片付けというテーマ

園芸作業で大事だが案外難しいことに片付けというテーマがある。

使ったスコップを畑に放置しておいたり、ハサミを投げっぱなしにしておいたりというのは論外だが、長期間使うものの片付けが案外難しい。正確には片付けのタイミングが難しい。

急に不要になるものは少ない。植物が生き物である以上、徐々に衰え、葉を落としていき、朽ちるのと同じ。季節が変わりゆくのも一気には進まない。

もう盛りを過ぎて、硬くなってしまったバジルをなかなか片付けられないのも、夏前にかけた寒冷紗が涼しくなっても片付けられないのも、まだ使うかもという未練と面倒くささがあるからだ。

2020の年末の大雪

この年末年始、山陰地方は大雪となった。当店のビニールハウスも、全てが全半壊した10年前の豪雪と同じまたはそれを上回るなどと言われたので当然警戒して対策を行なった。

ビニールハウスの雪対策も、地域やハウスのサイズなどによっても違うが、当店の場合は上に積もった雪をいかにスムーズに滑り落とさせるかである。

2020の年末の大雪
雪がきちんと滑り落ちるとハウス倒壊が免れる

ちなみに、同じ山陰地方でももっと降雪の多い地域の場合は単に滑り落とすだけでは、滑り落ちた雪が横からハウスを押し潰してしまうので、滑り落ちた雪の排出も大事なようだが、幸い、それほどの雪はまだ経験がないし、その場合は諦めるしかないと思っている。

構造的に弱いビニールハウスの中央部分の雪を早めに滑り落とさせるために、中央あたりにストーブをつけておく。昼間はつけることは滅多にないが、誰もいなくなる上に、気温が低くなって雪も滑りにくくなる夜間に長時間、ポツポツと燃え続けるストーブを置いておく。もちろん、停電などの心配もあるので、ファンヒーターなどは論外だ。

2020の年末の大雪
雪の重みで補強用の仮設支柱がたわむ

全ての棟に設置するために、徐々に揃えてきたストーブ、もちろん新品である必要はさらさらないので、家や親戚で使わなくなった古いストーブを譲り受けて使ってきている。そのためもあって、徐々に更新しないと経年劣化でダメになってしまうのもぽつぽつある。

特に今年は、春先にきちんと片付けて置かなかったせいもあって、2つがダメになった。一つは、燃焼筒が錆びてしまい、芯が上がらなくなった。もう一つは、灯油タンクに水が入ったせいなのか芯に火がついてもしばらくすると消えてしまうようになった。

ストーブをしまう季節は、毎年のことだが、急激に忙しくなっていくシーズン。もちろん、春先の雪も可能性はゼロではないし、まだまだ冷え込むことが多い季節、心情的にストーブがあると何やら安心するという理由も否定できない(ちなみに、植物を温めるために化石燃料を使うのはやめているし、作業時、我々を温めるための火も薪ストーブに移行した)。

というわけで、春はズルズルとストーブを片付けるタイミングがないまま、いい加減、置いてあることが目障りになるころ(暑さを感じる頃)になってようやく片付けるのだが、雑になりがちなのは当たり前だろう。簡単にビニール袋をかけて棚の下あたりに放り込むだけ。これでは錆びるのも当たり前だ。

2台も壊れるとは予想していなかったが、一台不足の状態で大雪を迎えるのは心配だ。近くのホームセンターへ見にいくが、妙に高額で大きい物しか置いてない。決めかねて家に戻ると、昔父親が使っていた小さな灯油ストーブが納屋の隅に見つかった。今年はこれで凌そうだ。

年末年始、ビニールハウスを何度も行き来することになったが、幸いにも被害はなく済んだ。

年明け、もしかしたらとの思いですぐ消える方のストーブに着火したら、時間はかかったものの、前と同じように燃えるようになった。灯油が芯にしっかり染み通ったのかもしれない。このストーブはタンクが大きめで安心だから、きちんとメンテナンスして春には丁寧に片付けなくては。

復活したストーブ
復活したストーブ

こんなふうに、今は反省して文章を書いているのだが、きっとこの春も同じようなことを繰り返すのではないかと新年から危惧している。

そういうこともあり、今年こそは道具を収納、整理するための専用の小屋を設置しようと思っているところだ。

冬支度

昨日は恒例の冬前の倉庫大掃除。

冬は土作りや肥料づくりで使用頻度が高まる倉庫件作業用ビニールハウス。夏の間に溜まった埃などを掃除して快適な作業環境づくりだ。

夏前にも一旦掃除しているのだが、やはり土ぼこりや蜘蛛の巣などもたくさん張っているし、「とりあえず」で放り込んでいたものもあったりするので知らず知らずのうちにものが増えていく。時々は棚卸し総決算が必要である。

最低2人いれば、重たいものもなんとか運び出すことができるが、それでも大人数の方が作業にもハリが出る。今日は声をかけたら都合が良い4人が集まった。幸い天気も快晴。気持ちよく作業ができた。いつもは昼前までかかることが多いが、今日は10時のお茶休憩までにほぼ一段落。これで安心して冬が迎えられる。

ハーブたちも気がつかないうちに、それぞれに冬支度を整えつつある。

紅葉しつつあるもの、落葉しつつあるものなど様々だが、ミントの仲間は顕著だ。

夏までに伸びた枝は北風を受けるので、さっさと葉を落とし始めた一方で、地下茎を伸ばしたり、種類によって地上部を這う様に株元から茎を伸ばし始めている。

こういった地下茎が伸び始めるのを見ると、我々も安心する。寒さに強い種類は冬への準備をきちんとしてくれるし、それが目に見えやすい。あとは春まで、極端に水を切らさないようにしてしっかり寒さに当ててやれば良い。我々は冬への準備ができない、暖かい地域原産の種類のケアに集中できるのだ。

涼しくなってからひょっこりと

圃場のそばの荒地にあるヒガンバナ、今年はまだ咲かないのかと思っていたのに、今日ふと見たら赤い花をいつもの年のように咲かせていた。

ヒガンバナの開花が遅いとラジオか何かで耳にしていたが、この辺りでは例年と同じように咲いたようだ。

夏のあいだ姿を隠して、秋にひょっこりと顔を見せるのはヒガンバナだけではない。

ビニールハウスのポット苗でも、そういうものは結構多い。特によく似たパターンを見せるのがマドンナリリーだ。

開花時期こそ初夏だが、その後、小さい苗でも大きな株でも同じように徐々に葉が弱ってくる。

育て始めた頃は、株自体が弱ったのではないかと随分心配したものだ。だが、これは夏を乗り切るための姿。夏を越すには無駄なエネルギーを使わずさっさと涼しい地下で眠るのに限るのだろう。自分だってもし許されるのなら、同じように秋までじっと涼しいところで隠れていたいぐらいだ。

地上部がなくなるし、球根なので水分の消費は随分少ないのだが、それでも極端に乾かない程度の水やりは必要。もっとも、水のやりすぎは球根が腐ってしまうので厳禁。葉が残っているものよりも見えない分、かえって難しいかもしれない。

そのマドンナリリー、今年もヒガンバナと時を同じくするかのように土の中から顔を出し始めた。

涼しくなってから、何もなかったように顔を見せられると、ことさら辛かった今年の夏を思うと、ちょっと小憎らしい気もする。でも、ひとつ、また一つと芽を見るたびにホッとするのも確かだ。もちろん、全部が顔を見せるわけではなく、何割かはダメになってしまうのだが、今年は比較的成績が良さそうだ。

このまま順調に育ち、もう少し涼しくなった頃、紹介できると良いのだが。

適切な株数

ときどき、◯◯は何株植えるといいですか。という質問をいただくのだが、正直、答えるのがとても難しい。

育て方や環境、使い方によってもずいぶん違う。ローズマリーのように地植えで大きく育てば、一株で十分な種類もある。いっぽうでバジルのような種類は、その家によってもかなり違う。とあるおうちでは毎日のように消費するので畑に10株あっても足りないそうだ。あまり使わない家庭なら1株でも楽しめそうだし。仕方がないので、バジルなら一人一株を目安にというような曖昧な答えにならざるを得ない。

極端なのはローレルのような種類で、初期の成長が遅いので葉を収穫できるまでは年単位でかかるが、地植えにして大きくなりはじめると毎年の剪定に困るぐらいだ。背丈を越えるような株になると、とても食べて消費することは現実的ではない。リースやスワッグなどで贅沢に消費するぐらいだろうか。

そもそも、アドバイスをする側の本人でさえ自家用の菜園では毎年何をいくつか植えるかで悩み、失敗ばかりしている。特に夏野菜が問題だ。種類が多いし、場所は限られている。その上成長も速いのでなんでもかんでも植えることはできない。きゅうりとプチトマトだけはここ数年、植える数が確定してきたのだが、他はまだまだ。今年は特に植え付けが遅れたせいで、3株植えたシシトウもほとんど収穫できずにいる。一昨年は、同じ数でもうんざりするほど収穫できたのに。

バジル
雨が少ないので、葉が硬くスパイシーな香り。花芽も上がってきてしまった

バジルも今年は5株植えたのが、雨がとても少なくて成長があまり良くなかった。例年、バジルペーストを何瓶も作れるほど収穫できるが今年は生食のみになりそうだ。

逆にうまく育たなくて吉とでたのがオクラ。毎年3株を目標に植えるのだが(1株では足りなそうなので2株、それに枯れるのを見越して予備に1株)、いつも持て余し気味だ。急成長するオクラは大きくなりすぎると硬くて美味しくないので毎日のチェックが必要だし。

それが今年は、やはり植えるのが遅すぎて未だ腰ぐらいのサイズ。その上一株は枯れてしまった。もう一株は生育不良。結果として1株だけが育っている状態となった。

それでも、2~3日に一度数本のオクラが収穫できる。食卓にも時々載るぐらい。これがちょうどいい。どうやら一株を丁寧に育てるのが良さそうだ・・・とかいいながらまた来年も3株植えちゃうんだろうな。

散水ノズルを新調する

今日も昨日に引き続き、台風対策。ギリギリまでビニールハウスは閉じたくない(予報では台風の最接近時は日中で、しかも晴れマーク。閉じれるのか!?)ので、全ハウスを10分程度で閉じれる一歩手前までの作業を進める。そういった作業に追われるさなか、新調したハス口(散水ノズル)が届く。

かれこれこのハス口を使い始めて、20年以上になるだろうか。通算で、おそらく4本目か5本目。うち、現役が3本だ。

そのうち一つが、何度か接着修理などをしながら使い続けていたのだが、先日いよいよ使用不能になってしまった。

いっぺんに使うことは滅多にないのだが、最低でも3本ないと色々都合が悪いため、新しく購入することにした。

ハサミを使うことがない日はあっても、ハス口を使わない日は滅多にない。使う時間も一番多いツールの一つなので、ストレスなく使えることが第一だ。

価格も決して安くはないので、初めて使い始めた時には、半信半疑だったのだが、いつの間にか定番のツールになってしまい、本数も増えていった。いまさらほかのノズルに浮気する気にはなれない。

探せばもっと良いものも見つかるかもしれないが、手作業で水やりをする我々には手頃なサイズだし、もう慣れてしまって他のものに変える気もしない。

パッキンなしというのも面倒がないし、その技術の高さがうなづける。たまに安価なノズルで散水するとストレスフルなことこの上ない。

長年同じツールを製作しておられる郡南製作所さんには感謝である。

この頃、新しい物を買うたびに、「これが最後の買い物かな?」なんて思うことがよくあるのだが、10年以上使えるとしても、毎日酷使するこのツール、まだ2~3本は買い換えることになるだろうか。

先日ダメになった一本も、先端のハス口部分はそれほど傷んでいないため、保管しておいた。