいる用事もないし、時間の余裕もあってこの作業に集中できる。

折れやすい地下茎

ウッドラフの地下茎は柔らかく折れやすいので、焦っていたり、邪魔が入らない日が望ましい。今日は雨の音を聞きながら集中して株分け作業ができた。1月の時よりも数が出来てひと安心する。

一月の株分け分は、もう根付き始めたようで、新しい葉も広がり始めていたが、やはりもう一歩のようだった。

見かけによらず

先日、お客様と話していて、今年はジャガイモのできが本当に良くないということを伺った。5、6月と雨が少なかったためだと仰っていたが、そのかわり、ラベンダーのできはとても良かったとのこと。このところのように天候が極端だとなかなか両方とも満足がいくようにとはならないものだ。

今年、目立ってよい調子だったのがレディースベッドストロー。お客様のお庭に植えたものも、店の花壇の株も、そして圃場の隅に植わっている株も、ここ数年無かった程よく咲いた。おそらく開花まで涼しい日々が続いたのが良かったのだろう。

レディースベッドストロー

とはいえ、例年もあまりひどい育ちかたをする年は無い。近い仲間にスイートウッドラフがあるうえ、その繊細な姿から弱々しい感じを受けるのだが、どっこいコイツはかなり頑丈だということがこの頃わかって来た。店の花壇は西向きで夏の午後は厳しい日射を受ける。特に日よけをしてやるわけでもないし、手入れをするといっても横に伸びて行く株をそれ以上広がらないよう整理するぐらい。

まして、圃場の株にいたっては完全にほったらかし。上のようなクローズアップ写真だとそれなりに見えるが、実は下の写真が現実でカヤの仲間と生存競争中である。しかも10年近くこの状態である。

レディースベッドストロー
同じ圃場でも苗増殖用の親木は鉢の中の快適な環境で優遇されている。コイツも頑張っているので冬には少しメンテナンスをしてやると良いのだが、強いとなるとつい放任になってしまうんだよなぁ。